1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

テーマに関する論文

イラン軍事介入という壊滅的ギャンブル
―― 何を達成できるのか
(6/21/2025)

2025年8月号

アンドリュー・P・ミラー 前米国務省副次官補(イスラエル・パレスチナ問題担当)

ネタニヤフの主張とは逆に、イランの最高指導者を殺害しても、それでイスラム共和国が崩壊するわけではないだろう。つまり、イランの体制を軍事的に粉砕するには、おそらく、大規模な地上部隊の投入が必要になる。イスラエル国防軍にはそのような役割を果たす遠征能力も規模もない。一方、米大衆は(イラク戦争のような)中東への悲惨な介入を繰り返すことには関心がない。仮にアメリカとイスラエルがフォルドゥを破壊し、あるいはイスラム共和国を倒すという目標に「成功」しても、それはおそらくはかない成果、あるいは(得るもののない)ピュロスの勝利に終わるだろう。(邦訳文は、トランプ政権による軍事攻撃の直前に発表された分析の抜粋・要約)

形骸化するアメリカの拡大抑止?
―― 中ロによる切り崩し策

2025年7月号

デイヴィッド・サントロ パシフィック・フォーラム会長

中国の指導者たちにとって、アメリカの核の傘による拡大抑止は防衛戦略ではない。北京は「中国の台頭を封じ込め、後退させようと、ワシントンは、オーストラリア、日本、韓国など、北京からみれば、中国の勢力圏にある国に拡大抑止を押しつけている」とみている。概念面から拡大抑止を批判するだけではない。北京は、アメリカの軍事的役割を低下させ、米同盟国に対して軍事的・経済的威嚇策をとり、対米抑止力を強化し、ロシアとの協調を模索している。アメリカと地域同盟諸国が安全保障協力を強化しない限り、米拡大抑止戦略は今後、致命的に損なわれていくだろう。

朝鮮半島のデタントを実現するには
―― 変化した北朝鮮にどう向き合うか

2025年7月号

ジョン・デルーリ ジョン・カボット大学 客員教授

韓国が、北朝鮮との外交交渉を実現するには、「北朝鮮の完全非核化」や「朝鮮半島の統一」という非現実的なレトリック、そして「制裁を通じて北朝鮮の行動を変えられる」という幻想を放棄しなければならない。一方で、トランプの劇場型アプローチを李大統領の現実主義的なアプローチで補完する必要もある。金正恩は北朝鮮の経済問題と将来の繁栄をもっとも気にしている。半島統一という非現実的な展望を退け、北朝鮮の完全な非核化に固執するのをやめ、平壌に健全な経済発展への道筋を提示できれば、デタントの可能性は開けてくる。

中国の未来を考える
―― 「権威主義的繁栄」の影響力

2025年7月号

ラナ・ミッター ハーバード大学ケネディスクール 米アジア関係チェア

習近平体制は、欧米と対立する一方で、ロシアを助け、国内では監視体制を強化し、少数民族を抑圧してきた。だが、現状から直線的にとらえて中国の将来を考えるのは、今も昔も間違っている。20年後に中国を担うのは、今よりも開放的な時代を青春期に経験している、現在40代の若いエリートたちだ。民主的でも、リベラルでもないかもしれないが、未来の中国はそれでも世界に「権威主義的繁栄」という政治・経済モデルを提供できる国に進化しているかもしれない。地政学的・経済的大国を目指し、その過程で、「中国の本質」を見失わないという、清朝期の二つの願いを実現することに北京は成功するのかもしれない。もちろん、それには条件がある。

中東での壮大なパワーゲーム
―― 核合意とイスラエル覇権の間

2025年7月号

バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院教授

イスラエルの軍事的成功、イラン系「抵抗の枢軸」の衰退とシリアにおけるアサド体制の崩壊が中東秩序を大きく揺るがした。ガザの占領拡大に加え、イスラエルはレバノン南部に自らの意思を押し付け、シリアの多くの地域に軍事侵攻した。そしていまや、イランを軍事攻撃することで、レバントでの勝利を湾岸にまで拡大したいと考えている。イスラエルが地域覇権を確立しつつあるかにみえたために、イスラエルとイラン間の新しいバランスを形作ろうと、湾岸諸国は、トランプが求める新たなイラン核合意を推進する主要なプレーヤーになった。そこでは、壮大な駆け引きが展開されていた。トランプは湾岸諸国の立場を優先し、イスラエルの意向を無視した。

イラン・イスラエル紛争のエスカレーションリスク
―― ドキュメント(6/13/2025)

2025年7月号

ダニエル・シャピロ 前国防副次官補(中東担当)

6月12日夜、イスラエルはイランに対する一連の大規模な攻撃を実施した。標的にはイランの核施設、ミサイル発射サイト、複数の軍・政治高官が含まれていた。イスラエルのネタニヤフ首相はテレビ演説で成功を宣言した。一方、イラン政府高官は復讐を誓い、地域の指導者たちは混乱に備えた。イスラエルの攻撃が意味するものをより深く理解するために、フォーリン・アフェアーズのシニア・エディター、ダニエル・ブロックがダニエル・B・シャピロに話を聞いた。シャピロは2025年1月まで中東担当の国防副次官補を務め、イスラエルとイランの緊張が全面戦争に発展した場合のシナリオを検討し、それに対応するアメリカの選択肢を準備するタスクを課されていた。

米同盟諸国は自立と連帯を
―― トランプに屈してはならない

2025年7月号

マルコム・ターンブル 元オーストラリア首相

「原則を重視する寛大なアメリカ」を今も信じている人々にとって、いまは認知的不協和を引き起こすトラウマ的な状況にある。トランプ政権が作り出す現実は、はっきりしている。内外で法を顧みない行動をとり、各国へのいじめを繰り返し、協定や条約を破棄し、同盟国を威嚇し、独裁者に寄り添っている。米有権者は、この行動を最終的に(選挙で)判断することになる。だが、アメリカの同盟国はすでに心を決めているはずだ。トランプの威圧に屈する必要はない。同盟国が協力すれば、大きな影響力を行使できるし、ワシントンが作り出す大混乱に対抗できる。エマニュエル・マクロンが言うように、米同盟諸国は「いじめられない国」の連合を構築すべきだろう。

「アメリカの世紀」の終わり
―― ドナルド・トランプとアメリカパワーの終焉

2025年7月号

ロバート・O・コヘイン プリンストン大学名誉教授
ジョセフ・S・ナイ・ジュニア ハーバード大学名誉教授

この80年間にわたって、アメリカは、強制ではなく、他を魅了することでパワーを蓄積してきた。アメリカパワーを強化する相互依存パターンを破壊するのではなく、維持するのが賢明な政策だ。トランプが、米同盟諸国の信頼を低下させ、帝国的野望を主張し、米国際開発庁を破壊し、国内で法の支配に挑戦し、国連機関から脱退する一方で、それでも中国に対抗できると考えているのなら、彼は失意にまみれることになるだろう。アメリカをさらにパワフルにしようとする彼の不安定で見当違いの試みによって、アメリカの支配的優位の時代、かつてヘンリー・ルースが「アメリカの世紀」と命名した時代は無様に終わるのかもしれない。

台湾侵攻を阻む抑止力の強化を
―― 軍事・外交・経済の適切なバランスを

2025年7月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学国際問題研究所 センターフェロー
ブランドン・ヨーダー オーストラリア国立大学 上級講師

中国の台湾侵攻を阻む抑止力を最大化するには、米台の防衛力を強化し、北京を安心させ、経済デカップリングなどの経済圧力策の行使を控えて軍事・外交・経済の適切なバランスをとる必要がある。問題は、これら三つをどのようなバランスで組み合わせるのが最適なのかに関するコンセンサスがほとんどないことだ。こうして、軍事力の強化は道半ばとなり、台湾に関する「戦略的曖昧さ」路線の揺らぎが北京の不安を高めている。その行使を控えることで、危機の際に抑止力を強化できるはずの経済圧力が、すでに高度に利用されている。軍事的即応態勢と軍事能力の強化に投資し、慎重な発言を心がけ、経済的なレジリエンスと一定の相互依存関係の維持に努めることが、台湾の安全強化につながる。

新しい問題と古いアプローチ
―― 政府の制度と役割をいかに見直すか

2025年7月号

セシリア・ラウズ ブルッキングス研究所 所長

危険と不透明性が高まっている時期に、市場で解決できない部分に介入し、人々を守り、変化を乗り切るのを助ける。これが、政府の役割だ。アメリカでは、所得格差、気候変動、AIによる社会再編など、先行き不透明感は高まっている。政府は、多くの人が「真の問題」と考えるものだけでなく、不確実な問題にも対処しようとしている。この過程で、指導者たちは、政府の機能を見直す必要に迫られる。これまでの進歩を維持し、先に進むのを妨げない柔軟な政府制度が必要になる。政府が時代遅れの手法をとり続ければ、現在の問題には対処できない。規制と規制緩和のバランスを見直すことも、経済活動や経済価値の実態を十分反映できる指標を考案する必要もある。

Page Top