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テーマに関する論文

カマラ・ハリスとドナルド・トランプ
―― 中国にとってどちらが好ましいか

2024年9月号

王緝思 北京大学国際戦略研究院 院長
胡然 北京大学国際戦略研究院 研究員
趙建偉 北京大学国際戦略研究院 研究員

中国の戦略家たちは、アメリカの対中政策が今後10年間で変わるという幻想は抱いていない。世論調査結果や中国に関する超党派のコンセンサスがワシントンに存在することから考えても、2024年11月に誰が米大統領に選出されようとも、その対中政策は戦略的競争と封じ込めに重点が置かれ、協力と交流は後回しにされるはずだ。トランプ、ハリス、どちらが大統領になっても、中国にとって厄介で不利益をもたらす相手になる。一方で、大規模な軍事衝突や経済的・社会的な交流の全面的断絶を求めてくることもないだろう。ただ、ワシントンにおける現在の思想のどの部分が最終的に支配的になるのかを、われわれは理解しようとしている。

新興大国と覇権国
―― 衝突は不可避なのか

2024年9月号

マンジャリ・チャタジー・ミラー 米外交問題評議会シニアフェロー

覇権国と新興大国は、衝突する運命にあるのか。現実には、台頭する新興国は、既存の規範の多くを守り、一部の側面を拒絶するときも他の新興大国と協力して慎重に行動する。そうすることで、現秩序のなかで自らの台頭を強化すると同時に、新しい秩序を構築する力をつけるまで、覇権国を弱体化させようとする。だが、覇権国が国際秩序をどのように管理するかで、対立が紛争に発展するかどうかが左右される可能性もある。覇権国にとって、新興大国の脅威に対処する最善の方法は、新興大国と対立したり、打ち負かそうとしたりすることではなく、国際秩序を利用して封じ込めることかもしれない。

東アジアと中国の核戦力
―― 核共有と軍備管理の間

2024年9月号

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。

イスラエルとヒズボラ
―― かつてない衝突へ

2024年9月号

アモス・アレル ハーレツ紙 国防アナリスト

いまやイスラエルは、北の国境地帯におけるヒズボラとのさらに大規模な戦争の瀬戸際にあるようだ。イスラエルとヒズボラの立場は、リタニ川以南への影響力をめぐって真っ向から対立している。仮にバイデン政権が、国境周辺からのヒズボラの撤退を含むイスラエルとヒズボラ間の合意をまとめても、イスラエルの指導者たちは、ヒズボラとの決着を望む国内の声を無視するわけにはいかないだろう。イスラエル、レバノンは、民間人と国のインフラにかつてないダメージが及ぶような、全面戦争に直面する危険がある。

政治暴力と民主主義の危機
―― アメリカの分裂と政治危機(7/14)

2024年8月号

ロバート・リーバーマン ジョンズ・ホプキンス大学 教授(政治学)

「トランプの暗殺未遂事件が、アメリカがひどく分裂しているタイミングで起きただけに、(今後が)非常に心配だ。分裂が極端になると、もはや選挙での対立候補間のゲームではなく、死闘のようなものになる。人々は、支持しない候補が勝利すれば、自分の価値が道徳的に脅かされるだけでなく、自分たちが理解する国の存続が脅かされると考えるようになるからだ。政治的分裂から深刻な社会暴力への道がそれほど遠いわけではない」

聞き手 ダニエル・ブルック 
フォーリン・アフェアーズ シニアエディター

フランスは未知の海域へ
―― 政治的混乱の行方

2024年8月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会 シニアフェロー

フランスの極右勢力が勢いを失ったわけではない。非常に高い期待と世論調査の議席予測には届かなかったが、右派の台頭トレンドは続いている。ルペンは「われわれの勝利は先送りされただけだ」と強気の態度を崩してない。より大きな問題は、フランスが政治的に未知の海域に入ろうとしていることだ。現状では、安定した多数派が形成されていないし、左派勢力はマクロン率いる勢力との連立を否定している。そして、マクロンも左派勢力も、極右勢力との連立シナリオを排除している。しかも、フランス政府は、財政規律違反の是正を求める「過剰赤字手続き」を開始したEUと衝突する恐れがある。

対中戦略を強化するには
―― アジアシフト戦略を越えて

2024年8月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学 国際研究所 センターフェロー

中国に対抗するには、アジアに軸足を移す以上のことが必要になる。インドネシア、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムなどの中国の近隣諸国にアプローチして、経済援助と安全保障を提供する見返りに、基地や海上ルートにアクセスし、領空を飛行する権利を確保しなければならない。南シナ海では、中国に脅かされている同盟国の漁船や探査船を米海軍が護衛し、同様の支援を、ベトナムなどの東南アジアの非同盟国にも拡大するべきだろう。この海域での領有権問題をめぐる中立的立場を見直して、東南アジア諸国間のコンセンサス構築も試みるべきだ。より適切な兵器を備蓄するとともに、中国の近隣諸国への軍事的アクセスを拡大・強化するなど、さらに力を結集する必要がある。

トランプにどう向き合うか
―― 同盟国指導者が果たすべき役割

2024年8月号

マルコム・ターンブル 元オーストラリア首相

他国の指導者たち、特に緊密な同盟諸国の指導者たちは、(ホワイトハウスに舞い戻るかもしれない)トランプに、単刀直入に、率直に語りかける機会があるし、そうする責任がある。オーストラリア首相としての私の経験を言えば、他国の指導者の力強く、率直な態度を彼は好まないかもしれない。だが、怒りが収まれば、そうした態度に敬意を払うようになる。多くのいじめっ子と同じく、相手を自分の意のままにできるときは屈服させ、できないときは取引をしようとする。しかし、取引に持ち込むには、まずいじめに立ち向かわなければならない。アメリカの同盟国の指導者たちは、トランプに真実を語りかけることのできる数少ない立場にあることを忘れてはいけない。

東アジアのイノベーションモデルに学べ
―― 大企業とスタートアップの関係

2024年7月号

ラモン・パチェコ・パルド キングス・カレッジ・ロンドン 教授(国際関係論)
ロビン・クリングラー=ビドラ キングス・ビジネススクール 准教授(アントレプレナーシップ)

日韓両国は、スタートアップと大企業が協力する経済モデルを構築し、いまやハイテク分野のトップ企業を数多く抱えるようになった。ソウルと東京が模索するイノベーションモデルでは、政府や大企業が協力することで、スタートアップのポテンシャルを開花させ、広く恩恵を共有できると考えられている。一方、シリコンバレー神話の中核にあるのは、新進の起業家たちが大企業に取って代わる新しい企業を立ち上げ、既存産業を破壊するという考えだ。だが現在のシリコンバレーは、ハリウッド映画が描くような型破りな起業家たちの楽園ではない。ワシントンは、スタートアップと大企業の提携を恐れるべきではなく、東アジアに学んで、大手企業を政府やスタートアップのパートナーとして歓迎すべきだ。

右派の台頭とヨーロッパの未来
―― 仏独の政治的混乱と欧州連合

2024年7月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会 シニアフェロー(ヨーロッパ担当)

最近の欧州議会選挙ではリベラル派政党への支持が落ち込み、はっきりとした右傾化がみられたが、それでも、欧州連合の政策に右派が直接的な影響を与える政治連合を形成できるほどの勝利ではなかった。議会では依然として親ヨーロッパの中道勢力が多数派を占めている。むしろ、最大の衝撃はメンバー国の国内政治レベルに認められる。特に独仏で極右政党、中道右派政党が台頭したために、マクロンもショルツも国内政治に足をとられ、ヨーロッパでこれまでのようなリーダーシップを発揮できなくなるかもしれない。ヨーロッパは、今後の統合の方向性について不確実で不安定な時代を迎えるのかもしれない。

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