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テーマに関する論文

ベネズエラの体制変革について
―― 西半球シフトと勢力圏構想への意味合い

2026年1月号

マイケル・フロマン 米外交問題評議会 会長

トランプ大統領がベネズエラに再び焦点を合わせたことは、「パナマからカナダ、グリーンランドに至るまでの勢力圏」という大統領の世界観、そして基本的に米本土と国境の防衛に焦点を当てるという立場と重なり合う。だが、西半球を優先する方針は、戦後アメリカの支配的優位を支えてきたヨーロッパやインド太平洋諸国との同盟関係を、潜在的に従属させ、狭めてしまうのだろうか。アメリカは太平洋の勢力としてとどまるのか、それとも、習近平国家主席との「大きな取引」を模索して、西半球に専念するのか。

同盟国の核武装で戦後秩序の再建を
―― 独日加の核武装シナリオ

2026年1月号

モーリッツ・S・グレーフラート ユーラシア・グループ 国際問題研究所 フェロー
マーク・A・レイモンド オクラホマ大学 准教授(国際関係論)

ワシントンは核不拡散政策の厳格な順守を見直し、カナダ、ドイツ、日本という少数の同盟国による核武装をむしろ奨励すべきだろう。この3カ国は、合理的な政策決定と国内の安定という面で実績があるし、アメリカとその同盟国に大きな恩恵をもたらしてきた戦後秩序の再建に貢献できる。ワシントンにとって、このような「選択的な核拡散」は、パートナーが地域防衛でより大きな役割を担い、アメリカへの軍事依存を減らすことも可能にする。これらの同盟諸国にとって、核武装は中ロなどの地域的敵対勢力の脅威だけでなく、同盟関係への関与を弱めるアメリカの戦略見直しに対する信頼できる防護策となる。

米同盟諸国のジレンマ
―― リスクヘッジを模索せざるを得ない

2026年1月号

ロバート・E・ケリー 釜山国立大学 教授(政治学)
ポール・ポアスト シカゴ大学 准教授(政治学)

同盟諸国はトランプのやり方に耐え、持ちこたえているようにみえる。しかし、これまで以上に状況を深く憂慮している。アメリカによる安全の保証を確信できなければ、どうなるだろうか。同盟諸国の市民は、アメリカの安全保障という「毛布」に長年包み込まれてきたが、より大きな防衛自立を模索すれば、増税、社会サービス支出の削減、そしておそらく徴兵制や核武装化も必要になる。それでも、米同盟諸国はアメリカから離れていくだろう。ワシントンの支援を期待しつつも、同盟諸国は、問題発生時にアメリカがいない事態に備え、リスクヘッジを始めている。

外国人材をいかに受け入れるか
―― 日本モデルのチャンスと課題

2026年1月号

ファーラー・グラシア 早稲田大学大学院 アジア太平洋研究科教授
宮井健志 国立社会保障・人口問題研究所 人口動向研究部第4室長
是川夕 国立社会保障・人口問題研究所 国際関係部部長

日本の外国人材受け入れ制度は、その人がいかに日本での働き方をきちんと学び、適応するかを重視している。このやり方は、多くの先進国が長年とってきた技能レベルに基づく受け入れ策への挑戦でもあるし、文化的同質性を重視する日本の考えとも一致する。技能面でも文化面でも外国人材を「チーム・ジャパン」の一員にしようとする考えだ。最大の脅威は、政治的なものかもしれない。現実的な外国人材受け入れモデルを、ポピュリスト政治による混乱や外国人労働者の権利保護などをめぐる制度的脆弱性から守れなければ、日本は今後必要になる労働力を確保する絶好のチャンスを逃す恐れがある。

関税が揺るがした同盟関係
―― サプライチェーンの混乱と米防衛産業の衰退

2026年1月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 上席副会長(研究担当)

必要とされているのは、国内価格を押し上げ、外国のパートナーを遠ざける包括関税ではない。ワシントンが、同盟国に配慮し、戦略的産業に焦点を当てた限定的な関税へと移行すれば、重要なサプライチェーンを守り、国家安全保障にとって重要な製造業を促進できるようになる。だが、信頼できる国々への関税を縮小あるいは撤廃し、主要産業を再生させる包括戦略に立ち返らない限り、アメリカの防衛産業は衰退していくだろう。実際、自国の防衛産業の強化を望み、もはや、対米貿易を信用できなくなった同盟諸国は、アメリカ製の兵器購入を躊躇し始めている。

中国経済モデルの致命的欠陥
―― 過剰生産を促す重層的構造

2026年1月号

リジー・C・リー アジア・ソサエティ政策研究所 フェロー

中国経済にとっての本当の問題は、国内需要の弱さや過剰な補助金ではない。それは、異常かつ制御不能に思える過剰生産能力に他ならない。2024年半ば以降、北京も、太陽光発電、バッテリー、EVの「やみくもな拡大」路線について繰り返し警告するようになった。中国の過剰生産は、税制、共産党幹部の登用システム、ビジネスモデルの模倣、銀行の融資など、さまざま要因によって複合的に促されている。企業、金融機関、地方政府関係者がシステム内で合理的に行動し、その結果として過剰生産能力が生じているとすれば、方向転換するにはシステムを変えるしかない。

習近平の中国の強さ
―― 反改革開放路線の目的とは

2026年1月号

ジョナサン・A・ジン ブルッキングス研究所 外交政策研究 チェアー

習近平は、中国のもっとも明白な弱点は、40年にわたる改革開放路線の副作用にあるとみている。急速な成長は中国に豊かさとパワーをもたらしたが、一方で優柔不断、政治腐敗、外国への依存という問題も作りだした。後にどのように評価されるかはともかく、習は、こうした中国の弱点の多くを明らかにし、反改革開放路線をとることで、レジリエンスを高めようとしている。政治・社会の管理というレーニン主義の中核まで党の贅肉を削ぎ落とし、革命のためでも改革のためでもなく、技術工業力と軍事力をつけて、中国の地政学的な地位を着実に高めるための規律ある前進を実現することが彼の目的だ。

飢餓と先進国の政治
―― 食糧危機が先進国を政治的に脅かす

2026年1月号

アリフ・フセイン 国連世界食糧計画(WFP) チーフエコノミスト

豊かな時代にあっても、紛争、気候変動、経済危機によって、食糧にアクセスできない人々が急増している。ガザやスーダンだけではない。世界で食糧危機に苦しむ人口は数億規模に達する。一方、主要ドナー国は支援を大幅に削減し、国連世界食糧計画などによる配給も減少している。飢餓で避難を余儀なくされた家族を難民として国内に受け入れるよりも、彼らが暮らす場所で支援を提供する方が、はるかに合理的だ。大規模な難民流入が現実になれば、国内が不安定化し、政治的分断と過激主義も助長される。支援から遠ざかるドナー諸国は「特定地域での食糧危機は、別の地域の不安定化を引き起こす」という動かしがたい事実を無視している。

トランプと欧州右派の連携
―― アメリカはヨーロッパを失う?

2026年1月号

アイバン・クラステフ 自由主義戦略センター 会長

トランプ政権がヨーロッパの極右勢力を評価して連携したことは、危険な賭けだ。政治的分極化を煽ることは、トランプに同調するヨーロッパではなく、分断されたヨーロッパを生み出す危険がある。さらに、(右派の)政党や指導者だけを支援することで、ヨーロッパの重要地域で伝統的にワシントンを支持してきた親米派を失いつつあるかもしれない。結局のところ、トランプの欧州右派に対するアプローチがヨーロッパに与える影響は、多くの点で1980年代にミハイル・ゴルバチョフが東欧諸国に与えた影響に似たものになるだろう。ゴルビー・マニアは東欧の共産主義体制を劇的に変容させ、その過程でモスクワは勢力圏を失うことになった。

兵器化されたエネルギー資源
―― 復活した戦略ツールの脅威

2026年1月号

ジェイソン・ボルドフ コロンビア大学国際公共政策大学院 コロンビア・クライメートスクール学院長
ミーガン・L・オサリバン ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際関係)

ワシントンは、ロシアやイランの石油を購入する国々に厳しい制裁措置を検討し、北京は、半導体、軍事アプリ、電池、再生可能エネルギーに不可欠な重要鉱物やレアアースの輸出を定期的に制限している。いまや、世界市場そのものが分断され、エネルギーが新たに兵器化されている。各国は、エネルギーの兵器化が間違いなく引き起こす変動から市民と企業を守る方法を見いだす必要がある。リスクを減らすには、生産量を増やすだけでなく、消費量を減らし、クリーンエネルギー投資を増やさなければならない。実際、気候変動の脅威そのものよりも、エネルギー安全保障強化の必要性が、クリーンエネルギーの導入と化石燃料の使用削減の強力なインセンティブを作り出すことになるかもしれない。

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