2026.6.2 Tue
強大化する中国と米同盟諸国
―― トランプリスクと中国リスク
将来の歴史家は、2026年5月の米中首脳会談を「パワーバランスが中国に有利な方向へ変化し、中国がインド太平洋地域における勢力圏の確立を本格的に始めた瞬間」として記憶することになるかもしれない。・・・(リスナー、フーパー)
ヨーロッパにとって、アメリカとの対立は、中国との間で抱える課題以上に大きな危険をはらんでいる。中国との対立が主に貿易などの物質的利害にかかわるものであるのに対して、アメリカとの対立は欧州統合やリベラルな価値といった「アイデンティティ」そのものにかかわってくるからだ。(達)
「略奪的な覇権国」のように行動するアメリカの圧力にさらされている各国の政治家たちは、リスク分散を図る以外に手はないと感じている。たしかに、中国の習近平国家主席と会談すれば、自分には他の選択肢があるというシグナルをトランプに送れる。だが北京に赴いても、中国への恭順が、経済協力の条件とされる。(コブリグ)
拡大する中国のアジア勢力圏
―― 変化する米中のバランスと台湾
2026年7月号 レベッカ・リスナー 米外交問題評議会 シニアフェロー ミラ・ラップ・フーパー ブルッキングス研究所 客員シニアフェロー
将来の歴史家は、2026年5月の米中首脳会談を「パワーバランスが中国に有利な方向へ変化し、中国がインド太平洋地域における勢力圏の確立を本格的に始めた瞬間」として記憶することになるかもしれない。認識すべきは、21世紀において、勢力圏は19世紀や20世紀のように軍事的・地理的な支配形態としてだけでなく、重要な技術やインフラの領域で自然に形作られることだ。トランプが習近平への譲歩を検討しているいま、その可能性はさらに高まっている。アジアでの中国の勢力圏は、米中間に安定をもたらすパワーバランスを生み出すどころか、壊滅的な危機や紛争の可能性を高めることになるかもしれない。今後の鍵を握るのは、やはり台湾だ。
米欧中トライアングル
―― 米欧対立とヨーロッパの選択
2026年6月号 達巍 清華大学 国際安全保障・戦略センター所長
ヨーロッパにとって、アメリカとの対立は、中国との間で抱える課題以上に大きな危険をはらんでいる。中国との対立が主に貿易などの物質的利害にかかわるものであるのに対して、アメリカとの対立は欧州統合やリベラルな価値といった「アイデンティティ」そのものにかかわってくるからだ。実際、欧州右派を擁護するトランプ政権の攻撃的ナショナリズムは、ヨーロッパの統合プロジェクトそのものを脅かしている。アメリカに対抗するために、ヨーロッパが「中国カード」を切る可能性、あるいは、中国が「ヨーロッパカード」を切る可能性はどれくらいあるのか。それとも、世界は文明の衝突へ向かっていくのか。
米中関係と同盟諸国
―― トランプリスクと中国リスク
2026年6月号 マイケル・コブリグ 元カナダ外交官
「略奪的な覇権国」のように行動するアメリカの圧力にさらされている各国の政治家たちは、リスク分散を図る以外に手はないと感じている。たしかに、中国の習近平国家主席と会談すれば、自分には他の選択肢があるというシグナルをトランプに送れる。だが北京に赴いても、中国への恭順が、経済協力の条件とされる。中国とより深く関われば、北京への従属というリスクを抱え込む。トランプが罠にはまり、アジア地域でのアメリカによる安全の保証や技術管理といった永続的な戦略利益を犠牲にして戦術的合意を優先すれば、習近平は、アメリカも北京に歩み寄る用意があると確信することになる。


