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テーマに関する論文

ロシアとの交渉を実現するには
―― 経済制裁の強化を

2025年1月号

セオドア・ブンツェル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター
エリナ・リバコバ ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー(非常勤)

「流れは自分の側にあり、妥協する環境にはない」とモスクワは考えている。つまり、さらに経済圧力をかけなければ、ロシアが2025年にウクライナ戦争の停戦交渉に応じることはないだろう。現状で停戦を急いでも、それは、モスクワがさらに触手を伸ばすための、小休止になるにすぎない。一方、ロシア経済の生命線であるエネルギーからの収益を低下させ、欧米製のデュアルユース製品の輸入を大幅に抑え込めば、ロシアが戦争を継続するのは難しくなり、交渉に応じるインセンティブを高められる。原油価格とインフレ率が低下しているいま、欧米は2022年当時よりもロシアのエネルギー・フローを混乱させる、より積極的な施策をとれるはずだ。

ロシアの基地は温存されるか
―― シリアの体制崩壊とロシア

2025年1月号

トーマス・グラハム 米外交問題評議会 特別フェロー

アサド後のシリアにおける、ロシアの当面の関心は、タルトスの海軍基地、そしてフミイエム空軍基地を守ることだろう。これらの基地は、中東におけるロシアの影響力を行使する上で重要なだけでなく、東地中海への足場だし、リビアやサヘルでの軍事プレゼンスを含む、北アフリカでのロシアの作戦を支援する後方支援の拠点でもある。プーチンがシリアにおけるロシアの軍事基地を簡単に放棄することも、大きな戦略的後退を穏やかに受け入れることもあり得ない。そのような事態は、大国としてのロシアの評判を落とすだけでなく、プーチンの国内での政治的地位も失墜させることになる。

ヨーロッパの安全保障
―― 自立的欧州安全保障へ

2025年1月号

ノルベルト・レットゲン ドイツ連邦議会議員

交渉に入れば、トランプが停戦を成立させることを求める国内圧力に直面することをプーチンは理解している。当然、そのような交渉から生まれる合意が、ウクライナやヨーロッパが安心できるものになるとは考えにくい。ワシントンがモスクワの戦争目的を受け入れれば、NATOの信頼性は大きく損なわれ、ヨーロッパの安全保障構造の基盤は揺るがされる。そうならないように、欧州の主要な軍事大国であるフランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、イギリスはヨーロッパ合同戦略の策定を主導する必要があるし、欧米間の適切な責任分担を見直し、防衛力を強化しなければならない。実際、強力な防衛力に邪魔されない限り、プーチンが侵略をウクライナだけで断念することはないだろう。

アサド後のシリア
―― 待ち受ける危険

2025年1月号

スティーブン・A・クック 米外交問題評議会シニアフェロー(中東担当)

シリアの権力者となって四半世紀近くが過ぎた段階で、バッシャール・アサドは権力ポストを追われ、アサド王朝は終わりを迎えた。アサド体制はわずか2週間で、説明のつかぬ形で一掃された。もちろん、ダマスカスにどのような後継政権が誕生するかには、数多くの疑問がある。イスラム主義政治勢力がシリアでパワーを蓄積していることをかねて警戒してきたアラブ首長国連邦、サウジアラビア、ヨルダン、エジプトが、ハヤト・タハリール・シャム(HTS)がダマスカスで統治体制を組織化するのを傍観するとは考えにくい。今後、HTSに対する反対運動が発生するかもしれない。シリアが暴力的な未来に向かう運命にあるわけではないが、新体制に対する反乱リスクを考えないのは軽率だろう。

日本とトランプ
―― 試されるリーダーシップ

2025年1月号

マシュー・P・グッドマン 米外交問題評議会地政学研究センター ディレクター

「北朝鮮そして中国の東シナ海、南シナ海での活動に毅然とした態度をとるつもりがあるのか」。日本の指導者たちは、トランプの安全保障政策をもっとも心配していた。関税引き上げ策への懸念ももっている。日本製品に対する関税引き上げだけでなく、中国や(カナダや)メキシコで組み立てられた日本製品が打撃を受けることも警戒している。一方、中国経済のデカップリングなどに対する日本政府の意欲は限定的になるかもしれない。日本は経済大国であり、インド太平洋地域におけるもっとも重要なアメリカの同盟国だ。東京がこの先の荒波をどのように乗り切るかは、日本のリーダーシップはもとより、トランプ政権のリーダーシップの試金石にもなるだろう。

新シリア紛争の行方
―― 関係諸国はどう動く

2025年1月号

スティーブン・A・クック 米外交問題評議会 シニアフェロー(中東・アフリカ研究担当)

アサド政権に対抗する武装勢力が、イスラエルがヒズボラに大きなダメージを与えた現状を大きな機会とみなしているのは明らかだろう。いまやシリア政府を支援するイランやヒズボラそしてロシアの力は限られている。一方、トルコは「アサド後のシリア」への影響力を確保することを再び重視するかもしれない。イスラエルも、シリアにおける「アサド問題はイランの問題でもある」ために、状況を前向きにみているかもしれない。そして大統領就任後のトランプが、シリアに展開する米軍部隊の撤退を選ぶ可能性もある。

トランプはいかに世界を変化させるか
―― 高官人事と外交政策

2024年12月号

ピーター・D・フィーバー デューク大学 教授

トランプと側近チームは、高官任命では何よりも大統領への忠誠を重視することを明らかにしている。トランプへの忠誠を調べるもっとも簡単なテストは、「2020年大統領選の結果は盗まれたのか、あるいは、2021年1月6日の連邦議事堂襲撃事件は反乱行為だったのか」を問うことかもしれない。次期副大統領となったJ・D・バンスが言うように、これらの問いに対してトランプが認める答えは一つしかない。このリトマス試験紙があれば、トランプは「チームの一員」だと考える人物だけを登用して、軍や情報機関の上層部を政治化できる。問題は、トランプのキャンペーンレトリックが、アメリカが直面する脅威を何ら理解していない、非現実的な大言壮語と薄っぺらな万能薬の類いで構成されていることだ。

ドナルド・トランプとアメリカの未来
―― スティーブン・コトキンとの対話

2024年12月号

スティーブン・コトキン スタンフォード大学 フーバー研究所 フェロー

「トランプは別の惑星から降り立ったエイリアンではない。アメリカ文化に深く根差す、不変の何かを反映する人物として、米市民が投票した人物だ。プロレス、リアリティ番組、カジノやギャンブル、セレブ文化、ソーシャルメディア。これらのすべてはアメリカのシンボルだし、詐欺や大嘘も同様だ。だが、同盟諸国を含む、多くの外国人は(国内の一部の人々同様に)、トランプを、自分たちが知り、再び見たいと願っているアメリカではないとみている」。・・・外交領域では、トランプも、オバマやバイデンと同じジレンマに直面する。それは、アメリカの対外コミットメントと能力のギャップいかに埋めていくかに他ならない。

(インタビューは、11月6日にドナルド・トランプが米大統領選で決定的な勝利を収めたタイミングで実施された。聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌エグゼクティブ・エディター、ジャスティン・ヴォクト。邦訳分は、英文からの抜粋・要約。)

中国を枢軸から切り離すには
―― 食い違う、中国と他の枢軸メンバーの利益

2024年12月号

スティーブン・ハドリー 元米大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

中国と他の枢軸メンバーの利益は必ずしも一致していない。ワシントンは、それぞれの地域でロシア、イラン、北朝鮮に効果的に対抗することで、「敗者の枢軸」に中国を縛り付けることが、世界的影響力を得るための道ではないことを北京に示す必要がある。ロシアに兵器を提供すれば、中国に制裁が広く適用され、かなりの経済的コストに直面する。イランとその代理人たちの活動は、重要な石油資源を含む中国と中東の貿易を混乱させる。枢軸パートナーの冒険主義を厳格に抑え込めば、ワシントンは習近平に軌道修正を促せるし、そうすることは彼の利益にもなる。

ウクライナ支援を続けるべき理由
―― 何が問われているのか

2024年12月号

ロイド・J・オースティン 米国防長官

プーチンの攻撃を(われわれは)警告として受け止めなければならない。これは、暴君と悪漢が主導する世界、つまり、勢力圏に切り分けられた混沌とした暴力的な世界、いじめっ子が小さな隣人を踏みつける世界、そして侵略者が自由な人々に恐怖の生活を強いる世界の予告なのだ。つまり、私たちは歴史の分岐点にある。プーチンの侵略に今後も断固として立ち向かうのか、それともプーチンの思いのままにさせ、私たちの子や孫たちに、はるかに血なまぐさい危険な世界を生きることを宣告するのか。ウクライナが踏みにじられれば、ヨーロッパ全土がプーチンの影に脅かされることになる。

※このテキストは、キーウのウクライナ外交アカデミーで行われたスピーチからの抜粋。邦訳分はFAJによる翻訳・要約で、米政府の公式テキストではない。

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