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論文データベース(最新論文順)

政治暴力と民主主義の危機
――トランプ銃撃事件とアメリカの分裂

2024年8月号

ロバート・リーバーマン ジョンズ・ホプキンス大学教授(政治学)
(聞き手 ダニエル・ブルック フォーリン・アフェアーズ シニアエディター)

「トランプの暗殺未遂事件が、ひどくアメリカが分裂しているタイミングで起きただけに、(今後が)非常に心配だ。分裂が非常に極端なものになると、もはや選挙での対立候補間のゲームではなく、死闘のようなものになるだろう。人々は、支持しない候補が勝利すれば、自分の価値が道徳的に脅かされるだけでなく、自分たちが理解する国の存続が脅かされると考えるようになる。政治的分裂から深刻な社会暴力への道がそれほど遠いわけではない」

フランスは未知の海域へ
―― 政治的混乱の行方

2024年8月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会シニアフェロー

フランスの極右勢力が勢いを失ったわけではない。非常に高い期待と世論調査の議席予測には届かなかったが、右派の台頭トレンドは続いている。ルペンは「われわれの勝利は先送りされただけだ」と強気の態度を崩してない。より大きな問題は、フランスが政治的に未知の海域に入ろうとしていることだ。現状では、安定した多数派が形成されていないし、左派勢力はマクロン率いる勢力との連立を否定している。そして、マクロンも左派勢力も、極右勢力との連立シナリオを排除している。しかも、フランス政府は、財政規律違反の是正を求める「過剰赤字手続き」を開始したEUと衝突する恐れがある。・・・

トランプにどう向き合うか
―― 同盟国指導者が果たすべき役割

2024年8月号

マルコム・ターンブル 元オーストラリア首相

他国の指導者たち、特に緊密な同盟諸国の指導者たちは、(ホワイトハウスに舞い戻るかもしれない)トランプに、単刀直入に、率直に語りかける機会があるし、そうする責任がある。オーストラリア首相としての私の経験を言えば、他国の指導者の力強く、率直な態度を彼は好まないかもしれない。だが、怒りが収まれば、そうした態度に敬意を払うようになる。多くのいじめっ子と同じく、彼は、相手を自分の意のままにできるときは屈服させ、できないときは取引をしようとする。しかし、取引に持ち込むには、まずいじめに立ち向かわなければならない。世界の指導者たちは、トランプにどう取り入れば怒りを避けられるか、再び頭を悩ませて始めている。だが、アメリカの友好国や同盟国の指導者たちは、トランプに真実を語りかけることのできる数少ない立場にあることを忘れてはいけない。

東アジアのイノベーションモデルに学べ
―― 大企業とスタートアップの関係

2024年7月号

ラモン・パチェコ・パルド キングス・カレッジ・ロンドン 教授(国際関係論)
ロビン・クリングラー=ビドラ キングス・ビジネススクール 准教授(アントレプレナーシップ)

日韓両国は、スタートアップと大企業が協力する経済モデルを構築し、いまやハイテク分野のトップ企業を数多く抱えるようになった。ソウルと東京が模索するイノベーションモデルでは、政府や大企業が協力することで、スタートアップのポテンシャルを開花させ、広く恩恵を共有できると考えられている。一方、シリコンバレー神話の中核にあるのは、新進の起業家たちが大企業に取って代わる新しい企業を立ち上げ、既存産業を破壊するという考えだ。だが現在のシリコンバレーは、ハリウッド映画が描くような型破りな起業家たちの楽園ではない。ワシントンは、スタートアップと大企業の提携を恐れるべきではなく、東アジアに学んで、大手企業を政府やスタートアップのパートナーとして歓迎すべきだ。

右派の台頭とヨーロッパの未来
―― 仏独の政治的混乱と欧州連合

2024年7月号

マティアス・マタイス 米外交問題評議会 シニアフェロー(ヨーロッパ担当)

最近の欧州議会選挙ではリベラル派政党への支持が落ち込み、はっきりとした右傾化がみられたが、それでも、欧州連合の政策に右派が直接的な影響を与える政治連合を形成できるほどの勝利ではなかった。議会では依然として親ヨーロッパの中道勢力が多数派を占めている。むしろ、最大の衝撃はメンバー国の国内政治レベルに認められる。特に独仏で極右政党、中道右派政党が台頭したために、マクロンもショルツも国内政治に足をとられ、ヨーロッパでこれまでのようなリーダーシップを発揮できなくなるかもしれない。ヨーロッパは、今後の統合の方向性について不確実で不安定な時代を迎えるのかもしれない。

同盟諸国との連携強化を
―― 相互運用性を強化するには

2024年7月号

トーマス・G・マンケン 戦略予算評価センター 所長

アメリカは現在、ヨーロッパでウクライナ戦争、中東でイスラエルの戦争に関わっており、今後、東アジアで台湾や韓国をめぐって三つ目の戦争に直面する可能性もある。たとえ世界最強の国であっても、主要な戦争を単独で戦うことはできない。ワシントンは、より多くの軍事物資、兵器を生産して、基地を確保し、それらを同盟諸国と共有していく必要がある。パートナーとともに戦うためのより良い軍事戦略を策定する必要もある。そうしない限り、ますます能力を高め、連携を深める敵に圧倒される危険がある。

米イスラエル関係の未来
―― 特別な関係の終わり?

2024年7月号

ダリア・シャインドリン ハーレツ紙コラムニスト

米イスラエル間の反目の高まりが、ガザ戦争をきっかけに生じたわけではない。両国の社会的・政治的軌道をみると、長く2カ国の関係を支えてきた「価値の共有」はすでに大きく揺るがされていた。この問題が、今回の戦争が引き起こした緊張そして党派政治によって、さらに大きな圧力にさらされている。両国が衝突コースにあるわけではない。だが、この状況は、今後の同盟関係について重要な問題を提起している。戦略的利害を共有することで、両国が同盟国であり続けることは可能でも、今後、これまで互いに信頼してきた「特別な関係」は失われるのかもしれない。

イスラエルの次なる戦線?
―― レバノンをめぐるイラン、ヒズボラとの戦争

2024年6月号

マハ・ヤヒヤ カーネギー中東センター所長

ガザの破壊が中東民衆のイスラエルに対する反発を高めるなか、イスラエルがレバノン攻撃すれば、イランとその非国家的パートナー(武装集団)への民衆の支持はさらに強化されるだろう。それでも、政治的に負いこまれたネタニヤフ首相は、国内での立場を強化しようと、レバノンに紛争を拡大するかもしれない。実際、イスラエルは、ハマスとヒズボラをともに壊滅させることで、安全保障環境を変化させることを望んでいる。これまでのところ、アメリカの外交圧力もあって、ガザ紛争がレバノンとの全面戦争に拡大するのは回避されているが、それでも「イスラエルがレバノンを攻撃するかどうか」ではなく、「いつ攻撃するか」が問われている状況にある。

イギリスと世界
―― 労働党の世界へのアプローチ

2024年6月号

デービッド・ラミー 英労働党・影の内閣外相

英経済は低成長の泥沼にはまりこんでいる。陸軍の兵力規模は、ナポレオンと戦った時代以来の低水準だし、行政サービスの多くも崩壊寸前だ。保守党政権は、その後の明確な計画もないままに、欧州連合(EU)を強引に離脱し、北アイルランドに平和をもたらした「グッドフライデー合意」を危険にさらし、欧州人権条約を軽視する行動みせた。だが、次の選挙で、われわれ労働党が政権を手に入れば、国家再生の時代を「進歩主義的リアリズム」で切り開いていく。進歩主義を現実主義的に実施すれば、世界を変えられるだろう。進歩主義的リアリズムとは、何が達成できるかに関する誤った思い込みを排除した上で、理想を模索することを意味する。

東アジアの少子高齢化と地政学
―― 世界政治はどう変化するか

2024年6月号

ニコラス・エバースタット アメリカン・エンタープライズ研究所 政治経済チェア

東アジアのポテンシャルは、今後、人口減少によって大きく抑え込まれていくだろう。経済成長を実現することも、社会的セーフティーネットを財政的に支え、軍隊を動員することも難しくなり、日本、韓国、台湾は内向きになっていくはずだ。中国も、野心と能力の間の克服しがたいギャップの拡大に直面すると考えられる。一方で、高齢化も進む。中国に悪影響を与える東アジアの人口減少が、ワシントンの地政学的利益になるのは間違いないが、東アジアの民主主義国家にも足かせを作り出し、問題も引き起こす。これらの国家にとって、アメリカとのパートナーシップの必要性が高まる一方で、ワシントンにとって彼らは魅力的なパートナーではなくなっていくだろう。

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