1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

ロシアに関する論文

勢力圏の復活
―― 停戦交渉は第2のヤルタなのか

2025年4月号

モニカ・ダフィー・トフト タフツ大学 教授(国際関係)

パワーポリティクスの復活をけん引する米中ロが、いずれも「わが国を再び偉大な国に」というストーリーを掲げる指導者に率いられているのは偶然ではないだろう。かつての偉大さを取り戻すには、中国にとっては、台湾だけでは十分ではなく、ロシアにとっても、ウクライナだけでは、プーチンのビジョンを満たすことはできない。アメリカもカナダ併合を視野に入れ始めている。現在の諸大国は、1945年のヤルタ会談で連合国首脳が世界地図を書き換えたように、新しい世界秩序を形作ろうとしている。中ロが手を組むのか、米ロが手を組んで中国と対抗する一方で、ヨーロッパ、日本、韓国は自立路線を強めていくのか。

ウクライナ戦争は続く
―― ロシアに対する恐怖

2025年4月号

ナターリヤ・グメニュク ジャーナリスト

ロシアによる占領がウクライナ民衆に与えている複雑で強烈な影響を理解する必要がある。実際、ほとんどのウクライナ人は、「ロシアに支配される」という恐怖と比べれば、戦い続ける方がはるかにましだと考えている。さらに、ロシアが武力によって奪った広大な土地を占領・支配し続けるのを許すのは、あらゆる国際規範に反するだけでなく、世界の安定にとっても危険であることを理解すべきだろう。もちろん、NATOやEUへの加盟の道筋、欧米からの兵器と復興資金など、条件さえ整えば、停戦合意を検討できるかもしれない。だが、ロシアの持続的な脅威を封じない停戦が成立しても、恒久的な平和と安定は幻想のままだろう。

反欧米枢軸と中国の立場
―― 北京はロシア、北朝鮮をどうみているか

2025年4月号

セルゲイ・ラドチェンコ ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際問題研究大学院 特別教授

中国は、ロシア、北朝鮮、イランとある種の「枢軸」を形成しているという考えに激しく抵抗している。平壌の金正恩政権は、北京のいら立ちの大きな原因だし、中ロは協力しているとしても、その関係は同盟ではなく、「無制限」のパートナーシップからもかけ離れている。要するに、中国は、信頼できないメンバーで構成される反欧米枢軸を率いてアメリカと対立することが正しいのか、確信が持てずにいる。これは、ワシントンが、封じ込めの準備をしつつも、新たな外交努力を通じて中国の意図を試すチャンスを手にしていることを意味する。ワシントンは中国に、ウクライナでの戦争を終わらせるためにロシアを交渉テーブルに着かせる直接的な役割を与えるべきではないか。

プーチンの対欧米戦争は続く
―― ウクライナを越えた戦い

2025年2月号

アンドレア・ケンドール=テイラー 新アメリカ安全保障センター シニアフェロー
マイケル・コフマン カーネギー国際平和財団 シニアフェロー

プーチンの最終目的は、ウクライナではない。ヨーロッパのポスト冷戦秩序を解体・再編し、アメリカを弱体化させ、彼がふさわしいと考える地位と影響力をロシアがもつ新しい国際システムを形作ることが目的だ。ウクライナでの戦闘が終われば、ロシアはより大胆になり、軍事態勢を立て直せば、ヨーロッパの安全保障秩序を再編するための新たな戦いを始めるだろう。すでにプーチンは、欧米との戦いに備えて、ロシアの社会と経済そして外交政策を大きく変化させている。ロシアの問題は、グローバルな問題でもある。隣国に侵攻し、民主主義社会を攻撃し、国際ルールを破りながらも、制裁から逃れがちだったことは、彼のやり方に追随する者を生み出すと考えられるからだ。

いかに戦争を終わらせるか
―― ウクライナのNATO加盟を認めよ

2025年2月号

マイケル・マクフォール 元駐露アメリカ大使

戦争を終わらせるには、ロシアにウクライナの一部領土を与えるのと引き換えに、北大西洋条約機構(NATO)へのウクライナ加盟を実現させる洗練された計画が必要になる。恒久的な平和を生み出すには、このような妥協をするしかない。「勝利しつつある」と考えているプーチンに和平交渉に入るように説得できても、トランプはゼレンスキーも説得しなければならない。これは大きなチャレンジになる。領土奪還を諦めるならば、これらの土地に住む市民も見捨てるのか、それともウクライナ西部への移住を保証するのか、ゼレンスキーは決断しなければならない。そして、トランプ自身、和平交渉を実現するために、ウクライナ支援を維持(さらには拡大)する必要がある。

ロシアの軌道に組み込まれるジョージア
―― ハンガリー化するジョージア

2025年2月号

クリスチャン・カリル ジャーナリスト

12年前に政権党になって以降、「ジョージアの夢」は巧みに国を掌握してきた。かつて首相を務め、同党に大きな影響力をもつビジナ・イヴァニシヴィリは、官僚、司法、法執行部門の事実上すべての主要な役人を、段階的に党に忠実な支持者に置き換えていった。こうして、「ジョージアの夢」は、自分たちの条件で思うままに権力基盤を固め、ついには、欧米の影響力を遮断することを目的とする「外国の代理人」法を成立させ、不正な選挙を実施した。「ジョージアの夢」は、すでにビクトル・オルバン流の国家乗っ取りへ向けた重要な一歩を踏み出し、いまや欧米からロシアへと決定的に軸足を移そうとしている。

ロシアとの交渉を実現するには
―― 経済制裁の強化を

2025年1月号

セオドア・ブンツェル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター
エリナ・リバコバ ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー(非常勤)

「流れは自分の側にあり、妥協する環境にはない」とモスクワは考えている。つまり、さらに経済圧力をかけなければ、ロシアが2025年にウクライナ戦争の停戦交渉に応じることはないだろう。現状で停戦を急いでも、それは、モスクワがさらに触手を伸ばすための、小休止になるにすぎない。一方、ロシア経済の生命線であるエネルギーからの収益を低下させ、欧米製のデュアルユース製品の輸入を大幅に抑え込めば、ロシアが戦争を継続するのは難しくなり、交渉に応じるインセンティブを高められる。原油価格とインフレ率が低下しているいま、欧米は2022年当時よりもロシアのエネルギー・フローを混乱させる、より積極的な施策をとれるはずだ。

反欧米ブロックへの強硬策を
―― 中露分断策の不毛

2025年1月号

オリアナ・スカイラー・マストロ スタンフォード大学国際問題研究所 センターフェロー

中国、ロシア、イラン、北朝鮮という枢軸メンバー間の相互関係の深さを推定したり、彼らを引き離そうと努力したりするのではなく、ワシントンは、これらを独裁国家のブロックとして扱い、同盟諸国にも同様の対応をとるように働きかけるべきだ。中国を枢軸のリーダーとして扱い、ある枢軸メンバーが好ましくない行動をすれば、(中国を含む)他の枢軸メンバーにもペナルティを課すようにすべきだ。ロシアの戦争努力を支援する中国企業だけに制裁を科すのではなく、アメリカは中国という国を対象に経済制裁を実施する必要がある。そして、ロシアが交渉テーブルに着くまで、制裁は継続すると北京に伝える。もはや代替策は存在しない。

停戦交渉と欧州の立場
―― ウクライナと欧州の安全を確保するには

2025年1月号

エリー・テネンバウム フランス国際関係研究所 安全保障センター ディレクター
レオ・リトラ 新ヨーロッパセンター シニア・リサーチフェロー

2025年に、ロシアとの包括的な和平合意が成立する可能性は極めて低い。合意が成立しても、それは休戦に限られ、政治的協議は先送りされるだろう。交渉が実現しても、米露(そして潜在的には中国)の交渉者が、サウジやトルコの仲介で欧州大陸の将来を決定するとすれば、それは悪夢のシナリオだ。「ウクライナとヨーロッパの主要国がテーブルに着かない交渉などあり得ない」と強く主張しなければならない。そして、ロシアの攻撃を阻む抑止力として、ウクライナ領内に欧州部隊を派遣する覚悟をもつ必要がある。欧州部隊の軍事プレゼンスは安全保障の盾として機能し、欧米の手堅いコミットメントを示すことになる。この環境でウクライナに侵攻すれば、欧州とNATOを巻き込む危険が高いため、ロシアはエスカレーション策に訴えるのを躊躇するはずだ。

ロシアの基地は温存されるか
―― シリアの体制崩壊とロシア

2025年1月号

トーマス・グラハム 米外交問題評議会 特別フェロー

アサド後のシリアにおける、ロシアの当面の関心は、タルトスの海軍基地、そしてフミイエム空軍基地を守ることだろう。これらの基地は、中東におけるロシアの影響力を行使する上で重要なだけでなく、東地中海への足場だし、リビアやサヘルでの軍事プレゼンスを含む、北アフリカでのロシアの作戦を支援する後方支援の拠点でもある。プーチンがシリアにおけるロシアの軍事基地を簡単に放棄することも、大きな戦略的後退を穏やかに受け入れることもあり得ない。そのような事態は、大国としてのロシアの評判を落とすだけでなく、プーチンの国内での政治的地位も失墜させることになる。

Page Top