Vol.41 国際秩序の解体と動き出した大国間地政学
―― 社会契約の崩壊と地域秩序解体の流れが一体化すれば

2016年1月発売

Unraveling of the Order and the Rising of Geopolitical Moves

掲載論文

2016年、世界は中東とヨーロッパを中心に半世紀に一度の大きな地政学的変化を経験することになるかもしれない。中東ではアラブの春に象徴される社会不満が噴出し、アメリカの覇権が形骸化したことによる政治的空白のなかで、「イスラム国」が台頭し、宗派間紛争が固定化しつつある。そこで起きているのは多層的な革命と秩序再編だ。ヨーロッパでは、ユーロ導入に伴う金融政策上の主権喪失がギリシャ危機として先鋭化し、その対応に必要なさらなる政治・経済統合にメンバー国は同意できずにいる。難民の流入に伴う各国の国家意識の覚醒によって多文化社会が揺らぎ、EUの根本理念である域内における「人の移動の自由」さえも脅かされている。EUがメンバー国に求める緊縮財政も、EUへの反発と国家意識を高め、右派政党を台頭させている。そして中国は自由化に伴う経済的混乱のなかにある。一定の余力を残しつつも、経済的対応ツールは今後ますます少なくなり、危機に対応できなくなる恐れもあり、中国発グローバルリセッションのリスクを指摘する専門家もいる。世界各地で政府と市民の社会契約が揺るがされるなか、地域秩序が解体していけば、全てが流動化し、地域大国間だけでなく、ロシア、中国を含む大国の地政学的思惑と行動が表面化していくリスクがある。・・・

  • 第一章 The Best of 2015 for 2016
  •   パックス・アメリカーナの終わり―― 中東からの建設的後退を
  •   ユーラシアで進行する露欧中の戦略地政学―― 突き崩されたヨーロッパモデルの優位
  •   嵐の前の静けさ―― 次にブラックスワン化する国は
  •   中国の対外行動をいかに制御するか―― 台頭する中国とアメリカのアジア外交
  •   知能ロボットと暗黒時代の到来―― 高度に社会的なロボットの脅威
  •   新技術の社会・経済的弊害を管理するには―― 技術が結果を導く必然性はない
  • 第二章 How to Save the Displaced People
  •   難民の自立を助けよ――難民危機への経済開発アプローチを
  •   欧州移民危機の真実――悲劇的選択とモラルハザード
  • 第三章 Dismantling of Europe and Ukraine?
  •   引き籠もるイギリスと欧州連合――EUもイギリスも衰退する
  •   緊縮財政が民主主義を脅かす――ルビコン川を渡ったヨーロッパ
  •   対ロ新冷戦とヨーロッパの漂流――オバマはなぜロシアの侵略を予見できなかったか
  •   新米ロ冷戦の現実――冷戦期以上の米ロ関係の緊張
  • 第四章  Political Vacuum in the Middle East
  •   バラク・オバマと米中東戦略の分水嶺――なぜアラブの春を支持し、中東不介入策を貫いたか
  •   アサド大統領、シリア紛争を語る
  •   イスラム国の全貌――なぜ対テロ戦略は通用しないか
  • 第五章 Future of the China' s Economy
  •   中国という砂上の楼閣――改革時代の終わり
  •   このままでは中国は債務に押し潰される――地方政府と国有企業の巨大債務

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