Vol.40 地政学の復活と不満が規定する世界
――米ロ対立、漂流するヨーロッパ、中東の混迷
The Return of Geopolitics and the Age of Grievance
掲載論文
きっかけはウクライナの政変とロシアの介入だった。ロシアがクリミアを編入し、ウクライナ東部の紛争に介入すると、冷戦後の秩序を揺るがす大きな地政学のうねりが生じた。アメリカのリーダーシップの衰退、ウクライナやロシアを含む、各国における社会不満の増大がこの流れを加速した。今後、注目すべきは米ロ対立や中ロの接近がどう展開するかだけではない。米独関係を中心にアメリカとヨーロッパの関係が不安定になっていく恐れもある。しかも、ヨーロッパは経済的にも政治的にも危険水域へと突入しつつある。中東でもイスラム国の台頭によって秩序の流動化が加速している。中東での宗派間構想の構図は固定化されつつあり、すでにイラクとシリアは破綻途上国家と化している。一方、アジアでも中国における社会不満が、今後、何をどう変えていくか、その途上で地域的に何が起きるかが問われている。・・・
- 第一章 リーダーなき世界と地政学の復活
- 「歴史の終わり」と地政学の復活――リビジョニストパワーの復活
- 解体する秩序―― リーダーなき世界の漂流
- 不満と反発が規定する世界
- 第二章 ロシアとアメリカの衝突
- 悪いのはロシアではなく欧米だ―― プーチンを挑発した欧米のリベラルな幻想
- 欧米の偽善とロシアの立場― ユーラシア連合と思想の衝突
- 論争 悪いのは欧米かロシアか―― ウクライナ危機の本質は何か
- 第三章 ヨーロッパの漂流
- 欧米の政治危機とポピュリズムの台頭―― 生活レベルの停滞と国家アンデンティティ危機
- 欧州における反移民感情の台頭
- キリスト教民主主義の衰退とヨーロッパ統合の未来
- 流れは独ロが規定する新ヨーロッパへ―― ウクライナ危機と独ロの特別な関係
- 第四章 資本主義とデジタル経済と格差
- デジタル経済が経済・社会構造を変える―― オートメーション化が導く「べき乗則の世界」
- 21世紀の資本主義を考える―― 富に対するグローバルな課税?
- 第五章 イスラム国と中東の混乱
- レバノン化する中東―― 重なり合う宗派主義と地政学の脅威
- イスラム国を検証する―― ルーツ、財源、アルカイダとの関係
- イラクと中東の宗派間紛争―― イラク分裂の意味合い
- 米軍部隊の投入は避けられない?――シリア・イラクにイスラム国に対抗できる集団は存在しない
- 第六章 日本と東アジア
- アベノミクスの黄昏―― スローガンに終わった構造改革
- 北朝鮮の崩壊を恐れるな―― リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ
- 軋みだした中国の統治システム ―― 変化した社会に適応できる政治構造を