Vol.38 フォーリン・アフェアーズ傑作選 2012-2013
欧米の停滞と中国の不安定化で さらに流動化する世界
Which Comes First, Resurgence of the West or Crumbling of China
掲載論文
先進国社会が高齢化し、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できなくなっている。この現実に、政治が対応できずにいることが世界で多くの問題を作り出している。日本は成長に向けた経済改革についての政治的コンセンサスを構築できるかどうか、いまも分からない状態にあるし、同様に債務と赤字にまみれた米欧も日本経済の後追いをしている。アメリカは、経済的回復へとゆっくりと向かいつつも、依然として政治的膠着で身動きがとれず、ユーロ危機の対応に追われるヨーロッパは、もはや統合の理念さえも見失いつつある。かたや、これまで高成長を維持してきた中国でさえも投資バブルの崩壊で、90年代の日本に似た状況に陥りつつある。問題は、社会、経済の大きな変化に主要国の政府が対応できるようになるまでの混乱期に、対外領域で何が起きるかだ。中国の対外強硬路線は今後も続くのか。日本の防衛戦略はどう見直されるのか。フォーリン・アフェアーズで見通す2013年の世界。
- 第一章 先進民主国家は停滞を克服できるか
- 歴史の未来――中間層を支える思想・イデオロギーの構築を
- 衰退する日米欧経済
- グローバル・リセッションの本当の教訓
- 第二章 ユーロ危機と欧州政治統合の黄昏
- 統合の危機とヨーロッパの衰退
- 危機後のヨーロッパ――圏内経済不均衡の是正か、ユーロの消失か
- それでもユーロは存続する――欧州版IMFとしての欧州中央銀行のポテンシャル
- 第三章 「新興国台頭」の終わりの始まり
- BRICsの黄昏――なぜ新興国ブームは終わりつつあるのか
- BRICSのポテンシャルを再検証する
- 第四章 チャイナ・プロブレム ――高まる民衆の不満に対処していけるのか
- 習近平政権の内憂外患
- 中国の不動産バブルと農民の不満
- 投資バブルの崩壊で中国経済は長期停滞へ
- 儒教とアジアの政治
- 第五章 中国の対外強硬路線と東アジア安全保障
- 緊縮財政時代の米国防戦略――日本の安全保障とA2・AD戦略
- 中国を対外強硬路線へ駆り立てる恐れと不安――アジアシフト戦略の誤算とは
- 資源開発技術の進化とアジアの海洋資源争奪戦
- 第六章 エネルギー資源の未来
- 風力・ソーラーエネルギーのポテンシャルを引き出すには――悪い補助金からスマートな促進策への転換を
- 日本の電力危機とアジア・スーパーグリッド構想
- 北米エネルギー安全保障の衝撃――中東石油への依存度が半減すれば