Vol.35 フォーリン・アフェアーズ傑作選2011~2012 先進民主国家の停滞とGゼロの世界
――民主主義ではもう市場経済の問題を解決できない?
A World after the Western Malaise
掲載論文
気がつけば世界経済の運転席に誰もいない。2008-2009年の金融危機以降、様々な国際問題が噴出し、経済不安が高まっているにも関わらず、各国の政策担当者は自国の経済と雇用問題に対応するので手一杯で、いまやグローバル経済はゼロサム化しつつある。しかも、巨大な債務と財政赤字を抱える先進民主主義国家では、市場を意識した合理的で長期的な経済政策への政治的支持が得られなくなっている。根底にあるのは、グローバル化が「有権者が政府に対して望むものと」と「政府が提供できるもの」の間のギャップをますます広げ、日本を含む先進民主国家政府が人々の要望に応えられなくなっていることだ。2012年の世界は1930年代のような通貨切り下げ競争と保護主義の台頭に覆い尽くされるのか。欧米経済が衰退するなか、中国が世界経済の牽引役を担い、経済覇権の交代がおきるのか、それとも・・・・
- 第一章 Gゼロの世界に忍び寄る1930年代の足音
- 金融危機が出現させたGゼロの世界――主導国なき世界経済は相互依存からゼロサムへ
- 1930年代の悪夢が再現されるのか―― 高まる保護主義の脅威
- 漂流する先進民主国家―― なぜ日米欧は危機と問題に対応できなくなったか
- 貿易財部門の空洞化は避けられない―― 雇用なき成長への対策はあるか
- 経済覇権はアメリカから中国へ ――21世紀に再現されるスエズ危機
- 第二章 市場経済・資本主義の未来
- ポスト・ワシントンコンセンサス―― 危機後の展開
- なぜユーロプロジェクトは失敗したか―― ギリシャのユーロ離脱は何を引き起こすか
- 国際通貨戦争、保護主義の台頭を避けるには――通貨価値ではなく、各国の国内経済戦略を見直せ
- いずれギリシャはディフォルトを宣言する―― 欧米の自爆装置と化したグローバル金融システム
- ユーロゾーン危機を封じ込めるには――問題は必要な経済対策が政治的支持を得られないことだ
- 第三章 アジアの世紀と日米中の未来像
- アメリカは変化するアジアの戦略環境にどう関わるか
- 中国の対外強硬路線の国内的起源―― 高揚する自意識とナショナリズム
- 漂流する日本の政治と日米同盟
- 北朝鮮の不安定化と米中関係――「北朝鮮後」に向けた米中事前協議を
- 第四章 ソーシャルメディアとインターネットのジレンマ
- ソーシャルメディアと民主化革命を考える――エジプトとリビアの違いにどう対処すべきか
- インターネットのジレンマ―― セキュリティと相互運用性をいかに両立させるか
- 高度化する脅威と進化するサイバー戦略