Vol.29 動揺するドル、市場経済、そしてアジアの未来
― 金融・経済危機が誘発した世界の政治、経済構造の大転換
Creeping ”Systemic Changes" after the Crisis
掲載論文
金融・経済危機第2幕。永遠には繰り返せない財政出動の効果が薄れてきたときに主要国はどう動き、G20で合意されたグローバル・インバランスの是正に各国はどう取り組むのか。このまま政府介入型の経済運営が続き、国家資本主義が主流になっていくのか。それとも、アジアは内需をアメリカは貯蓄を増やしてノーマルな市場経済へと各国は立ち返り、貿易の新たな流れが生じ、その過程でドルはゆっくりと衰退し、ユーロや人民元が台頭してくるのだろうか。それとも、アメリカが再び「最後の買い手」の役目を引き受け、いずれ第2の金融危機に直目するのか。金融経済秩序が変化すれば国際政治秩序も再編される。そこで浮上してくるのは中国か、それともアメリカが支配的な優位を維持するのか。21世紀が本当にアジアの世紀になるのなら、日本はアジアとアメリカにどう向きあうべきか、そしてアメリカはアジアにどう接すべきなのか。2010年の世界の課題をフォーリン・アフェアーズで検証する。
- 第一章 ドルと市場経済のたそがれ
- 経済の長期化は避けられない――市場経済モデルの衰退は地政学的秩序をどう変えるか
- 国家資本主義の台頭と市場経済の終わり?
- 中国は市場改革路線をすでに放棄している――GDP成長に取り憑かれ、改革を忘れた中国
- ドルとアメリカの赤字――次なる危機を回避するには(前編・後編)
- 脅かされる基軸通貨ドルのジレンマ――ユーロ、SDR、人民元の台頭
- 第二章 アジアの未来を考える
- 輸出主導型経済モデルの終わり?――アジア経済が苦境に陥っている本当の理由
- <CFRミーティング>中国経済は本当に成長しているのか――経済失速か内需拡大か
- 論争:グローバル経済危機はいつまで続くのか――日米、2つの経済バブルを検証する
- 日米の歴史認識と東アジアの和解を考える――反動を誘発する謝罪路線の危うさ
- <CFRスペシャル・リポート>北朝鮮の急変に備えよ
- 第三章 危機が招き入れた秩序流動化の終着点は
- <Essay Review>米中露トライアングルの勝者は誰か――中国の影響力拡大は続く
- 21世紀を主導するのはアメリカか中国か――アメリカ衰退論も中国の台頭論も誇張されている
- 原油価格の安定がもたらす地政学的チャンスに目を向けよ――原油生産能力は増強され需要の伸びは低下する
- 第四章 「核のない世界」を考える
- <CFRミーティング>「核のない世界」と核拡散という現実 ――北朝鮮、イランと核不拡散
- <CFRミーティング>核のない世界は幻想か?