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政治分裂を修復するには
―― 政治的分裂を民主主義の再生につなげるには

スザンヌ・メトラー コーネル大学教授(政治学)

Democracy on the Brink Protecting the Republic in Trump’s Americ

Suzanne Mettler コーネル大学教授(政治学)。専門はアメリカ政治と公共政策。

2017年7月号掲載論文

現代アメリカの激しい政治的分断状況のなかでは、党派的ながらも正常な政治行動と、民主主義の基盤を脅かす行動を見分けることが極めて重要だ。たとえば、トランプが保守派のニール・ゴーサッチ判事を連邦最高裁判事に指名したことは、保守的支持基盤を満足させる正常な政治的判断だ。彼の閣僚人事にも同じことが言える。他方、トランプが事実を無視したり、主流メディアの役割を否定したり、判事を非難したり、政治的反対意見を無視したりすることは、民主的規範を傷つける。市民は一般的な党派主義的行動と独裁への傾斜を思わせる行動を区別して、トランプの行動を判断する必要がある。そしてわれわれはアメリカの民主主義を守ってきた制度、そしてリーダーシップ、交渉、妥協というツールを学び直し、意見の対立は弱さではなく、奥深い強さの源であることを認識する必要がある。

  • 民主主義の再生
  • アメリカの分裂
  • 対立をいかに解決するか
  • 連帯と再生に向けて

民主主義の再生

 

アメリカの民主主義は常に進化し続けてきた。エイブラハム・リンカーンが「人民の、人民による、人民のための政府」を維持するための「未完の仕事」と呼んだプロセスは、これまで何度も後退を強いられてきた。この数十年にわたって、市民の米政府への信頼が低下し続けてきたことからも、このプロセスが順風満帆ではなかったことは明らかだろう。それでもごく最近までは、民主体制は安定しているかにみえた。だがそれも過去の話だ。

ドナルド・トランプ大統領は民主的統治の基盤を攻撃し、抑制と均衡、市民的自由、市民権などの確立された民主的規範を脅かしている。2016年の大統領選でも、彼は事実を前提とする政治的討論という規範に背を向け、対立候補の正統性に異論を唱え、自分が大統領になれば「ヒラリーを刑務所送りにする」とさえ恫喝した。

大統領就任後も、主流メディアの一部を「フェイク・ニュース」とやり玉に挙げ、「アメリカ市民の敵」と呼んだ。司法を攻撃し、証拠も示さずに「自分が一般投票で勝利できなかったのは、選挙不正があったからだ」と主張した。こうした非自由主義的態度は、アメリカ人が長年当然視してきた自己統治の基盤が、多くの人が考える以上に不安定化していることを物語っている。

なぜ、こんなことになってしまったのか、そしてどうすれば、民主主義を再生できるのか。この問いに対して、有意義な指針を示してくれる本が2冊ある。

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