ロシアはなぜ新路線へと転じたか
――もはや合理的取引では問題は解決しない
What Has Moscow Done?
2008年12月号掲載論文
2008年8月にロシアの戦車がグルジアに攻め入るはるか前から、ワシントンとモスクワを互いに遠ざける対立案件の数はますます増えていたし、より重要なのは、これらの対立を両国の価値観の違いだけではすでに説明できなくなっていたことだ。米ロ関係が悪化しているのは、「そうした対立をロシアの指導者がどう理解し、とらえるか」の認識が変化したことに大いに関係がある。「ロシアとアメリカ(そして欧米世界)との関係は本質的に不平等で相容れない部分があり、独自の道を歩んだほうがロシアの利益をよりうまく確保できる」とモスクワはいまや考えている。
グルジア戦争の余波のなか、もっと厄介な現実が形づくられていくかもしれない。それは、ロシアのパワーがますます強大化し、この国の野望を支えていくことだ。そうしたロシアの影響力の復活が好ましくないのは、工業センターとしてのウクライナ、エネルギーセンターとしてのカザフスタンを含む旧ソビエト地域をロシアが支配するようになれば、世界の主要国のすべてが、国家安全保障概念の見直しを迫られることになるからだ。
- 対ロ政策は「選択的な関与と選択的な封じ込め」へ
- リアリスト路線では関係は改善できない
- 2002年の米ロ関係はなぜ良好だったか
- 軍備管理交渉への復帰を
- ロシアが欧米に対決路線をとる理由
- 誰の勢力圏か
- アメリカの課題
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