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テーマに関する論文

中ロパートナーシップの高まる脅威
―― 手遅れになる前に行動を起こせ

2019年6月号

アンドレア・ケンドール=テイラー  新アメリカ安全保障センター  シニアフェロー
デビッド・シュルマン  国際共和研究所 シニアフェロー

中ロのパートナーシップは不自然だし、その見込みはあまりないと考えるアメリカの専門家は多い。しかし、この立場はすでに現実によって淘汰されている。両国は政府のあらゆるレベルでの交流を深め、投資、交通機関、スペースナビゲーション、軍事転用可能なテクノロジー開発などの領域で緊密に連携している。ワシントンに対抗し、グローバル統治を変化させ、リベラルな秩序を支える価値を問題にしていくことでも両国は立場を共有している。問題は、中ロパートナーシップをどうみるかをめぐって、欧米の専門家のコンセンサスがないために、ワシントンの政策決定者が、中ロ関係の有害な作用を阻止できなくなるまで、中ロ関係の本質について議論し続けるリスクを冒していることだ。

ウクライナ大統領になったコメディアン
―― なぜ勝利し、何が待ち受けているか

2019年6月号

ピーター・ディッキンソン アトランティックカウンシル 非常勤フェロー

選挙を経て、ロシアとの戦争のただ中にある、広大で変化の激しい国の最高責任者となったコメディアンは、今後、世界におけるウクライナの地位を再定義していかなければならない。ウォロディミル・ゼレンスキーが政治腐敗に反対してきたことは誰もが知っている。だが、そのためには、政府機関の人材を全面的に刷新し、政治階級に認められている刑事免責を廃止しなければならない。彼のクレデンシャルを試す最大の試金石は、彼の政治的パトロンとみられるコロイモスキーとの関係をどうするかだろう。彼が大統領選挙に出馬した目的は、コロイモスキーのためにポロシェンコに報復することにあると批判する者もいる。いずれにせよ、この国の課題に直面し始めれば、彼は、台本通りにこなせばよかったTVスター時代を懐かしむことになるだろう。

ポストメルケルで流動化するドイツ政治
―― クランプカレンバウアーの課題

2019年6月号

ソーステン・ベナー グローバル公共政策研究所(GPPi) ディレクター

「2021年まで首相は続投するが、CDUの党首ポストは辞任する」。2018年にメルケルがこう表明して以降、ドイツ政治は漂流している。2015年、難民を受け入れるとメルケルが表明したことをきっかけに、反移民政党「ドイツのための選択肢(AfD)」がCDU右派を脅かす主要な政治勢力として台頭し、移民を受け入れるか受け入れないかという新たな対立軸が、ドイツ政治を支配するようになった。後任の党首に選ばれたのはCDU幹事長でザールラント州首相を務めたアンネグレート・クランプカレンバウアー。彼女のリーダーシップで世論の関心を移民から「将来のドイツの経済的成功に向けた基礎作り」へと向かわせられるかどうかが今後の鍵を握る。・・・

米外交と同盟関係を支える価値
―― アメリカ・ファーストのコストは何を意味するか

2019年6月号

コーリー・シャーキー 英国際戦略研究所 副局長

トランプは無遠慮かつしばしば下品な表現で米外交の伝統を批判し、長年にわたって維持されてきた原則に対する疑問をうまく描き出した。だが、既にトランプ外交は米主導の秩序を支えてきた価値と原則を解体すれば、米戦略がどのような事態に陥るかを白日の下にさらし、逆にそうした価値や原則の重要性を立証している。「アメリカは絶望的なまでにつけ込まれ、過剰な任務を抱え込まされている」と考えるのを止め、多くの国が恩恵を手にできる結果を確保することで、目的を実現すべきであり、そうすれば、強制の必要性は低下し、考えを共有する諸国の責任分担も促すこともできる。重要なのは、一部で刷新が必要だとしても、伝統的な外交的価値と原則へ立ち返ることだ。

イギリス政治の再編か
―― ブレグジットと伝統的政党の凋落?

2019年6月号

アナンド・メノン  キングス・カレッジ・ロンドン 教授(ヨーロッパ政治) アラン・ウェージャー キングス・カレッジ・ロンドン リサーチ・アソシエーツ

二大政党の牙城に第三政党がどこまで食い込み、政治を再編できるか。すでに、労働党はこれ以上の離党者を出さぬように、2019年3月に立ち上げられた新党、チェンジUKの立場を取り入れ、国民投票の再実施を支持している。だが、そのチェンジUKも(地方選挙で大きな躍進を遂げた)自由民主党と選挙協力をしない限り、中道派の票を奪い合うことになり、保守党の基盤に切り込めない。(一方、ナイジェル・ファラージが4月に旗揚げした「ブレグジット党」が支持を集めていると報道されている)。今後、国民投票をめぐって作り出された分裂が永続化するような、より抜本的な再編が起きるかどうか、これによって今後のイギリス政治は左右される。

イギリスの混乱は長期化する
―― 断ち切れぬヨーロッパとの絆

2019年6月号

アマンダ・スロート  ブルッキングス研究所米欧センター  シニアフェロー

デービッド・キャメロンが、ブレグジットの国民投票に踏み切ったのは、保守党内部で長く続けられていた「ヨーロッパにおけるイギリスの立場」に関する論争に終止符を打ちたいと考えたからだった。だが、国民投票の結果、論争はさらに深刻化した。そして「EUの単一市場と関税同盟を離脱しつつ、(北アイルランドと)アイルランド間にはっきりとした国境が出現するのを回避し、イギリス全体としてのブレグジットの実現」を目指したテリーザ・メイのアプローチが、これまでのところ解決不能なトリレンマを作り出している。しかも、北アイルランドの立場も分裂している。結局、英議会の分裂は国が分裂していることを意味する。・・・

ベネズエラへ軍事介入すれば
―― 長く困難な任務となるのは避けられない

2019年5月号

フランク・O・モラ フロリダ国際大学教授(政治学)

ドナルド・トランプ米大統領はベネズエラに対する「あらゆる選択肢を排除しない」と語っている。これが真意なら、どのようなことになるだろうか。可能性が高いのは、米軍の侵攻後、ベネズエラ軍が短期間で降伏してマドゥロ体制は崩壊し、キューバとロシアの軍事関係者も撤収することだ。米軍のプレゼンスゆえに、軍の元兵士たち、準軍事組織、武装集団も地下へ潜る。しかし、アメリカはベネズエラの治安部隊の再建を主導せざるを得なくなり、米軍は長期的駐留を余儀なくされる。この場合、介入に伴う社会、経済、治安対策のコストがその恩恵をはるかに上回る。それが限定的な空爆であれ、全面的な地上軍の投入であれ、介入策をとれば、初期の戦闘が終了した後、ベネズエラを安定化させるための長く困難な作戦が必要になる。・・・

INF条約離脱の本当の意味合い
―― アメリカのアジアシフト

2019年5月号

トム・ニコルス 米海軍大学教授(国家安全保障)

アメリカのINF条約からの離脱は「今後は中国との軍拡競争に専念する」と認めたようなものだ。NATOは必要に駆られてアメリカのINF条約離脱を支持したが、ワシントンのヨーロッパへのメッセージが「今後は自分で何とかして欲しい」であることは当初からはっきりしていた。しかし、新戦略兵器削減条約(新START)が2021年初頭に失効するだけに、ヨーロッパにおける新戦略をまとめる必要があるし、中国に対処する上では、中距離ミサイルを配備するだけでは不十分で、通常戦力への投資拡大や太平洋における海軍力の確立に再びコミットしなければならない。30年以上前に放棄した中距離ミサイルシステムに依存するのではなく、アメリカ政府はもっとまともな戦略計画をまとめる必要がある。

失速するロシア経済
――― 停滞というニューノーマル

2019年5月号

クリス・ミラー フレッチャー法律外交大学院准教授

2014年に原油価格が急落し、ロシアは外貨収入源の多くを失った。同年、ロシアがクリミアを編入したことで、プーチンの支持率は急上昇したが、欧米の金融制裁の対象にされ、ロシア企業は投資を削減せざるを得なくなり、すべての産業の資金調達コストが上昇した。ルーブルは暴落し、投資と消費は大きく冷え込んだ。この5年にわたって、ロシア経済はひどい状況にある。それでも、モスクワは政府批判を許さない法律を導入することで民衆を抑えこんでいる。モスクワの国内統治と欧米との対立はすでにメカニズムとして織り込まれている。社会を団結させるような新たな外国との対立がなければ、おそらくロシア市民はモスクワの政策は硬直化していると判断することになるかもしれない。但し、それでも市民たちは停滞をニューノーマルとして受け入れるかもしれない。

習近平モデルの成功と弊害
―― 成功が重荷と化すとき

2019年5月号

エリザベス・エコノミー 米外交問題評議会アジア研究部長

権力を一手に掌握した習近平は、政治、社会、経済に共産党を深く浸透させる一方で、外国の思想の影響や経済的な競争を制限し、野心的で拡張的な外交政策に転じた。これらの多くが成功しているが、一方で大きな問題も生まれている。党が企業に深く浸透するようになったために、中国企業はいまや共産党の一部とみなされている。地方政府は機能不全に陥り、国際的な反発も高まっている。習近平モデルが作り出した問題に対処していくには、一期目のイニシアティブの多くを見直す必要がある。期待をみいだせるとすれば、中国が現在抱える問題のほとんどが習路線の帰結である以上、それを見直す権限も彼が握っていること、そして軌道修正をする時間が残されていることだ。

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