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テーマに関する論文

AIが主導する戦争の時代?
―― 自律型兵器の脅威にどう対処するか

2024年5月号

ポール・シャーリ 新アメリカ安全保障センター 研究部長 上席副会長(研究担当)

すでに、ウクライナでは、AIが「戦場で誰を殺すかを判断する」完全自律型兵器が実戦配備されており、このままでは、機械が主導する危険な戦争の時代へと向かっていく危険がある。ターゲットを発見・特定し、攻撃するまでの時間が短縮され、意思決定のサイクルが短くなり、機械が、個々の標的を選択するにとどまらず、作戦全体を計画・実行するようになる可能性もある。こうなると、人間は、戦争を管理し、終わらせる力をほとんど失ってしまう。そのリスクを回避し、より重大なAIの脅威に対処する協調体制の基盤を築くためにも、自律型兵器についての合意をまとめる必要がある。・・・

ヨーロッパが備える脅威の本質
―― ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊

2024年5月号

リアナ・フィックス 米外交問題評議会 欧州担当フェロー
マイケル・キマージ 米カトリック大学 歴史学教授

トランプは、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を決断し、ウクライナを見捨て、プーチンとのパートナーシップを模索するかもしれない。だが、彼は決意に乏しく、無謀なアイデアを実行に移すことはめったにない。むしろ、大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。戦争をあまりにもよく知る大陸が、恒久的な平和でも、鉄のカーテンでもなく、再びカオスに包まれる未来は、決して幻想ではない。・・・

地政学競争と道徳なき外交の時代
―― 理念と現実主義をいかに融和させるか

2024年5月号

ハル・ブランズ ジョンズ・ホプキンス大学 教授

自由主義国家は、どうすれば、「価値ある目的」と「それを達成する上で必要になる不道徳な手段」を調和させられるか。これは、現在の米外交が直面するもっとも悩ましいジレンマの一つでもある。民主的同盟関係だけで、中国とロシアに対抗していくことに限界がある以上、地政学競争の時代が道徳なき時代になるのは避けられないだろう。ライバルに対抗し、自由世界を守るには、民主的価値からみれば問題のあるパートナーともつきあっていかざるを得ない。だが、そのようなご都合主義は危険に満ちている。国内で幻滅を引き起こすし、アメリカの世界的影響力をこれまで支えてきた道徳的優位を失う危険もある。

中国は欧米との衝突コースへ
―― 実現しない内需主導型モデルへの転換

2024年5月号

ダニエル・H・ローゼン ロジウム・グループ パートナー
ローガン・ライト ロジウム・グループ パートナー

欧米のエコノミストは、個人消費の制約に対処することで、北京が内需主導の経済戦略へシフトすることをこれまで長く求めてきた。国内経済のリバランスと貿易黒字の削減を両立させるには、不動産やインフラへの投資を減速させるだけでなく、消費を促進する必要がある。だが、中国の指導者たちは、必要な変化を先送りし、経済の外需依存を高めるような政策をいまもとっている。先進国も途上国も同様に中国による大規模な輸出攻勢に反発している。それでも、北京は問題を無視しているようだ。こうして、中国の過剰生産能力が外国政府をこれまで以上に激しい対抗措置へ向かわせつつある。その結果生じる対立は、中国経済にとっても、世界の貿易システムにとっても許容できるものではないだろう。

中国経済は成長を続ける
―― 悲観派を惑わす4つの誤解

2024年5月号

ニコラス・R・ラーディ ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

アメリカを追い越すどころか、中国は長い不況に突入する可能性が高く、「失われた10年」を経験するのかもしれない。中国経済の今後をこう捉える悲観派の見方は状況を誤認している。中国は今後も世界の経済成長の約3分の1に貢献し、特にアジアでの経済的影響力を高めていくはずだ。ワシントンがこの流れを過小評価すれば、アジアのパートナーとの経済・安全保障関係の深化を維持していくアメリカの能力を過大評価することになるだろう。中国経済の先行きを懸念する人が指摘する、家計支出の低迷、民間投資の減少、デフレの定着などはすべて状況を誤認している。

「グローバルサウス」の問題点
―― 欧米諸国の思い込みと誤解

2024年5月号

コンフォート・エロー 国際危機グループ会長

現在の欧米における多くの政策論争では、「グローバルサウス」の存在が既成事実とみなされている。だが、グローバルサウスをまとまりのある連合としてとらえると、各国の個別の懸念を単純化したり、無視したりすることになりかねない。ブラジルやインドとの関係を強化すれば、他のグローバルサウス諸国も後からついてくると考えられている。これでは、債務、気候変動、人口動態、国内暴力など、各国の政治を形作っている固有の圧力がみえなくなってしまう。アジア、アフリカ、ラテンアメリカの国々を地政学的ブロックとして扱っても、彼らが直面する問題の解決にはつながらないし、アメリカとそのパートナーが求める影響力を確保することもできないだろう。

ビジネスエリートの地政学
―― 企業と外交政策

2024年4月号

ジャミ・ミシック 元キッシンジャー・アソシエイツ会長
ピーター・オルサグ ラザード 最高経営責任者
セオドア・バンゼル ラザード地政学アドバイザリー マネージング・ディレクター

政府が地政学的目的を達成するために輸出規制や産業政策へ傾斜していくにつれて、企業は外交政策の目的であると同時にそのための手段とされつつある。だが、企業の利益が、米政府が考える利益と常に同期するわけではなく、しかも、企業が政府以上に多くの情報をもっていることも多い。アメリカの国益を調整し、保護するというワシントンの最終的役割を考えれば、政策決定者は(企業の協力を必要とする)この新しいパラダイムに適応していく必要がある。民間企業との協議を制度化し、産業界の専門知識に資金を提供し、経済情報を充実させることは、よいスタートになる。政策立案者は民間セクターについて、これまでとは根本的に異なる捉え方をする必要がある。

プーチンとロシアの未来
―― 浪費される資源と帝国の野望

2024年4月号

アンドレイ・コレスニコフ カーネギー・ロシア・ユーラシア・センター シニアフェロー

プーチンは「特別軍事作戦」を開始するにあたって、ポスト・ソビエトの民主的遺産も否定した。民主的制度の確立に始まり、検閲の廃止、ロシア文化とヨーロッパ文化の再統合にいたるまで、プーチンは、1985年以降にロシアが成し遂げた成果のすべてを、一気にテーブルから振り落とした。その後、短期間で、残された民主的制度を粉砕し、ソビエト期に匹敵する抑圧・監視体制を再確立した。それは1945年以降に出現し、1989年以降に支配的となった世界秩序との決別を意味した。ここからロシアはどこへ向かうのか。侵略というウクライナでの彼の高価なプロジェクトは、実際には、ロシアの経済的、人口的未来に地雷をしかけたようなものだ。

経済安全保障とラテンアメリカ
―― 中国に代わるサプライチェーンの確立を

2024年4月号

シャノン・K・オニール 米外交問題評議会 副会長(研究担当)

アメリカは重要鉱物の80%を外国から調達しており、ニッケル、マンガン、グラファイトといったバッテリー製造に使われる鉱物はとくに中国に大きく依存している。マイクロチップの60%、そして最先端の半導体チップの90%は、中国の脅威にさらされている台湾で製造されている。こうした現状には大きなリスクがある。しかし、われわれはラテンアメリカに目を向けることができる。南部国境以南の国々について、「良いフェンスが良い隣人をつくる」と考えている米指導者もいるかもしれないが、それは、大きな間違いだ。ラテンアメリカをサプライチェーンに深く統合せずに、経済的な同盟国をアジアやヨーロッパという遠くに求め続ければ、ワシントンは、さらに大きな中国の影響力が裏庭におよぶことを後押しすることになる。

ドイツ経済の試練
―― 改革を阻む構造的要因

2024年4月号

スダ・デービッド=ウィルプ 米ジャーマン・マーシャル・ファンド ドイツ地域ディレクター兼シニアフェロー
ヤコブ・キルケガード ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー

ドイツ経済の強さの歴史的源泉が、エネルギー集約的で化石燃料を使用する産業にあることを考えれば、経済構造の移行には官民双方での大規模な投資も、すぐれた労働力も必要になる。だが、現状では、投資を阻む「債務ブレーキ」の制約が行く手を阻み、移民を嫌う右派ポピュリズムが台頭している。経済が停滞しているにも関わらず、厳しい財政ルールと連立政権内の分裂が、ドイツが必要とする規模の改革を阻んでいる。それでも、軍需産業を強化するだけでなく、脱炭素化を加速するグリーン産業、世界経済の未来を形作る新技術に国の資源を投入しなければならない。そして、経済成長を支える移民政策を守る政治的意志を結集する必要がある。・・・

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