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テーマに関する論文

新興大国と覇権国
―― 衝突は不可避なのか

2024年9月号

マンジャリ・チャタジー・ミラー 米外交問題評議会シニアフェロー

覇権国と新興大国は、衝突する運命にあるのか。現実には、台頭する新興国は、既存の規範の多くを守り、一部の側面を拒絶するときも他の新興大国と協力して慎重に行動する。そうすることで、現秩序のなかで自らの台頭を強化すると同時に、新しい秩序を構築する力をつけるまで、覇権国を弱体化させようとする。だが、覇権国が国際秩序をどのように管理するかで、対立が紛争に発展するかどうかが左右される可能性もある。覇権国にとって、新興大国の脅威に対処する最善の方法は、新興大国と対立したり、打ち負かそうとしたりすることではなく、国際秩序を利用して封じ込めることかもしれない。

米中対立と第一次世界大戦の教訓
―― 中国と20世紀初頭のドイツ

2024年9月号

オッド・アルネ・ウェスタッド イェール大学教授(歴史学)

第一次世界大戦前のドイツとイギリスのように、米中は下方スパイラルに巻き込まれているかにみえる。100年前と同様に、経済競争、地政学的懸念、深刻な相互不信が紛争リスクを高めている。かつての英独同様に、重要な問題をめぐって協力するきっかけがあっても、米中は、いさかいや些細ないら立ち、戦略的不信の高まりによって身動きできなくなっている。貿易戦争を封じ込め、より大規模な紛争の火種となるかもしれない(ウクライナや中東などでの)熱い戦争を終結させるか、少なくとも封じ込めることに努力しなければならない。熾烈な大国間競争のなかにあるだけに、第一次世界大戦への道がそうだったように、小さな紛争が壊滅的な事態を引き起こす危険がある。

気候変動とポピュリスト
―― 温暖化対策と文化戦争

2024年9月号

エドアルド・カンパネッラ ハーバード大学ケネディスクール リサーチフェロー
ロバート・Z・ローレンス ハーバード大学ケネディスクール 教授(国際貿易、投資)

ポピュリストの指導者たちは、とにかく地球温暖化対策を目の敵にし、将来の利益よりも現在の満足を優先する人間の本質を利用して、政治的に成功を収めている。米民主党議員の59%が気候変動問題への対応を最優先課題にすべきだと考えているのに対し、共和党議員でそう考えているのは12%にすぎない。政治的主流派のリーダーは、より魅力的な政治戦略、もっと感情的なストーリー、よりボトムアップの参加型政策アプローチを通じて、市民をもっと温暖化対策へ動員し、気候変動に懐疑的な人々が温暖化対策のメリットを受け入れるように、貿易と技術革新を通じて、グリーンテクノロジーのコストを、化石燃料コスト以下に抑え込む必要がある。

東アジアと中国の核戦力
―― 核共有と軍備管理の間

2024年9月号

エイミー・J・ネルソン ブルッキングス研究所 フェロー
アンドリュー・ヨー 米カトリック大学 教授

中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。

イスラエルとヒズボラ
―― かつてない衝突へ

2024年9月号

アモス・アレル ハーレツ紙 国防アナリスト

いまやイスラエルは、北の国境地帯におけるヒズボラとのさらに大規模な戦争の瀬戸際にあるようだ。イスラエルとヒズボラの立場は、リタニ川以南への影響力をめぐって真っ向から対立している。仮にバイデン政権が、国境周辺からのヒズボラの撤退を含むイスラエルとヒズボラ間の合意をまとめても、イスラエルの指導者たちは、ヒズボラとの決着を望む国内の声を無視するわけにはいかないだろう。イスラエル、レバノンは、民間人と国のインフラにかつてないダメージが及ぶような、全面戦争に直面する危険がある。

民主党の外交戦略
―― リスクの外交的管理を

2024年8月号

ベン・ローズ 元米大統領副補佐官 (戦略コミュニケーション担当)

誰が米大統領になろうとも、世界戦争は避けなければならない。深刻化する気候変動危機に対応し、人工知能などの新技術の台頭に取り組んでいく必要もある。問題を解決するために、アメリカがブラフや軍事力増強だけに依存するわけにはいかない。むしろ、外交に焦点を合わせなければならない。ウクライナの経済を支えて国家基盤を強化し、ロシアとの長期的交渉に備えさせるべきだ。イスラエルを支える一方で、パレスチナ人の新たな指導者の育成とパレスチナ国家の承認に向けて努力する必要がある。そして、台湾の軍事能力に投資する一方で、北京とのコミュニケーションチャンネルをつくり、問題の平和的解決への国際的支持を動員しなければならない。

イギリスの新外交政策
―― 健全化した外交姿勢、山積する課題

2024年8月号

セバスチャン・マラビー 米外交問題評議会 シニアフェロー

イギリス市民の多くは、ヨーロッパとの関係修復に前向きになり、欧州連合(EU)や北大西洋条約機構(NATO)への支持も高まっている。「NATOや防衛に前向きの姿勢をとり、ウクライナを支持し、少なくとも反ヨーロッパではない」。このイギリスの外交アウトルックは、労働党政権の外交基盤としても有望だろう。だが、イギリスは、山積する外交課題に直面する一方で、低成長や多額の公的債務の重荷に苦しみ、高齢者介護や公的医療保険制度(NHS)をはじめとする公共サービスへの投資を求める大きな国内圧力にさらされている。

貿易で紛争を防げるか
―― 貿易と平和の真実

2024年8月号

スティーブン・G・ブルックス ダートマス大学教授(政治学)

貿易の拡大とグローバリゼーションが戦争を抑制すると考えるのも、戦争を促すと考えるのも間違っている。世界経済と国際安全保障の関係は複雑だ。重要な要素も、そうでない要素もある。かつて米政府高官たちは、対中経済エンゲージメントはアメリカの安全保障にプラスの作用しかもたないと信じていたが、いまや、この政策は大失敗だったと考えられているようだ。しかし、政策立案者は、どちらの考え方も間違っていることを理解しなければならない。通商は平和の促進には役立たないし、有害でもない。その両方の作用をもつ。

政治暴力と民主主義の危機
―― アメリカの分裂と政治危機(7/14)

2024年8月号

ロバート・リーバーマン ジョンズ・ホプキンス大学 教授(政治学)

「トランプの暗殺未遂事件が、アメリカがひどく分裂しているタイミングで起きただけに、(今後が)非常に心配だ。分裂が極端になると、もはや選挙での対立候補間のゲームではなく、死闘のようなものになる。人々は、支持しない候補が勝利すれば、自分の価値が道徳的に脅かされるだけでなく、自分たちが理解する国の存続が脅かされると考えるようになるからだ。政治的分裂から深刻な社会暴力への道がそれほど遠いわけではない」

聞き手 ダニエル・ブルック 
フォーリン・アフェアーズ シニアエディター

世俗社会と宗教
―― 神なき時代と宗教の役割

2024年8月号

シャディ・ハミド ワシントン・ポスト紙 コラムニスト

科学が進歩し、商業的な豊かさが増せば、宗教は消えていくと考えた人たちは、全体像を理解していなかった。宗教を個人的で、私的な信心の問題とみなすだけでは不十分だ。宗教とは共同体的な活動でもあり、アメリカで、いわゆる絶望死がもっとも増えている地域は、宗教的信仰ではなく、宗教的な参加がもっとも減少している地域なのだ。ほとんどのアメリカ人は、今も信仰心はもっているが、それを広いコミュニティーと結びつけて表現できずにいる。そのために、彼らは、それを党派政治に向けるようになった。白人キリスト教徒の多くがドナルド・トランプを支持していることはよく知られている。あまり知られていないのは、「所属教会のない」キリスト教徒が、特にトランプに忠実であることだ。

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