アメリカの驕りを糺す
1998年7月号
GDPの伸び率がほぼ四%に達し、失業率もこの二十五年来最低の四・六%。しかも、インフレも二%以下という低レベル。このアメリカ経済の好調ぶりが、ヨーロッパ、日本、アジア経済の停滞とあいまって、アメリカはひとり景気循環の波を克服したとする「ニューエコノミー」論の台頭を促している。だが低い失業率は、主に労働市場における一過性の要因がもたらした一時的現象で、当然持続可能なわけではなく、インフレの兆候もすでに出始めている。加えて、言われるような「数字に表れない生産性の劇的な向上」が達成されたわけでもない。若干低めの失業率で成長を遂げたといっても、ニューエコノミーはオールドエコノミーとかなり似通っているのだ。米国で穏やかなリセッションが起こり、ヨーロッパ経済、日本経済が穏やかな回復を示し、新興アジアが急激に復活すれば、その虚構は打ち砕かれるはずで、そうなる可能性は決して低くない。