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テーマに関する論文

覇権か孤立主義か 強すぎる米国の行方

2000年5月号

サミュエル・R・バーガー アメリカ大統領補佐官(国家安全保障問題担当)

孤立主義的と覇権主義、アメリカのリーダーシップが今までになく必要とされるなかで、アメリカはどこに身を置くべきなのか。アメリカは「すべてに対応することも、世界中で行動を起こすこともできないが、なにもしないでよいことは断じてありえない」。穏やかな関与(エンゲージメント)政策こそ、政治的、経済的にアメリカにとって、そして世界にとっての利益なのだ。

なぜサウジは石油の高価格政策をとったか

2000年5月号

F・グレゴリー・ゴーズ/バーモント大学政治学準教授

サウジが石油の高価格政策へと転じたのは、短期的かつ切実に資金を必要としていたからである。巨大な財政赤字ゆえに、七〇年代に築きあげた寛大な福祉国家をまかなっていけなくなる一方で、福祉政策の打ち切りは、王族にとって政治的死を意味する。しかも、石油価格が再び低下していくのは目に見えている。世界最大の産油国であるサウジアラビアによる石油の供給と、この中東の同盟諸国の安定を保つには、国内の民営化や経済改革がなんとしても必要なことをサウジ政府に納得させなればならない。サウジの不安定化が、世界経済、中東秩序にどのような衝撃を与えるかを考えれば、この点でサウジを説得することの大切さは自明であろう。

お門違いのクリントン外交批判 

2000年4月号

スティーブン・M・ウォルト  ハーバード大学教授

今そこにある危険(現存する明白な危険)がない状態では、外交政策にも国内の党派政治が大きな影響を持つようになる。共和党は繰り返し大統領の対中政策を非難しているが、現実にはジョージ・W・ブッシュが唱えている対中認識はクリントンの政策と非常によく似ている。現存する国際機関を自分の都合のよい手段として用いるような態度は、将来アメリカを困らせることになるかもしれない。

日本は恐慌型経済から逃れられるか

2000年4月号

ポール・クルーグマン MIT経済学教授

「世界は、いまなお恐慌型の経済問題を抱えている」。とりわけ、「流動性の罠」に陥り、かつ構造的な経済の非効率に苦しむ日本は、世界不況の不吉な前兆であるかのようだ、とポール・クルーグマン教授は指摘する。アジアの経済危機を予測し、日本の経済政策にも多大な影響力を持つクルーグマン教授が、米国、アジア、ヨーロッパ、南米そして日本の経済政策の問題を解き明かし、世界経済へ向けた警告を発する。本稿は、一九九九年五月一八日開催の米外交問題評議会の討論会「恐慌型経済への回帰」の議事録からの要約・抜粋である。共同主催は、同評議会の Corporate and National Programs と Pacific Council on International Policy である。

アジアの軍事力がアメリカの優位を脅かす

2000年4月号

ポール・ブラッケン  イェール大学政治学・経営学教授

過去二百年にわたって世界の枠組みを定めてきたのは、欧米の軍事的優位だった。かつて国力の象徴といえば砲艦だった。次いで戦艦となり、そして巡航ミサイルやステルス爆撃機へとそれは代わっていった。その間、これらの軍備を独占してきたのは、欧米諸国であった。しかし、そうした欧米による先進軍事技術の独占時代も、いまや終わりを迎えようとしている。今日では、イスラエルから北朝鮮にいたる十にものぼるアジア(東洋)の国々が、通常兵器や大量破壊兵器(WMD)を搭載した弾道ミサイルや、その他の先端技術を手にしようとしている。世界のバランス・オブ・パワー(勢力均衡)が大きく変わろうとしているのだ。第二次世界大戦後の冷戦期が第一の核時代だとすれば、アジアの軍事力の台頭は、第二の核時代がやって来ることを告げている。欧米がつくりだした世界の枠組みが変わろうとしているのは、軍事面だけではない。こうした変化は、文化的・哲学的な意味においても起こりつつある。一九六○年代と七○年代に経済分野で存在感を強めたアジア諸国は、いまや軍事分野でも存在感を強めつつある。これらの諸国が保有する兵器のことを考えると、欧米によるアジアへの干渉は平時においてすら、これまでになく危険でコストの高いものになるだろう。欧米諸国の軍事力は、非欧米諸国の弱い軍隊を打ち負かす以上の意味をもっていた。それは、欧米の方針に沿って世界を構築するための手段であり、さらに、商業・技術の全般におよぶ欧米優位の象徴として先進国と後進国の格差も表してきた。欧米の掲げる世界構想に積極的に反対すれば、敗北することが目に見えていただけに、一九九○年代初期までは、そのような反対者の出現はありえないと考えられていた。しかし、ペルシャ湾や旧ユーゴで示された、圧倒的なアメリカの軍事力にもかかわらず、欧米諸国の既成概念を打ち破る国が登場しつつある。これらの国々は、先進国との軍備格差を埋めようとしたわけではない。むしろ、アメリカの軍事力の裏をかき、アジアにおける米軍の弱点をつくような、妨害・非対称テクノロジー(disruptive technology)の開発に力を入れたのだ。欧米の戦略の基本的前提は、現在の技術的・軍事的均衡を維持し、その他の分野でも欧米支配を継続させることにある。しかし、それは(インド、パキスタンの核実験に象徴される)第二の核時代の幕開けによって覆されてしまった。一例をあげると、欧米が掲げる国際的課題はもっぱら経済的な視点から語られ、「大切なのは経済だ」という主張が、一九九○年代を通じて内政と同様に外交にも大きな影響を与えた。外交の主要任務はアジアの大国を欧米主導の経済システムに組み入れることと考えられていた。「どの時点で中国のWTO(世界貿易機関)加盟を承認すべきか」「どうすればインドに海外からの投資に対する規制を緩和させることができるか」「どうすれば新たな金融危機を予防できるか」といった問題設定は今でも適切ではある。しかし、欧米が依然としてアジェンダ・セッティングをし、アジアが世界システムに参加する条件を設定できるとみなすのは、果たして妥当だろうか。

プーチンの最大の敵は石油オリガ―キーだ 

2000年4月号

リー・S・ウォロスキー 外交問題評議会フェロー

ロシア政財界の最強のプレーヤーであるオリガーキーたちは、民主主義と市場経済の確立に向けたロシアの改革路線を脅かしている。巨大なロシアの石油産業を支配する者が、世界の石油供給の大部分を支配する。そしてロシアの石油を完全に支配しているのは石油オリガーキーたちだ。オリガーキーたちの略奪行為によってロシアの富はことごとく吸い取られ、政府を含むロシア社会の広範な層が貧困化している。

民主党次期大統領のグローバル経済対策

2000年4月号

W・ボーマン・カッター 前経済政策担当次席補佐官  ジョアン・スペロ 前経済・ビジネス・農業問題担当国務次官

ネットワーク経済(電子商取引)にだけ焦点を当てた具体的な多国間プロセスを開始すべきであり、これは民主党次期大統領が取り組むべき中心的な目標の一つとなろう。アメリカは日本をたんなる同盟国としてではなく、アジア太平洋地域の経済、政治、安全保障を守り、既存の多国間枠組みを強化し、新しい多国間枠組みを構築するためのパートナーとして扱うべきである。世界貿易機関(WTO)を環境問題の多国間交渉の場とするのではなく……環境問題に関する新しい国際公約を策定・実行する『地球環境機関(GEO)』の創設を新たに提案すべきだ。

多国間協調と単独主義の間

2000年2月号

ロバート・W・タッカー/ジョンズ・ホプキンス大学名誉教授

「グローバリゼーションは実在するが秩序を保証できないし、一方で多極世界は秩序を保証できるかもしれないが、実在しない」。したがって、アメリカがもつ支配的な力が世界秩序への特別な責任を作り出すのは避けられない。ここでの問題は、アメリカは単独で行動すべきか、あるいは他国とともに行動すべきか、という古くからのテーマにある。「国際コミュニティーによるコンセンサスなどいまなお幻想」なのだから、現実には原則や利益を共有する「より小さなコミュニティーによる支持」をアメリカは模索し、こうした諸国ととも多国間協調がともなう制約や妥協という重荷を担っていくべきだろう。アメリカが力の誘惑に抵抗できる唯一の国家だと信じこむのは問題がある。肝に銘ずべきは、「力に乱用は付き物だが、一方で力は責任を生む」という真理のバランスである。

デイトン後のボスニアの現実

2000年1月号

アイヴォ・ダールダー ブルッキングス研究所上席研究員

デイトン後のボス二アがなんとか生きながらえているのは、ひとえに国際援助のおかげである。現地勢力による自力再生の見込みはまったくたっていないし、援助もいずれ打ち切られる運命にある。しかも、世界の関心はすでにボスニアではなく、コソボの再建へと向かっている。国際社会は、敵対行為の抑止だけでなく、デイトン合意のもう一つの目的である、安定した経済基盤を備え、民主的で多民族から成るのボスニアの実現という野心的な課題を、もはや放棄すべきなのだろうか。それとも、その実現にむけて関与を再度強化させるべきなのだろうか。

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