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テーマに関する論文

グローバル議会の設立を提唱する

2001年3月号

リチャード・フォーク プリンストン大学教授 アンドリュー・ストラウス ワイドナー大学教授

人々のグローバリズムに対する不満が高まっているのは、世界の指導者たちが民主的統治へのコミットメントを示しつつも、民衆生活に影響を与えるようなグローバルレベルでの決定に対して市民が発言権を持っていないからである。グローバルな民主的フォーラム(グローバル議会)が誕生して初めて、環境・労働基準について討議したり、南北両方の観点から経済的公正さについて考えたりできるようになる。社会正義や人道的な世界秩序の形成に関心のある人々にとって、グローバル議会を中核とする民主的なグローバル統治が持つ魅力はこれまでになく高まっている。

米外交評議会緊急ミーティング
天安門ペーパーの衝撃

2001年2月号

ジェームス・ホーグ フォーリン・アフェアーズ誌編集長
ケニス・リーバサル 前国家安全保障会議アジア担当シニア・ディレクター
アンドリュー・ネーサン コロンビア大学政治学教授(天安門ペーパー共同編集者)
ジェームス・リリー 元駐北京アメリカ大使(1989-1991)
チャス・フリーマン 元国務省中国部長、元駐サウジ・アメリカ大使
オービル・シェル カリフォルニア大学教授

中国の民主改革路線派の人物によって、ひそかに中国から持ち出された膨大な量の中国政府機密文書を英訳・編纂した『天安門ペーパー』が書籍(The Tiananmen Papers, Public Affairs, New York)として二〇〇一年一月にアメリカで出版され、その抜粋がフォーリン・アフェアーズ二〇〇一年一/二月号に掲載された。この議事録は一月十一日にニューヨークの外交問題評議会で開かれたこの文書に関するディスカッションの要約・抜粋である。二人の元大使を含む五人の出席者はすべて中国専門家で、アンドリュー・ネーサンとオービル・シェルは天安門ペーパー編纂プロジェクトに直接かかわり、英語版の『天安門ペーパー』の序文とあとがきをそれぞれ書いている。またジェームス・リリーは天安門事件当時の駐北京アメリカ大使。

米中衝突を避けるには

2001年2月号 

デービッド・シャンボー

アメリカの将来にとって中国ほど重要な国はない。それだけに、中国との対立をもくろむ勢力がアメリカの政策立案過程を牛耳ることになれば、世界は大きく不安定化するだろう。朝鮮半島の情勢変化は、中国が受け入れるような形で、東アジア諸国とのアメリカの安全保障同盟を再定義・強化し、アメリカ軍の前方展開を維持できるような地域安全保障枠組みを構築する必要を高めている。新大統領は、対中政策を政治的論争から外すことの重要性を訴え、北京と台北に関するアメリカの死活的な利益が何であるかを明確にし、こうした複雑な関係を取り扱うための明確なビジョンを表明すべきである。

北東アジアの新局面

2001年2月号

ケント・E・カルダー 駐日アメリカ大使特別補佐官

金大中は南北首脳会談を通じて北朝鮮を孤立から救い出し、日本を安心させ、韓ロ双方にとって互恵的な経済取り決めによってロシアの利益認識も刺激してみせたが、北東アジアでの新たな力学はより大きくて予期せぬ変化を表へと引きずり出すかもしれない。一九九〇年代半ばに二十基だった台湾海峡地域に配備された東風二号などの短距離ミサイルの数は、九九年までに二百に達し、いまや一週間に一基ずつ増え続けている。現在形成されつつある流動性に満ちた北東アジア秩序には、一連の二国間安保関係だけでなく、トラック二プロセスを含む、より幅広い包括的安全保障メカニズムが必要である。

ジョナサン・シェル論文によせて
核兵器は平和のための道具である

2001年1月号

アーネスト・W・レフィーバー

核兵器はグローバルな舞台のドラマにおけるアクターではなく、間違いを犯す人間が、うまく利用することも、あるいは間違った使い方をすることもできる道具にすぎない。潜在的な危険を秘めているとはいえ、これまでのところ核兵器は平和を維持する手段として機能してきている。

冷戦期の核ドクトリンは、今となっては意図とは反対の結末しかもたらさない。すでに相互確証破壊に基づく抑止の時代は過ぎ去っており、むしろアメリカは「相互確証安全」という新概念を生みだす機会を手にしている。

「核廃絶か 止めどない核拡散か」(「フォーリン・アフェアーズ」、二〇〇〇年九/十月号、「論座」二〇〇〇年十月号)のなかで、ジョナサン・シェルは、いつもどおり歴史の流れを踏まえた知的な見解を示し、核保有国がともに核廃絶のための計画を立ち上げて、それを実行に移さない限り、国際社会の流れが核拡散へと向かいかねないと警鐘を鳴らした。ワシントンによる(核不拡散と抑止を抱き合わせた)戦略は、世界の核トレンドを拡散容認という方向へと向かわせかねない、と。さらに、シェルは、大統領が(核廃絶、あるいは核の削減についての)現状の政策の改革案を示さないかぎり、

核政策をめぐる世論を巻き込んだ広範な議論が実現したとしても、そうした機会が無為に費やされかねないと指摘した。ホワイトハウスが現行の戦略を見直し、官僚機構内の抵抗を克服するには、まず核の専門家たちが政府に、詳細を押さえた賢明な政策構想を示すべきだろう。

グローバル時代の大いなる交渉を開始せよ

2001年1月号

デビッド・サンガー ニューヨーク・タイムズ紙記者

新政権は、アメリカの圧倒的な経済優位を維持していくとともに、アメリカの力に対する世界の反発をいかに緩和するかという、大きな課題に直面する。シアトルでの交渉決裂は、発展途上国が自らの立場を表明し始めたためであり、いまやわれわれは全く新しい貿易環境における新たな取り決めを必要としている。グローバルな経済秩序が途上国に恩恵を与えない限り、日米欧がそこから利益を引き出すのも不可能になる。

Review Essay
アジアの資本主義と文明の変容

2001年1月号

外交問題評議会シニア・フェロー
ウォルター・ラッセル・ミード

企業家の野心を解き放ち、社会的つながりを弱めていく、あたかも台風のような資本主義の創造的破壊力がアジアを引き裂いている。資本主義と西洋の源流思想が、どちらもアジアの大半の地域にはまだ目新しい存在であるために、これが外来思想、あるいはおそらく不法侵入者のように受け止められることも多い。二十一世紀が、アジアの興隆に特徴づけられる可能性もあれば、一方でアジアの終焉によって記憶されることになる可能性も十分にある。間違いなく言えるのは、すべてをのみ込んでしまう資本主義や西洋の源流思想が、「地理的アジア」の人々に深い社会的・文化的変化を強い、この地域の諸文明を弱め、変容させていく可能性が高いことだ。

終わりなきカシミール紛争の本質

2001年1月号

ジョナー・ブランク/人類学者

かつてカシミールは、ヒンズー教徒とイスラム教徒が調和のなかでともに暮らす、世俗的な多宗教国家としてのインドの可能性を示す模範地域だった。しかし今やここでは、インドとパキスタン間の核戦争の引き金となりかねない武力衝突が頻繁に起きている。パキスタンの支援の下で活動しているといわれるイスラムゲリラがヒンズー教徒を攻撃し、これにインド政府の治安部隊が反撃するというパターンが終わることなく悪循環のように繰り返されており、民間人を含むすべての人々が暴力に手を染めている。カシミールが安定しないかぎり、インド、パキスタンの安全は確保されず、両国民衆の協調がなければカシミールが安定することもない。たとえ政府間の合意が成立したところで、それは臨界に達していない核爆弾も同然である。本質的問題は宗教対立よりも、むしろこの地域の経済的貧困にあるからだ。事実、多くの若者が食いぶちを稼ぐ「仕事」としてゲリラ活動に参加している。テロによって、カシミールの最大の資源である自然を生かした観光産業も台なしとなり、復興しようにもテロリズムを根絶するのは事実上不可能である。核戦争の危険を排除し、カシミールの平和を取り戻すには、まず、悪循環の根源であるカシミールの経済的貧困に世界は目を向けなければならない。

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