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テーマに関する論文

国際金融制度を脅かすダーティー・マネー

2001年9月号

ウィリアム・F・ウェシュラー  前米財務長官特別顧問

「口座情報の厳格な機密保持、顧客情報公開という行為の犯罪化、そして、他国の法執行当局との国際協調の禁止」を自国の法律に盛り込みさえすれば、スイスやケイマン諸島でなくても、簡単にダーティー・マネーを魅了できることを各国が理解し始め、いまや不法な資金の避難地域は世界に広く拡散している。こうした課税回避行動やマネーロンダリング行為ゆえに、国内でまじめに納税している市民の税負担の重みが増しているだけでなく、世界各地で金融メルトダウンが誘発されている。

中央銀行は失業率を気にせずに、インフレ率だけを見ていればよいとするインフレターゲット論者は、経済成長と完全雇用の達成にとらわれている中央銀行には問題があり、慢性的な高失業率という犠牲を払ってでも物価安定を達成してきたドイツ連銀のような中央銀行こそが正しいモデルである、と言う。完全雇用、安定成長、妥当な物価の安定の実現は彼らの言うように本当に不可能なのか?

債務救済の理念と現実

2001年9月号

M・A・トーマス  メリーランド大学経済学部付属研究所副所長

HIPC債務救済イニシアチブが、救済措置適用国の貧困層を潤しているわけではない。債務を帳消しにするとしても、その条件として、資金の有効な利用と構造改革の実施を義務づけない限り、貧困層が救われる可能性は低い。だが、迅速な債務救済をやみくもに求める現在の政治圧力は、そうした条件を考案し強制することをむしろ妨げてしまいかねない。HIPCで社会サービスが機能していない直接的理由は、社会保障支出が債務の金利支払いに充てられているからではなく、HIPCの統治がなっていないからである。水をザルでは運べないように、こうした諸国で社会保障支出を増やしても、社会サービスがそれを必要としている人々のところに届くわけではない。

崩壊する「日本というシステム」

2001年9月号

レオナード・J・ショッパ バージニア大学準教授

いまや日本人は、日本のシステムからの「退出」路線を選ぶほうが、政府の政策を変えようと試みるよりも好ましいと確信しているようだ。運命共同体的な日本企業も二分され、競争力のある企業は自分だけのボートを保有するようになり、その結果、競争力のない企業が救済措置を求めて日本政府へ影響力を行使することにも異を唱えなくなった。日本の銀行や政府が、形ばかりの再建案と引き換えに、いまも債務まみれのゾンビ企業への新規融資や公共事業を提供するなか、競争力のある日本企業、老後を心配する市民、若い女性たちはこれまでの日本のシステムから退出しつつある。

Classic Selection 2001
日本システムから退出する企業と個人

2001年9月号

レオナード・J・ショッパ バージニア大学准教授(論文発表当時)

いまや日本人は、日本のシステムからの「退出」路線を選ぶほうが、政府の政策を変えようと試みるよりも好ましいと確信しているようだ。運命共同体的な日本企業も二分され、競争力のある企業は自分だけのボートを保有するようになり、その結果、競争力のない企業が救済措置を求めて日本政府へ影響力を行使することにも異を唱えなくなった。日本の銀行や政府が、形ばかりの再建案と引き換えに、いまも債務まみれのゾンビ企業への新規融資や公共事業を提供するなか、競争力のある日本企業、老後を 心配する市民、若い女性たちはこれまでの日本のシステムから退出しつつある。

レビュー・エッセイ
核の存在理由を問い直せ

2001年8月号

ロバート・ジャービス  コロンビア大学国際政治学教授

アメリカの安全保障政策をうまく機能させるには、その政策を国際社会が受け入れて認めることが前提だが、現実には世界の多くの諸国が、(北朝鮮やイラクよりも)むしろアメリカのことをならず者の超大国と見ている。ミサイル防衛構想に関連して、大量破壊兵器、ならず者国家、テロリズムに対する脅威認識が高まっているのは、アメリカの安全保障に対する伝統的な脅威が存在しなくなったためであり、これらが現実上の問題だからではない。外交政策の一手段として核兵器が存在するわけで、その逆ではないことを認識し、核兵器がどのように外交を利するかが、核の論争の基本テーマでなければならない。

いまそこにあるサイバー攻撃という危機

2001年8月号

ジェームズ・アダムズ  米国家安全保障局諮問委員

今日の情報戦争は、ハッカーたちが敵対する相手国のコンピューター・ネットワークを機能不全に陥れるという戦闘形態を特徴とする。これこそが、軍事力ではアメリカに遠く及ばないことを悟った他の諸国がアメリカの弱点であるコンピューター・ネットワークを攻撃するという「非対称戦争」である。しかも、サイバー戦争には、法的境界線もなければ、地理的な境界線も存在せず、一般に入手可能な技術で、アメリカの戦争遂行能力を簡単に機能麻痺に陥れることができる。

国際法は戦争犯罪をどこまで追い込めるか
~国際法と国内法のあいだ~

1999年3月号

ジョン・R・ボルトン アメリカン・エンタープライズ公共政策研究所 上席副会長

戦争犯罪、大量虐殺、人権弾圧などの、世界の他の地域での「非人道的犯罪」に対するマスコミや市民権運動家たちの関心は高まる一方だ。一部には、「人間性に対する犯罪は、もはや虐待行為が行われた国だけの問題ではない」のだから、国際法をつうじて一律に処罰すべしという声も出てきている。たしかに、民意を代弁できる世界政府(あるいは国際機構)、そして世界憲法(あるいは強制力を伴う国際法)が存在すれば、特定の国家の内部で起きた非人道的事件をグローバルな規模でとりしまり、処罰するのも可能になるかもしれない。しかし、現実にはそのようなものは存在しないし、それが実現する見込みもない。国家は憲法を持ち、その憲法を軸に政府が秩序を維持し、しかも、政府がそうする権限は選挙をつうじた民意に支えられている。これを世界規模へと広げるのは、事実上不可能であることを認識した上で、問題に対応するしかない。だが、われわれはいずれ「憲法」と「国際法」のせめぎ合いの時代が到来する可能性に備えるべきだろう。

グローバル統治の民主化を促進するには

2001年8月号

ジョセフ・S・ナイ  ハーバード大学教授

グローバル化に対する政治的反発が、一足飛びに保護主義的な政策として結実するならば、世界の経済的統合の流れは逆流し始め、その一方で、グローバル化とともに生じた(トランスナショナルな)問題が放置されることになる。われわれは、すでに存在するグローバル統治のための枠組みを拡大して状況に対応していくべきであり、それには、とかく閉鎖的と見なされがちな国際機構側の説明責任と透明性を強化していく必要がある。

米欧対立の行方

2001年8月号

ウィリアム・ウォレス  英自由民主党・防衛問題担当スポークスマン

ヨーロッパ人は重荷を共有するのなら、決定責任も共有すべきだと感じている。自らのリーダーシップを通じて戦略を決めておきながら、そのリスクに伴う代価を支払おうとしないワシントンの姿勢ゆえに、アメリカは同盟諸国の尊敬や支持を失いつつある。アメリカが政治・軍事領域での問題を過度に重視し、特に潜在的な敵勢力探しに躍起になっているのに対して、ヨーロッパ側はもっぱら経済問題を気にかけており、その結果、脅威の認識をめぐる米欧間の考えが明確に違ってきている。EUの拡大という見通しやNATOの拡大によってEUの能力が強化され、北米とヨーロッパ諸国の外交利益が違ってきている以上、米欧パートナーシップを再定義する必要がある。

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