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テーマに関する論文

日中関係はどこへ向かうのか
 ――政治化された歴史とライバル意識の行方

2006年3月号

ケント・E・カルダー  ジョンズ・ホプキンス大学ライシャワー・センター所長。

小泉首相の個人的、政治的思惑が何であるにせよ、そして、その意図がうまく理解されていないとしても、彼の靖国参拝は、国際的に日本の外交路線を大きく誤解させる火種をつくり出し、日本と中国の指導者が2国間の経済・安全保障関係を管理していくのをますます難しくしている。しかし、ポスト小泉の指導者は大きな機会を手にすることになる。新首相は、日中の首脳会談を復活させ、エネルギー・環境問題をめぐる中国との対話路線を強化し、世俗的な戦没者追悼施設建設の可能性を模索し、靖国神社への参拝を慎むことができる。こうした路線をとれば、日本は外交的な優位をつくり出せるし、日本と中国は、とかく政治的論争となりがちな歴史問題に気を奪われることなく、両国の関係の安定化という真の課題に取り組めるようになるだろう。

ワールド・エコノミック・アップデート  
――原油高騰、米経常赤字、保護主義を検証する

2006年3月号

スピーカー モルガン・スタンレー社 チーフエコノミスト スティーブン・ローチ
ドイツ銀行証券 チーフUSエコノミスト ピーター・フーパー
JPモルガン投資銀行 副理事長 ジョン・P・リプスキー
司会 ジョージタウン大学教授 ダニエル・K・タルーロ

「アメリカ議会は、ますますポピュリスト(大衆迎合)的な方向へと傾斜しており、きわめて保護主義的になっている。(中略)外国資本にこれほど依存しているというのに、アメリカの政治家たちは、われわれの命綱とも言える外国資本の流入を自ら止めようとしている」(S・ローチ)

「1970年代のオイルショックの原因は原油の『供給』が制限されたことによって起きたが、今回の価格高騰は原油の『需要』増に起因している。(中略)1バレル100ドル位まで高騰しないとオイルショック並の危機は起こらないと考えることもできる」(P・フーパー)

「私は、2006年は世界経済にとっての大きなターニングポイントになると考えている。主要国の経済成長が(経済のグローバル化に伴う変動期を経て)安定成長路線へと回帰しつつあるからだ」(J・P・リプスキー)

新エネルギー安保を構築せよ  
――現実に即した新パラダイムを

2006年3月号

ケンブリッジ・エネルギーリサーチ・ アソシエーツ(CERA)理事長 ダニエル・ヤーギン

先進国ではエネルギー安保とは十分な供給を妥当な価格で確保することと考えられているが、産油国、途上国にとっては別の意味合いをもつ。需要ショックを経験しているいまや、供給ショック、先進国の立場だけを前提とする現在の安保システムでは状況に対応できない。需要の高まりだけでなく、テロの脅威、産油国の政治的混乱、紛争、石油シーレーンでの海賊行為という問題も、エネルギー安保の脆弱性を高めている。中国とインドを先進国のエネルギー安保システムに参加させ、世界のすべてのサプライチェーンとインフラを守り、危機に際しては規制を柔軟に緩和し、国際情勢を十分に視野に入れた新たな安全保障構想を構築する必要がある。

膨大な石油資源を持ちながらも、治安問題、インフラの不備、さらには法環境の整備がまだできていないために、イラクは実質的に石油を輸入している状態にある。大手外国資本も、治安問題ゆえにイラク石油資源への投資にはまだ乗り気ではない。さらにやっかいなのは、石油からの歳入をどう分配するかについて国内的な対立があることだ。石油資源豊かな北部と南部では、連邦政府が管理するのは既存の油田だけなのか、これから発見される油田も含むのかをめぐって論争が起きているし、すでにスンニ派は、クルド人がバグダッドを迂回して、外国の石油企業と開発合意を交渉するのは憲法に反すると批判している。

石油需要の増大は、エネルギー資源の輸入国から輸出国への世界規模での大規模な富の移転という現象を引き起こしており、エネルギー資源輸出諸国の経常黒字は最近では4000億ドル規模に達している。とはいえ、これが直ちに石油輸出国のGDPの引き上げにつながるわけでも、1人あたり所得の増大をもたらすわけでもない。その理由は多岐にわたる……

原油価格の高騰が続くなか、石油に替わるエネルギー資源の開発を模索していく価値は十分にあるが、代替エネルギーに過大な期待をかけるのはやめた方がいい。運輸交通部門などで石油以上に効率的なエネルギー資源を得ることは、不可能に近い。しかも、代替資源に切り替えるにはインフラを一新しなければならないため、そのコストを考えるといかなる代替エネルギー資源も、石油よりも割高になってしまう。ただし、地球環境への長期的な負担を軽減するには、代替エネルギーの研究開発を今後も進めていく必要がある。

CFRインタビュー
ポール・ブレマーが回顧するイラク占領

2006年2月号

ポール・ブレマー 前暫定占領当局(CPA)代表

米兵力の増強を認めないペンタゴンとの対立、旧イラク軍解体と新イラク軍創設の真相、イラク統治評議会(IGC)はなぜ機能せず、ゲリラ勢力に対する作戦はなぜうまくすすまなかったか。2003年5月からイラクが主権を回復する04年6月まで暫定占領当局(CPA)代表を務めたポール・ブレマーが回顧するイラク占領の真実。05年1月にイラク占領の回顧録(My Year in Iraq: The Struggle to Build a Future of Hope)を出版したブレマーは、H・キッシンジャー元国務長官の秘書官、駐オランダ米大使などを務めた国務省官僚で、テロ問題の専門家。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

新生イラクにおける女性とイスラム

2006年2月号

イソベル・コールマン 米外交問題評議会シニア・フェロー

イスラム法を重視する憲法が導入されたことで、イラクはタリバーン時代のアフガニスタンのような原理主義、あるいはイランのような神権政治へと回帰し、女性に対する差別と抑圧がイスラムの名の下に正当化されてしまうのだろうか。「憲法がイスラム法重視をうたっているからといって、直ちにイラク人女性が難しい状況に置かれるわけではない」とコールマンはみる。どのようなイスラム法の解釈が新生イラクの法制度において優先されるかで道は分かれる、と。イスラム保守派人口が多い環境のなかでは、西洋の論理を振りかざすのではなく、イスラム法解釈の枠内で、シャリアの進歩的解釈を盾にイスラム改革をめざすべきだ、と彼女は提言する。

マドラサは本当に脅威なのか
 ――イスラム過激主義とマドラサ

2006年2月号

イギリス外務連邦省 アレキサンダー・エバンス

専門家たちは、パキスタンのマドラサが黒幕であるとみられる比較的少数の紛争やテロの事例を基に、すべてのマドラサが狂信主義を子供たちに植え付けていると判断してしまっている。だが実際のマドラサはわれわれがイメージするようなものではない。南アジアの村の子供たちの多くにとって、マドラサは読み書きを習える唯一の場所だし、マドラサは親を失った子供たちや貧困家庭の子供たちの多くに社会サービスを提供している。マドラサに対して上から何かを強制し、締め付けるのではなく、マドラサ内部での改革を促す必要がある。

CFRインタビュー
米副大統領前顧問が語る北朝鮮問題の本質
――アメを与えるだけでは問題は解決しない

2006年2月号

アーロン・L・フリードバーグ 前国家安全保障問題担当米副大統領副補佐官

「北朝鮮にアメを与えれば、彼らも未来に期待をもつようになり、援助や安全の保証と引き替えにこれまで試みてきた核開発計画を放棄すると考えるのは非現実的だ」。金正日の目的は自らの生存を確保することにあり、自分の権力基盤を揺るがす開放路線・経済改革路線などまじめに検討してはいない、とみるアーロン・フリードバーグは「北朝鮮との交渉を続けるとともに、彼らを締めあげる必要がある」と述べる。チェイニー米副大統領の国家安全保障問題担当副補佐官を務めた同氏は、「紙幣・貨幣偽造や資金洗浄などの北朝鮮の問題を公表し、偽造たばこ、麻薬取引など、北朝鮮が関与していると思われる不法行為を暴き、資金源を断つ必要がある」と強調した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。邦訳文は英文からの抜粋・要約。

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