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テーマに関する論文

いまや、国境を超えた資金の流れは一日あたり2兆ドル規模に達し、その90%程度は、財やサービスの貿易とは関係のない、金融セクターで取引されている。かつての貿易の流れ同様に、こうした巨大資金の流れを司る金融都市の存在はその国の経済的繁栄だけでなく、政治的な影響力を強化し始めており、多くの国がこの点に気づきだしている。こうして金融センター再編の流れが起きている。金融センターの覇者としてのニューヨークの地位は、いまやロンドンに脅かされつつあるし、世界各地で新たな金融センターがプレゼンスを築きつつある。こうした変化は、長期的にはグローバルな経済および地政学的な構図を変化させる可能性を秘めているとみる専門家もいる。

CFRインタビュー
パレスチナの分裂は当面続く

2007年7月号

ネーサン・ブラウン カーネギー国際平和財団シニア・アソシエート

ガザ地区のハマスはいまも政権を担っていると主張し、一方西岸のアッバス議長も「ハマスがクーデターを起こした」ため、「ハマスの閣僚は解任した」と主張し、すでに新政権を立ち上げている。自治政府の議長は首相や閣僚を解任する権限は持っているが、新たな人物を閣僚に任命する権限はない。「つまり、政治的ではなく、法的観点からみれば、統治組織としてのハマスのプレゼンスの方が強く、アッバスの主張の根拠は弱いということになる」。パレスチナの現状をこう分析するアラブ政治の専門家、ネーサン・ブラウンは、双方とも、自らの政府こそ「パレスチナのすべてを代弁する正統政府である」と主張しており、世論の支持をめぐって、ハマスとファタハは競い合っている状態にある、と状況を分析する。短期的には、「一方が他方を制圧する可能性はほとんどないし、両勢力を和解させようとする試みが、成功するとも思えない。だが、時間が経てば、ファタハは、必然的にサウジがまとめた統一政権樹立のためのメッカ合意へと再び目を向けざるを得なくなる」と同氏は今後を見通した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
北朝鮮は本当に核を解体するのか

2007年7月号

アラン・D・ロンバーグ ヘンリー・スチムソンセンター シニア・アソシエート

軽水炉の提供に加えて、今後北朝鮮は、国際金融システムへのアクセスを認めるようにと要求してくるかもしれない。2007年2月の合意の「次の段階」で想定されている、「すべての核施設の解体は考えられている以上に難しい」と北朝鮮問題の専門家アラン・ロンバーグは言う。そのためには、北朝鮮は核開発計画の全貌を明らかにしなければならないし、必然的に、これまでその存在を肯定も否定もしていないウラン濃縮計画が大いに注目されることになるからだ。仮に合意の初期段階措置が終わっても、次の段階では核分裂物資の解体という難題が控えており、現時点では、彼らが本気で核兵器を放棄するつもりがあるのかどうかはっきりしないと同氏はコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

働き口とよりよい生活を求めて、数多くのアフリカの人々が、危険を顧みずに、ヨーロッパを目指して地中海の旅へと繰り出している。アフリカからの移民・難民が殺到しているヨーロッパ諸国は、経済移民および政治・経済難民の受け入れ制度を改革し、域内で調和させる必要性に直面しつつあり、欧州連合(EU)も、これを経済、人道上の緊急課題と捉えだしている。だが、ヨーロッパ各国がこの問題をめぐって、立場を共有しているわけではない。殺到するアフリカからの難民に特に悩まされているのが、地中海沿岸に位置する南ヨーロッパ諸国だ。一方、移民、難民の増大に悩まされる一方で、ヨーロッパ社会の高齢化が進み、出生率が低下するなか、EUは、近い将来に労働力不足に陥ると考えられている。つまり、そこには、アイデンティティーを脅かすアウトサイダーとしての移民、貴重な労働力としての移民という認識上のジレンマがあるだけでなく、その受け入れをめぐって加盟国間に立場の違いがある。

クラシック・セレクション
CFRミーティング
ヒラリー・クリントンが語る
世界を混乱に陥れたブッシュ外交

2007年6月号

スピーカー
ヒラリー・クリントン 米上院議員
司会
ピーター・G・ピーターソン 米外交問題評議会(CFR)理事長

――2000年11月7日、ヒラリー・クリントンは米国史上初めて、ファーストレディーを経験した上院議員になり、2004年には、米統合軍変革に関する国防総省諮問委員会のメンバーに選ばれた唯一の上院議員となりました。現在、ニューヨーク州選出の上院議員としては史上初めて上院軍事委員会のメンバーも務めています。彼女は上院議員として、イラク、アフガニスタン、クウェートをそれぞれ2度にわたって事実調査のために訪問し、この他にも、数多くの国を視察しています。ご存じのとおり、自伝である『リビング・ヒストリー』をはじめ、数多くのベストセラーも送り出しています。

経済ブームに沸き返り、軍事支出を拡大し、依然として台湾との緊張した関係を続ける中国に対して、民主・共和両党の候補たちは、いずれも警戒感を持っている。巨大な規模の米財務省証券を中国が抱え込んでいることにも、アメリカが中国との貿易によって大きな赤字を抱え込んでいることにも、大統領候補の多くは危機感を抱いているようだ。一方、北朝鮮については、民主党系候補の多くが平壌との直接交渉を求め、共和党系候補は中国がもっと平壌に大きな圧力をかけることを期待している。現実には、ヒル国務次官補が6月下旬に平壌を訪問したことで、ブッシュ政権は、主に民主党系の候補が求めていた直接交渉路線を取り込んだことになる。報道によると、アメリカ政府は、米国、中国、韓国、北朝鮮の4カ国をメンバーとする、朝鮮半島の恒久的和平を目指す機構の創設を検討するよう求めるとともに、6者協議のすべてのメンバーが参加する「北東アジア安全保障対話フォーラム」の構築も提案している。東アジアにおける安保新枠組みというテーマは、本号掲載の「ジャパン・アップデート」(45ページ)でも議論されている。

米英の政府関係者は、ここにきて、「イランがタリバーンに武器を提供している証拠が出てきている」と相次いで発言している。だが、シーア派のイランが、スンニ派が主体のタリバーンを支援する必然性が本当にあるだろうかという大きな疑問がある。一方で、タリバーンを短期的に支えることはイランの利益になると指摘する専門家もいる。タリバーンを支援することで、アメリカの戦力バランスを崩すとともに、自国の核開発に寄せられている国際的関心と批判を低下させることができれば、それは、テヘランにプラスに作用する。歴史的にイランとアフガニスタンは複雑な関係にあるが、2001年のタリバーン政権崩壊以降は、少なくとも、両国間の商取引、文化的な交流は進んできたし、イランはカルザイ政権を支援してきた。米英が主張するように、イランがタリバーンに兵器を提供しているとすれば、その思惑は何なのか。米英の批判に対して、イラン政府は「根拠がない」と反論している。

CFRインタビュー
ガザは孤立しても、ハマスは封じ込められない
 ――二極化するパレスチナ

2007年6月号

アンソニー・コーデスマン 戦略問題国際研究所 戦略問題担当議長

先月号に掲載した「パレスチナ危機のなか、なぜ中東和平への機運が高まっているのか」でマーチン・インディクは、「国際社会の支援をバックにファタハが治安部門の強化を図っていることに危機感を募らせたハマスは、ファタハが力をつける前に粉砕しておく必要があると判断し、その結果、パレスチナは内戦状況に陥った」と分析した。インディクの予想通り、いまやファタハはガザ地区への影響力を失い、「西岸はファタハが、ガザ地区はハマスが支配する」という分断状況に陥っている。戦略国際問題研究所(CSIS)の中東問題の専門家であるアンソニー・コーデスマンは、ファタハによる統治がこれまで腐敗し、効率に欠けていたことを思えば、ハマスをガザに封じ込められるとは考えにくいと指摘し、今後、ハマスが力を得ていく可能性を示唆する。西岸(ファタハ、自治政府)とイスラエルの協調が進む可能性はあるとしても、パレスチナの二極化は当面続き、これが「イスラエル、アメリカ、西岸」と「イラン、シリア、ヒズボラ」の国際的対立として、広がりをみせていく危険もある。コーデスマンは二極化によって「パレスチナで大規模な紛争が起きるとは考えにくいが、パキスタンからアルジェリアにいたる一連の地域がますます不安定化する危険がある」と指摘した。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)

アメリカ政府は人民元は不当に過小評価されており、その結果、中国製品の競争力がますます強化され、グローバル貿易に大きなねじれが生じ、欧米諸国、特にアメリカの貿易収支に(巨額の貿易赤字として)大きなしわ寄せが来ているとみている。ヘンリー・ポールソン米財務長官は最近の米外交問題評議会(CFR)インタビューで次のように語っている。「中国の人民元のレートは中国経済の実態を反映していないし、すでにグローバルな金融システムの主要な一部を担いつつある中国が、経済の実態を反映しないような通貨を持っていることは大いに問題がある。短期的には、われわれは、より大きな柔軟性(変動幅)を導入するように求めていく。中国は人民元の為替レートを切り上げる必要がある」。しかし、人民元レートをいじった程度では、アメリカの巨大な貿易赤字は減少しないし、中国における政治的反動を誘発する恐れがあると指摘する専門家もいる。

中国のスペース・オデッセイ
――衛星破壊実験と北京の政策決定

2007年6月号

ベーツ・ジル 戦略国際問題研究所(CSIS)中国研究員
マーチン・クレイバー CSISリサーチ・アナリスト

「平和的台頭」を心がけて「責任ある行動をとり」、「調和のとれた世界」を模索する国家としてイメージ創りにあれだけ腐心してきた北京が、なぜ衛星攻撃兵器(ASAT)実験という挑発的行動に出たのか。その意図については、アメリカの宇宙空間での軍事的優位を牽制するため、あるいは、宇宙空間への兵器配備禁止の誘い水とするためなど、さまざまな憶測が流れている。だが、実際には、中国の外交・安全保障担当省庁と協議せずに、人民解放軍が独断で実験を強行した可能性が高い。とすれば、中国の軍事的意図、現在宇宙空間の軌道を漂泊している破片や残骸という問題を別にしても、ASAT実験は、より厄介な問題を浮上させていることになる。それは、政策決定プロセスが不透明な中国を信頼できるパートナーとみなせるかどうかという戦略問題にほかならない。

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