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テーマに関する論文

平壌への長い道のり
――戦略なき政策決定のケーススタディ

2007年9月号

マイケル・J・マザール 米国防大学教授

北朝鮮への路線をめぐるブッシュ政権の戦略的混迷は、主要な政策決定者が、戦略ではなく、原則でものを考えがちだったことの帰結だし、そうした原則重視路線こそ、ブッシュ政権の特徴である。高官の多くが、戦略ではなく、道義的な考慮を基盤に政策を決定してきた。入念に検討した目的を実現するための戦略志向を重視するのではなく、「北朝鮮が邪悪な政権によって率いられている以上、アメリカはX、あるいはYをしなければならない」と考えてきた。こうした意思決定プロセスには、指導者のパーソナリティーが大いに関係している。よく言われることだが、外交政策をめぐる政策決定者は、ただ一人、大統領しかいない。北朝鮮のケースは、その具体例だ。ブッシュ大統領が政策決定に関与したケースでは、彼が好ましいと思う路線、直感、反応がそのプロセスを支配した。結局、政策決定プロセスの全体が、大統領の意向に左右された。こうしたやり方が機会をつくりだすこともあるが、非常に大きなリスクを伴うこともある。

「私は、(ニューヨーク)市長としての経験から、都市の問題地域の治安をうまく確立すれば、安心して生活できる全体的秩序を速やかに回復できることを知っている。商店主は店を開け、人々も帰ってくる。子供たちが歩道で遊ぶようになり、節度ある法に守られたコミュニティーが再生する。同じことが世界秩序についても言えると思う。世界における治安の悪い地域の秩序の乱れを放置しておけば、問題は広がりを見せていく。悪い行いを放置すれば、さらに悪い行動を助長することになる。だが、国際的な基準やルールを支えていくためのバランスのとれた試みを行えば、民衆、経済、そして国家は躍動感と繁栄を手にできるようになる。決意ある行動によって支えれば、市民社会は混沌を抑え込むことができる」

CFRミーティング
エネルギーに関する真実に目を向けよ

2007年9月号

スピーカー
リー・R・レイモンド 全米石油審議会(NPC)理事長
司会
ジョン・ダッチ マサチューセッツ工科大学(MIT)教授

「湾岸諸国の原油増産に世界経済はますます多くを依存していくことになる。サウジの場合は、資源や資源開発の資金だけでなく、サウジ・アラムコという石油企業を持っており、原油の増産は可能だろう。一方、クウェートに増産能力があるかどうかは疑問だ。イラクとイランは、資源開発とは別の次元で問題を抱えている。とはいえ、イラクの場合、サダム・フセインが、当時イラクで活動していた石油開発コンソシアムを国外追放処分にした1971年以降、本格的な石油資源の探索は行われていない。つまり、石油資源という面でイラクはかなりの潜在力を秘めている」

「奇妙なポイントは、車の燃費がよくなればよくなるほど、人々がドライブする走行距離が伸びており、結局、ガソリン消費量には変化が出ないということだ。こうした状況をいかに管理していくかは、政治的に非常に難しい問題だ」(リー・レイモンド)

いまこそイランとの緊張緩和を

2007年9月号

レイ・タキー 米外交問題評議会 中東担当シニア・フェロー

この30年近く、双方の敵意に満ちた感情と無責任なレトリックゆえに、アメリカとイランが合理的関係を構築するのは不可能な環境にあった。イランの現実主義者は常にイデオロギー的強硬派に敗れ去り、アメリカとイランの共通の利益も、歴史的対立のなかで見えなくなっていた。しかし、現在、イランには新保守派のなかに力強い現実主義者の集団が誕生し、しかも彼らは、ワシントンとの協調路線を積極的に唱えている。これに呼応して、ワシントンが緊張緩和路線にそった包括的戦略を考案し、実施していけば、両国が相互の敵対感情を克服できる瞬間がいずれ訪れる。……アメリカが国交を正常化させ、両国が抱え込んでいるすべての懸案について話し合いを始めれば、イランは正統な必要性を満たすことを優先させるのか、それとも、自己欺瞞の妄想にとらわれ続けるのかを選ばざるを得なくなる。

アメリカはアラブ世界、特にスンニ派の指導国であるサウジアラビアが、イラクのスンニ派の政治指導者に国民和解政府の樹立に向けて努力するように働きかけることを望んでいる。だが、イランの強大化を懸念するサウジは全く逆の路線をとっている。サウジアラビア政治の専門家であるグレゴリー・ゴースは、「マリキ政権がイランの傀儡政権である以上、マリキ政権を支援すれば、イランの影響力拡大を抑え込むという目的からの逸脱になる、とリヤドでは考えられている」と指摘する。イランの強大化を抑え込むという目的は共有しつつも、アメリカとサウジは全く逆のアプローチをとっていることになる。そこに、イランの強大化を抑え込むことを最優先するサウジと、イランの強大化を懸念しつつも、イラクの安定化を重視するアメリカとの間に温度差があるからだ。アメリカはアラブ諸国への武器売却を決定し、秋の中東和平会議を成功させたいと考えているが、サウジは、すべての流れを対イランの構図で捉えている。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
イラクをめぐるアメリカとアラブの同床異夢?

2007年8月号

タマラ・コフマン・ウィッテス ブルッキングス研究所シニア・フェロー

イラクの政治的安定化は、憲法改正、石油からの歳入の分配などの重要案件をめぐる意思決定の場に、イラクのスンニ派指導者が参加するかしないかで左右される。ワシントンは、サウジアラビアなどのアラブのスンニ派諸国が、イラクのスンニ派勢力に対して、「イラクの意思決定に参加して、シーア派と和解するように」と働きかけることを望んでいる。だが、「そうしたアメリカの期待にスンニ派諸国の指導者が応じる可能性は低い」と中東政治の専門家、タマラ・コフマン・ウィッテスは指摘する。シーア派主導の体制がイラクで確立されることをひどく警戒しているスンニ派アラブ国家は、そのリスク回避策として、イラクのスンニ派勢力のなかでも、シーア派主導の政府にもっとも強い抵抗をしている勢力を支援してきた経緯を持っている、と。だが、アメリカはそうしたスンニ派諸国に武器売却を認め、同盟関係を強化しようとしている。イラクの混乱、イランの強大化、そして、パレスチナが分裂するなかでの中東和平構想の浮上と、状況が錯綜するなかで、アメリカはなぜスンニ派諸国との関係を強化しようとしているのか。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

貧困対策より環境保護を
優先する理由はあるのか
 ――開発、環境、社会正義の連鎖と優先順位

2007年8月号

デビッド・G・ビクター 米外交問題評議会非常勤シニア・フェロー

経済発展を促進し、環境を保護するとともに、社会正義を実現するという三つの目標は矛盾するものではなく、相互補完的な関係にあるとした「持続可能な開発」の概念はいまや陳腐化してしまった。人権保護団体、環境保護団体、原子力発電企業が、これを、自分たちに都合のよい概念につくり変えただけでなく、国連の場で実現不可能な普遍的アジェンダとされてしまったからだ。持続可能な開発の概念を生き返らせるためには、普遍的アジェンダを掲げるのではなく、優先順位の設定と実施に関する意思決定を各地域の主体に委ねるべきだ。地域の必要性と利益がそれぞれに異なる以上、持続可能な開発を実践する場合は、必ずボトムアップ型のアプローチによる目標の再設定を繰り返していく必要がある。

CFRインタビュー
北朝鮮、イラン、インドと核拡散の行方を考える

2007年8月号

ジョージ・パーコビッチ カーネギー国際平和財団 研究担当副会長

「核兵器とプルトニウムは、平壌の指導者が経済利益を引き出し、彼らの考える安全を保障するための戦略的資産である。そうした切り札をなぜ平壌が放棄すると考えるのか、私には理解できない」。北朝鮮との合意がうまくいく保証はどこにもないと考える核不拡散問題の専門家、ジョージ・パーコビッチは、北朝鮮に続いて、イランが核武装することを現状における最大の脅威とみなし、何としても、中国とロシアを欧米の路線に同調させて、安保理、国際社会の団結をイランに対して示すことで、テヘランの自制を求める必要があると強調した。また、「いかなる国も核兵器を生産すべきではないし、核を必要としている国は存在しない」と宣言すべき歴史的節目にあるにもかかわらず、ブッシュ政権が、国際ルールを曲げて、インドとの核協力合意をとりまとめつつ、一方で核兵器の生産制限に関する約束をインドから取り付けなかったのは、ブッシュ政権内の一部に、「中国を牽制するためにはインドはもっと核を保有すべきだ」と考える者がいたからだと批判した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRヒストリーメーカー・シリーズ
ウィリアム・ペリーが語る
イラン、イラク、北朝鮮危機

2007年8月

スピーカー
ウィリアム・J・ペリー 元米国防長官
司会
ジョン・マックウェシー ABCニュース国防担当記者

「米議会にとって北朝鮮との合意は毒そのものだった。(1994年の)枠組み合意が結局は不本意な結果に終わった多くの要因は、おそらくここにあると思う。問題は合意内容を履行するかどうかよりも、政治的な側面にあった。私はいまも、合意内容を完全に履行するのに必要な議会の政治的支持を得られないと判断した大統領と国務長官の読みは間違っていなかったと考えている。枠組み合意は、北朝鮮だけでなく、われわれの手で圧殺された。政治的にきちんと合意をフォローアップできていれば、状況はいまとは全く違うものだったかもしれない」(ウィリアム・J・ペリー)

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