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テーマに関する論文

CFRヒストリーメーカー・シリーズ
ウィリアム・ペリーが語る
イラン、イラク、北朝鮮危機

2007年8月

スピーカー
ウィリアム・J・ペリー 元米国防長官
司会
ジョン・マックウェシー ABCニュース国防担当記者

「米議会にとって北朝鮮との合意は毒そのものだった。(1994年の)枠組み合意が結局は不本意な結果に終わった多くの要因は、おそらくここにあると思う。問題は合意内容を履行するかどうかよりも、政治的な側面にあった。私はいまも、合意内容を完全に履行するのに必要な議会の政治的支持を得られないと判断した大統領と国務長官の読みは間違っていなかったと考えている。枠組み合意は、北朝鮮だけでなく、われわれの手で圧殺された。政治的にきちんと合意をフォローアップできていれば、状況はいまとは全く違うものだったかもしれない」(ウィリアム・J・ペリー)

CFRインタビュー
ムシャラフ大統領の内憂外患
――選挙を控えたパキスタンの混迷

2007年8月号

テレシタ・C・シャッファー 戦略国際問題研究所南アジアプログラム・ディレクター

チョードリ最高裁長官の停職処分に端を発する民衆デモ、モスク占拠事件に対する政府の対応への反発など、ムシャラフ大統領は、パキスタン国内で非常に困難な政治状況に直面している。外交面でも、パキスタンに聖域を持つタリバーンがアフガニスタンへの越境攻撃を続けているために、アフガニスタンとの関係が不安定化し、タリバーン対策を求めるアメリカの圧力にもさらされている。米軍部隊によるタリバーンの聖域に対する攻撃計画の噂も絶えない。しかも、2007年秋には大統領選挙を控えており、ムシャラフが大統領と軍参謀長を兼務していることが大きな争点の一つとされている。国務省で長く南アジアを担当したテレシタ・C・シャッファーは「ムシャラフが、大統領と参謀長を兼務し続けた場合、裁判所には憲法違反の申し立てが行われ、おそらくこのケースについては、裁判所は起訴側の言い分を認めるかもしれない。そうなれば、事態はもっと複雑になる」と予測する。しかも、解散を間近に控えた議会が大統領を選出することの政治的正統性を疑問視する声もある。「裁判所がムシャラフに対してどの程度好意的な解釈を示すかはわからないが、このまま大統領選挙を実施し、ムシャラフが再選されても、反対派による政治的抗議の焦点とされる」とシャッファーは言う。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

CFRミーティング
サマーズ、ボルカーが語る 世界共通通貨の可能性

2007年8月号

スピーカー
ローレンス・H・サマーズ 元米財務長官
ポール・A・ボルカー 元連邦準備制度理事会議長
司会
ジェームス・D・グラント グラント金利オブザーバー誌編集者兼オーナー

まだまだ世界単一通貨の実現にはほど遠いというのが現実だが、この方向に向けた流れのなかで金融秩序は安定的に機能している。現在のようにドルが広く使われることは、金本位制だった当時は想像もできなかった。何かあれば、太陽(ドル)を離れて、月(金)に逃げ込むことができた。これがドルの限界だった。だが、金本位制からの離脱によってその限界はなくなった。ドルに対する信認さえあれば、世界が基軸通貨を持つことには大きな優位がある。(ポール・ボルカー)

私はドルの独占的な地位が永久に続くとは思っていないし、この点ではポールよりも悲観的な見方をしている。ユーロに関する限られた経験しかないとはいえ、多様な経済が、固定為替レートの共通通貨を持つことには問題があることをわれわれは知っている。世界中の国々のことを考えると、国家間の相違は(欧州連合〈EU〉内の)アイルランドとイタリアよりもはるかに大きい。(ローレンス・サマーズ)

グローバル化を救うニューディール政策を
――繁栄を維持し、格差を是正する処方箋とは

2007年8月号

ケネス・F・シーブ イエール大学教授
マシュー・J・スローター 米外交問題評議会 非常勤シニア・フェロー

アメリカで保護主義が台頭してきているのは、多くの人々の賃金レベルが停滞するか、低下しているために、人々が保護主義志向を強めているからにほかならない。世界経済への統合は、アメリカと多くの諸国の生産性を大いに強化し、富の形成に寄与した。しかし、多くの国、そしてアメリカの社会の一部でも、こうした統合がもたらす利益がうまく再分配されていない。このためにますます多くの人々が、「グローバル化は自分にとって良いことか」と考え込み、「そうではない」という結論を下しつつある。グローバル化の進展をその反動から守るには、一人でも多くの勤労者にグローバル化の恩恵を行き渡らせるのが最善の方法であり、その手段が、現代版ニューディール政策だ。

Classic Selection
21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか

2007年8月号

アザル・ガット テルアビブ大学教授

現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

2008年夏のオリンピック開催国に選ばれて以来、中国政府は、経済社会開発、環境保護、統治に関する一連のコミットメントを盛り込んだ行動計画を発表しただけでなく、外国人ジャーナリストへの取材規制を緩和し、環境浄化に取り組み、社会エチケットの改善キャンペーンを展開するなど、国を挙げて中国のイメージ向上に取り組んでいる。だが、それがうわべだけの取り繕いにすぎないとみなす専門家も多い。事実、中国の人権問題その他を理由に中国主催のオリンピックをボイコットすることを求める者もいれば、ダルフール危機を引き起こしているスーダン政府と中国との関係を問題視して、2008年のオリンピックを「ジェノサイド(大量虐殺)・オリンピック」と呼ぶ活動家もいる。ファルンゴン(法輪功)のメンバーや少数民族へのインタビューは依然として禁止されているし、中国政府は、共産党の政治的、社会的コントロールを維持するという優先課題に抵触するような本質的な改革を認めるつもりはないとみる専門家は多い。

CFRディベート
中国とインド、 経済的勝利を手にするのはどっちだ

2007年7月号

マンジート・N・クリパラニ ビジネスウィーク誌インド支局長、アダム・シーガル 米外交問題評議会 中国担当シニア・フェロー

ソフトパワー戦略を巧みに展開する中国は超大国への道を着実に歩みつつあるかにみえる。だが一方では、情報技術産業、ソフトウエア産業のブームをバックに、インドが中国のライバルとして急浮上してきている。国内総生産(GDP)の成長率でもインドは中国と肩を並べつつあるし、中国同様に大規模な労働力も持っている。中国とインドの急速な台頭を前に、最終的に経済大国の地位を手にするのは「民主的なインド」なのか、それとも「権威主義の中国」なのか。民主国家インドは、政治的に大きな発言力を持つ貧困層に短期的な痛みを強いる経済改革を断行しないことには、現在の成長路線を維持できなくなるという難題を抱え、経済的発展を遂げた中国には、政治の自由化という難題が待ち受けている。

イランがここにきて、ウラン濃縮のための遠心分離器の設置ペースをスローダウンし、国際原子力機関(IAEA)との協議にも前向きな姿勢をとっていることについて、「遠心分離器を設置することはともかく、それを高速で稼働させることをめぐって技術的問題に遭遇しているようだ」と核不拡散問題の専門家、ゲリー・サモアは指摘する。ただし、この動きは「新たな制裁決議を採択しないように安保理を牽制するための政治的試みの一環とみなすこともできる」と指摘した同氏は、制裁が効果を上 げ、国際社会への対応をめぐってテヘランの強硬派と現実主義者の間に亀裂が生じている可能性を示唆する。一方、イラクのシーア派勢力への武器援助については、米軍によるイランの核施設への軍事攻撃を牽制するための手段だとみる同氏は、(イラクに米軍が釘づけにされていれば)アメリカがイランの核施設を軍事攻撃した場合に、イランは、アメリカ軍を標的にした反撃を行うことができる(その結果、アメリカはイランへの軍事攻撃を行いにくい、ある種の抑止状況に置かれることになる)とコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

Review Essay
サルコジのフランス

2007年7月号

ソフィー・ペダー エコノミスト誌パリ支局長

「何にいらだつかについても私とシラクは違っていた。シラクは、リベラリズム、アメリカ、一部の企業経営者、そしてヨーロッパに関して自分と意見を異にする人々に不満を感じていた。だが私は優柔不断な姿勢、躊躇、守られない約束、フランスの現状に甘んじる姿勢、そして古びた常識にいらだちを感じる」。なかでもサルコジは次のように指摘している。「(シラクは)フランスは脆く、変化に抵抗する国とみていた。私は、フランスは時代に遅れていることにいらだち、大きな変化を強く求めていると考えている」

CFRインタビュー
トルコでのイスラム政党の躍進は何を意味するか

2007年7月号

スティーブン・A・クック 米外交問題評議会フェロー

これまでトルコで近代主義、世俗主義の擁護者としての役割を果たしてきた軍隊、そして世俗主義の敵とみなされてきたイスラム政党の位置づけが、いまや大きく変化しつつあるようだ。「2002~03年にトルコの政府与党となった公正発展党(AKP)は、他のいかなるトルコの政党よりも、トルコの民主主義に貢献してきた。AKP政権下での民主制度への移行は、イスラム教徒が多数派の国でも民主主義が実践可能であること、イスラム政党が民主的な政党になり得ることを示している」。AKPの民主的体質をこう評価する中東問題の専門家スティーブン・クックは、今回のAKPの総選挙での躍進を、トルコ経済が好調であることと、アブドラ・ギュル外相を大統領候補として出馬させようとしたAKPの試みを、軍と世俗派政党が結託して阻止したことに対する民衆の反発がその背景にあるとみる。軍は「ギュルのような(イスラムの)バックグランドを持つ人物、その妻がヒジャブをかぶっているような人物がトルコの大統領宮殿の主になることは認められない」と明言しており、AKPが再度ギュルを大統領候補に立て、彼が選挙で勝利を収める可能性が高い情勢になれば、軍と政府が衝突することになる可能性もあると今後を展望した。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

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