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テーマに関する論文

自由貿易は雇用創出に貢献できる

2008年10月号

ジョン・B・テイラー ジョン・マケイン米大統領候補・経済政策上級顧問

共和党大統領候補ジョン・マケインの経済政策上級アドバイザーを務めるジョン・B・テイラーは、雇用を創出し、アメリカ経済を復活させるには力強い貿易政策が必要だとしつつも、一方で、「マケイン候補は失業者対策を見直し、競争環境、技術革新、生産体制の変化のあおりを受けて、雇用を失った人々に救いの手を差し伸べるつもりだ」とコメントした。
アメリカの競争力を強化するには、法人税率の引き下げ、自由貿易合意、金融改革が不可欠だと指摘した同氏は、エネルギー資源については、マケインは国内の石油生産の増強を試みるとともに、原子力、バイオ燃料、環境保護も重視していると語った。
 聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgのデピュティー・エディター)。

いったいどこにいけば、安全な暮らしをおくれるのか」。増加の一途をたどる難民、国内避難民の悲痛な声にわれわれは耳を傾けなければならない。約60年前の「難民の地位に関する国連条約」では想定されていなかった強制的な国内移動を含む、さまざまな新しい人の移動のパターンが出現している。国際社会は、深刻な経済的・社会的危機、あるいは環境上の危機を逃れてきた人々が、逃れた先の国から母国へと再び強制送還されることのないように、人道原則に基づく法律・政策枠組みを確立し、もっとも弱い立場にある人々に対しては、一時的な保護と物質的支援を提供し、国際的な保護を必要とする人々には他国へと逃れる手段を与え、公正で合理的な亡命手続きに即して自らの主張を行うことを認めなければならない。難民化が伴う大規模な人の移動という問題に対処していくには、国際的な連帯と責任の分担の原則を重視するグローバル憲章を新たに作る必要がある。

グルジア紛争を解決するには
――米専門家5人に聞く

2008年9月

ドミトリ・トレーニン  カーネギー国際平和財団モスクワ・センター副所長
ラジャン・メノン   ニュー・アメリカン財団研究員
アリエル・コーエン   ヘリテージ財団シニア・リサーチフェロー
チャールズ・A・クプチャン  米外交問題評議会ヨーロッパ担当シニア・フェロー
アラン・メンドーサ  ヘンリー・ジャクソン・ソサイエティ・エグゼクティブ・ディレクタ

グルジアとロシアはこれまでも敵対的な関係にあったが、2008年8月8日、ついに対立は紛争へとエスカレートした。これを侵略戦争と呼ぶ専門家も多い。南オセチア自治州でグルジア軍を圧倒したロシア軍は、そのままグルジア領土へと侵攻し、いくつかの都市を占拠した。
 フランスのニコラ・サルコジ大統領が8月12日にまとめた停戦合意は、ロシア、グルジアの双方に紛争前の現状へと復帰するように求めている。ロシア政府は、今回の行動は、南オセチアとアブハジアという分離地域におけるロシアの市民権を持つ人々と平和維持部隊を守るために必要だったと表明している。ブッシュ大統領は米軍に対して現地へ人道支援物資を届けるように命令し、モスクワに対して「紛争を終わらせるという約束を守るように」と要請している。以下は、「今回のグルジア紛争を経て永続的な平和が実現するか」というテーマでの5人の専門家へのインタビュー。

原子力発電へのシフトは 本当に実現するのか

2008年9月号

Toni Johnson (Staff Writer, www.cfr.org)

スリーマイルやチェルノブイリでの原発事故以降、原子力産業はこの数十年にわたって衰退してきた。だが、ここにきて流れは大きく変わり、世界各地で原子炉の建設が進められている。流れが変化した要因は数多く考えられる。例えば、途上国でのエネルギー需要の高まりや地球温暖化対策の一つとして原子力発電が脚光を浴びていることだ。だが、世界の他の地域とは違って、アメリカでの原子力発電への再評価はそれほど進んでいない。議会が原子力発電容認の立場をとるようになったにもかかわらず、原子力産業の反応は鈍い。アメリカに限らず、世界の原子力産業が人材不足から高い建設コストまでの数多くのハードルに直面しているためだ。

「パキスタン政府、特にパキスタンの軍部は、国境地帯のタリバーンのことを自分たちの仲間と捉えている部分がある。……軍の情報機関(ISI=統合情報部)は、これまでもタリバーンと接触し、彼らを代理人として利用してきた。パキスタン軍と統合情報部は、タリバーンとの関係をアフガニスタンにおける資産とみなしている。いずれ、外国の部隊は、犠牲者の増大に耐えきれなくなり、アフガニスタンから撤退すると状況を読んでいるからだ」
 パキスタン政府の意向とは裏腹に、タリバーン掃討に軍が力を入れない本当の理由は、インドがアフガニスタンでの影響力を強め、周りを包囲されてしまうことを恐れているからだ。パキスタン軍がタリバーンの掃討作戦に力を入れないのはこのためだ。軍を完全に管理下に置けるような強い政府がパキスタンに誕生しない限り、軍がインドに対して抱く敵対意識を一夜にして変えるのは非常に難しい。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

次期大統領が直面する遠大な課題

2008年9月号

リチャード・ホルブルック  元米国連大使

「マケインは自分のことを『リアリスト』、また最近では『理想主義的なリアリスト』と呼ぶことを好むが、彼の各問題に対する立場をみると、マケインといわゆるネオコンの立場が似ていることを無視することはできない。(一方)オバマの政策の特徴は、あらゆる課題を前向きに進化させていくとしている点にある。彼は、変化し続ける新しい現実に適応できるように、古い、硬直化した政策を調整していくとし、アメリカのパワーと影響力を強化する手段としては外交が最善であると強調している。……二人の立場の違いに目を向ければ、オバマとマケインが、……『世界におけるアメリカの役割』についての二つのビジョン、そして外交に対する異なる二つの態度を示していることがわかるはずだ」

なぜアメリカのキリスト教徒は ユダヤ国家を支持するのか
――旧約聖書がつなぐアメリカとイスラエル

2008年9月号

ウォルター・ラッセル・ミード 米外交問題評議会シニア・フェロー(米外交政策担当)

アメリカのユダヤ系コミュニティーがまだ大きくも強くもなく、イスラエルロビーなど存在もしなかった19世紀末に、アメリカにおけるキリスト教系の各界指導者たちは、すでに、「聖書の地」にユダヤ人国家を建設する外交努力を支持する態度を明確にしていた。……孤立し疎外された民であり国であるユダヤ人とイスラエルを支援することが、しばしばアメリカの評判を落とし、別の問題をつくることになっても、アメリカ人は気にしない。アメリカがイスラエルの保護者、ユダヤ人の友人という役割を引き受けたのは、神が特有の運命を与えられた国という自らの地位を正当化するためでもあった。……アメリカの親イスラエル路線は、小規模なロビイストが世論の意図に反して勝ち取ったものではない。むしろこれは、専門家の懸念にもかかわらず、外交政策を形成する世論のパワーを物語っている

Classic Selection 2008
米中によるG2の形成を

2008年7・8月号

C・フレッド・バーグステン/ピーターソン国際経済研究所所長

現在のアメリカの対中アプローチは、既存のグローバル経済秩序に参加するように中国を促すことに焦点を当て、一方の中国は、制度構築上の役割を担う余地のないシステムに組み込まれるという構図を不愉快に感じ、一部で制度に挑戦する動きをみせている。ワシントンは、短絡的に米中間の2国間問題にばかり焦点を当てるのではなく、北京とグローバル経済システムを共同で主導していくための真のパートナーシップを構築していくべきだ。グローバルな経済超大国、正当な制度設計者、国際経済秩序の擁護者としての中国の新たな役割に向けて環境を適正化できるのは、米中によるG2構想だけだ。米中間の紛争を制度的な管理の問題に置き換えて、解決を試みていくことは極めて効率的なやり方である。

イスラエルはトルコの仲介でシリアと交渉し、レバノンとの和平にも前向きになっている。シリア、レバノンとの和平に集中するためか、ガザ地区のハマスとは休戦合意を成立させている。シリアとレバノンの双方との交渉を試みているイスラエルの意図について、「シリアと交渉している以上、イスラエルがレバノンとの直接交渉するのを望んでいることには不思議はない。
 ……双方と交渉しない限り、紛争は決着させられない」と説明する米平和研究所の中東専門家モナ・ヤコービアンは、一方でシリアは「欧米の政策が作り出した孤立状況から脱して、グローバル経済への統合」を果たすことを最優先に考え、「もはやイスラエルと軍事的対決路線をとるつもりはない」とみる。
「イスラエルは、フランスが7月にパリで主催する欧州・中東諸国を交えた首脳会議の場で、シリアのアサド大統領とイスラエルのオルメルト首相の直接交渉をセットアップしたいと考えて」おり、これが実現すれば、中東情勢は大きく動くかもしれない。
 聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

新しい中東戦略を提言する
 ――イラン封じ込め戦略は間違っている

2008年6月号

バリ・ナサル  フレッチャースクール法律外交大学院国際政治学教授
レイ・タキー  米外交問題評議会シニア・フェロー

1980年代にアメリカは(シーア派の)イランを封じ込めようとアラブ諸国政府を動員したが、その結果、スンニ派の政治文化を急進化させ、ついにはアルカイダを誕生させてしまった。今回も、同様に忌まわしい結末に直面する危険がある。
  イラン封じ込め戦略は、シーア派のイランに対抗する思想的な防波堤としてスンニ派過激主義思想を助長するだけに終わるかもしれない。これまでのように中東のパワーバランスを回復することを目指すのではなく、地域の統合を働きかけ、すべての関係勢力が現状を維持することに利益を見いだすような新たな枠組みをつくり上げることを目指すことこそ、ワシントンにとって賢明な選択のはずだ。

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