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テーマに関する論文

CFRインタビュー
米ロ関係の悪化は必然ではない
――軍備管理交渉で米ロ関係の安定化を

2008年11月号

スティーブン・パイファー ブルッキングズ研究所客員フェロー

 「ロシアのグルジア侵略の真意は、モスクワがロシア周辺地域で影響力を再確立することに本気であることを示すことにあり、これこそ、われわれが今後対応を考えていくべき問題だ」。グルジア侵攻をめぐるロシアの真意をこう分析するスティーブン・パイファーは、アメリカの新大統領は、国際ルールを踏みはずした場合にはペナルティーを科すことを明確にモスクワに伝える一方で、核関連物質の管理など、両国が利益を共有している領域では協力関係を強化し、うまくバランスをとる必要があると指摘し、米ロ間の軍備管理交渉を再開することこそ、軍縮を上回るプラスの作用を両国の関係にもたらせるとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
金融危機を温暖化対策を
先送りする「口実」にするな

2008年11月号

ケビン・M・コンラッド パプアニューギニア環境・地球温暖化問題担当国連特使

 2012年に期限切れとなる京都合意の後継枠組みをめぐる話し合いが続けられるなか、「世界的な金融危機を前に温暖化対策交渉がないがしろにされるのではないか」という懸念が浮上している。
 「金融危機を地球温暖化への取り組みを先送りする口実にしてはならない」とケビン・コンラッド、パプアニューギニア環境・地球温暖化問題担当国連特使は警鐘を鳴らす。コンラッドは、2007年にバリで開かれた第13回気候変動枠組み条約締約国会議(COP13)で、アメリカ政府代表に対して「指導的役割を果たすつもりがないのなら、少なくとも邪魔しないでほしい。出て行ってほしい」と毅然と言い放ったことで知られる人物だ。
 「やるべきことをしない口実、間違った判断を正当化する理屈を探すのは非常に簡単だし、特に政治家はそうすることに長けている」と指摘するコンラッドは、実際には金融危機は「もっともコストのかからない温暖化対策の優先順位を引き上げ、実施する機会を提供している」とコメントし、むしろ困難な現実を前にしても、状況を前向きに捉えるべきだと主張する。「温暖化対策をめぐる不作為は大きなコストを伴うし」、すでにパプアニューギニアは海面上昇によって村の住民が移動せざるを得なくなるほど地球温暖化の悪影響を受けていると同氏は語った。聞き手は、トニー・ジョンソン(www.cfr.orgのスタッフ・ライター)。

CFRインタビュー
グローバル化時代の危機には
政府間協調システムで対処せよ
――金融危機対応の教訓

2008年11月号

アン=マリー・スローター プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院長

「いまや、そこに存在するのが『グローバルに統合された金融企業』である以上、『金融システムもグローバルに統合されている』ということだ。事実、今回の金融危機においても、主要国の中央銀行当局は協調して流動性を提供している。こうした政府間ネットワークが最初に形成されたのは金融セクターにおいてだった。そう、(1972年に組織された)バーゼル(銀行監督)委員会だ。これ以降、主要国の中央銀行当局の代表者は定期的に会合の場をもってきた。各国の立場を調整し、相互信頼と知識を積み重ねてきた。バーゼル委員会がなければ、今回の危機を前に各国の金融当局が協調行動をとるのは難しかったはずだ」。
 聞き手はリー・ハドソン・テスリク (www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
カーライル・グループ、
D・ルーベンシュタインが語る
金融危機第2幕に備えよ
――強欲は鳴りをひそめ、恐怖がとって代わった

2008年11月号

デビッド・M・ルーベンシュタイン カーライル・グループ共同創設者兼マネージング・ディレクター

 アメリカの株式市場が下落し、世界中の主要株式市場も連鎖的に下落したことを受けて、専門家の多くは、2008年の金融危機はすでにパニックを引き起こしていると考えるようになった。大手プライベート・エクイティのカーライル・グループの創設者で、現在、マネージング・ディレクターを務めるデビッド・M・ルーベンシュタインは、パニックと恐怖を緩和するには、「なりふりかまわずに」あらゆる対策を打たなければならないと主張する。
 米外交問題評議会(CFR)の役員でもあるルーベンシュタインは、現在起きている株式市場の暴落と信用収縮は金融危機の「氷山の一角」にすぎないと述べ、この数十年間にわたって世界経済を牽引してきた金融および経済の原動力の徹底的なオーバーホールが行われることになると今後を見通している。さらなる混乱を回避するには、政府とビジネスの指導者の協調、そして各国政府との協調が必要になると語る。
 現在の混乱はプライベート・エクイティのビジネスにどのような影響を与えるのか。レバレッジ規制はプライベート・エクイティにとっても大きな問題となるとルーベンシュタインはみる。潤沢なキャッシュを手元に持ってはいても、ローンを組むことができなくなれば、プライベート・エクイティは、レバレッジを利用して企業を買収していく戦略を取ることができなくなり、生き残っていくには、どのようにビジネスモデルを変えていくかを考えていかなければならない、と。一方で同氏は、特定の段階になれば、千載一遇の投資チャンスをとらえようとする投資資金が流入し始め、企業が再生していくと考えられるとコメントした。聞き手は、リー・ハドソン・テスリク(www.cfr.orgのアソシエート・エディター)。

民主国家連盟か、中ロを含む大国間協調か
 ――ブッシュ後の世界秩序の試金石

2008年11月号

チャールズ・A・クプチャン ジョージタウン大学教授

民主国家が、今後の世界が多極化と政治的多様性に特徴づけられていくことを理解しないままに、民主国家連盟構想を実現しようと試みても、期待するような「歴史の終わり」という局面への道を切り開いていくことはできない。結局は行き止まりに遭遇するだけだ。新しいグローバルな秩序を誕生させるには、ワシントンとヨーロッパは、台頭する権威主義国家への認識を変えるとともに、北京とモスクワも欧米に歩み寄る必要がある。ワシントンは多様な政体から成る多極世界において、辛抱強く、しかも穏やかに行動していくことを学んでいかなければならない。そのためには、地域内の危機に対処できるように地域機構の能力を整備して強化し、世界の新たなパワーバランスを反映するように国連安保理を改革するとともに、また、主要経済国のフォーラムであるG8を、アメリカ、EU、日本、ロシア、中国、インドで構成されるG6とし、大国間協調の枠組みへと変化させていく必要がある。民主国家連盟構想では、解決策にならない。

グレートゲームからグランド・バーゲンへ
 ――アフガン、パキスタンをカオスから救い出すには

2008年11月号

バーネット・R・ルービン ニューヨーク大学国際協調センター所長
アハマド・ラシッド ジャーナリスト

パキスタンとアフガンをカオスから救い出すには、まずアメリカが対テロ戦争の目的を再定義しなければならない。イスラム主義運動をひとまとめにしてとらえるのではなく、「地域的、あるいは国家的な目的から活動しているイスラム主義運動」と「アメリカおよびその同盟国にテロ攻撃をしようと試みている国際的なテロ運動」を区別する必要がある。こうした区別を通じて、タリバーンから「アルカイダとは関わり合いを持たない」という言葉を引き出せれば、アルカイダに戦略レベルでの敗北を強いることができる。さらに、パキスタンの不安の緩和に努めつつも、破壊的な行動を放置するのをやめるようにはっきりとイスラマバードに伝えることで、アフガンの安定をめざす地域コンセンサスを構築していくための大胆な外交イニシアティブを模索していかなければならない。

ドルの再生と新ブレトンウッズ体制の導入を
 ――固定相場制と金本位制の復活を

2008年11月号

ジェームズ・グラント グラント金利オブザーバー編集長

1971年以後の国際通貨レジームもすでに寿命を迎えつつあり、老朽化の弊害が兆候として表れている。不安定な為替レート、世界規模でのインフレ、対米債権国における中央銀行のバランスシートにドルが積み上げられていることがその証左だ。この20年間にわたって、健全だと考えられていた制度、合理的だと思われていた市場が幾度となく制御不能に陥ってきた。このままでは、世界規模での通貨・金融危機のリスクはますます高まっていく。持続性のある、優れた後継の国際通貨システムが必要だ。それは第二次世界大戦後に生まれた体制と同じく、固定為替相場と金が支える基軸通貨を中心としたシステムになるはずだ。

Classic Selection2008
食糧危機の打開を阻む先進国の政治と妄想
――貧困国の現実に目を向けよ

2008年11月号

ポール・コリアー オックスフォード大学経済学教授

企業による大規模農業を推進し、遺伝子組み換え(GM)作物の禁止措置を解除し、アメリカのエタノール生産への補助金を打ち切れば、食糧価格を短期的にも、中・長期的にも低下させることができる。だがそれを妨げているものがある。昔ながらの農村生活の保護、オーガニックなライフスタイルを求める先進国の古い時代への郷愁が途上国に大規模農業の導入を求める路線を概念的に阻み、エネルギー自給という政治スローガンと農業団体のロビイングがアメリカのエタノール生産への補助金制度の打ち切りを阻み、そして、ヨーロッパの農業保護派、反米左派、健康マニアの連帯が、ヨーロッパやアフリカでのGM作物禁止措置の解除を阻んでいる。こうした障害を取り除いていくには、貧困国が食糧危機にいかに苦しんでいるかを先進国の市民に強く訴えて行く必要がある。食糧価格がすぐに下がらなければ、そして下がり続けなければ、途上国の貧しい家庭の子どもたちは飢え、その未来までもが大きく傷ついてしまうからだ。

原油価格がいくばくか低下したとはいえ、世界の石油需要は依然として旺盛で、ガソリン価格はいまも高いレベルで推移している。また、グルジア紛争が起きたこともあって、原油価格の高騰だけでなく、石油というきわめて重要な戦略資源の市場への供給が混乱するリスク、特に資源地域の政情不安が大きな供給リスクになるのではないかと懸念されている。たしかに、理屈上は供給ルートのどの地点においても流れが遮断される危険はあるが、供給が遮断されるリスクが高い地域が一部に集中しているのも事実だ。そうした地域がいわゆる供給ルートのチョークポイント(関所)として知られている。おそらく、シーレーンのチョークポイントとしてもっともよく知られているのがペルシャ湾のホルムズ海峡だ。2008年8月に勃発したロシアとグルジアの戦争によって、新たな資源地帯であるカスピ海周辺地域からの供給・搬出ルートも地政学的な余波を受けるのではないかという懸念が高まっている。カスピ海周辺地域に加えて、北西アフリカのニジェール・デルタ地帯、イラク、ベネズエラという三つの地域や国も、依然として地政学的余波を受けやすい資源地帯だ。世界の原油供給はすでに逼迫しており、ここでさらに供給の乱れが起きれば、不安定な原油価格を再度高騰させる危険がある。

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