パリとベルリンの経済官僚たちは、「この10年にわたって、周辺国は生産性が伸びていないにも関わらず、賃金レベルを引き上げたのが間違いだった」と批判するが、考えるべきは、周辺国がその資金をどこから調達したかだ。資金の出所はフランスとドイツの銀行だ。つまり、(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル)などの周辺国の一つでも債務を履行できなくなれば、危機はEUの主要国へと瞬く間に広がりをみせていく。そして、ヨーロッパの危機はMMFとCDSのエクスポージャーによって、アメリカの銀行にも非常に深刻なダメージを与え、ヨーロッパとアメリカのリセッションはますます深刻になる。ここで、中国は何をするだろうか。のどから手が出るほど欲しがっているあらゆる技術、宇宙工学技術、金融資産をヨーロッパから非常に安い価格で入手するかもしれない。中国が台頭し支配的な影響力を持つようになるのが間近なのか、遠い将来なのかはともかく、欧米はグローバルな金融システムを、自分たちにダメージを与え、中国を大きく利することになる装置へと変貌させてしまっている。
