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テーマに関する論文

The Clash of Ideas
アジアのナショナリズムと革命思想(1950年)

2012年3月号

ジョン・K・フェアバンク ハーバード大学教授(中国史)

1930年代初頭、毛が引き継いだ共産党は衰退途上にあった。事実、1937年に日本が中国を侵略するまで、共産党は中国政治ではまったく目立たない存在だった。しかしその後共産党は、中国北方における愛国主義運動の指導的役割を担うようになった。外国の専門家が彼らを愛国主義者と呼んだのは間違いではなかった。外国の侵略者が家屋に火を放ち、虐殺行為を行っているさなかに、農民を組織するのは簡単ではなかったが、日本軍の行動が、結果的には中国北部の農民を中国共産党の懐へと送り込んだ。共産党側は準備万端調えて、農民が自分たちのところへ転がり込んでくるのを待っていればよかった。重要なポイントは、あえて地主階級への反対を前面に出すより、むしろ抗日戦への愛国主義を訴えるほうが、国内の青年知識層が呼びかけに応じる可能性が高いことを共産主義勢力が理解していたことだ。

日本はこれまで最先端の原子力技術の開発を試み、この領域のリーダーになることを目指してきたが、フクシマを経たいまや、原発施設の再稼働に向けて社会の支持を得られるかどうか、先の見えない状況に追い込まれている。・・・現在日本は、(原発停止による電力生産の低下を火力発電で埋め合わせようと)より多くの液化天然ガス(LNG)を輸入しているが、LNG価格はかつての3倍のレベルへと上昇している。しかも、(日本の現実を考えると)原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていけるとも思えない。原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていこうにも、日本は風力、ソーラー、地熱など再生可能エネルギーの促進を阻む構造的な障害を持っているからだ。電力会社も関係省庁も大規模な電力生産施設を好む文化的体質を持っており、風力やソーラーなどの基本的に「分散型」の技術導入には難色を示す傾向がある。この文化を政治的な意思とリーダーシップで変化させていくには、かなりの時間がかかるかだろう。

アジアにおけるアメリカと中国
―― 相互イメージと米中関係の未来

2012年3月号

ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャーアソシエーツ会長

中国のアジアでの覇権確立に対するアメリカの懸念、そして、包囲網を築かれてしまうのではないかという中国の警戒感をともに緩和させることはできるだろうか。必要なのは冷静な相互理解だ。中国がその周辺地域において大きな影響力をもつようになるのは避けられないが、その影響力の限界は中国がどのような地域政策をとるかで左右される。アジア諸国はアメリカが地域的な役割を果たすことを望んでいるが、それは(中国に対する)均衡を保つためであり、十字軍としての役割や中国との対決は望んでいないことも理解しなければならない。強固な中国が経済、文化、政治、軍事領域で大きな影響力をもつのは、北京にとっては、世界秩序に対する不自然な挑戦ではなく、正常への復帰なのだ。むしろアメリカは、現状の問題を想像上の敵のせいにしてはならない。米中はともに相手の行動を、国際関係における日常として受け入れるだけの懐の深さをもつ必要がある。

石油も石炭も原子力も必要としない世界
―― 超素材と「インテグレーティブ・デザイン」の力

2012年3月号

アモリー・B・ロビンス ロッキーマウンテン研究所議長

2050年までには、石油も石炭も原子力も必要とせず、天然ガスの消費量も現在の3分の2程度で済む時代が実現する。・・・自動車、建物、そして電力生産の効率をいかに高めていくかがこの変化の鍵を握る。このエネルギーシフトに必要なテクノロジーはすでに存在する。第1に自動車を、炭素繊維を用いたボディに、そのエンジンを電気稼動型に切り替え、カーシェアリング、ライドシェアリングなど車をもっと生産的に利用するようにする。第2に、ビルや工場の設計と素材を変えるだけで、エネルギーの使用効率を現在よりも数倍高めることができる。第3に、電力供給システムをより多様で分散した再生可能エネルギーを中心としたものへと近代化していけば、電力供給をよりクリーンかつ安全で信頼できるものにできる。この概念は現実離れしているように思えるかもしれない。だが、困難な問題に対処するには、(既成概念を捨てて)境界を広げて問題をとらえ直す必要がある。つまり、エネルギー消費の多い交通・運輸、ビル、産業、電力生産部門を、個別にとらえるのではなく、一つとみなすのだ。・・・

ハイチの悲惨な現実

2011年2月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当シニア・フェロー

2010年1月に大地震に見舞われたハイチの復旧・再建活動はうまく進展していない。地震で家をなくした人は、いまもそのままだし、ほとんどの政府施設やインフラも依然として再建されていない。しかも、2010年10月にはコレラが発生して猛威を振るいだし、いまも感染を広げ、犠牲者が増えている。クリスマス以降、犠牲者数は1日平均100人に達し、2011年1月1日までの犠牲者総数は3651人に達している。最大の問題は清潔な飲料水を提供するインフラが存在しないことだ。いまや水田に入ればコレラに感染するのではないかと恐れて、農家が稲を水田に植えることさえ嫌がるようになった。ハイチが必要としているのはインフラと統治だが、それが短期的に満たされる可能性は低い。

リベラルな民主主義の奇妙な勝利そして停滞

2012年2月号

シュロモ・アヴィネリ ヘブライ大学政治学教授

なぜ20世紀に民主主義が生き残り、ファシズムも共産主義も淘汰されてしまったのか。1930年代から21世紀初頭にいたるまで、ヨーロッパ全域が民主化すると考えるのは現実離れしていたし、リベラルな民主主義が勝利を収める必然性はどこにもなかった。なぜ、社会に提示できるものをもち、圧倒的な力をもっていたマルクス主義がリベラルな民主主義に敗れ去ったのか。そしていまや、多くの人が(民主主義を支える経済制度である)資本主義が経済利益を広く社会に行き渡らせる永続的な流れをもっているかどうか、疑問に感じ始めている。ヨーロッパとアメリカの昨今の現実をみると、民主的政府は危機に適切に対応できず、大衆の要望を満たす行動がとれなくなっている。現在、世界が直面する危機によって、市場原理主義、急激な民営化、新自由主義では、「近代的でグローバル化した経済秩序をどうすれば持続できるか」という問いの完全な答えにはなり得ないことがすでに明らかになりつつある。・・・

イスラエルは「イランが手を出せない状況=zone of immunity」をつくることを許さないと表明している。もちろん、イスラエルもアメリカの利害、立場にも配慮すると思う。しかし、何が国益を守る上で不可欠かについての結論を出せば、イスラエルの指導者が、アメリカの立場を拒否権として受け入れることはなく(自分の判断で行動するだろう)。だが、私は、イランとの交渉を試みるべきだと考えている。制裁やその他のオプションの代替策としてではなく、(あらゆる選択肢を排除しない)包括的なアプローチの一環として外交交渉を試みるべきだ。・・・軍事攻撃の準備をしつつ、制裁を強化し、その一方で交渉上の立場を示すべきだ。交渉を制裁強化策や軍事攻撃の代替策としてではなく、これらを補完するものとして位置づけるべきだ。

人民元の国際化路線を検証する
――中国のドル・ジレンマと経済モデル改革論争

2012年2月号

セバスチャン・マラビー
外交問題評議会地政経済学センター所長
オリン・ウェシングトン
元米財務省国際関係担当次官補

中国は人民元の国際化路線を促進しているが、人民元がドルに取って代わるには程遠い状態にある。経済規模やその他の指標で中国はアメリカに近づいているが、中国が金融覇権を握るとは現段階では考えにくい。むしろ注目すべきは、人民元の国際化路線が、中国の経済モデル変革の水面下に潜む深刻な内部抗争を映し出していることだ。改革派は、過剰な輸出依存は危険であり、中国は国内消費を増大させることで経済成長のバランスをとる必要があると考え、保守派は頑迷に現状維持を主張してきた。だが、金融危機によって中国の脆弱性が浮き彫りにされた結果、「ドルの罠」論への対策として人民元の国際化が公的目標に据えられている。こうして中国政府は現実には両立し得ない道を歩んでいる。輸出を促進しながらドル建て外貨準備を減らし、預金者の犠牲のもとに低金利融資を特定の企業に提供しながら、国内消費を増大させることを目指している。矛盾する路線は中国をどこへ導くのか。

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