エネルギー市場における各国の役割が変化しつつある以上、急速な変化のなかで市場の流れを読み、自国を適切な場所に位置づける必要がある。そうしない限り、敗者になる。アメリカは天然ガスの輸出国に姿を変え、中東諸国は石油消費国への道を歩みつつある。ヨーロッパ、アメリカという輸出市場を失いつつあるロシアとカナダは、天然ガス輸出のターゲットを次第に中国や日本などのアジアに向け始めている。そして、シェールガス革命が進展しても、世界の天然ガス価格の地域格差は、今後20年はなくならない。もっとも重要なのは、アメリカ国内における原油生産の増大を前に、「もはや中東に石油の増産を求める必要はない」と考えるのは、政治的にも分析上も完全に間違っていることだ。生産コストが低くて済む、中東石油へ投資しておかなければ、アメリカの石油増産トレンドが終わる2020年頃には、世界は大きな問題に直面する。中東石油の投資を止めれば、原油価格の高騰は避けられなくなる。