逆風にさらされる民主主義
―― 内向きのアメリカと衰退する世界の民主主義
2016年8月号
「人権を重視する民主国家が自国の市民に暴力的な行動をとるリスクは低く、しかも、民主国家同士は戦争をしない」。当然、アメリカが世界で民主化促進策をとる価値は十分にあるが、「国際問題よりも、むしろ国内問題に専念すべきだ」と考える内向きの社会圧力という逆風にワシントンはさらされている。しかも、アメリカの民主主義が世界であこがれや模倣の対象とされることもなくなった。米大統領選挙からも明らかなように、アメリカ市民は大きな疎外感を抱き、現状に怒りを募らせ、一方ワシントンは現状にうまく対処できずにいる。法案はなかなか成立せず、超党派外交など望みようもなく、議会で予算案が紛糾し、定期的に政府機関が閉鎖の危機に追い込まれている。だがこの環境でもアメリカの民主主義への信頼を回復し、民主化促進策をとる余地は残されている。・・・