1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

経済・金融に関する論文

環太平洋パートナーシップへの復帰を
―― CPTPPのアメリカにとっての価値

2021年10月号

ウェンディ・カトラー  元米通商代表部(USTR)次席代表代行

ワシントンでは「アメリカ抜きではTPPは静かに死を迎える」と考えられてきた。しかし、そうはならなかった。日本率いる残されたメンバーはCPTPPと名称を変更し、2018年に合意をまとめた。アメリカがCPTPPに参加すべき理由は数多くあるが、もっとも重要な要因はやはり中国だ。北京は(すでに正式加盟を申請し)CPTPPに参加する態勢を整えているかもしれない。中国がCPTPPのルールを守るのは難しいとしても、それで協定に参加できないということにはならない。市場が拡大することの魅力だけでなく、中国の参加を、重要な改革を先送りする機会とみなすメンバーも出てくるだろう。中国との競争を展開しているだけに、この協定はアメリカ経済にとってだけでなく、ワシントンの世界的影響力にとっても大きな価値をもつ。

法人最低税率とタックスヘイブン
―― 「どこかで必ず課税される」

2021年9月号

アンシュウ・シリプラプ  エディター(経済担当)CFR.org

多国籍企業の利益の40%が毎年タックスヘイブン(租税回避地)に移転されることで、世界の法人税収2000億ドル相当が失われている。しかも、アマゾン、フェイスブック、グーグルなどのハイテク巨大企業の台頭が、「(工場などの)国内における物理的なプレゼンスを前提に課税権を認める伝統的なモデル」を揺るがしている。ハイテク企業は、ユーザーはいるが工場や店舗をもたない国で、広告その他から数十億ドルを稼ぎつつも、現在のルール下で税金を払っていないからだ。一方、提案されている世界共通の最低法人税率(15%)が導入されれば、例えばバミューダのドイツ企業子会社が税金をほとんど支払っていない場合、ドイツ政府は差額を最大15%まで課税できるようになる。そうなれば、「タックスヘイブンを含む低税率の地域に利益を移転しようとする企業のインセンティブ」は小さくなるかもしれない。・・・

(世界共通の)法人税率を「最低でも」15%以上とすることが7月のG20財務相・中央銀行総裁会議で大枠合意された。多国籍企業がどこかの国で15%を下回る税率での負担しかしていない場合、その企業の本社がある国の政府は最低税率に達するまで上乗せして課税できる。これによって、今後、タックスヘイブンの出番はなくなり、「底辺への競争」も回避されるかもしれない。だが、米議会共和党はこの合意に「反競争的で反アメリカ的、しかも有害だ」と反発し、アイルランドやルクセンブルグなどのタックスヘイブンも合意を嫌悪している。だが、流れを止めるのはほぼ不可能だろう。多国籍企業は、あまりにも長い間、あまりにも少ない支出で他の人々が負担する公共財にただ乗りしてきた。いずれにしても今後数年のうちに、多国籍企業はより多くの公共財への貢献をすることになるだろう。

生産性向上と繁栄の新時代へ
―― パンデミック後の経済ポテンシャル

2021年8月号

ジェームズ・マニュイカ  マッキンゼー・グローバル・インスティテュート 理事長 マイケル・スペンス  スタンフォード大学経営大学院教授(経済学) 2001年ノーベル経済学賞受賞者

パンデミックが引き起こした第二次世界大戦以降最大の経済危機は、驚くべきことに、「生産性の向上と繁栄の新時代」を招き入れるかもしれない。現実にそうなるかは、今後、対パンデミック体制からの離脱を準備していく政府や企業がどのような決定を下すかに左右される。各国が経済回復に多くの資金を投入し、企業がデジタル化から恩恵を引き出せば、少なくとも短・中期的には、生産性の向上と繁栄の見通しは高まる。一方、長期的にはあまり楽観的になれない。無期限に支出(救済措置や財政出動)はできないし、個人消費と民間投資ではそのギャップを埋められないかもしれないからだ。それだけに、テクノロジーや組織構造領域でのイノベーションの拡散を促進し、個人消費を喚起することで、持続的な生産性向上と繁栄のための環境作りを試みる必要がある。

マジックマネーの時代は続く
―― われわれが信頼するFRB

2021年8月号

セバスチャン・マラビー  米外交問題評議会 シニアフェロー(国際経済担当)

アメリカ市場における「復活した需要と限られた供給」は予想可能な結果をもたらした。連邦準備制度理事会のPCEコアデフレーターは、3・4%と、1990年代初頭以来の高水準で推移している。マジックマネーの時代におけるこのようなインフレは何を意味するのか。インフレの時代が本当に戻ってきたのか。エコノミストや金融アナリストの答えは、現在のインフレがどうなるかについての三つの予測として大別できる。但し、マジックマネーの時代が色あせていくと示唆するのはこのうちの一つの予測、それも、もっとも現実性に乏しい予測だ。連邦準備制度理事会が40年にわたって信頼を築いてきたからこそ、マジックマネーの時代は私たちの目の前にある。世界の人々は、自国の中央銀行が極端な規模の紙幣を刷り増しても、インフレによって自国通貨の価値が破壊されることはないと信頼している。うまくいくとは信じがたいかもしれないが、それでもうまくいっている。・・・

米経済とインフレ論争
―― インフレは本格化するか、収束するか

2021年7月号

ロジャー・W・ファーガソンJr 米外交問題評議会特別フェロー(国際経済担当)

連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定者が、2021年の平均インフレ率を約2・5%と予測し、その後、低下していくと考えているのに対して、他のエコノミストは、インフレ率は4%にまで上昇し、今後数年でさらに上昇するとみている。FRBの意思決定者は、「金利の引き上げに踏み切る段階になるまで、今後も忍耐強く状況を見守る」とコメントしており、受け入れ可能な範囲を超えた、突出した物価上昇があっても、それは、パンデミックによる経済シャットダウン後の経済再開に派生する一時的なボトルネック現象だとみている。だが、現在のインフレ率の上昇は一時的なものだとみなす、FRBの分析が間違っていれば、そして、FRBは認識面で後れをとっているという批判派の見方が正しければ、アメリカ経済だけでなく、世界の他の地域の経済も無傷では済まなくなる。

米台自由貿易協定の締結を
―― その地政経済学的意味合い

2021年7月号

デビッド・サックス  米外交問題評議会リサーチアソシエーツ ジェニファー・ヒルマン  米外交問題評議会シニアフェロー

中国は2010年に経済協力枠組み協定(ECFA)を台湾と締結し、関税と貿易障壁を大幅に引き下げることに合意している。この状況で、北京によって台北が他国との自由貿易協定を結ぶ道が閉ざされれば、必然的に台湾経済は追い込まれ、中国の台湾に対する影響力は大きくなっていく。一方、米台自由貿易協定を結べば、中国を牽制し、他の諸国が台北との貿易交渉を開始するための(北京に対する)政治的盾を提供できる。中国が軍事力を強化し、自信を高めているだけに、ワシントンは、中国の冒険主義を抑止する追加措置を特定する必要がある。台湾との自由貿易協定は経済的恩恵をもたらすだけでなく、アメリカが台湾との関係を重視していることを示す強いシグナルを中国に送り、台湾の自信を高め、台北は強い立場から北京にアプローチできるようになる。いまや野心的な米台自由貿易を模索すべきタイミングだろう。

中国を引き裂く大潮流
―― そこにある二つの中国

2021年7月号

エリザベス・エコノミー   外交問題評議会  シニアフェロー(中国研究担当)

中国政府の勝利主義的レトリックの背後には、不都合な真実が隠されている。それは、社会がやっかいな形で複雑に分裂しつつあることだ。ジェンダーと民族を基盤とする差別が横行し、オンライン空間での憎悪に満ちた、ナショナリスティックな発言がこれに追い打ちをかけている。起業家や研究者を含む「クリエーティブな社会階級」は官僚と衝突している。ジャック・マーのように、政府の介入を公然と批判し、厳格な処分対象とされた者もいる。都市部と農村部の深刻な格差もなくなっていない。これらの分断ゆえに、重要な社会集団が中国の思想・政治的生活に完全に参加できずにいる。この状況が放置されれば、習近平が言う「中華民族の偉大なる復興」は夢のままで終わる。

データ量が経済とイノベーションを左右する
―― データアクセスとプライバシーの間

2021年6月号

マシュー・スローター  ダートマス・カレッジ ビジネススクール 教授(国際ビジネス) デビッド・マコーミック   ブリッジウォーター・アソシエーツ 最高経営責任者

持続的な生産性の優位は国がアクセスできるデータの量に左右され始めている。自律走行車であれ、人工知能であれ、膨大な量のデータがイノベーションを左右するからだ。専門家が言うように「大量のデータにアクセスできる優秀な科学者は、一定量のデータにしかアクセスできないスーパーサイエンティストに勝る」。一方、データを管理する国際的な枠組みがなければ、市民のプライバシーが脅かされる。データが国境を越えて移動することを認めるのなら、政府は、どうやって自国民のプライバシーを保護できるのか。データはイノベーションを推進し、経済パワーを生み出し、国家安全保障にも関わってくる。アメリカを含む民主諸国は、テクノ権威主義モデルに対抗するためにも、データの潜在能力を引き出せる新しい国際枠組みを構築する必要がある。

パンデミック後の世界経済
―― 新興国が経済成長を主導する

2021年6月号

ルチール・シャルマ チーフ・グローバル・ストラテジスト モルガンスタンレー投資マネジメント

新興国経済が今後の世界経済の成長を牽引すると考える理由は数多くある。先進国政府が、(パンデミックによる)経済の痛みを和らげようと、大規模な財政出動に資金を投入しつつも、その帰結を無視するか、説明をはぐらかしてきたのに対して、途上国は生産性向上に向けた改革を実施せざるを得ない状況に追い込まれた。経済成長をコモディティ輸出に依存している途上国にとっては、資源価格がすでに上昇に転じていることも良い知らせだろう。しかも、デジタル技術で構築されたインターネットビジネスは先進国よりも途上国でより急速な広がりをみせている。2020年末以降、世界の投資家はすでに新興市場に戻りつつある。今後10年間で新興国の平均成長率が1%でも上昇すれば、現在は1日2ドル未満の生活を余儀なくされている人々の2億人が貧困ライン以下の生活から脱出することになる。

Page Top