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経済・金融に関する論文

経済改革を阻むアジアの社会環境

2001年4月号

ヒルトン・L・ルート ミルケン・インスティチュート グローバル経済担当ディレクター

アジア企業が欧米流の改革を断行していないとすれば、それは欧米の改革を理解していないからではなく、単に彼らが置かれている状況下で改革を行うことが意味をなさないからだ。欧米の批評家たちは、アジアの企業が、この地域の社会、制度面での特異性に合理的に対応してきたことを見落としている。こうしたやり方が過去における成長を呼び込み、今でも、短期的な成長の基盤を提供している可能性がある。 だが、資金を調達できない状況が続けば、アジア企業も資本市場にアクセスするために自己変革を余儀なくされる。グローバル経済にむけた自己変革に成功した企業が収益と生産性の伸びを示すことこそ、改革の妥当性を示す根拠となり、改革を促進する刺激となるだろう。

世界は三つの貿易ブロックに分裂してしまうのか

2001年4月号

フレッド・バーグスティン 国際経済研究所所長

グローバル化のなかで、世界には三つの貿易ブロックが形成されつつある。アメリカ経済が大幅にスローダウンすれば、ヨーロッパとアジアはより大胆に独自の道を歩み始めるだろうし、実際に東アジアは歴史上始めて自分達の経済圏を構築しつつある。「資金もたいして出さず、自国の法律ややり方を変えることもなく、他国に命令だけを下す」。アメリカに対するこのような不満が、世界中でより一般的な反米主義と混じり合い、それを強化している。だからこそ、ヨーロッパと東アジアは自分たち独自の経済圏づくりに乗り出しているのだ。問題は、アメリカが無気力なままであれば、伝統的に多国間プロセスにもプラスの方向で作用してきた地域的自由化の試みが、しだいに地域ブロック間の反目と敵意によって彩られかねないことだ。

グローバル時代の大いなる交渉を開始せよ

2001年1月号

デビッド・サンガー ニューヨーク・タイムズ紙記者

新政権は、アメリカの圧倒的な経済優位を維持していくとともに、アメリカの力に対する世界の反発をいかに緩和するかという、大きな課題に直面する。シアトルでの交渉決裂は、発展途上国が自らの立場を表明し始めたためであり、いまやわれわれは全く新しい貿易環境における新たな取り決めを必要としている。グローバルな経済秩序が途上国に恩恵を与えない限り、日米欧がそこから利益を引き出すのも不可能になる。

ハイテク労働者は米国を目ざす
――インフレ予防に移民が果たす役

2000年8月号

ステファン・ゲッツ・リヒター  ザ・グローバリスト・コム社長

空前の経済ブームに沸くアメリカにとっての唯一の懸念はインフレである。理論的には、労働需要の高まりはインフレを誘発しかねないが、情報通信・ハイテク部門を中心に、インドなどからの技術専門職のアメリカへの移民が急増しており、彼らの存在は、ハイテク部門の成長だけでなく、労働市場の需給バランスを維持する安全弁の役割を果たしている。金利引き上げを回避しつつ、ハイテク部門の成長を維持する鍵を握っているのは、意外にも自由な人の流れなのだ。

自由貿易で途上国を支援せよ

2000年7月号

C・フォード・ランゲ ミネソタ大学応用経済学教授

世界の人々に食糧を行き渡らせることができるかどうかは、食糧を余った地域から足りない地域へ移動させる手段として、貿易をさらに開放的にし、うまく利用していくという国際社会の決意に左右される。労働団体、環境保護団体などの反自由貿易連合は、自分たちの保護主義的な思惑を覆い隠そうと、遺伝子組み換え作物という「怪物食品」の問題を巧みに利用している。世界の消費者が遺伝子組み換え作物か有機食品かを自由に選べるようにすれば、国産品と輸入品の差別的扱いを求める必然性はなくなり、保護貿易の動きも緩和される。

米国エコノミスト徹底討論
日米欧 経済危機のシナリオ

2000年7月号

ブルース・スタインバーグ メリルリンチ証券チーフ・エコノミスト

構造改革も道なかばの日本、労働市場の硬直化が成長を妨げるヨーロッパ、IT産業への過度の依存と中南米諸国の窮状がリスクとなるアメリカ。二〇〇〇年一月、ニューヨークに集まった著名エコノミストたちが、世界経済の未来を大胆に予測する。

ユーロ圏 財政危機の全貌

2000年7月号

ニオール・ファーガソン オックスフォード大学講師 ローレンス・J・コトリコフ ボストン大学経済学教授

ユーロ各国は深刻な財政問題を抱えている。税負担の世代間格差が、単一通貨ユーロの存続を大きく脅かしかねないのだ。しかも、財政改革を実行できる政府は今のところ見当たらない。

グローバルな金融市場統合へ
―― 欧米証券取引所の大改革

2000年6月号

ポール・アールマン 欧州証券取引所連合理事長 ブランドン・ベッカー ウィルマー・カトラー・アンド・ピカリングパートナー、米国証券取引委員会(SEC)市場規制局前局長

証券取引所における電子化と証券取引所の株式会社化という大潮流のなかで、欧米では証券取引所の大統合が起こっている。証券取引所という分野にもっとも鋭い見識を持つアールマン氏とベッカー氏の対談を通し、ヨーロッパとアメリカ双方の立場から、グローバルな金融市場の統合に向けた、法的規制の現状と課題、投資家保護の仕組みなどを明らかにする。

外交問題評議会タスクフォース・レポート
国際金融構造の将来

1999年12月号

ピーター・ピーターソン、カーラ・ヒルズ、モーリス・ゴールドシュタイン他

一九九七年にタイで始まった金融混乱によって、国際コミュニティーは危機の予防と解決に関するこれまでの制度、構造、そして政策の見直しを余儀なくされている。一九九八年九月、クリントン米大統領は、卓越した民間組織が国際金融構造改革の必要性に関する分析をまとめるべきだと提言した。これを踏まえて、外交問題評議会は、ピーター・ピーターソンとカーラ・ヒルズを共同議長とする「国際金融構造の将来」を考えるタスクフォースを組織した(ピーター・ピーターソンは外交問題評議会理事長で、ブラックストーン・グループ会長を兼務。ニクソン政権で商務長官を務めた。カーラ・ヒルズは、ヒルズ・アンド・カンパニーの最高経営責任者で、ブッシュ政権の通商代表部代表を務めた)。プロジェクト・ディレクターを務め、このリポートを執筆したのは、国際通貨基金(IMF)の前・調査副ディレクターで、現在は国際経済研究所上席研究員のモーリス・ゴールドシュタインである。タスクフォースの参加メンバーについては、文末のメンバーリストを参照されたい。以下の論文は、評議会のタスクフォース・リポートの統括である。リポートの全文と議論の少数意見は評議会のウェブ(www.cfr.org)で公開している。

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