1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

経済・金融に関する論文

原油価格の高騰が続くなか、石油に替わるエネルギー資源の開発を模索していく価値は十分にあるが、代替エネルギーに過大な期待をかけるのはやめた方がいい。運輸交通部門などで石油以上に効率的なエネルギー資源を得ることは、不可能に近い。しかも、代替資源に切り替えるにはインフラを一新しなければならないため、そのコストを考えるといかなる代替エネルギー資源も、石油よりも割高になってしまう。ただし、地球環境への長期的な負担を軽減するには、代替エネルギーの研究開発を今後も進めていく必要がある。

経済成長は本当に民主化を促すのか
―― 中国の民主化はなぜ進展しない

2006年1月号

ブルース・ブエノ・デ・メスキータ
ニューヨーク大学政治学部長、フーバー研究所シニア・フェロー
ジョージ・W・ダウンズ
ニューヨーク大学社会科学部

近年では、抑圧政権は、経済発展を実現しつつも、民主主義の導入を非常に長い間遅らせることに成功している。例えば、中国は、この年にわたって力強い経済成長を遂げているが、依然として政治的には抑圧体制を温存している。現実には、経済成長によって抑圧政権の寿命は短くなるどころか、むしろ長くなっている。経済成長によって得た資金をバックに、公共交通機関、保健医療サービス、初等教育などの公共財を提供することで市民の満足度を高める一方で、民主化を求める市民の連帯を育む前提である政治的権利、人権、報道の自由を厳格に管理しているからだ。いまやわれわれは、経済成長は民主化を呼び込むという理論を見直す必要があるし、国際機関の融資条件に市民間の連帯をうながす一連の権利の保障を含めるべきだろう。

CFRミーテ ィ ング
IEAチーフエコノミストが語る、 世界のエネルギー需給見通し

2005年12月号

ファティ・バイロル スピーカー 国際エネルギー機関 (IEA) 経済分析部長  司会  ニューヨークタイムズ記者  ジャド・モーアワッド

「この5~6年をみると、世界の石油の需要増のほぼすべては交通・運輸部門の需要増大によるもので、これはかつてとは違うパターンだ。これまでは、産業、電力生産、家庭での需要増がその内訳だったが、いまや、需要増のほぼすべてが交通・運輸部門の需要増大に引きずられている。だが、この部門を石油以外のエネルギー資源へと移行させていくのは容易ではない。いかなるシナリオをたどっても、今後中東と北アフリカMENA の世界の石油供給にしめるシェアはますます増大していく」(F・バイロル)

中国の経済と貿易の行方

2005年5月号

スピーカー
カーラ・ヒルズ/元米通商代表
シャーリーン・バーシェフスキ/前米通商代表
司会
リオネル・バーバー/フィナンシャル・タイムズU・S・マネージング・エディター

現在でも日本が受け入れている外国投資の規模はポルトガルへの外国からの投資規模と変わらない。外国からの直接投資、そして輸入の受け入れについて、日本はいまも開放的とはいえない。一方、中国は輸入に国内市場を開放している。この点からも中国を保護主義的だと槍玉に挙げるのは難しい。(ヒルズ)

どのような人民元対策であれ、中国は、それによって経済成長が損なわれず、雇用創出のペースが鈍化しないような措置しかとらないだろう。というのも……現在北京は、雇用創出と社会の安定は不可分の関係にあるととらえているからだ。(バーシェフスキ)

邦訳文は、ニューヨークの米外交問題評議会で開かれたコーポレート・プログラムでの世界貿易をテーマとする討論における中国に関する議論の抜粋・要約。全文(英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

「中国経済の奇跡」という虚構

2004年9月号

ジョージ・ギルボーイ/MIT国際研究センター研究員

中国をアジアにおける新たな技術・経済「大国」とみなすよりも、普通の新興経済国家とみなすほうが適切である。中国の産業の多くは国有企業と「支配的な影響力を確立しつつある外資系企業」によって構成されており、中国の民間企業はいまも国有企業、外資系企業と競争していく力を確立できていない。

近代化を成し遂げる最終段階になって、産業の分断状況と権威主義的支配という重荷がのしかかってきているというのが中国の現実であり、政治改革を断行しないことには、さらなる発展を阻む閉塞的な中国のビジネス文化を変えていくことはできない。

キッシンジャーとサマーズが描く米欧関係の未来像

2004年5月号

タスクフォース共同議長 ヘンリー・キッシンジャー キッシンジャー・アソシエーツ会長
ローレンス・サマーズ ハーバード大学総長 プロジェクト・ディレクター
チャールズ・カプチャン 米外交問題評議会シニア・フェロー

米欧関係は、これまでになく緊張した局面にある。ヨーロッパ人の多くは、アメリカ人はヨーロッパに悪意をもっていると考え、一方アメリカ人の多くはヨーロッパ人の行動に反発し、ヨーロッパ側の脅威認識を的はずれだと切り捨てる。ヨーロッパでは、アメリカというハイパー・パワーを封じ込めるべきだという議論さえある。イラク戦争開始直後の二〇〇三年三月、米外交問題評議会は、キッシンジャー元米国務長官、サマーズ元米財務長官を共同議長に迎え、新しい局面を迎えている米欧関係に関するタスクフォースを組織した。邦訳文は、二〇〇四年三月に公表されたリポートに関するプレス・ブリーフィングからの抜粋・要約。リポート本文、プレス・ブリーフィングの全文(ともに英文)はwww.cfr.orgからアクセスできる。

離陸した経済超大国、中国に注目せよ

2003年12月号

デビッド・ホール ホール・アドバイザーズ会長
リリック・ヒューズ・ホール チャイナ・オンライン発行人

経済改革とそれが伴う変化が、地域間格差、失業問題などの社会問題をつくり出しているとしても、中国は、力強い民間部門を育成し、ほぼ五千億ドルもの外国からの直接投資(FDI)を導入し、世界の輸出大国の仲間入りを果たした。

天然ガスが世界経済を変える
――新たなエネルギー・ビジネスの可能性

2003年12月号

ダニエル・ヤーギン ケンブリッジ・エネルギー・リサーチ・アソシエーツ(CERA)会長
マイケル・ストッパード CERA・グローバルLNG研究ディレクター

天然ガス資源の開発はパイプラインが整備されている地域に供給が限定され、世界規模の市場が存在せず、地域内、国内、あるいは大陸内の取引に限定されてきた。だが、冷却による天然ガスの液化LNG技術が進化して、アメリカの天然ガスへの関心が高まるにつれて、天然ガスをめぐる世界規模のエネルギー・ビジネスが新たに台頭しつつある。 LNG技術によっ< て、天然ガス資源を効率よく市場の消費者に届けられるようになったし、世界は、よりクリーンで環境にやさしいエネルギー源としての天然ガスの開発と供給を待望している。必要なのは、資源の供給と需要をうまく管理できるような規律を備えたグローバルな市場メカニズムを構築 することだ。

地域的自由貿易構想という危険な妄想
―― アジアとアメリカを隔てる分断線の形成を回避せよ

2003年9月号

バーナード・ゴードン ニューハンプシャー大学名誉教授

この論文は、まだドーハラウンドラウンド決着への期待が存在した2003年に発表されている。当時は、アメリカが南北アメリカ大陸での自由貿易圏を模索し、アジアでは、アメリカ抜きのアジア自由貿易圏構想が議論されていた(FAJ編集部)
アメリカとアジアがそれぞれに推進する一連の自由貿易構想は、結局は地域的貿易ブロックを乱立させ、太平洋を隔てる分断線を生み出すことになる。一九三〇年代の世界の貿易ブロック化が、大きな悲劇を呼び込んだことを忘れてはならない。

「一連の地域的自由貿易合意によってグローバルな自由貿易体制の基盤が積み上げられていく」とする認識の根拠は疑わしい。逆に、特定地域での貿易ブロックの形成が、他の地域での貿易ブロックの形成を誘発することはすでに明らかだ。貿易ブロックが形成されれば、必然的に政治的なライバル関係が貿易ブロック内、ブロック間で生じ、それをどのような名称で呼ぶにせよ、保護主義が貿易ブロックを支配するようになる。

日本経済改革の政治的ジレンマ
―失われた十年から改革の十年

2003年1月号

リチャード・カッツ オリエンタル・エコノミスト・リポート誌シニアエディター

経済改革の真価は、改革措置が、経済成長の妨げとなっている供給面での非効率と需要の低迷という問題の解決に寄与するかどうかで判断すべきだ。だが人々が目にしているのは、もっとも再編が必要でない産業での再編、もっとも切実に改革が必要とされている領域での形ばかりの改革にすぎない。
だが日本人もついに「改革を断行しない限り、状況が改善されないこと」を確信し始めた。制度改革以外の選択肢のすべてを試み、それらが機能しないことがもはや明白になってきたからだ。失われた十年は改革が必要なことを納得するためのもので、次の十年は、実際に改革を実施するための時間となろう。

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