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経済・金融に関する論文

アメリカ政府は人民元は不当に過小評価されており、その結果、中国製品の競争力がますます強化され、グローバル貿易に大きなねじれが生じ、欧米諸国、特にアメリカの貿易収支に(巨額の貿易赤字として)大きなしわ寄せが来ているとみている。ヘンリー・ポールソン米財務長官は最近の米外交問題評議会(CFR)インタビューで次のように語っている。「中国の人民元のレートは中国経済の実態を反映していないし、すでにグローバルな金融システムの主要な一部を担いつつある中国が、経済の実態を反映しないような通貨を持っていることは大いに問題がある。短期的には、われわれは、より大きな柔軟性(変動幅)を導入するように求めていく。中国は人民元の為替レートを切り上げる必要がある」。しかし、人民元レートをいじった程度では、アメリカの巨大な貿易赤字は減少しないし、中国における政治的反動を誘発する恐れがあると指摘する専門家もいる。

ヘッジファンド悪玉説は間違っている

2007年3月号

セバスチャン・マラビー ワシントン・ポスト紙コラムニスト

ある企業や通貨の価格が本来の価値を示していないことを見抜き、さまざまな金融資産の価格の間に論理的には説明できない矛盾があることを突き止める能力を持っているヘッジファンドのアナリストだけが成功を収める。そのような大成功を収めるアナリストは、彼らだけではなく、投資家にも莫大な利益をもたらす。割安となっている資産を買い、割高となっている資産を売ることによって、市場価格の歪みが消失するまで彼らは市場価格を変動させ続ける。こうして最終的には世界の資本の効率的な分配が実現されることになる。ヘッジファンドが生み出すリスクとその活動がリスクを減少させることをバランスよくとらえる必要があるし、ヘッジファンドを金融システムに対する危険な火種とみなすのではなく、金融システムが火に包まれないように配慮する消防士の役割を果たしていると考えるほうが実態に近い。

2007年2月、ダイムラークライスラーは、クライスラーの北米部門の売却も視野に入れた再建策、リストラクチャリングを実施していくつもりだと発表し、その一環として、1万3千人のレイオフを行い、生産能力を削減し、さらには、クライスラーの売却も検討していることを挙げた。2月の表明は、9年に及んだダイムラーベンツとクライスラーの不幸な結婚の終わりの始まりとみる専門家は多い。ゼネラル・モーターズ(GM)がクライスラー、あるいはその一部を買収するかもしれないという噂もあれば、そうした噂はたんなる憶測にすぎないという見方もある。クライスラーにどのような運命が待ち受けていようと、ダイムラークライスラーの窮状は、グローバル・オート・インダストリー(世界の自動車産業)の大きな変化を映し出している。デトロイトの自動車メーカーが悪戦苦闘するなか、日本のトヨタが市場への影響力をますます高めているからだ。中国の一部の自動車メーカーもパーツ部門を中心にグローバル市場での足場を強化しつつある。

グローバル化に対する 反動にどう対処する

2007年3月号

ラウイ・アブデラル ハーバード大学ビジネススクール助教授
アダム・シーガル 米外交問題評議会(CFR)シニア・フェロー

いまや、資本、商品、労働力の国境を超えた自由な移動を意味するグローバル化の流れが今後も続いていくと楽観できる状況ではなくなってきた。最大の懸念材料は、市民のグローバル化への猜疑心が高まり、グローバル化が国家間、国内の双方で格差を助長していることへの人々の不満が増大し、状況への反発として各国で保護主義が台頭しつつあることだ。技術革新領域についてはグローバル化の流れがよどむことは今後もあり得ないが、ドーハ・ラウンドの決裂からも明らかなように市場開放の流れはよどみ始めているし、2国間合意の増大によって国際的な貿易ルールも損なわれ、グローバル化を支える制度そのものが形骸化しつつある。各国が状況にどのように対応するかで、グローバル化の今後は左右される。

2006年7月、世界貿易機関(WTO)のドーハ・ラウンドは再開の目処が立たぬままに凍結され、もはや今回のドーハ・ラウンドが目的に掲げた、踏み込んだ貿易自由化は永遠に陳腐化したとする見方もあった。しかし、ダボスで2007年1月に開かれた世界経済フォーラムに集った30カ国の閣僚たちは、数カ月以内に交渉を再開することに合意し、2月9日には、農業自由化交渉が再開された。だが、交渉の今後を楽観できる情勢にはない。ドーハが失敗に終われば、貿易自由化の進展が望めなくなるだけでなく、グローバル化は停滞し、世界は保護主義の時代に突入する危険もある。無論、WTOの力は損なわれ、富裕国市場へのアクセスを求める貧困国の願いも絶たれることになる。とはいえ、これまでのすべての貿易ラウンドも膠着状態を経て、土壇場で合意形成にいたっていることも事実だ。今後を考えるうえでの懸念材料は、保護主義が高まりをみせるなか、各国が「多角的貿易ラウンドに代わる選択肢として」2国間貿易合意路線へと傾斜しつつあることだ。

中国のパワーを検証する
――軍事、経済、ソフトパワーの実態と課題

2007年1月号

デビッド・M・ランプトン 米中関係全米委員会前会長

アメリカを含む世界各国は、中国の軍事パワーを過大評価し、経済面でも、売り手、輸出業者としての中国の役割を過大評価し、買い手、輸入業者、投資家としての中国の活動を過小評価している。そして、中国のソフトパワーの拡大はおおむね無視されている。一方の中国は、経済成長を持続させることこそ、現在の共産党政府の政治的正統性を維持していくうえでの不可欠の要因とみている。そのために、(技術、投資、戦略物資などの)資源を可能な限り国際社会から調達し、対外的脅威を緩和させようと心がけている。だが、国内での政治的緊張に直面すると対外的ナショナリズムのカードを切ろうとする傾向があるし、経済パフォーマンスが低下すれば、政府の正統性も、中国のソフトパワーも損なわれていく。状況が流動的であるがゆえに、中国のパワーの実態を明確に把握しておく必要がある。

議会の多数派となった民主党が、2国間貿易協定の批准を拒絶し、保護貿易路線を強化していくのではないかとの懸念が浮上している。事実、民主党議員のなかには、自由貿易合意に否定的な公約を掲げて当選した者もいるし、アメリカの労働者を守るために、途上国との自由貿易合意に労働基準、環境基準を盛り込むように圧力をかけることを示唆する有力者もいる。過小評価されたままの人民元レートをバックに、中国がアメリカに対する貿易上の優位を高めつつあるとみなす危機感も米議会では高まっている。山積する貿易問題に民主党議会はどう対処していくのか。

ブッシュの一般教書演説を読み解く
――イラクとガソリン消費の削減

2007年1月号

ナンシー・E・ローマン 米外交問題評議会(CFR) ワシントンプログラム・ディレクター

ブッシュ大統領が一般教書演説でイラクへの米軍増派戦略への支持を強く求めたのは、予算承認権を持つ議会が、増派策を予算面から切り崩そうと試みる危険があることを認識していたからだ。実質的に大統領は「しばらくの間、この戦略にチャンスをくれないか」と議会に訴えかけたと指摘するナンシー・ローマンは、大統領がイランの核開発問題についても簡単なコメントに留めたのは、増派によって「バグダッドの治安を確保して流れをつくりだし、イラク問題で活路が見えてくれば、イランについても有利な状況をつくりだせる」と考えているからだと指摘する。また、外交ではなく、国内領域のアジェンダを重視し、ガソリン消費の削減に向けて包括的で大胆な措置をとると約束したのは、「外交領域ではレームダックに陥らざるを得ない」ことを大統領が認識しているからだろうとコメントした。聞き手はバーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。

中国の人民元切り上げ問題を考える
――人民元切り上げで「グローバルな不均衡」をなくせるのか

2006年12月号

スティーブン・ローチ モルガンスタンレー・チーフエコノミスト(当時)
デスモンド・ラックマン アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)レジデントフェロー

ワシントンは、中国政府は輸出競争力を強化しようと、人民元レートを人為的に低いレベルにとどめようとしていると批判し、北京が人民元を早急に切り上げることが、アメリカの膨大な経常赤字と中国の巨大な貿易黒字という「グローバルな不均衡」を是正することにつながると主張してきた。しかし、人民元が切り上げられてもアメリカの経常赤字はなくならないとする見方もあれば、人民元が切り上げられなければ、米欧では保護主義が台頭して、グローバル経済の流れが停滞するという議論もある。アメリカの消費者がモノを買いすぎることが問題なのか、それとも、中国が為替操作を通じて輸出競争力を強化しようとしていることが問題なのか。スティーブン・ローチとデスモンド・ラックマンという2人のエコノミストが検証する中国の人民元切り上げ問題。

国際経済・貿易の不公正をいかに是正するか
―純然たる自由貿易では問題は解決しない

2006年11月号

ロバート・H・ウェイド
ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス政治経済学教授

現在の自由貿易体制では、世界を勝ち組と負け組の二つに分けてしまうし、多くの途上国は負け組になる。だが、グローバル経済に対する市場開放の度合いを途上国が調整できるようにすれば、こうした二極化現象をなくせる可能性がある。こうした問題を前向きに考えていくには、「先進世界」対「途上世界」という構図ではなく、先進国の人口が10億人、先進国より高い経済成長を遂げている途上国の人口が30億人、そして低成長に苦しむ途上国の人口が20億人であるという事実に即して、「1対3対2の世界」という構図で世界の経済と貿易の問題、そして途上国のニーズをとらえるべきではないか。

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