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経済・金融に関する論文

中国とインドはアフリカをめざす
―― 中印との貿易をアフリカの経済開発につなげるには

2008年4月号

ハリー・G・ブロードマン 世界銀行アフリカ地域経済顧問

アフリカと中国、インドの貿易がこれまでにないペースで拡大しており、アフリカの指導者は、現在の中国とインドとの経済関係をもっとうまく利用して成長に弾みをつけるべきだろう。中国とインドのアフリカへの進出拡大は、アフリカ諸国が限られた一次産品への極端な依存状況から脱し、労働集約的な軽工業品とサービス産業へとシフトしていく大きな機会を提供している。この機会を生かすには、改革を通じて市場競争力や統治の質を高め、インフラを整備し、好ましい投資環境を整備しなければならない。改革がきちんと実行されれば、中国とインドのアフリカへの経済進出は、世界の最貧層の3億人が暮らし、最も困難な開発上の問題を抱えるアフリカの発展と世界経済への統合を実現するためのかつてない呼び水になるかもしれない。

コペンハーゲン・コンセンサス
――デンマークでアダム・スミスを読む

2008年4月号

ロバート・カットナー
アメリカン・プロスペクト誌共同編集長

現在のデンマークモデルの中核は、労働市場の柔軟性(フレキシビリティー)と雇用保障(ジョブ・セキュリティー)のバランスをうまく組み合わせた「フレキシキュリティー」という概念、つまり、労働市場の柔軟性と雇用保障を両立させていることにある。労使協調路線がとられ、極端に高い課税率も結局は、社会サービスとして市民に還元されている。世界でもっとも平等で社会格差が小さく、それでもきわめてリバタリアンな思想を持つこの国は、どのようにして平等と効率、社会的正義と自由貿易を両立させているのか。グローバル化がつくりだす問題に対処するために、資本主義国がデンマークモデルを取り入れる余地はあるのか。

CFRミーティング
ワールド・エコノミック・アップデート
 ――米経済は08年後半に本当に立ち直れるのか

2008年2月号

スピーカー
リチャード・バーナー モルガンスタンレー、マネージング・ディレクター
ミッキー・レビー バンク・オブ・アメリカ、チーフ・エコノミスト
ローレンス・メイヤー 前連符準備制度理事会理事
司会
ダニエル・K・タルーロ ジョージタウン大学法律センター教授

CFRミーティング
改革路線の継続こそ
インド経済発展の試金石
 ――ムンバイを国際金融センターに

2008年2月号

スピーカー ヘンリー・M・ポールソン   米財務長官
司会  ピーター・アッカーマン    ロックポート・キャピタル社マネージング・ディレクター

「アメリカ財務省が、インドと協力して改革と包括的な経済成長を促進することを望んでいる二つの分野について述べたい。一つは、物的なインフラ整備の資金を提供し、インドの一般家庭の生活に恩恵をもたらし、経済を活性化させること。もう一つは、ムンバイを国際金融センター(IFC)に発展させて、インドの金融システムを強化・拡大することだ。これら二つの目的を達成するには、国際的なスタンダードを受け入れ、政治的なリスクを冒してでも経済改革を積極的に前進させるという強いインド側の決意が必要になる」
 「いまやバンガロールに拠点を置くインド企業は、多国籍企業のバックオフィス業務にとって欠かせない役割を果たしている。この領域では、インド企業が世界のビジネスのやり方を革命的に変化させている。次のステップはムンバイに金融センターをつくり、地域を超えて企業と投資家に金融サービスを提供することだろう」(H・ポールソン)

政府系ファンドとグローバル金融市場
――政府系ファンドは脅威なのか

2008年2月号

ロバート・M・キミット/米財務副長官

政府系ファンドが多くの注目を集めているのは、政府系ファンドの活動がグローバル経済を構造的に変化させる可能性を秘めているからだ。実際、投資を通じて他国の安全保障インフラや民間企業の経営に対して大きな影響力を持つようになる可能性もある。だが、これまでの行動から判断すると、政府系ファンドは政治的な論争を誘発するような行動を慎んでいる。政府系ファンドの投資活動が自由で公正な活動である限り、政府系ファンドからの投資に対して開放的な路線をとり、国内および外国での成長と繁栄を促進すべきだろう。むしろ、必要なのは、政府系ファンドとファンドの受け入れ国が適用できる一連の政策原則を国際的に確立することだ。逆に、最大の脅威は「投資保護主義」の台頭だろう。

Classic Selection
それでも21世紀は民主主義の時代になる
――民主化に不可欠な信頼と妥協を育む市場経済

2007年12月号

マイケル・マンデルバーム   ジョンズ・ホプキンス大学教授

市場経済を機能させるのに必要な制度、知識、価値観は、民主主義を実現するうえで必要になる制度、知識、価値観と重なりあう。こうして民主主義は市場の働きを通じて広まることになる。市場経済が民主主義を育んでいくのは、市場経済の前提となる財産権の保障が自由の一部を構成しているからだ。もっとも重要なのは、市場経済のもとで、企業、労働組合、専門家協会、有志クラブなど、政府から独立した団体が多数誕生することだ。非民主国家が経済成長を実現するために市場経済体制を導入すれば、民主化圧力は必ず高まっていくし、経済成長は、将来にわたってあらゆる国の政府が追求する目標であり続ける。しかし、アメリカの政策でそれを左右するのは難しいし、アラブ世界、ロシア、中国が今後民主化していくかどうかは、予断を許さない状態にある。

中国の富裕層の上位10%が民間資産の40%以上を保有し、インドにいたっては、富裕層の上位わずか36名が1910億ドルの資産を所有するという、極端な所得格差が両国で生じている。中国とインドは、所得格差に加えて、地域格差、産業間格差という問題も抱えている。経済成長からの恩恵を社会的に再配分するには、政府が、教育、医療、インフラ、開発への投資を増やす必要があるが、インドと中国の場合、こうした領域への投資が進んでいない。貧困に苦しむ農業部門を置き去りにするのではなく、中国とインド政府は、インフラ、医療、教育への投資をさらに強化する必要がある。経済・社会格差の増大は両国における貧困層の削減ペースが鈍化し、経済成長を持続させる基盤が政治的・社会的に脅かされていることを意味するのだから。

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