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経済・金融に関する論文

グローバルに統合された企業
―― アジアからアメリカへの貿易は停滞する

2008年12月

サミュエル・J・パルミサーノ IBM取締役会長

どこまでグローバル化できるかについての企業の認識が変化した結果、企業の関心は、どのような製品をつくるかよりも、いかにそれを生産するか、どのようなサービスを提供するかよりも、どのようにサービスを提供するかに移っていった。いまやアウトソーシングが一般的になり、企業は自らを、調達、生産、研究、販売、流通などの特定部門が並列するネットワークとみなしている。ここにおける真の技術革新とは、新しい製品を開発し、生産するための創造力だけに左右されるわけではない。いかにサービスを提供し、ビジネスプロセスを統合するか、いかに組織やシステムを管理し、知識を移転するかでその多くが左右されることになる。

The Classic Selection 1932
大恐慌

2008年12月号

エドウィン・F・ゲイ
ハーバード・ビジネススクール初代学部長

「今現在の生産力と生活水準を即座に引き上げるために、将来を担保に自由に信用に頼るという戦時の慣習が戦後も続いた。途方もない大量の信用が使われ、乱用されることもしばしばだった。乱用自体は目新しくないが、創造される信用の規模はかつてないものとなった。紙の上での利益を人々が現実にお金に換えだすと、肥大化した信用が収縮しだし、多くの投資家が浮かれた夢から目を覚まし、我を取り戻した。そしてパニックが起きた」

CFRインタビュー
グローバル化時代の危機には
政府間協調システムで対処せよ
――金融危機対応の教訓

2008年11月号

アン=マリー・スローター プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共・国際問題大学院長

「いまや、そこに存在するのが『グローバルに統合された金融企業』である以上、『金融システムもグローバルに統合されている』ということだ。事実、今回の金融危機においても、主要国の中央銀行当局は協調して流動性を提供している。こうした政府間ネットワークが最初に形成されたのは金融セクターにおいてだった。そう、(1972年に組織された)バーゼル(銀行監督)委員会だ。これ以降、主要国の中央銀行当局の代表者は定期的に会合の場をもってきた。各国の立場を調整し、相互信頼と知識を積み重ねてきた。バーゼル委員会がなければ、今回の危機を前に各国の金融当局が協調行動をとるのは難しかったはずだ」。
 聞き手はリー・ハドソン・テスリク (www.cfr.org のコンサルティング・エディター)。

CFRインタビュー
カーライル・グループ、
D・ルーベンシュタインが語る
金融危機第2幕に備えよ
――強欲は鳴りをひそめ、恐怖がとって代わった

2008年11月号

デビッド・M・ルーベンシュタイン カーライル・グループ共同創設者兼マネージング・ディレクター

 アメリカの株式市場が下落し、世界中の主要株式市場も連鎖的に下落したことを受けて、専門家の多くは、2008年の金融危機はすでにパニックを引き起こしていると考えるようになった。大手プライベート・エクイティのカーライル・グループの創設者で、現在、マネージング・ディレクターを務めるデビッド・M・ルーベンシュタインは、パニックと恐怖を緩和するには、「なりふりかまわずに」あらゆる対策を打たなければならないと主張する。
 米外交問題評議会(CFR)の役員でもあるルーベンシュタインは、現在起きている株式市場の暴落と信用収縮は金融危機の「氷山の一角」にすぎないと述べ、この数十年間にわたって世界経済を牽引してきた金融および経済の原動力の徹底的なオーバーホールが行われることになると今後を見通している。さらなる混乱を回避するには、政府とビジネスの指導者の協調、そして各国政府との協調が必要になると語る。
 現在の混乱はプライベート・エクイティのビジネスにどのような影響を与えるのか。レバレッジ規制はプライベート・エクイティにとっても大きな問題となるとルーベンシュタインはみる。潤沢なキャッシュを手元に持ってはいても、ローンを組むことができなくなれば、プライベート・エクイティは、レバレッジを利用して企業を買収していく戦略を取ることができなくなり、生き残っていくには、どのようにビジネスモデルを変えていくかを考えていかなければならない、と。一方で同氏は、特定の段階になれば、千載一遇の投資チャンスをとらえようとする投資資金が流入し始め、企業が再生していくと考えられるとコメントした。聞き手は、リー・ハドソン・テスリク(www.cfr.orgのアソシエート・エディター)。

ドルの再生と新ブレトンウッズ体制の導入を
 ――固定相場制と金本位制の復活を

2008年11月号

ジェームズ・グラント グラント金利オブザーバー編集長

1971年以後の国際通貨レジームもすでに寿命を迎えつつあり、老朽化の弊害が兆候として表れている。不安定な為替レート、世界規模でのインフレ、対米債権国における中央銀行のバランスシートにドルが積み上げられていることがその証左だ。この20年間にわたって、健全だと考えられていた制度、合理的だと思われていた市場が幾度となく制御不能に陥ってきた。このままでは、世界規模での通貨・金融危機のリスクはますます高まっていく。持続性のある、優れた後継の国際通貨システムが必要だ。それは第二次世界大戦後に生まれた体制と同じく、固定為替相場と金が支える基軸通貨を中心としたシステムになるはずだ。

貿易合意そのものではなく、 貿易合意の中身が問題だ

2008年10月号

オースタン・グールズビー バラク・オバマ米大統領候補・経済政策顧問

 バラク・オバマ民主党大統領候補の経済政策首席顧問を務めるオースタン・グールズビーは、「これまでの自由貿易合意の内容を見直す」と公言している「オバマ候補は保護貿易論者」だという共和党の言い分は間違っていると指摘し、次のように反論している。
 「オバマ候補は(貿易合意を再交渉して)労働と環境に関する基準を貿易合意に埋め込んでいくべきだと考えている。……多くの自由貿易合意文書は千ページにも達するが、そのうちの980ページは個別企業や独占企業への利益供与に関する記述であり、とても経済学者が考える自由貿易とは言えない内容だ」。
 また、グールズビーは共和党が求めている国内油田の増産についても、国内で増産を試みても焼け石に水で、むしろ、代替エネルギー、再生可能エネルギーへの投資を増やすとともに、エネルギー使用効率の向上とエネルギー消費の削減という二つの目標を模索していくべきだとコメントした。
 聞き手は ジョアンナ・クロンスキー(www.cfr.org の キャンペーン2008スタッフ)。

ベン・ステイル、セバスチャン・マラビーが 分析する米金融市場混乱の余波

2008年10月号

スピーカー ベン・ステイル ・・・ 米外交問題評議会・国際経済担当ディレクター
司会 セバスチャン・マラビー ・・・ 米外交問題評議会・地政経済学センター所長

 連邦準備制度理事会(FRB)が不良債権の多くを救済するようになり、FRBのバランスシートがさらに毀損されていけば、市場は警戒しだす。FRBが、金融機関、あるいは金融機関の資産の一部を、資金を投入して支えことで市場を安心させようと試みれば、大がかりなドル離れが起き、他の通貨建ての投資へと向かう可能性がある。例えば、ユーロ建ての資産や金への投資が進むだろう。(B・ステイル)

 人民元レートを低く抑えることで、輸出産業のブームを支えて、「雇用製造装置」を動かし、繁栄を持続することが、中国政府の正統性を支える最善の方法だと北京は考えてきた。だが一方で、人為的に人民元の価値を長期的に低くとどめれば、経常黒字は増え続け、さらに膨大な外貨準備を抱え、結果的に、資金をアメリカに注ぎ込むことになる。だが、これは中国にとっていいことだろうか。依然として貧しく、道路を建設し、インフラを整備する必要があるにもかかわらず、中国の多くの資金がアメリカのドル建て資産へと向かっている。……これまでのやり方に対する反対意見も出てきている。(S・マラビー)

自由貿易は雇用創出に貢献できる

2008年10月号

ジョン・B・テイラー ジョン・マケイン米大統領候補・経済政策上級顧問

共和党大統領候補ジョン・マケインの経済政策上級アドバイザーを務めるジョン・B・テイラーは、雇用を創出し、アメリカ経済を復活させるには力強い貿易政策が必要だとしつつも、一方で、「マケイン候補は失業者対策を見直し、競争環境、技術革新、生産体制の変化のあおりを受けて、雇用を失った人々に救いの手を差し伸べるつもりだ」とコメントした。
アメリカの競争力を強化するには、法人税率の引き下げ、自由貿易合意、金融改革が不可欠だと指摘した同氏は、エネルギー資源については、マケインは国内の石油生産の増強を試みるとともに、原子力、バイオ燃料、環境保護も重視していると語った。
 聞き手は、ロバート・マクマホン(www.cfr.orgのデピュティー・エディター)。

CFRブリーフィング
F・バーグステンが分析する中国経済の脅威と機会

2008年6月号

スピーカー
C・フレッド・バーグステン/国際経済ピーターソン研究所所長
司会
セバスチャン・マラビー/米外交問題評議会・地政経済学研究センター所長

中国は、為替政策、貿易、エネルギー政策、対外援助などの一部の領域をめぐって、現在の経済秩序の規範、指針、ルール、制度的アレンジに反するような行動をとっている。中国が既存のシステムを混乱させる戦略の一環として、システムの一部に挑戦していると言うつもりはないが、そこにいるのはたんなる経済超大国ではない。おそらくは、現在のゲームルールに則して行動することに乗り気でない経済超大国だ。…だが最近では、国際経済システムが必ずしもうまく機能しなくなっていることも考えなければならない。実際、国際通貨基金(IMF)、世界貿易機関(WTO)、主要7カ国(G7)などの伝統的な機関はこの10年にわたってうまく機能していない。つまり、中国の挑戦を別にしても、現在のシステムを改革し、変化させていく必要がある。この意味では、中国の挑戦をよい刺激とみなすこともできる。だが、どの方向に変化させて、努力していくかが問われる。

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