CFRアップデート
中国経済は日本経済の救世主になれるか
2009年7月号

1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。
2009年7月号
2009年6月号
グローバルな金融危機にもかかわらず、国営石油企業が依然として世界でもっとも戦略性の高い資源の75%を支配し、国有企業そして政府の後ろ盾を持つ民間の覇権企業が、民間のライバル企業に対する競争上の優位を持っている。しかも、政府系ファンドは依然として潤沢な資金を持っている。本当に大きすぎて潰せないのはこれらの企業や組織のほうだろう。いまや市場経済の勢いは弱まり、国と政府が主要な経済アクターとして、主に政治的利益のために市場を利用しようとする「国家資本主義」が台頭し始めている。(冷戦期のような)政治的イデオロギーではなく、「市場経済」と「国家資本主義」という2つの経済モデルをめぐるグローバルな抗争という構図が生まれつつある。しかも、グローバルな金融危機とリセッションによって、「国が管理する資本主義」という強力なブランドが突きつける問題と課題はますます大きくなってきている。
胡錦涛と温家宝は2002~2008年に、経済が停滞していなかったにも関わらず、国の経済への介入路線を強めていった。……市場改革の要である価格の自由化は部分的に覆されているし、当初から緩慢なペースでしか実行されていなかった民営化はすでに放棄されている。企業間の競争を促す構想も帳消しにされている。中国政府は、外国からの投資を制限し、輸出に課税することで、比較的開かれていた貿易部門への介入さえも強めつつある。中国で市場改革路線が放棄されたのは、一つには、指導層が他の全てを犠牲にしてでもGDPの成長を実現しようと試みているからだ。
2009年5月号
北朝鮮やイランを標的とするアメリカの最近の金融外交は、各国の政府だけでなく、民間の金融機関にも協力を求めるようになり、その結果、金融制裁はかなりの成果を挙げるようになった。ワシントンは要注意のブラックリストを公表し、各国の銀行はこのリストから疑わしい資産を突き止め、怪しげな取引を阻止し、問題のある個人や組織が世界の金融システムを悪用するのを食い止めようと試みている。銀行がこうした制裁措置に協力するのには訳がある。意図的ではなくても、「テロや核兵器の拡散に手を貸している」と新聞で報道されれば、そのブランドが大きく傷つき、ビジネス上の大きな痛手となるからだ。金融制裁は今後も問題国家に対する大きなツールになる。だが、脅威と金融システムが交錯するポイントを明確にせずに、安易に制裁措置を乱発すれば、金融措置を実施する主体である銀行側の協力を得られなくなる恐れがある。
「米中双方にとって必要なのは、中国がもっと内需主導型の経済へとシフトしていくことだ。中国はこれまでの20年間、輸出主導型の経済成長戦略をとり、その結果、膨大な外貨準備を積み上げ、グローバルなインバランス(グローバル経済の不均衡)を作り出してしまった。これが、米中双方を苦しめている。」(E・アルデン)
「金融部門を規制し、銀行を適切に監督していれば、問題はここまで深刻にはならなかったかもしれない。だが、……規制でどうにかなるとは私は考えていない。膨大な資本が経済システムに流入すると、バブルが発生し、そのバブルが崩壊し、大きな経済的打撃を引き起こすことは避けられないと私はみている。 この意味において、アメリカにとって中国の輸出主導型の経済成長モデルは好ましくないし、中国にとっても好ましくない」。(S・マラビー)
2009年4月号
金融規制を強化し、厳格な金融政策を実施すれば、グローバル・インバランス(世界経済におえる経常収支の不均衡)が誘発しがちな金融の暴走をゆっくりと押さえ込めるかもしれないという議論も耳にする。しかし、これらは世界経済の成長率を鈍化させることによってのみ実現できる次善の策に過ぎない。……現在の議論では、こうしたインバランスを増大させ、各国がその対策を先送りするのを許した「国際金融システムの基本的特質」に関する検証が行われていない。……ヘンリー・ポールソンが適切に指摘したように、現在の危機が解決しても、インバランスとそれが伴うリスクが再び問題を作り出すことになる。
2009年4月号
金融危機が民衆の政府に対する不満を高め、これが、中国やロシアでの政治的抑圧の強化へとつながっていく恐れもある。途上国への投資が先細りとなるなか、先進国がさらに途上国への対外援助を削減するようになれば、破綻国家の数は増える一方になるかもしれないし、その余波は深刻なものになる。各国が、短期的な経済成長に目を向けるあまり、長期的な温暖化対策に後ろ向きになる危険もある。すでに各国では保護主義が台頭しており、「G20諸国のうちの約17カ国が、2008年11月の金融サミット以降に何らかの形で貿易障壁を引き上げている」。そして、大規模な景気刺激策の後には、インフレやドル危機が待ち受けているかもしれない。今回の危機が次なる危機を引き起こさないようにするには、何をどうすればよいか・・・
2009年3月号
「中国のアメリカへのアプローチはより手堅くなり、われわれが世界における目的とみなすものの多くを共有しだしている。しかし、これは『開放的な貿易システムと国際協調は、中国が豊かさと大きな成果を手にする機会をもたらしてくれる』という中国側の認識を前提としている。危機を前にわれわれが門戸を閉ざすか、そうでなくても、『アメリカやフランスは貿易の門戸を閉ざしつつある』と中国が考えるようになれば、これは、ジョージ・ブッシュの路線よりも、はるかに大きな危険を伴う外交的大失策となる。アジアと中国を疎外し、その結果、相手の反発やライバル意識をかき立てるとすれば、その後数十年にわたって世界はその禍根から逃れられなくなる。中国に対して門戸を閉ざすことは、現状においてもっとも大きな危険を伴う選択肢だ」。聞き手は、バーナード・ガーズマン(www.cfr.orgのコンサルティング・エディター)。
2009年2月号
ベトナムが世界貿易機関(WTO)への加盟を果たしたのは2007年1月11日。150番目のWTO加盟国として、重要な第一歩を踏み出した当時のベトナム経済は非常にうまくいっていた。2006年の国内総生産(GDP)の伸び率は8・2%だったし、ベトナムがアジア経済の輝ける成功例として引き合いに出されることも多かった。だが、WTO加盟に続く好景気は短命に終わる。ベトナムの株価は、2007年3月に最高値をつけて以降は、大きく下落し、2008年11月までには2007年のピーク時に比べ70%以上も価値を失っていた。2008年のGDP成長率も7%を下回ると予測されている。実際、ベトナム経済のブームとバスト、そして金融部門の脆弱性は、グローバルな金融危機の拡大に伴って新興市場が直面するであろう課題を浮き彫りにしているとみなすことができる。