金融超大国・中国の政治的ジレンマ
―― 重商主義路線か資本の自由化か
2010年7月号

圧倒的な規模の外貨準備を持つ中国は、依然として低い一人あたり所得のレベルからは到底考えられないような、金融市場における圧倒的な影響力を手にしつつある。中国の対外投資の目的は、国内の経済成長を刺激し、雇用を創出することで、共産党政府の正統性を維持していくことにあり、必然的に重商主義路線をとっている。だが、これまでのところ、中国がうまく資金を用いているとは言えない。FDI(外国直接投資)はさまざまな理由から伸び悩んでいるし、技術アクセスを得るための先進国の企業買収もうまくいってはいない。途上国のプロジェクトに資金を提供して、中国企業に発注させるやり方も、現地の反発に遭遇している。結局のところ、これまでの重商主義路線は、中国よりも取引相手国により大きな恩恵をもたらしており、いまや中国もその費用対効果が高くないことを認識しつつある。だが、中国が重商主義路線を止めて、資本の自由化に踏み切るには時間がかかる。共産党の権力維持という大きな政治問題が絡んでくるからだ。グローバル経済の安定に貢献するような形で金融パワーを行使するように北京にうまく促すには、ワシントンは中国の国内的な優先課題が何であるかにもっと配慮すべきだろう。