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経済・金融に関する論文

GDPは万能ではない
だが、代替経済指標はあるのか?

2010年10月号

ロヤ・ウォルバーソン
CFR.org Staff Writer

政府は予算を決めるために、中央銀行は金融政策の決定に、金融機関は経済活動を判断するために、そして企業は今後の経済を予測して、生産、投資、雇用の概要を決めるために国内総生産(GDP)を主要な指標として用いてきた。第二次世界大戦後に銀行の取り付け騒ぎ、金融パニック、恐慌が起きる頻度が減少したのは、包括的で正確な経済データがタイミングよくGDPとして提供されるようになったことが一つの理由だ。しかし、GDPでは、経済活動が環境の持続可能性に与える影響などの長期的要因は考慮されないし、所得格差もカウントされない。したがって、GDP成長ばかりを追い求めれば、環境悪化、所得格差の問題が深刻化する可能性があるし、GDPが増大するだけでは、必ずしも人々の幸福感は高まらないとする理論も登場している。GDPは万能ではない。だがGDPをいかに改善すべきか、あるいは、他のアプローチに置き換えるかについて、エコノミストの間にコンセンサスはない。

食糧・穀物供給危機の再来か
― 異常気象と穀物市場の行方

2010年9月号

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会シニア・フェロー

記録破りの猛暑の日差しが、世界の穀倉地帯を焦がしている。異常気象による収穫減を前に、ウクライナやウズベキスタンがロシアと同様に穀物の輸出禁止措置に踏み切れば、すでに先細り気味の世界の穀物収穫量はさらに下方修正を余儀なくされる。インド、スイス、フランスその他のヨーロッパ諸国が大量の穀物備蓄を開始しているという噂もある。サウジアラビアや中国などの諸国は、すでに今後の食糧危機に備えて、アフリカやアジアの貧困諸国で耕作可能な土地を確保しつつあるようだ。現在の穀物市場をめぐる世界の不安を抑えようと賢明に試みている世界農業・食糧機関も、最近の価格高騰が始まる前の2010年6月に憂鬱な予測を示している。それによれば、農産品の供給が十分ではなく、エネルギーコストが増大し、拡大する世界の中産階級層の食の多様化が重なり合うことで、今後10年の穀類、穀物、石油、乳製品価格は、2007年の水準と比べて40%上昇する可能性がある。厄介なことに、小麦その他の穀物の取引トレンドは、食糧危機が起きた2007~2008年のそれに似てきている。穀物の先物取引が急増し、いまや価格は2008年以降、最高水準に達している。

21世紀は新興市場国の世紀に
― G20、世銀、IMFの未来

2010年7月号

スピーカー
スチュワート・M・パトリック 米外交問題評議会シニアフェロー国際機関およびグローバル統治プログラム責任者
司会
デビッド・E・サンガー  ニューヨーク・タイムズ ワシントン支局長
パネリスト
ホイットニー・デベボイス 元世界銀行 理事
アルビンド・サブラマニアン ピーター・ピーターソン国際経済研究所 シニアフェロー
アントニー・フォン・アットマール 新興市場マネジメントLLC会長兼チーフ・インベストメントオフィサー

最終的には、アメリカ、ヨーロッパ、日本のような、すでに確立されたパワー、中国、インド、ブラジルのような新興大国、さらには新興のミドルパワーの間でタフな取引と交渉が行われ、その結果、新しい秩序が形成されていくことになる(S・パトリック)

G20は新しいG7に至る通過点にすぎない。新しいG7は、アメリカ、EU、日本、BRICs諸国で構成されることになるだろう(アットマール)

金融超大国・中国の政治的ジレンマ
―― 重商主義路線か資本の自由化か

2010年7月号

ケン・ミラー 米国務省諮問委員会メンバー

圧倒的な規模の外貨準備を持つ中国は、依然として低い一人あたり所得のレベルからは到底考えられないような、金融市場における圧倒的な影響力を手にしつつある。中国の対外投資の目的は、国内の経済成長を刺激し、雇用を創出することで、共産党政府の正統性を維持していくことにあり、必然的に重商主義路線をとっている。だが、これまでのところ、中国がうまく資金を用いているとは言えない。FDI(外国直接投資)はさまざまな理由から伸び悩んでいるし、技術アクセスを得るための先進国の企業買収もうまくいってはいない。途上国のプロジェクトに資金を提供して、中国企業に発注させるやり方も、現地の反発に遭遇している。結局のところ、これまでの重商主義路線は、中国よりも取引相手国により大きな恩恵をもたらしており、いまや中国もその費用対効果が高くないことを認識しつつある。だが、中国が重商主義路線を止めて、資本の自由化に踏み切るには時間がかかる。共産党の権力維持という大きな政治問題が絡んでくるからだ。グローバル経済の安定に貢献するような形で金融パワーを行使するように北京にうまく促すには、ワシントンは中国の国内的な優先課題が何であるかにもっと配慮すべきだろう。

「遠征経済学」の薦め
―― 軍は紛争・災害後の社会と経済をいかに立て直せるか

2010年6月号

カール・J・シュラム ユーイング・マリオン・カウフマン財団 理事長兼最高経営責任者

現在の紛争の多くが、経済が弱く、停滞している国で起きているのは偶然でない。軍隊は軍事介入をして社会を安定化させることしか考えていないが、紛争後の安定に必要なのは、紛争前を上回る経済レベルへと相手国を引き上げることだ。イラク、アフガニスタンでの米軍による経済再建努力が成果を上げていないのは、一つには、軍が開発経済学の間違った前提を受け入れているからだ。先進国であれ、途上国であれ、経済成長は、新たに立ち上げられた企業が雇用を創出し、経済全般を刺激することで実現する。しかし、起業が経済復興に果たす役割が、開発経済学ではほぼ無視されている。米軍の軍事計画立案者たちが、戦争や自然災害によって荒廃した国々に活気ある経済を再生したいのなら、硬直的な思考パターンにとらわれている国際開発・援助機関にばかり目を向けるべきではない。むしろ、成功企業を立ち上げた実績を持つ起業家や投資家など、市場での実務経験豊かな専門家に相談すべきだろう。

CFRインタビュー
アメリカの財政赤字とドルの運命

2010年3月号

ライアン・アベント Economist.com エディター

アメリカの経常赤字がかつてない規模に達しつつあるといっても、経済が回復すれば、税収基盤も拡大し、失業保険などの支出も低下し、対GDP比経常赤字は5%規模へと圧縮されていくと思う。しかし、より大きな問題は、2015年以降に、社会保障、医療保険(メディケアー、メディケイド)の負担増でアメリカの経常赤字が再び増大していくと考えられることだ。問題は、「医療と社会保障コストの問題に取り組まなければ、米国債の格付けが引き下げられ、高金利によって経済成長が抑え込まれてしまう」というぎりぎりの状況に直面しなければ、政治的決断をするのが難しいかもしれないことだ。この段階まで状況を放置すれば、外国の投資家は、ドルを保有し続けるのをそれほどいい選択肢だとは思わなくなるだろう。

CFRミーティング
ジョセフ・スティグリッツが語る
金融危機と規制、経済の不均衡、中国、ドルの将来

2010年3月号

スピーカー ジョセフ・E・スティグリッツ  コロンビア大学教授 司会  スティーブン・R・ウェイズマン  ピーター・ピーターソン国際経済研究所公共政策フェロー

私の考えでは、今回の経済危機は金融システムが社会的な機能を果たしていなかったことを示す何よりの証拠だ。大きすぎて潰(つぶ)せない銀行が何をするか。リスクをとって成功すれば利益を独占し、リスクをとって失敗すれば納税者がその損失を埋め合わせる。これが現実に起きたことだ。貧困に苦しむ世界の人々を助けるためにも、地球温暖化の問題に取り組んでいくためにも巨大な投資が必要となる。重要なポイントは、資金を生産的な投資へと向かわせる方法を模索することだ。今回の経済危機は、金融システムがそのような機能を果たせなかったことを意味する。金融システムが果たすべき機能は、貯蓄をもっとも高いリターンをもたらす領域への投資へと向かわせることだ。世界でもっとも豊かな国の住宅部門に返済能力を超える水準になるまで資金を注ぎ込むのは、どうみても効率的ではなかった。(J・スティグリッツ)

世界は再び食糧不足の時代へ
――結局、マルサスは正しかったのか

2010年3月号

チャーリスル・フォード・ランゲ ミネソタ大学教授
チャーリスル・ピエール・ランゲ イエール大学学生

2009年の穀物生産がかつてないレベルへと増大したことで、価格の高騰は一時的に抑えられているが、今後数年間のうちに再び世界は食糧不足に陥り、市場価格が高騰し始めるようになる。緑の革命を経て、多くの人が、これで食糧の安定供給は確保されたと考えるようになったが、実際にはそうではなかったことはすでに最近の食糧価格高騰によって実証されている。ますます多くの穀物がバイオ燃料の原料として用いられ始め、中国や南アジアでの人口や所得が上昇するにつれて食糧需要はさらに高まっている。途上国、とくに最貧国は絶望的な状態に追い込まれている。すでに食料価格を高騰させるメカニズムは動き出している。

「北京コンセンサス」の終わり

2010年3月号

姚洋(ヤン・ヤオ)
北京大学国家発展研究院 副所長

一般に途上国の一人当たりGDPが3000~8000ドルに達すると、経済成長は頭打ちになり、所得格差が拡大して社会紛争が起きがちとなる。中国はすでにこの危険水域に入っており、すでに厄介な社会兆候が現れている。要するに、国の経済は拡大しているが、多くの人々は貧しくなったと感じ、不満を募らせている。特権を持つパワフルな利益団体やまるで企業のように振る舞う地方政府が、経済成長の恩恵を再分配して、社会に行きわたらせるのを阻んでいるからだ。経済成長と引き替えに共産党の絶対支配への同意を勝ち取る中国共産党(CCP)の戦略はもはや限界にきている。CCPが経済成長を促し、社会的な安定を維持していくことを今後も望むのであれば民主化を進める以外に道はない。

世界を変える四つの人口メガトレンズ
―― 先進国の衰退と途上国の台頭をどう管理するか

2010年1月号

ジャック・A・ゴールドストーン ジョージ・メイソン大学公共政策大学院政治学教授

21世紀の新しい現実は、世界のどの地域で人口が減少し、どこで増大するのか、どのような国で高齢者が多くなり、どのような国で若者が多くなるか、世界の人口動態の変化が国境を越えた人の移動にどのような影響を与えるかで左右される。欧米を中心とする先進国は人口面でも経済面でも衰退し、世界経済の拡大はブラジル、中国、インド、インドネシア、メキシコ、トルコ等の新興途上国の経済成長によって刺激される。しかも、若者の多い途上国から労働力不足の先進国へと大きな人の流れが必然的に起きるし、一方で、経済基盤の脆弱な途上国の若年人口が世界で大きな混乱を作り出す恐れもある。必要なのは、こうした21世紀の新しい現実に備えたグローバル構造の構築を今から始めることだ。

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