GDPは万能ではない
だが、代替経済指標はあるのか?
2010年10月号
政府は予算を決めるために、中央銀行は金融政策の決定に、金融機関は経済活動を判断するために、そして企業は今後の経済を予測して、生産、投資、雇用の概要を決めるために国内総生産(GDP)を主要な指標として用いてきた。第二次世界大戦後に銀行の取り付け騒ぎ、金融パニック、恐慌が起きる頻度が減少したのは、包括的で正確な経済データがタイミングよくGDPとして提供されるようになったことが一つの理由だ。しかし、GDPでは、経済活動が環境の持続可能性に与える影響などの長期的要因は考慮されないし、所得格差もカウントされない。したがって、GDP成長ばかりを追い求めれば、環境悪化、所得格差の問題が深刻化する可能性があるし、GDPが増大するだけでは、必ずしも人々の幸福感は高まらないとする理論も登場している。GDPは万能ではない。だがGDPをいかに改善すべきか、あるいは、他のアプローチに置き換えるかについて、エコノミストの間にコンセンサスはない。