1994年以降に発表された邦訳論文を検索できます。

経済・金融に関する論文

欧州が対ロ制裁へ踏み込めない理由
―― ロシアとの経済関係か欧州安全保障か

2014年6月号

トム・キーティング 金融・安全保障アナリスト

最終的に、ロシアに対する欧米の経済制裁は十分なものにはならないだろう。厄介なのは、ヨーロッパの指導者たちが直面しているのがロシアからのエネルギー供給の問題だけではないことだ。この20年にわたってロシアとの関係に多くを投資してきたヨーロッパの企業は、ロシアとの経済的つながりを失うことを心配している。政治指導者たちも、経済制裁を通じてプーチンの対外路線を変化させる必要があると感じつつも、「制裁によって自国が経済的やけどを負うのではないか」と心配している。こうして、ヨーロッパはロシアに対する経済制裁をめぐって分裂し、結局は消極的な態度に終始している。他に選択肢がない状況に陥らない限り、ヨーロッパの政治家たちは自国の企業と産業を守ることを優先するだろう。

「変われない日本」の変化を読む
―― ナナロク世代と改革のポテンシャル

2014年6月号

デビン・スチュワート カーネギー国際問題倫理評議会 シニアフェロー

ここにきて、日本人の多くが「停滞し、変われない日本」も、もはや変わるしかないと考えるようになった。こうした変化を象徴するのがナナロク世代だ。親の世代よりずっとグローバルな感覚をもち、リベラルで個人主義的、しかも起業に前向きな、現在30―40歳代の彼らは、いまや社会的な影響力をもつほどに台頭している。これに呼応して、女性の社会進出が進み、教育制度が開放的になり、市民社会も力強さを増している。右派のナショナリストではなく、新しいエリートたちが成功すれば、日本の政治も永久的に変わるかもしれない。既成政党の指導者が年をとり、ナナロク世代がさらに社会的足場を築いていけば、彼らが今後の選挙で当選できる見込みも大きくなる。日本の政治は、新しい人材と思想を必要としており、ナナロク世代は双方において大きな貢献ができる立場にある。

シェール革命で変化するエネルギー市場と価格

2014年5月号

エドワード・L・モース シティグループ原材料担当グローバル統括者

ロシアを抜いて世界最大の天然ガス生産国の地位を手に入れたアメリカは、2015年までには、サウジアラビアを抜いて最大の原油生産国になると考えられている。2011年に3540億ドルの赤字だったアメリカの石油貿易収支も、2020年には50億ドルの黒字へと転じる。一方、シェール資源の開発技術は外国にも移転可能であり、今後、シェール資源開発は世界的に広がっていくだろう。実際、シェール資源は世界各地で発見されており、多くの国がこの分野でアメリカに続きたいと考えている。アメリカの開発可能なシェール資源が世界全体の資源の15%程度である以上、世界的な開発が進めば、これまでになく安いコストでエネルギー資源が供給されるようになる。40年にわたって市場を支配してきたOPECが恣意的に原油価格を設定し、世界経済を苦しめてきた時代にもいずれ終止符が打たれ、世界経済は大きな成長を遂げることになるだろう。・・・・

主要経済指標という幻
―― ビッグデータ時代の経済指標を

2014年4月号

ザチャリー・カラベル/リバートゥワイス・リサーチ会長

いまやGDPは国の成功と失敗を判断する指標とみなされ、選挙結果を左右し、政府を倒し、大衆運動を引き起こす力さえ持っている。だが、GDPでは幸福感、満足感、家計労働は計測できない。政府が発表するインフレ数値を信じる市民もほとんどいない、公的なインフレ統計数値など「信用詐欺」のようなものだと言う専門家さえいる。グローバル・サプライチェーンを特徴とする現在の世界では貿易指標もほとんど当てにならない。いかなる主要経済指標も、現実の経済の姿を適切に映し出せていない。だが「より優れた主要経済指標」をわれわれが必要としているわけでもない。必要なのは政府、企業、コミュニティ、個人の特定の必要性を満たす、それに適したテーラーメードの指標だろう。

自由貿易協定、20年後の現実 ―― NAFTAとメキシコ

2014年2月号

ホルヘ・G・カスタニェーダ 元メキシコ外相

NAFTA(北米自由貿易協定)が発効してから20年後の現在、おそらくあらゆる人が唯一同意できるのは、「あらゆる議論・主張が誇張されていたこと」だろう。貿易合意としては、NAFTAはメキシコにとって否定しようのないサクセスストーリーであり、輸出の劇的な増大をもたらすきっかけとなった。しかし、NAFTAの目的が経済成長を刺激し、雇用を創出し、生産性を改善し、所得水準を引き上げ、移民流出を減らすことだったとすればどうだろうか。判断は分かれるはずだ。一人当たりGDPもこの20年で2倍になった程度で、年平均成長率でみれば1・2%にすぎない。この時期にNAFTAに参加していないブラジル、チリ、コロンビア、ペルー、ウルグアイは、メキシコよりもはるかに高い一人当たりGDPの成長を実現している。しかし、だからといって、NAFTAは失敗だったと決めつけることもできない。むしろ、メキシコは、エネルギー、移民、インフラ、教育、安全保障など、1994年の交渉テーブルに置き去りにしてきたアジェンダに今後取り組んでいくべきだろう。NAFTAは失望を禁じ得ない結果しか残せていないが、メキシコは、さらなるNAFTA的な路線、つまり、地域的経済統合路線を必要としている。

Review Essay
移民を受け入れるべきか規制すべきか
―― 移民と経済と財政

2014年2月号

マイケル・クレメンズ
世界開発センターシニアフェロー
ジャスティン・サンドファー
世界開発センター研究員

移民は基本的に社会モデルが機能しなくなった国から逃れてくる。この事実を踏まえて、その影響をよく考えるべきで、「移民を無制限に受け入れれば、ある時点で受入国と移民出身国の双方にマイナスの影響が出るようになる」と考える研究者もいる。一方、労働市場を移民に開放すると、労働力の供給が拡大するだけでなく、投下資本利益率が上昇して経済成長を加速し、労働需要が高まり、移民だけでなく受入国の住民の生活水準も改善すると考える研究者もいる。実際、移民が受入国の財政にプラスの影響をもたらすことを示す研究は数多くある。経済協力開発機構(OECD)が2013年に27カ国を対象に実施した調査によると、移民が受入国の国庫にもたらす金額は、彼らが受け取る社会保障給付よりも一世帯当たり平均4400ドルも多い。問題は、移民論争がとかく感情的で十分な裏付けが示されないまま、過熱してしまうことだ。

韓国経済のポテンシャルとリスク

2014年1月号 

マーカス・ノーランド ピーターソン国際経済研究所 上席副会長(研究部長)

韓国を新興国と呼ぶのは、もはや時代遅れかもしれない。この国は豊かだし、技術面でも洗練され、イノベーション、経済改革、健全なリーダーシップという面で見事な成果を上げている成熟した民主国家だ。しかし、それでも韓国を先進国市場とみなすのは無理がある。経済の貿易依存度が高いために、主要先進国と比べて、市場の変動に翻弄される度合いが大きく、これは韓国経済が克服すべき重要な課題の一つだ。企業部門への集中度が高く、社会の高齢化が進んでいること、政府と企業の不透明な関係、そして、北朝鮮という政治的に危険な隣国を抱えていることも大きな課題だ。北の隣国が唐突に崩壊する可能性は現に存在する。その場合、韓国が大規模な資金を北に援助するか、北朝鮮の民衆が韓国へと流れ込むかのいずれかが現実になる。・・・

CFR Meeting
世界エネルギーアウトルック
―― 中東原油の重要性は変化しない

2014年1月号

ファティ・ビロル 国際エネルギー機関チーフエコノミスト、セオドア・ルーズベルト バークレーキャピタル・クリーンテク・イニシアティブ マネジングディレクター

エネルギー市場における各国の役割が変化しつつある以上、急速な変化のなかで市場の流れを読み、自国を適切な場所に位置づける必要がある。そうしない限り、敗者になる。アメリカは天然ガスの輸出国に姿を変え、中東諸国は石油消費国への道を歩みつつある。ヨーロッパ、アメリカという輸出市場を失いつつあるロシアとカナダは、天然ガス輸出のターゲットを次第に中国や日本などのアジアに向け始めている。そして、シェールガス革命が進展しても、世界の天然ガス価格の地域格差は、今後20年はなくならない。もっとも重要なのは、アメリカ国内における原油生産の増大を前に、「もはや中東に石油の増産を求める必要はない」と考えるのは、政治的にも分析上も完全に間違っていることだ。生産コストが低くて済む、中東石油へ投資しておかなければ、アメリカの石油増産トレンドが終わる2020年頃には、世界は大きな問題に直面する。中東石油の投資を止めれば、原油価格の高騰は避けられなくなる。

Foreign Affairs Update
グリーンランドの資源開発ブーム
―― 開発と汚染リスクに揺れる島民たち

2013年12月

アンナ・カタリナ・グラブガード フリーランスジャーナリスト

オーストラリア、カナダ、中国を含む各国の投資家が、鉱物資源開発をめぐって、グリーンランドに押し寄せている。大きな資源が存在すると長く言われながらも、これまではグリーンランドの資源開発を阻む障害が存在した。ごく最近まで氷床が資源豊かな大地を覆い尽くし、しかも、ウランの掘削が禁止されてきたからだ。潤沢なウラン資源と混在する形でレアアースその他の資源が存在するため、事実上、すべての鉱物資源開発ができなかった。だがいまや氷床は溶け出し、グリーンランド自治政府はウラン掘削を禁止する法律を撤廃している。資源開発に異を唱える人はいない。だが、ウランが掘削されることを現地の多くの人が心配している。注意深く掘削しなれば、ウラン掘削によって土地や水が数世代にわたって汚染されるリスクがあるからだ。・・・

CFR Briefing
高齢化する中国社会の社会経済・外交的意味合い

2013年12月号

ヤンゾン・ファン/ 米外交問題評議会シニアフェロー(公衆衛生担当)

中国社会は急速に高齢化している。2050年までには、65歳以上の人口が総人口のほぼ4分の1の3億3000万人に達すると考えられている。中国の高齢化は、三つのはっきりとしたトレンズによって促されている。第1は、この数十年における力強い経済成長とともに、平均余命が1981年の68歳から現在の74歳へと延びたこと。第2は、(1950―60年代に生まれた)ベビーブーマー世代が高齢者の仲間入りをしつつあること。そして第3は、1979―1980年代初頭に導入された厳格な人口管理政策によって出生率が大きく低下し、高齢人口の比率を相対的に引き上げていることだ。当然、生産的な労働力の規模が縮小し、その結果、賃金レベルが上昇し、労働集約型産業における中国の競争力は低下する。しかも、年金、医療、社会保障制度はうまく整備されていない。・・・その経済的、外交的意味合いは何か。・・

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