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Classic Selection
核の優位を確立したアメリカ
――核抑止時代の終わりか

ケイル・A・リーバー  ノートルダム大学政治学助教授 、 ダリル・G・プレス  ペンシルベニア大学政治学準教授

The Rise of U.S. Nuclear Primacy

2007年2月号掲載論文

近いうちに、アメリカが核の先制攻撃によってロシアや中国の長距離核のすべてを破壊し、反撃能力を一度に粉砕できるようになる日がやってくる。この核のパワーバランスの劇的なシフトは、アメリカが核システムを持続的に改善し、ロシアの核兵器がしだいに時代遅れになり、中国の核戦力の近代化がゆっくりとしたペースでしか進まなかったことの帰結である。われわれのシミュレーションでも、ロシアの戦略核のすべてを一度の核攻撃で破壊できるという結果が出ている。相互確証破壊の時代、核抑止の時代は終わりに近づきつつある。今後、問われるのは、核の優位を手にしたアメリカが、国際的にどのような行動をとるかだろう。

  • MADの崩壊は何を意味するか
  • 相互確証破壊から核の優位へ
  • もうロシアに核抑止力はない
  • 先制第一撃シミュレーション
  • 核の優位確立の意図は何か
  • ミサイル防衛の本当の価値
  • 核の優位とアメリカの行動

<MADの崩壊は何を意味するか>

冷戦期、核の超大国である米ソは相互確証破壊(MAD)として知られる軍事的均衡によって半世紀にわたって身動きがとれない状態に追い込まれた。1960年代初頭までに、米ソの核の兵器庫はともに洗練され、巨大化し、その結果、米ソはともに、核の先制攻撃、あるいは奇襲攻撃をかけても、相手の反撃能力を完全には破壊できなくなり、核戦争を開始することがお互いにとって自殺行為である状況へと皮肉にも追い込まれていた。
だが、軍事問題の専門家や政策決定者の多くは、MADによって世界は相対的に安定し平和になったとさえ考えた。事実、MAD状況のなかにあった米ソは、国際政治に慎重な態度で臨み、紛争解決のために核兵器をバックとする恫喝策をとることを避けて、危険な行動を控えた(この点で、米ソが核をめぐって一触即発の状況に追い込まれた最後のケースである1962年のキューバ核ミサイル危機が、まだ核時代の黎明期に起きたことは示唆に富む)。こうした核の手詰まり状況ゆえに、大国間の戦争はもはや起こりえないと状況を楽観する者もいた。一方MADに批判的な勢力は、大国間の戦争が起きなかったのはMADのおかげではなく、むしろ、全体主義国家であるソビエトの危険な拡張主義のパワーと影響力をアメリカが押し返すことに成功したからだと主張し、むしろMADはソビエトの延命に手を貸しただけだと批判した。・・・

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