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2011年9月号(4)米欧経済の衰退で世界はどう変わる
2011-08-29
米欧経済の衰退で世界はどう変わる
――空白が生じ、混乱する世界経済の荒波に日本経済は耐えられるのか
2011.8.29公開
米欧経済が短・中期的に力を失っていくのは、おそらくさけられない。米国債格下げ後の短期的混乱を乗り切ったとしても、アメリカは財政赤字・債務問題を抱えている。そして、アメリカが赤字と債務の削減を中長期的にできるかを左右するのが、日本にも大きな影響を与えずにはおかない国防費の削減、そして、医療保険を中心とする社会保障制度改革だ。
さらに、M・ブリスとJ・アタリが言うように、「政治統合が実現しない限り、ユーロの崩壊もさけられない」。膨大な赤字と債務を抱える日本も、例外ではない。国内的に資金需要を支えられなくなったときに、あるいは、厳格な緊縮財政に舵をきったときに市場でそして社会で何が起きるか。アメリカ、ヨーロッパで起きたことが、日本でも起きることを想定した上で、市民と市場をともに納得させるような、スマートな財政再建・赤字削減策と新産業政策が必要になるのは間違いない。
緊縮財政に端を発するイギリスの社会混乱を分析したマタイスは次のように指摘している。結局のところ、大きな社会格差、低成長、そして緊縮財政はイギリスに特有のものではない。いまや主要先進国を含む、多くの諸国が似たような状況に直面しており、他の諸国にとっても、イギリスの事態は他人(ひと)事ではないだろう。
主要国経済がこのような状況にある以上、世界経済に空白が生じるのは避けられず、この空白を埋めるために、資金大国中国が経済秩序の安定化に向けた応分の役割を果たすかどうかで、今後の流れは大きく左右される。少なくとも、中国がこれまで同様に輸出主導型の経済成長戦略をとり、経常黒字をますます積みましていくようなら、国際システムは途方もなく大きな圧力にさらされ、1930年代の悪夢が徘徊し始めることになるかもしれない。(FAJ編集部)