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2025年1月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2025年1月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2025年1月号 目次

Agenda 2025

  • 反欧米ブロックへの強硬策を
    中露分断策の不毛

    オリアナ・スカイラー・マストロ

    雑誌掲載論文

    中国、ロシア、イラン、北朝鮮という枢軸メンバー間の相互関係の深さを推定したり、彼らを引き離そうと努力したりするのではなく、ワシントンは、これらを独裁国家のブロックとして扱い、同盟諸国にも同様の対応をとるように働きかけるべきだ。中国を枢軸のリーダーとして扱い、ある枢軸メンバーが好ましくない行動をすれば、(中国を含む)他の枢軸メンバーにもペナルティを課すようにすべきだ。ロシアの戦争努力を支援する中国企業だけに制裁を科すのではなく、アメリカは中国という国を対象に経済制裁を実施する必要がある。そして、ロシアが交渉テーブルに着くまで、制裁は継続すると北京に伝える。もはや代替策は存在しない。

  • 中東の危険な均衡
    イランとイスラエルのパワーバランス

    スザンヌ・マロニー

    雑誌掲載論文

    今後、イランとイスラエルの直接的な軍事衝突が常態化すれば、劇的な変化が生じ、そこにあるのは、ひどく不安定な均衡にすぎなくなる。直接攻撃の敷居が低くなれば、攻撃と報復の応酬が続き、中東でもっともパワフルな二国家が全面戦争、それも、アメリカも巻き込まれ、中東とグローバル経済に大きな悪影響を与えるかもしれない戦争に突入する危険は高くなる。一方で、弱体化したイランが核兵器を保有することで孤立の道を選び、その結果、核拡散潮流が生じる恐れもある。そのような未来を防ぐことが、ドナルド・トランプ次期米大統領の大きな課題になる。

  • AIの台頭と国家の衰退
    AI企業の台頭と宗教の復活

    ヘンリー・キッシンジャー、エリック・シュミット、クレイグ・マンディ

    雑誌掲載論文

    AIは、国際システムで競合するアクターの相対的地位をリセットし、国家に国際政治インフラにおける中心的役割の放棄を強いるかもしれない。今後、社会的、経済的、軍事的、政治的なパワーを独占するのはAIを所有・開発する企業かもしれない。そして、国籍よりも宗教的単位のほうが、アイデンティティや忠誠心にとって、より関連性の高い枠組みにされるのかもしれない。世界が、AI関連の企業連携に支配されるにせよ、ゆるやかな宗教別のグループに分散していくにせよ、それぞれのグループが権利を主張して衝突する新しい「領土」は、物理的な土地ではない。それは、デジタルランドスケープになるだろう。

  • 強大化する反欧米枢軸
    中露・イラン・北朝鮮の目的は何か

    アンドレア・ケンドール=テイラー、リチャード・フォンテーヌ

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナ戦争をきっかけに、中国・ロシア・イラン・北朝鮮は、経済、軍事、政治、技術的な結びつきを強め、共有する利益を特定し、軍事・外交活動を連携させつつある。すでに、地政学状況は変化している。実際、中国の台湾侵攻を前にアメリカが軍事介入を決断すれば、ロシアはヨーロッパの別の国に対して軍事行動を起こし、イランや北朝鮮はそれぞれの地域で脅威をエスカレートさせるかもしれない。たとえ新枢軸が直接的に侵略を連動させなくても、同時多発的な衝突が欧米を圧倒する恐れがある。さらなる連携がもたらす破壊的影響を管理し、中露・北朝鮮・イランの枢軸がグローバル・システムを動揺させないようにすることを、米外交の中核目的に据える必要がある。

  • 中ロ同盟のポテンシャルと限界
    分断された世界と中ロの連帯

    パトリシア・M・キム

    Subscribers Only 公開論文

    習近平が、「より欧米中心ではない世界」を目指すためのパートナーにプーチンを選んだことは、結果的に逆効果になるかもしれない。北京とモスクワの優先順位には食い違いがあり、ロシアの先行きもみえないために、両国が協調して既存秩序を抜本的に変革していく能力には限界がある。当面、アメリカと同盟国は、世界の安定を維持することへの北京の強い関心をうまく利用して、両国がより破壊的な道を歩むのを防ぐことに焦点を当てるべきだろう。中ロが世界の多くの地域で既存の国際秩序に対する不満を動員していることを認識した上で、「欧米とその他」、特にグローバルサウスとの間のギャップを埋める作業にも着手する必要がある。・・・

  • イスラエル・イラン戦争のリスク
    ガザ紛争が長期化すれば(10/19)

    ダリア・ダッサ・ケイ

    Subscribers Only 公開論文

    これまで、イスラエルとイランは、制御不能なエスカレーションリスクを冒すことなく、定期的に相手を挑発できると考えてきた。だが、いまやガザにおける戦争が、そうした微妙な計算を狂わせつつある。テヘランは、イスラエルとハマスの戦争を、レバノンやシリアでの代理(傀儡)勢力の攻撃によってイスラエルの能力を低下させるチャンス、あるいはイラクやシリアの米軍に対する武装勢力による攻撃の再開を促すチャンスとみなすかもしれない。こうした作戦はすでに進行しているのかもしれない。紛争が長引けば、安定化へのインセンティブは低下し、イスラエルとイランの衝突リスクは高まっていく。戦争がまだこの地域に広がっていないとしても、世界の指導者たちは、戦争の拡大はあり得ないと錯覚してはならない。

  • イランの戦略目的は何か
    混乱と変動から利益を引き出せる理由

    スザンヌ・マロニー

    Subscribers Only 公開論文

    テヘランは混乱のなかにチャンスをみいだしている。イランの指導者たちは、ガザ戦争を利用し、エスカレートさせることで、イスラエルを弱体化させてその正統性を失墜させ、アメリカの利益を損ない、地域秩序を自国に有利なものへ変化させようとしている。混沌とした状況から自国の利益を導き出すイランの能力を侮るべきではない。攻撃によってアメリカを刺激し、テヘランとその同盟国が有利になるようなミスを犯させたいとテヘランは考えている。だが、イランを含む関係勢力のいずれかが誤算を犯せば、中東全域でより激しい紛争が発生し、中東の安定とグローバル経済に大きなダメージが生じる恐れがある。

  • 未来の戦争と新しい兵器
    新しい戦争はすでに具体化している

    マーク・A・ミリー、エリック・シュミット

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナ戦争が他のヨーロッパ地域へ拡大すれば、北大西洋条約機構(NATO)とロシアは、ともに地上ロボットと空中ドローンをまず投入することで、人間だけでは攻撃も防御もできない広範な前線をカバーすることになるだろう。すでに戦争の本質は変化している。イスラエル軍は、AIプログラム「ラベンダー」を使って、ハマスの戦闘員を特定し、彼らの自宅を爆撃している。人が攻撃の承認にかける時間はわずか20秒だ。最悪のシナリオでは、AI戦争は人類を危険にさらす恐れさえある。人間だけによる戦闘シミュレーションと比べて、AIモデルでは、核戦争を含めて、戦争が突然エスカレートする傾向があることがわかっている。

  • AIが主導する戦争の時代?
    自律型兵器の脅威にどう対処するか

    ポール・シャーリ

    Subscribers Only 公開論文

    すでに、ウクライナでは、AIが「戦場で誰を殺すかを判断する」完全自律型兵器が実戦配備されており、このままでは、機械が主導する危険な戦争の時代へと向かっていく危険がある。ターゲットを発見・特定し、攻撃するまでの時間が短縮され、意思決定のサイクルが短くなり、機械が、個々の標的を選択するにとどまらず、作戦全体を計画・実行するようになる可能性もある。こうなると、人間は、戦争を管理し、終わらせる力をほとんど失ってしまう。そのリスクを回避し、より重大なAIの脅威に対処する協調体制の基盤を築くためにも、自律型兵器についての合意をまとめる必要がある。・・・

停戦交渉は実現するか

  • 停戦交渉と欧州の立場
    ウクライナと欧州の安全を確保するには

    エリー・テネンバウム、レオ・リトラ

    雑誌掲載論文

    2025年に、ロシアとの包括的な和平合意が成立する可能性は極めて低い。合意が成立しても、それは休戦に限られ、政治的協議は先送りされるだろう。交渉が実現しても、米露(そして潜在的には中国)の交渉者が、サウジやトルコの仲介で欧州大陸の将来を決定するとすれば、それは悪夢のシナリオだ。「ウクライナとヨーロッパの主要国がテーブルに着かない交渉などあり得ない」と強く主張しなければならない。そして、ロシアの攻撃を阻む抑止力として、ウクライナ領内に欧州部隊を派遣する覚悟をもつ必要がある。欧州部隊の軍事プレゼンスは安全保障の盾として機能し、欧米の手堅いコミットメントを示すことになる。この環境でウクライナに侵攻すれば、欧州とNATOを巻き込む危険が高いため、ロシアはエスカレーション策に訴えるのを躊躇するはずだ。

  • ロシアとの交渉を実現するには
    経済制裁の強化を

    セオドア・ブンツェル、エリナ・リバコバ

    雑誌掲載論文

    「流れは自分の側にあり、妥協する環境にはない」とモスクワは考えている。つまり、さらに経済圧力をかけなければ、ロシアが2025年にウクライナ戦争の停戦交渉に応じることはないだろう。現状で停戦を急いでも、それは、モスクワがさらに触手を伸ばすための、小休止になるにすぎない。一方、ロシア経済の生命線であるエネルギーからの収益を低下させ、欧米製のデュアルユース製品の輸入を大幅に抑え込めば、ロシアが戦争を継続するのは難しくなり、交渉に応じるインセンティブを高められる。原油価格とインフレ率が低下しているいま、欧米は2022年当時よりもロシアのエネルギー・フローを混乱させる、より積極的な施策をとれるはずだ。

  • ウクライナ戦争を終わらせるには
    勝利の定義を見直せ

    リチャード・ハース

    Subscribers Only 公開論文

    ワシントンは、実現不可能な勝利の定義に固執するのではなく、戦争の厳しい現実と向き合い、より妥当な結末を受け入れ、折り合いをつけるべきだ。キーウが主権と独立を維持し、希望する同盟や連合に自由に参加できることを勝利とみなし、ウクライナ全土を解放する必要があるという考えは放棄すべきだろう。アメリカとその同盟国は、ウクライナに武器支援を提供する一方で、キーウにモスクワと交渉するように求め、その方法を具体的に示すという不快な対策をとらざるを得ない。外交を模索する一方で、ウクライナを支援し続けることが、紛争を終結させるためには必要であることをトランプが最終的に理解することを期待したい。

  • 勝利なき戦争と外交
    いかにウクライナでの戦闘を終わらせるか

    サミュエル・チャラップ

    Subscribers Only 公開論文

    いまこそ、ウクライナ戦争をどのように終わらせるかについてのビジョンを描くべきだろう。15カ月に及ぶ戦闘で明らかになったのは、たとえ外部からの支援があったとしても、双方には相手に決定的な軍事的勝利を収める能力がないということだ。このままでは、はっきりとした結果を得られぬまま、数年にわたって壊滅的な紛争が続く恐れがある。休戦を前提とする戦闘の終結では、ウクライナは、一時的に全ての領土を回復できない状況に直面するが、経済的に回復するチャンスを手にし、死と破壊の日々と決別できる。少なくともこの1世代でもっとも重大な国際的危機となったこの紛争に対する効果的な戦略は、アメリカと同盟国が紛争の終わりを働きかけることだ。

  • ウクライナ戦争の戦略シフトを
    反転攻勢から防衛へ

    リチャード・ハース、チャールズ・クプチャン

    Subscribers Only 公開論文

    ウクライナにとって、生き残るために「必要な戦争」として始まったものが、いまや、クリミアとウクライナ東部の多くを奪還するための「選択した戦争」に変化している。ウクライナの現在のアプローチはコストが高く、先の見通しも立たない。これは、勝利できない戦争であるだけでなく、時間がたつとともに、ウクライナは欧米の支持を失う危険もある。ウクライナが、ロシアと「停戦交渉」を試み、軍事的な重点を「攻勢から防衛」に切り替えるための戦略シフトをめぐって、ワシントンはキーウそしてヨーロッパのパートナーとの協議を開始する必要があるだろう。外交は戦争だけでなく、長期的にはロシアによる領土の占領を終わらせるための、もっとも現実的な道筋だ。

  • ロシア経済の行方
    戦争、経済制裁、インフレ

    クリス・ミラー

    Subscribers Only 公開論文

    戦争と経済制裁のコストは、当初のインパクトが、欧米が期待したほど、そしてロシアが懸念したほど劇的でなかったとしても、今後、大きくなっていく一方だろう。今のところ、ロシアの指導者たちは、半年以上にわたって欧米の制裁を乗り切ったことに満足している。しかし、今後ロシアの産業は、欧米から輸入パーツを調達できない状況にいかに適応していくかに苦しむことになる。原油価格が上昇しない限り、モスクワは社会(財政)支出を続ける一方で、財政赤字や高インフレを受け入れるという、厳しいトレードオフに直面することになるはずだ。モスクワの戦争遂行を停止させるような形でロシア経済が崩壊することはないとしても、急激なリセッションや生活レベルの低下が続き、今後も短期的には経済がリバウンドするとは期待できないだろう。

  • プーチン独裁と大衆の無関心
    終わらない戦争とロシアの日常

    アンドレイ・コレスニコフ

    Subscribers Only 公開論文

    モスクワは、大多数の人々が、ウクライナ戦争を含む政府の選択に無関心であり続けることを望んでいる。そして人々は、上から押しつけられた世界の現実を受け入れる方が気が楽だと感じている。和平交渉開始を支持する人も増えているが、彼らは見返りを求めている。征服した「新しい」領土を維持するか、モスクワに「返還されるべきだ」と考えている。ウクライナ戦争を欧米に対する多面的戦争に再構築したプーチンは、欧米との生き残りを賭けた「再戦」まで考えている。一方、ロシア民衆は、大統領選挙の投票用紙で相対的な平穏を買えると考えている。ただし、プーチンがその約束を守るという保証はない。・・・

トランプと世界

  • トランプ政権と中国
    取引主義と競争戦略

    ラッシュ・ドーシ

    雑誌掲載論文

    トランプの関税引き上げの威嚇策は、中国側の行動を変化させるための交渉戦術なのか、デカップリングを達成するための確定路線なのか、あるいはこの二つのミックスなのかはわからない。いずれにしても、北京は、トランプ政権が(関税策などで)同盟パートナーシップを傷つければ、相手を取り込める余地が生じると期待している。北京は、ヨーロッパや日本との外交エンゲージメントを強化し、インドとの国境紛争の緊張緩和も模索している。さらに、中国への競争的なアプローチを実行する上でもっとも大きな障害となるのは、トランプの取引主義なのかもしれない。対中政策は、1期目同様に、大統領の「取引主義」と側近たちの「競争的アプローチ」という異なる衝動によって特徴付けられることになるかもしれない。

  • ヨーロッパの安全保障
    自立的欧州安全保障へ

    ノルベルト・レットゲン

    雑誌掲載論文

    交渉に入れば、トランプが停戦を成立させることを求める国内圧力に直面することをプーチンは理解している。当然、そのような交渉から生まれる合意が、ウクライナやヨーロッパが安心できるものになるとは考えにくい。ワシントンがモスクワの戦争目的を受け入れれば、NATOの信頼性は大きく損なわれ、ヨーロッパの安全保障構造の基盤は揺るがされる。そうならないように、欧州の主要な軍事大国であるフランス、ドイツ、イタリア、ポーランド、イギリスはヨーロッパ合同戦略の策定を主導する必要があるし、欧米間の適切な責任分担を見直し、防衛力を強化しなければならない。実際、強力な防衛力に邪魔されない限り、プーチンが侵略をウクライナだけで断念することはないだろう。

  • イスラエルの幻想とジレンマ
    ネタニヤフとトランプ

    シャロム・リプナー

    雑誌掲載論文

    イスラエル国防軍の幹部たちは、「ガザとレバノンにおける目標はすべて達成した」とネタニヤフに伝え、ガザから人質を帰還させ、レバノンにおける紛争を終わらせるために譲歩することを支持している。ネタニヤフもこの方向に進むことをある程度希望しているかにみえる。だが、連立政権内の極右強硬派(スモトリッチとベングビール)は、人質解放に反対し、ガザと西岸をイスラエルの長期的な支配下に置くことを望んでいる。一方、多くのイスラエル人は、アメリカの新政権は「イスラエルを無条件で支援する」と考えている。だが、トランプの支持を前提にすれば、イスラエルは世界で孤立することになるかもしれない。今後、ネタニヤフは「トランプを満足させると同時に、スモトリッチとベングビールをなだめる」という不可能な任務に直面するかもしれない。

  • 日本とトランプ
    試されるリーダーシップ

    マシュー・P・グッドマン

    雑誌掲載論文

    「北朝鮮そして中国の東シナ海、南シナ海での活動に毅然とした態度をとるつもりがあるのか」。日本の指導者たちは、トランプの安全保障政策をもっとも心配していた。関税引き上げ策への懸念ももっている。日本製品に対する関税引き上げだけでなく、中国や(カナダや)メキシコで組み立てられた日本製品が打撃を受けることも警戒している。一方、中国経済のデカップリングなどに対する日本政府の意欲は限定的になるかもしれない。日本は経済大国であり、インド太平洋地域におけるもっとも重要なアメリカの同盟国だ。東京がこの先の荒波をどのように乗り切るかは、日本のリーダーシップはもとより、トランプ政権のリーダーシップの試金石にもなるだろう。

  • ドナルド・トランプとアメリカの未来
    スティーブン・コトキンとの対話

    スティーブン・コトキン

    Subscribers Only 公開論文

    「トランプは別の惑星から降り立ったエイリアンではない。アメリカ文化に深く根差す、不変の何かを反映する人物として、米市民が投票した人物だ。プロレス、リアリティ番組、カジノやギャンブル、セレブ文化、ソーシャルメディア。これらのすべてはアメリカのシンボルだし、詐欺や大嘘も同様だ。だが、同盟諸国を含む、多くの外国人は(国内の一部の人々同様に)、トランプを、自分たちが知り、再び見たいと願っているアメリカではないとみている」。・・・外交領域では、トランプも、オバマやバイデンと同じジレンマに直面する。それは、アメリカの対外コミットメントと能力のギャップいかに埋めていくかに他ならない。

  • ヨーロッパが備える脅威の本質
    ドナルド・トランプと米欧関係の崩壊

    リアナ・フィックス、マイケル・キマージ

    Subscribers Only 公開論文

    トランプは、北大西洋条約機構(NATO)からの離脱を決断し、ウクライナを見捨て、プーチンとのパートナーシップを模索するかもしれない。だが、彼は決意に乏しく、無謀なアイデアを実行に移すことはめったにない。むしろ、大混乱をもたらす危険があるのは、トランプのビジョンよりも、気まぐれな性格だろう。道徳観念がひどく乏しく、世間の注目を集め、金儲けをし、あるいは権力と地位を高めるためなら何でもする。トランプは瞬く間に大西洋関係を破壊してしまうかもしれない。実際、アメリカのヨーロッパとの歴史的なつながりを破壊することを「勝利」として売り込めるのなら、トランプはそうするだろう。戦争をあまりにもよく知る大陸が、恒久的な平和でも、鉄のカーテンでもなく、再びカオスに包まれる未来は、決して幻想ではない。・・・

  • アジアとトランプの脅威
    不安定化リスクにどう備えるか

    ビクター・チャ

    Subscribers Only 公開論文

    オーストラリア、日本、韓国という緊密な同盟国を含む、インド太平洋におけるすべての米同盟国は、トランプ二期目が新たな問題を突きつけてくる事態にもっと危機感をもつべきだ。トランプは、バイデン政権とアジア諸国がまとめた防衛、経済・貿易構想の再交渉を求めるか、解体を試みるかもしれない。同盟国をこれまで以上に貿易上の敵対国とみなし、アメリカの軍事プレゼンスの削減を試みるだろう。独裁的指導者たちと親交を深め、アジアの核不拡散環境を揺るがし、朝鮮半島の核武装化を刺激する恐れさえある。

ドキュメント アサド体制の崩壊

  • 新シリア紛争の行方
    関係諸国はどう動く

    スティーブン・A・クック

    雑誌掲載論文

    アサド政権に対抗する武装勢力が、イスラエルがヒズボラに大きなダメージを与えた現状を大きな機会とみなしているのは明らかだろう。いまやシリア政府を支援するイランやヒズボラそしてロシアの力は限られている。一方、トルコは「アサド後のシリア」への影響力を確保することを再び重視するかもしれない。イスラエルも、シリアにおける「アサド問題はイランの問題でもある」ために、状況を前向きにみているかもしれない。そして大統領就任後のトランプが、シリアに展開する米軍部隊の撤退を選ぶ可能性もある。

  • アサド後のシリア
    待ち受ける危険

    スティーブン・A・クック

    雑誌掲載論文

    シリアの権力者となって四半世紀近くが過ぎた段階で、バッシャール・アサドは権力ポストを追われ、アサド王朝は終わりを迎えた。アサド体制はわずか2週間で、説明のつかぬ形で一掃された。もちろん、ダマスカスにどのような後継政権が誕生するかには、数多くの疑問がある。イスラム主義政治勢力がシリアでパワーを蓄積していることをかねて警戒してきたアラブ首長国連邦、サウジアラビア、ヨルダン、エジプトが、ハヤト・タハリール・シャム(HTS)がダマスカスで統治体制を組織化するのを傍観するとは考えにくい。今後、HTSに対する反対運動が発生するかもしれない。シリアが暴力的な未来に向かう運命にあるわけではないが、新体制に対する反乱リスクを考えないのは軽率だろう。

  • ロシアの基地は温存されるか
    シリアの体制崩壊とロシア

    トーマス・グラハム

    雑誌掲載論文

    アサド後のシリアにおける、ロシアの当面の関心は、タルトスの海軍基地、そしてフミイエム空軍基地を守ることだろう。これらの基地は、中東におけるロシアの影響力を行使する上で重要なだけでなく、東地中海への足場だし、リビアやサヘルでの軍事プレゼンスを含む、北アフリカでのロシアの作戦を支援する後方支援の拠点でもある。プーチンがシリアにおけるロシアの軍事基地を簡単に放棄することも、大きな戦略的後退を穏やかに受け入れることもあり得ない。そのような事態は、大国としてのロシアの評判を落とすだけでなく、プーチンの国内での政治的地位も失墜させることになる。

  • イスラム国に参加した民主活動家たち
    シリアで何が起きているのか

    トーマス・グラハム

    Subscribers Only 公開論文

    アサド後のシリアにおける、ロシアの当面の関心は、タルトスの海軍基地、そしてフミイエム空軍基地を守ることだろう。これらの基地は、中東におけるロシアの影響力を行使する上で重要なだけでなく、東地中海への足場だし、リビアやサヘルでの軍事プレゼンスを含む、北アフリカでのロシアの作戦を支援する後方支援の拠点でもある。プーチンがシリアにおけるロシアの軍事基地を簡単に放棄することも、大きな戦略的後退を穏やかに受け入れることもあり得ない。そのような事態は、大国としてのロシアの評判を落とすだけでなく、プーチンの国内での政治的地位も失墜させることになる。

  • プーチンが思い描く紛争後のシリア
    戦後処理と各国の思惑

    ドミトリ・トレーニン

    Subscribers Only 公開論文

    バッシャール・アサドはダマスカスの権力を握っているかもしれないが、シリアの政治的風景はもはや元に戻せないほどに変化している。シリアはすでにアサド政権、反アサド、親トルコ、親イランの勢力、さらにはクルド人という五つの勢力がそれぞれに管理する地域へ実質的に分裂している。ロシアは、この現実を受け入れようとしないアサドだけでなく、紛争期の同盟国であるイランの動きにも対処していく必要がある。アサド政権だけでなく、イランやトルコのシリアに対する思惑が変化していくのは避けられず、これに関連するイスラエルの懸念にも配慮しなければならない。今後、外交領域で勝利を収めるのは、戦闘で勝利を収める以上に難しい課題になっていくだろう。

  • トルコはシリア難民を社会同化できるのか
    シリア難民のなにが異質なのか

    ライアン・ジンジャラス

    Subscribers Only 公開論文

    トルコの指導者たちは、トルコ生まれの子供がいるシリア人家族のほとんどはもうシリアに戻ることはないとみている。すでにシリア人たちはトルコのさまざまな町や都市で数千のビジネスを立ち上げている。第一次世界大戦後にトルコに定住した旧移民の多くは読み書きができず、しかも雇用、教育、土地を政府からの援助に依存していたために、トルコのアイデンティティーと市民権を受け入れる以外に道はなかった。だが、トルコに逃れてきたシリア人の多くは資本とスキルを持っているし、教育も受けている。すでにトルコのあちこちで、「リトルシリア」が誕生している。一方、トルコの政治勢力は国内に多数のシリア人難民がいることに不快感を示し、トルコの民族的統合性が損なわれかねないと憂慮しているが、トルコ社会に「シリアをルーツとするアラビア語のサブカルチャー」が生まれるのはおそらく避けられないだろう。・・・・

  • イランの孤立と米シリア戦略
    なぜ親アサド同盟は分裂したか

    イラン・ゴールドバーグ、ニコラス・A・ヘラス

    Subscribers Only 公開論文

    ロシアはアサドが権力を維持できるように支えてきたが、アサド政権にとってもっとも重要な同盟相手のイランは介入を利用して、シリアでの永続的な軍事的プレゼンスを確保するのが狙いだった。イランが大がかりに介入したことで、シリアの戦況は大きく塗り替えられたが、現在のイランはシリア国内に展開する軍事力をテコに、イスラエルに軍事的圧力をかけようと試みている。こうしたイスラエルとの対決路線を重視するイランの路線が、アサドを支える他の国際プレイヤーとの軋轢を生み出している。シリアの統治体制を固めていくにつれて、アサドそしてロシアを含むアサドを支援する勢力は、大統領としてのアサドのプレゼンスを正常化し、再建に向けた資金を確保しようと試みており、イスラエルとの戦争は望んでいないからだ。

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