フォーリン・アフェアーズ・リポート2024年9月号 目次
中国経済の悪夢
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中国経済危機の本質
過剰生産能力の悪夢雑誌掲載論文
中国経済の停滞を説明する最大の要因は、巨大な過剰生産能力が構造的に作り出されていることだ。北京の産業政策は長年にわたって、生産設備への過剰投資を促し、その過程で中国の都市(地方政府)や企業は膨大な債務を抱え込んできた。最近でもロボット、電気自動車用バッテリー、その他で過剰生産能力を抱え込み、ソーラーパネルにいたっては、年間に世界が設置して利用できるソーラーパネルの2倍規模の生産能力をもっている。国内市場や外国市場が持続的に吸収できるレベルをはるかに上回る規模の商品を生産しているために、中国は、外国との摩擦を抱え込んでいるだけでなく、価格低下、債務超過、工場閉鎖、雇用喪失という破滅のループに陥っていく危険がある。
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中国は欧米との衝突コースへ
実現しない内需主導型モデルへの転換Subscribers Only 公開論文
欧米のエコノミストは、個人消費の制約に対処することで、北京が内需主導の経済戦略へシフトすることをこれまで長く求めてきた。国内経済のリバランスと貿易黒字の削減を両立させるには、不動産やインフラへの投資を減速させるだけでなく、消費を促進する必要がある。だが、中国の指導者たちは、必要な変化を先送りし、経済の外需依存を高めるような政策をいまもとっている。先進国も途上国も同様に中国による大規模な輸出攻勢に反発している。それでも、北京は問題を無視しているようだ。こうして、中国の過剰生産能力が外国政府をこれまで以上に激しい対抗措置へ向かわせつつある。その結果生じる対立は、中国経済にとっても、世界の貿易システムにとっても許容できるものではないだろう。
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このままでは中国経済は債務に押し潰される
地方政府と国有企業の巨大債務Subscribers Only 公開論文
これまで中国政府は、主要銀行の不良債権が経済に悪影響を与えないようにベイルアウト(救済融資)や簿外債務化を試み、一方、地方の銀行については、地方政府が調停する「合意」で債務危機を抑え込んできた。だが、もっともリスクが高いのは地方政府そして国有企業が抱え込んでいる膨大な債務だ。不動産市場が停滞するにつれて、地方政府がデフォルトを避けるために土地をツールとして債務不履行を先送りすることもできなくなる。経済成長が鈍化している以上、国有企業がこれまでのように債務まみれでオペレーションを続けるわけにもいかない。しかも、債務の返済に苦しむ借り手は今後ますます増えていく。中国が債務問題を克服できなければ、今後の道のりは2008年当時以上に険しいものになり、中国経済に壊滅的な打撃を与える危機が起きるのは避けられなくなる。
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中国の未来と韓国の現在
なぜ政治的自由化が必然なのかSubscribers Only 公開論文
中国は政治的自由化をせずに、経済成長を持続し、社会を満足させられるだろうか。韓国の経験はそうはならないことを示している。戦後における韓国経済の成長を上から主導した朴正煕は、輸出主導型成長モデルをとる一方、欧米の価値が伝統的社会に入り込むのを阻止しようと孝行、忠誠、権威の尊重を重視する儒教復興策をとった。ここまでは完全に中国の今と重なり合う。だが、上からの産業政策ゆえに、韓国は1970年代末までに過剰生産能力を抱え込むようになり、企業倒産や労働争議が続き、大規模なストが起きた。結局、労働者と学生が連帯した社会騒乱のなかで、朴は側近の手で暗殺され、その後、韓国は民主化された。朴の韓国流民主主義は独裁主義だったし、「中国的特質をもつ社会主義」も同様だ。朴が最終的に直面したように、経済を自由化すれば、権威主義の指導者でさえ押さえ込めないような流れが作り出される。
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1930年代の悪夢が再現されるのか
高まる保護主義の脅威Subscribers Only 公開論文
1930年代の教訓からみて、失業率が高止まりし、通貨供給、為替、財政政策上の選択肢が失敗するか、選択肢にならない場合、国は貿易障壁を作り出す可能性が非常に高い。・・・しかも、20世紀の初頭同様に、いまや世界はグローバル経済のリーダーシップをめぐる大きな移行期にある。アメリカのパワーは大きく弱体化し、ワシントンには、もはや単独でグローバル経済のリーダーシップを担う力はない。一方で、中国がリーダーシップを果たすとも考えにくい。輸出ばかりを重視する重商主義的な貿易アプローチをとっている限り、北京が困難な状況にある諸国からの輸出を受け入れる開放的市場の役目を果たすことはないだろう。G20もまとまりを欠いている。1930年代と現在の類似性が表面化しつつある。経済は回復しているが、失業率が高止まりし、多くの製造部門は過剰生産能力を抱え込み、通貨問題をめぐる緊張が高まりつつある。1930年代のような深刻で大規模な経済停滞に陥るリスクを回避できたと言うのに、現在の指導者が、1930年代の近隣窮乏化政策を今に繰り返すとすれば、悲劇としか言いようがない。
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中国経済のスローダウンと北京の選択
債務危機かそれとも政治的混乱かSubscribers Only 公開論文
中国の経済成長率は鈍化し続けている。人口の高齢化、生産年齢人口の減少、賃金レベルの上昇、都市部への人口流入ペースの停滞、投資主導型成長の限界、外国資金流入の低下など、成長率の鈍化、経済のスローダウンを説明する要因は数多くある。だが重要なのは、中国の家計と国の債務がすでに先進諸国と同じレベルに達し、債務が名目GDPよりも速いペースで拡大していることだ。債務の急速な拡大が危険であることを理解していたのか、北京は信用拡大を抑えて管理するための措置を2018年末にとったが、2019年1月の信用拡大は、2018年の年間社会融資総量合計の24%規模に達した。北京は高い経済成長率のためなら、進んでより大きな債務を抱え込むつもりのようだ。
東アジア安全保障を考える
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米中対立と第一次世界大戦の教訓
中国と20世紀初頭のドイツ雑誌掲載論文
第一次世界大戦前のドイツとイギリスのように、米中は下方スパイラルに巻き込まれているかにみえる。100年前と同様に、経済競争、地政学的懸念、深刻な相互不信が紛争リスクを高めている。かつての英独同様に、重要な問題をめぐって協力するきっかけがあっても、米中は、いさかいや些細ないら立ち、戦略的不信の高まりによって身動きできなくなっている。貿易戦争を封じ込め、より大規模な紛争の火種となるかもしれない(ウクライナや中東などでの)熱い戦争を終結させるか、少なくとも封じ込めることに努力しなければならない。熾烈な大国間競争のなかにあるだけに、第一次世界大戦への道がそうだったように、小さな紛争が壊滅的な事態を引き起こす危険がある。
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新興大国と覇権国
衝突は不可避なのか雑誌掲載論文
覇権国と新興大国は、衝突する運命にあるのか。現実には、台頭する新興国は、既存の規範の多くを守り、一部の側面を拒絶するときも他の新興大国と協力して慎重に行動する。そうすることで、現秩序のなかで自らの台頭を強化すると同時に、新しい秩序を構築する力をつけるまで、覇権国を弱体化させようとする。だが、覇権国が国際秩序をどのように管理するかで、対立が紛争に発展するかどうかが左右される可能性もある。覇権国にとって、新興大国の脅威に対処する最善の方法は、新興大国と対立したり、打ち負かそうとしたりすることではなく、国際秩序を利用して封じ込めることかもしれない。
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東アジアと中国の核戦力
核共有と軍備管理の間雑誌掲載論文
中国の核戦力増強は、北朝鮮のそれと同様に、東アジアを変化させている。いまや韓国市民の多くが核保有を望んでいるし、日本の古くからの核アレルギーも緩んできている。アジアはいまや、秩序を不安定化させる軍拡競争に突入していく軌道にある。ワシントンは中国に対して、(軍備管理に関する)中身のある交渉に建設的に参加するか、あるいは、東アジアでアメリカが支援する核軍備の大規模な増強という事態に直面するか、という困難な状況にあることを理解させなければならない。中国の指導者たちが軍備管理交渉を拒否するようなら、ワシントンは(核保有国が同盟国と核兵器を共有する)核共有制度について、ソウルや東京と協議を開始することもできる。
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世界戦争の足音
歴史は繰り返すのかSubscribers Only 公開論文
世界は、1940年代のように、複数の紛争が一つの戦争へ統合されていく局面にあるのかもしれない。東ヨーロッパと中東ではすでに戦争が勃発し、現状を否定するリビジョニズム国家の結びつきがますます強くなっている。この環境で、アジアの係争海域で軍事衝突が起きれば、別の恐ろしいシナリオが浮上する。東アジアでの戦争が他の地域ですでに進行している紛争と重なり合い、ユーラシアの三つの主要地域が一度に大規模な紛争で燃え上がれば、1940年代以来の状況が出現する危険がある。しかも、アメリカはこの課題への準備ができていない。すでにプーチンは、ウクライナと中東における紛争は「ロシアと全世界の運命を決める」一つの大きな闘争の一部だと宣言している。
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米中とツキジデスの罠
次なる文明の衝突を管理するにはSubscribers Only 公開論文
台頭する国家は自国の権利を強く意識するようになり、より大きな影響力と敬意を求めるようになる。かたや、チャレンジャーに直面した既存の大国は状況を恐れ、守りを固める。この環境で、誤算のリスクが高まり、相手の心を読めなくなる。米中にはこの「ツキジデスの罠」が待ち受けている。それだけではない。米中間には相手国の理解を阻む文明的な障壁が存在する。政治や経済制度への考え方の違いだけではない。国内の政治制度を下敷きとする国際ビジョンも、物事をとらえる時間枠も違う。必要なのは、相手への理解を深めることだ。対中アプローチを立案しているトランプ政権の高官たちは、古代中国の軍事思想家、孫武の著作に目を通すべきだろう。「敵を知り己を知れば百戦危うからず。己を知るも、敵を知らなければ勝ち負けを繰り返し、敵も己も知らなければ、一度も勝てぬままに終わる」
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強大化する中国の核戦力
変化するパワーバランスと抑止Subscribers Only 公開論文
既存の2大核保有国と肩を並べることで、中国は核の三極体制という、きわめて不安定な核システムへのパラダイムシフトを起こしつつある。冷戦期とは違って、核軍拡競争のリスクが高まり、国家が危機に際して核兵器を利用するインセンティブも大きくなる。三つの核大国が競合すれば、二極体制の安定性を高めていた特質の多くが不安定化し、信頼性も低下する。中国がロシア同様に核大国の仲間入りすることをアメリカは阻止できないが、その帰結を緩和するためにできることはある。先ずアメリカは核抑止力を近代化しなければならない。同時に、核のパワーバランスに関する考え方を刷新し、はるかに複雑な戦略環境において抑止力を維持し、核の平和を維持する方法を新たに検証する必要がある。・・・
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気候変動とポピュリスト
温暖化対策と文化戦争雑誌掲載論文
ポピュリストの指導者たちは、とにかく地球温暖化対策を目の敵にし、将来の利益よりも現在の満足を優先する人間の本質を利用して、政治的に成功を収めている。米民主党議員の59%が気候変動問題への対応を最優先課題にすべきだと考えているのに対し、共和党議員でそう考えているのは12%にすぎない。政治的主流派のリーダーは、より魅力的な政治戦略、もっと感情的なストーリー、よりボトムアップの参加型政策アプローチを通じて、市民をもっと温暖化対策へ動員し、気候変動に懐疑的な人々が温暖化対策のメリットを受け入れるように、貿易と技術革新を通じて、グリーンテクノロジーのコストを、化石燃料コスト以下に抑え込む必要がある。
米大統領選挙の政治と外交
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政治暴力の連鎖を防ぐには
トランプ銃撃事件と政治暴力リスク雑誌掲載論文
トランプは日常的に特定集団を侮辱し、政敵を「害虫」と呼び、移民をアメリカの「血を汚す」動物とさえ呼んだ。政治暴力そして大衆の暴力支持を煽り立てているのは、(政治指導者の)レトリックだけではない。文化、そして攻撃的な共和党系集団もそれを助長している。政治暴力を低下させる上で重要なのは、共和党が多元的で多民族の民主主義を受け入れる方向へ路線を見直すことだ。政治暴力への世論の許容度は党派を超えて高まっているが、右派はこの感情を現実に暴力行動に移す可能性がはるかに高い。実際、共和党が立場を見直さなければ、アメリカの政治的未来はこれまで以上に暴力的になる危険がある。
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カマラ・ハリスとドナルド・トランプ
中国にとってどちらが好ましいか雑誌掲載論文
中国の戦略家たちは、アメリカの対中政策が今後10年間で変わるという幻想は抱いていない。世論調査結果や中国に関する超党派のコンセンサスがワシントンに存在することから考えても、2024年11月に誰が米大統領に選出されようとも、その対中政策は戦略的競争と封じ込めに重点が置かれ、協力と交流は後回しにされるはずだ。トランプ、ハリス、どちらが大統領になっても、中国にとって厄介で不利益をもたらす相手になる。一方で、大規模な軍事衝突や経済的・社会的な交流の全面的断絶を求めてくることもないだろう。ただ、ワシントンにおける現在の思想のどの部分が最終的に支配的になるのかを、われわれは理解しようとしている。
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政治暴力と民主主義の危機
アメリカの分裂と政治危機(7/14)Subscribers Only 公開論文
「トランプの暗殺未遂事件が、アメリカがひどく分裂しているタイミングで起きただけに、(今後が)非常に心配だ。分裂が極端になると、もはや選挙での対立候補間のゲームではなく、死闘のようなものになる。人々は、支持しない候補が勝利すれば、自分の価値が道徳的に脅かされるだけでなく、自分たちが理解する国の存続が脅かされると考えるようになるからだ。政治的分裂から深刻な社会暴力への道がそれほど遠いわけではない」
聞き手 ダニエル・ブルック
フォーリン・アフェアーズ シニアエディター -
米警察による殺人と人種差別
警察改革の世界的教訓Subscribers Only 公開論文
非白人の容疑者を殺害したアメリカの警官の多くは「身の危険を感じたため」と弁明する。1985年に最高裁が、容疑者が警察官その他の者に脅威(身の危険)を与えたときには、警察官は殺傷能力のある武器を使用できるとする判断を示して以降、こうした弁明がスタンダードになった。アメリカの警察による最悪の権力乱用が変わらないのは、銃の蔓延や地方分権型の警察活動、あるいは連邦政府による監督の欠如だけが理由ではない。いまやブラック・ライブズ・マター(BLM)運動の要求は、警察の改革から予算削減、あるいは警察の廃止へとエスカレートしている。実際、現在警察に費やされている何十億ドルもの資金を、医療、住宅、教育、雇用の提供に向けるべきだと主張する活動家もいる。・・・
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見捨てられた白人貧困層とポピュリズム
Subscribers Only 公開論文
テクノロジーと金融経済の進化は、東海岸や西海岸における都市の経済的・社会的バイタリティーを高めたが、製造業に支えられてきた南部と中西部にはみるべき恩恵はなかった。南部と中西部の経済が衰退して市民生活の空洞化が進んでいるのに、政治的関心がこの問題に向けられなかったために、これらの地域の「成長から取り残された」多くの人々がドラッグで憂さを晴らすようになり、なかには白人ナショナリズムに傾倒する者もいた。トランプはまさにこの空白に切り込み、支持を集めた。トランプは、政治舞台から姿を消すかもしれないが、彼が言うように、「実質的な賃金上昇がなく、怒れる人々のための政党」が出現する可能性はある。民主党か共和党のどちらか(または両方)が、貧しい白人労働者階級が直面する問題に対処する方法を見つけるまで、トランプ現象は続くだろう。
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トランプ2・0の時代
同盟国に恐怖を、ライバルに希望をSubscribers Only 公開論文
アメリカの同盟諸国は、ドナルド・トランプが2020年後半のレームダック状況のなかで、世界から米軍を撤退させることを計画していたことを忘れてはならない。彼が敗北することが明らかにならない限り、そして実際にそうなるまでは、トランプがもたらす脅威を軽くみるのは間違っている。ロシアや中国の政府高官は、トランプの再選を望んでいる。ロシアにとっては、トランプの再登板は、ウクライナへの欧米の支援が低下することを意味し、中国にとっては、北京を懸念する日本や韓国といった国々とアメリカの同盟関係に綻びが生じることを意味するからだ。・・・
Current Issues
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イスラエルとヒズボラ
かつてない衝突へ雑誌掲載論文
いまやイスラエルは、北の国境地帯におけるヒズボラとのさらに大規模な戦争の瀬戸際にあるようだ。イスラエルとヒズボラの立場は、リタニ川以南への影響力をめぐって真っ向から対立している。仮にバイデン政権が、国境周辺からのヒズボラの撤退を含むイスラエルとヒズボラ間の合意をまとめても、イスラエルの指導者たちは、ヒズボラとの決着を望む国内の声を無視するわけにはいかないだろう。イスラエル、レバノンは、民間人と国のインフラにかつてないダメージが及ぶような、全面戦争に直面する危険がある。
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フィッシュ・ウォーズ
水産資源をめぐる紛争雑誌掲載論文
水産資源は世界に食料を提供し、漁業は何億人もの雇用を生み出し、各国の経済を支えている。だが、気候変動などの要因によって重要な水産資源の漁場が変化しつつあり、これが、漁業セクターにおける違法操業や強制労働の原因となっている。水産資源はますます希少化し、今後が予測できなくなっている。この状況で、水産資源をめぐる争いが負のスパイラルに陥れば、影響は紛争にとどまらなくなる。基幹産業の混乱、エコシステムの破壊、食糧安全保障の劣化、雇用問題の悪化など、より広範な問題を引き起こす恐れがある。いま、政策決定者に求められているのは、チャンスがあるうちに紛争予防のためのアクションをとることだ。
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イランの戦略目的は何か
混乱と変動から利益を引き出せる理由Subscribers Only 公開論文
テヘランは混乱のなかにチャンスをみいだしている。イランの指導者たちは、ガザ戦争を利用し、エスカレートさせることで、イスラエルを弱体化させてその正統性を失墜させ、アメリカの利益を損ない、地域秩序を自国に有利なものへ変化させようとしている。混沌とした状況から自国の利益を導き出すイランの能力を侮るべきではない。攻撃によってアメリカを刺激し、テヘランとその同盟国が有利になるようなミスを犯させたいとテヘランは考えている。だが、イランを含む関係勢力のいずれかが誤算を犯せば、中東全域でより激しい紛争が発生し、中東の安定とグローバル経済に大きなダメージが生じる恐れがある。
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イスラエルの次なる戦線?
レバノンをめぐるイラン、ヒズボラとの戦争Subscribers Only 公開論文
ガザの破壊が中東民衆のイスラエルに対する反発を高めるなか、イスラエルがレバノン攻撃すれば、イランとその非国家的パートナー(武装集団)への民衆の支持はさらに強化されるだろう。それでも、政治的に負いこまれたネタニヤフ首相は、国内での立場を強化しようと、レバノンに紛争を拡大するかもしれない。実際、イスラエルは、ハマスとヒズボラをともに壊滅させることで、安全保障環境を変化させることを望んでいる。これまでのところ、アメリカの外交圧力もあって、ガザ紛争がレバノンとの全面戦争に拡大するのは回避されているが、それでも「イスラエルがレバノンを攻撃するかどうか」ではなく、「いつ攻撃するか」が問われている状況にある。
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北極圏と大国間競争
中ロに出遅れたアメリカSubscribers Only 公開論文
地球平均のほぼ2倍のペースで温暖化が進んでいるために、北極圏の環境は大きく変化している。海氷の後退によって、新たに航路が生まれ、レアアース、水産資源、巨大な石油・天然ガス資源を含む手つかずの資源へのアクセスが開かれつつある。中ロは、こうした変化がもたらした経済的、軍事的なチャンスを積極的に模索している。北京は一帯一路を北極圏に広げ、周辺諸国の一部の港湾、鉄道、地下ケーブル、エネルギー開発に投資し、これを「北極(氷上の)シルクロード」と呼んでいる。モスクワも新たに生まれた北極海航路に対する主権を主張し、中国の海洋シルクロード構想と北極海航路を一体化させることを提案している。・・・
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グローバルな水資源危機の本質
何が対策を阻んでいるのかSubscribers Only 公開論文
世界は水資源危機に直面しているが、それは多くの人が考えるようなものではない。たしかに、都市の水資源需要を満たしつつ、穀物を育てるための十分な水を確保するのは難しくなり、降水量の規模と降雨シーズンを変化させている気候変動が干ばつと水害の問題をさらに深刻にしている。汚染も広がりをみせている。とはいえ、多くの地域が真の水資源危機を回避できるように助ける技術的解決策は存在する。問題はそれに非常に大きなコストがかかることだ。現実には、人間の行動面での変化が求められており、そのインセンティブを高めるには水道料金を引き上げるのがもっとも効果的だ。しかし、水資源の価格を世界的に引き上げる経済的な根拠はあるが、そうすることを阻む政治的・道徳的な問題が存在する。・・・
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異常気象への適応戦略を
もはや排出量削減だけでは対処できないSubscribers Only 公開論文
ハリケーンから洪水、干ばつ、山火事、そして土砂崩れに至るまで、気候変動が誘発する異常気象が世界各地で大きな破壊を引き起こしている。温室効果ガスの排出を削減するだけでは、もはや気候変動の悪影響を食い止めることはできない。異常気象が引き起こす災害に備える適応戦略が必要だ。気候変動が人命、家、雇用を奪う段階にすでに入っているし、異常気象災害からの復旧が強いる財政負担の肥大化を抑えるためにも、気候変動適応戦略を策定する必要がある。ワシントンは気候変動に対する国の脆弱性や共有する優先課題を特定し、政府のあらゆるレベルでの意思決定に気候変動リスクを組み込む必要がある。