フォーリン・アフェアーズ・リポート2023年9月号 目次
中国経済の失速と台湾
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「中国経済の奇跡」の終わり
アメリカが門戸開放策をとるべき理由雑誌掲載論文
中国では家計貯蓄が急増し、民間の耐久消費財消費が大きく減少している。この現象を「経済領域におけるコロナ後遺症」とみなすこともできる。特定の政策がある日突然拡大され、次の日には撤回される事態を経験した人々は、景気刺激策を含む政府の経済対策に反応しにくくなる。専門家の多くは、現状を説明する上で、不安定化する不動産市場や不良債権の問題などを重視するが、経済成長を持続的に抑え込む「経済領域で長期化するコロナの余波}の方がはるかに深刻な問題だ。すでに、不安定な状況に直面した富裕層は、外への退出を試みており、時とともに、こうした出口戦略はより多くの中国人にとって魅力的になるだろう。アメリカはこのタイミングで、現在の対中政策を全面的に見直し、中国の人と資本への門戸開放政策をとる必要がある。
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新時代の米台関係
中国にどう対処するか雑誌掲載論文
アメリカの台湾政策を、「現状に不満を募らせ、能力を高め、強硬になり、リスクを許容する中国」に対処できるように進化させなければならない。世界で経済的にもっとも重要な地域の未来は、アメリカが中国を抑止し、台湾海峡の平和を維持することに成功できるかにかかっている。中国が台湾を併合し、水中監視装置、潜水艦、対空防衛部隊などの軍事資産を現地に配備すれば、この地域における米軍の活動は制限されるし、アジアの同盟国を防衛する能力も制約される。つまり、アメリカの政策立案者は、中国が台湾を攻略すれば、台湾だけでなく、第一列島線の未来や、西太平洋全域へのアメリカのアクセスと影響力を維持する能力が危機にさらされることを理解する必要がある。
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追い込まれた中国経済
もはや低成長を受け入れるしかないSubscribers Only 公開論文
中国にとって、投資率が高いことは悪いことではなかった。かつて必要とされていたのはまさしく投資主導型の経済開発モデルだった。問題は不動産とインフラ部門での非生産的投資の時代があまりに長く続いたことだ。15年ほど前から、債務が国内総生産(GDP)成長率を上回るペースで増加し始め、肥大化していった。しかもいまや不動産バブルははじけ、新しい経済モデルへ移行するしかない状況にある。中国が消費(内需)主導型の成長へシフトできるとは考えにくい。投資を急速に減らして成長率の大幅な低下を受け入れるか、問題を先送りし、債務の急増によって路線維持が困難になるまで、現在の投資主導型路線を続けるしかないだろう。だが最終的には、経済成長は急激に減速し、その減速の仕方は、中国、中国共産党、そして世界経済に深刻な影響を与えることになるはずだ。・・・
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中国の衰退が招き入れる危険
その意味あいと対策を考えるSubscribers Only 公開論文
中国は、アメリカのメディアや指導者たちが描写するような台頭する覇権国ではなく、いまや、よろめいて崖っぷちに立たされている。問題は、アメリカの政治家の多くが、依然として、米中間の争いを中国の台頭という視点で組み立てていること、しかも、中国が高まる危機に直面していることを認めつつも、それをアメリカにとって中立的か肯定的な展開とみていることだ。だが真実はその逆だ。よいニュースであるどころか、中国が弱体化して停滞し、崩壊へ向かえば、中国にとってだけでなく、世界にとっても、繁栄する中国以上に危険な存在になる。
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台湾の安全と平和を守るには
最善の対策は軍事領域にはないSubscribers Only 公開論文
多くのアナリストや政策立案者が提言している軍事領域の決定で、アメリカの全般的台湾アプローチを規定してはならない。今後5年間に配備可能な米軍の追加戦力では、台湾海峡の軍事バランスを根本的に変えることはできない。ワシントンの政策の最終目標は台湾の平和と安定の維持であり、平和を維持するには、中国の不安の原因を理解し、習近平を追い込まないようにして、統一が遠い将来の課題であると認識させる必要がある。ときには、難題の解決をあえて目指さず、先送りすることが最善の政策になる。・・・
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アジアにおける戦争を防ぐには
米抑止力の形骸化と中国の誤算リスクSubscribers Only 公開論文
中国の積極性の高まりと軍備増強、一方での米抑止力の後退が重なり合うことで、米中戦争がアジアで起きるリスクはこの数十年で最大限に高まっており、しかもそのリスクは拡大し続けている。アメリカを衰退途上の国家だと確信し、すでに抑止力は空洞化しているとみなせば、北京は状況を見誤って台湾を封鎖あるいは攻撃する恐れがある。早い段階で台湾に侵攻して既成事実を作り、ワシントンがそれを受け入れざるを得ない状況を作るべきだと北京は考えているかもしれない。要するに、北京はワシントンの決意と能力を疑っている。こうして誤算が起きるリスク、つまり、抑止状況が崩れ、2つの核保有国間で紛争が起きる危険が高まっている。
先進国と格差
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欧米の所得二極化と社会混乱
ラテンアメリカ化する欧米社会雑誌掲載論文
産業革命から20世紀半ばまでは、世界の富は欧米先進国に集中した。このために世界的な不平等が拡大し、冷戦期にそれはピークに達した。その後、中国の経済的台頭のおかげもあって、世界レベルでの格差は低下し始めたが、いまや世界的な平等の進展はもはや必然ではなくなっている。中国はすでにかなり豊かな国になっているし、インドやアフリカにかつての中国の役割を期待するのは無理がある。しかも、世界的な不平等が縮小しても、各国の社会的・政治的混乱が緩和されるわけではない。実際、米英、日独などの世界の富裕層は世界トップレベルの所得を維持しているが、非欧米諸国の所得レベルが上昇し、欧米の貧困層や中間層に取って代われば、豊かな国々における富裕層とそうでない人々との二極化、格差はさらに大きくなる。・・・
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資本主義の衝突
「民衆の資本主義」か「金権エリート資本主義」かSubscribers Only 公開論文
グローバル経済の未来を左右するのは、資本主義と他の経済システムの競争ではなく、資本主義内の二つのモデル、つまり、「リベラルで能力主義的資本主義」と「政治的資本主義」間の競争だろう。リベラルな資本主義が「民衆の資本主義」へ進化し、拡大する格差問題にうまく対処しない限り、欧米のシステムは、社会主義ではなく、中国型の政治的資本主義に近づき、金権政治的になっていくだろう。格差を是正し、民衆の資本主義への進化を実現するには、中間層により大きな金融資産の保有を促す税インセンティブを与え、超富裕層の相続税を引き上げ、公教育の質を改善し、選挙キャンペーンを公的資金でカバーできるようにしなければならない。そうしない限り、政治的資本主義同様に、排他的な少数で構成される特権階級の家庭が、将来に向けて永遠にエリートを再生産していくようになる。
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歴史の未来
中間層を支える思想・イデオロギーの構築をSubscribers Only 公開論文
社会格差の増大に象徴される現在の厄介な経済、社会トレンズが今後も続くようであれば、現代のリベラルな民主社会の安定も、リベラルな民主主義の優位も損なわれていく。マルキストが共産主義ユートピアを実現できなかったのは、成熟した資本主義社会が、労働者階級ではなく、中産階級を作り出したからだ。しかし、技術的進化とグローバル化が中産階級の基盤をさらに蝕み、先進国社会の中産階級の規模が少数派を下回るレベルへと小さくなっていけば、民主主義の未来はどうなるだろうか。問題は、社会民主主義モデルがすでに破綻しているにも関わらず、左派が新たな思想を打ち出せずにいることだ。先進国社会が高齢化しているために、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できない。古い社会主義がいまも健在であるかのように状況を誤認して、資本主義批判をしても進化は期待できない。問われているのは、資本主義の形態であり、社会が変化に適応していくのを政府がどの程度助けるかという点にある。
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グローバル金融を蝕むタックスヘイブン
犯罪と格差の象徴を粉砕するにはSubscribers Only 公開論文
犯罪組織や途上国の独裁者だけでなく、超富裕層も多国籍企業も「自分にとって好ましくないルールを回避するために」資金や資産を「オフショア」と呼ばれる「他のどこか」に移動させている。好ましくないルールとは「税法、情報開示請求、刑法、あるいは金融規制」だ。「他のどこか」であるオフショアでの取引はエキゾチックなどこかではなく、世界経済の中枢近くで行われている。タックスヘイブンは租税回避を容易にし、法の支配を弱め、組織犯罪の温床を作り出す。格差をさらに拡大させてポピュリストの反動を助長し、市場経済を腐敗させる。すでにパナマ文書とパラダイス文書によって、「オフショアシステムはグローバル経済のガンである」ことが明らかにされている。強大な力で保護されているこの世界最大の利権構造に切り込むのは容易ではない。犯罪と格差に対する民衆の怒りを動員する政治家の政治的意思が必要になる。
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いかに経済的繁栄を共有するか
ベーシックインカム、社会保障の強化Subscribers Only 公開論文
「民主的資本主義」体制下で、格差が拡大したために、民主主義も困難な状況に追い込まれている。すでに権威主義体制などの、厄介な政治的代替制度に目を向ける人々もいる。国内のあらゆる人に一定の金額を支払うベーシックインカムを利用すれば、格差トレンドを逆転させることができると考える専門家もいる。一方、社会的セーフティネットを強化し、より良い雇用に投資すべきだとする提言もある。必要なのは、より公正な経済成長を実現し、政治腐敗を管理し、大企業の過剰な権力を抑制することだ。民主的資本主義の危機を、民主主義の終焉としないための方策は存在する。
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経済格差と政治的自由
自由と平等をいかに両立させるかSubscribers Only 公開論文
アメリカの建国の父たちの多くは、政治的自由を実現するには、ある程度の経済的平等が必要であることを理解していた。実際、アメリカで政治的平等と自由がうまく保障されたのは、(土地の分配を通じた)白人社会における経済的平等に依るところが大きかった。だが、19世紀末になると、思想家ウイリアム・グラハム・サムナーは「選択肢は、自由と不平等と適者生存、あるいは、不自由と平等と不適者生存でしかない」と主張した。・・・経済的平等(と格差)が注目されるようになったのはごく最近になってからだ。建国の父たちが信じたように、自由と平等は互いに補完し合える関係となりうる。しかしそれを実現していくには、まず政治的平等を実現する必要がある。そのうえで、政治的平等を社会的、経済的領域における平等を実現するために利用し、またそれらを通じて政治的平等が維持されるように利用していく必要がある。・・・
国際社会のイメージと現実
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大国間競争という幻想
曖昧で変動する世界雑誌掲載論文
アメリカが直面しているのは、はっきりとした米中競争ではないし、二つの政治ブロックが対立しているわけでもない。緊密なパートナーや同盟国だけでなく、便宜的な二国間関係、不安定で暫定的な連合が織りなす国際環境で大戦略を展開していくには、ワシントンは、相互依存と自立、多極化とブロック化の間に位置する曖昧な世界でうまく流れを制御していく必要がある。はっきりとした反中国の立場で協調しようとする国がほとんどない以上、アメリカはパートナーにゼロサムの選択を求めることには慎重でなければならない。様々な連合を迅速に組織しなければならない世界では、パートナーの立場に配慮して、微妙な部分は口に出さない方が賢明な場合も多い。
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民主国家インドという幻想
利益は共有しても、価値は共有していない雑誌掲載論文
インドはアメリカと利益は共有しても、価値は共有していない。いまや、この国は異論をほとんど許容しない民族主義者によって統治されている。インドは「非自由主義的で非民主的な政党」に支配され、その政党の政治力は高まる一方だ。この状況が変わらない限り、アメリカは、日本や韓国、ヨーロッパの北大西洋条約機構(NATO)同盟国と同じようにインドを扱うことはできない。そうではなく、アメリカは、ヨルダン、ベトナム、その他多くの非自由主義的なパートナーのようにインドに接しなければならない。米政府高官は「インドは同盟国ではないこと」を理解しなければならない。
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米中対立とドイツの立場
微妙なバランスを維持できるか雑誌掲載論文
貿易上の比較優位を中国が戦略ツールとして利用することへの懸念を共有したことで、アメリカとヨーロッパは「ディリスキング・アジェンダ」の下、緊密な協調関係を築いている。それでも、欧米間の大きな立場の違いは依然として存在する。ドイツは、地政学リスクを慎重に回避しながら、中国との貿易を通じて繁栄を維持することを望んでいる。当然、ベルリンは反中国「ブロック」のメンバーになることは望んでいない。だが、より強硬になった中国が作り出す地政学的リスクの回避に努めずに、ベルリンが、もっぱら、経済利益を優先し続ければ、おそらく台湾をめぐる安全保障危機でも(中国に)経済的強制策で手足を縛られる恐れがある。・・・
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多極世界という神話
多極構造でも二極構造でもない世界Subscribers Only 公開論文
米中が二大国であることは間違いないが、多極構造を成立させるには、ほぼパワー面で互角の大国が、少なくとも、もう一つ存在しなければならない。だが、フランス、ドイツ、インド、日本、ロシア、イギリスなど、3位に入る可能性のある国は、いずれも米中と互角のパワーをもつ国とは言えない。中ロ関係がアップグレードされても、この二カ国は地域的軍事大国に過ぎない。地域的なバランシングが可能な二つの大国が一緒になっても、グローバルなバランシングはできない。そのためには、ロシアと中国がともにもっていない、そして、すぐにはもつことができない軍事力が必要になる。現状は、部分的ながらも、依然としてアメリカの一極支配構造にある。
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大国間競争とアセアンモデル
グローバルサウスでの中国の優位Subscribers Only 公開論文
米中間の地政学競争を前にした東南アジア諸国連合(ASEAN)の繊細でプラグマティックなアプローチは、グローバルサウス全体からモデルとみなされつつある。グローバルサウスのほとんどの国にとって、最大の関心は経済発展であり、ASEAN同様に、北京とワシントンのどちらか一方に与することは望んでいない。ゼロサムではなく、政治的な立場の相違を超えて、すべての国と協力するプラグマティックな「ポジティブサム」のアプローチの方が、グローバルサウスでは温かく受け止められる。アメリカが、自国と似た考えをもつ政府としか協力しないのなら、ほとんどの国が異なる世界観をもつグローバルサウスからは締め出されることになる。・・・
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大国間競争とインドの立場
対話促進者としてのポテンシャルSubscribers Only 公開論文
他の国家と同様に、自国の利益に即して行動するインドにとって、ロシアとのパートナーシップを断ち切れば、国益を損なうことになる。当然、ロシアを孤立させることを求める欧米の要請には応じない。インドはすべての国々と協調する権利をもっている。北京に対するワシントンの対抗バランス形成の一翼を担うこともない。米中対立では中立の立場を維持している。インドは14億人以上の人口を抱え、急速に経済成長を遂げている国であり、ほとんどすべての国と貿易を行い、良好な関係を維持している。世界の緊張が高まるなかでも、インドは世界に成長を広げ、対話を促進していくポテンシャルをもっている。
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変化したグローバルな潮流
多極化時代の新冷戦を回避するにはSubscribers Only 公開論文
ツァイテンヴェンデ(時代の転換、分水嶺)は、ウクライナ戦争や欧州安全保障問題を超えた流れをもっている。ドイツとヨーロッパは、世界が再び競合するブロック圏に分裂していく運命にあるとみなす宿命論に屈することなく、ルールに基づく国際秩序を守る上で貢献していかなければならない。われわれは民主国家と権威主義国家の対立は模索していない。それでは世界的分断を助長するだけだ。その歴史ゆえに、私の国はファシズム、権威主義、帝国主義の流れと闘う特別な責任を負っている。同時に、イデオロギー的・地政学的な対立のなかで分断された経験ゆえに、新たな冷戦の危険を直接的に知っている。多極化した世界では、対話と協力を民主主義世界のコンフォートゾーンを越えて広げていかなければならない。・・・
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中露、イランの政治的強さの秘密
革命が授ける独裁体制のレジリアンス雑誌掲載論文
10年以上にわたって「悪漢たち」が勝利した時代を経て、世界はいまや独裁体制に背を向けつつあるようだ。ロシア、中国、イランという世界の3大悪党は、その権威に対する前例のない挑戦に直面している。とはいえ、その脅威は、多くの人が期待するほど大きくはない。中国、イラン、ロシアは、革命を経験していることに深く根ざすレジリエンスをもっているからだ。実際、革命というルーツが、これら三つの体制が景気低迷や失政、支持率の急落を乗り切り、今後も長年にわたって強さを維持していく支えを提供している。これに対抗する効果的な戦略を考案するには、その本質と、ユニークなレジリエンスのルーツを理解する必要がある。
Current Issues
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半導体と米中台トライアングル
TSMCとサプライチェーン雑誌掲載論文
デジタル経済がますます拡大するなかで、半導体のサプライチェーンを、長期的な混乱や敵対国による意図的な供給遮断リスクに対して無防備なままにしておくのは、どうみても危険だ。北京が台湾攻略に成功すれば、紛争のなかで台湾の半導体生産能力の多くが機能不全に陥るか、破壊されない限り、習近平政権は、世界でもっとも重要な製品の支配権を突然手に入れることになるかもしれない。グローバル・サプライチェーンから中国を完全に締め出すのは現実的ではなく、望ましくもない。むしろ、中国やその他の潜在的な敵対国が半導体サプライチェーンにおける地位を兵器化しないようにすることを目標にする必要があるだろう。・・・
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準備通貨、ドルの運命
雑誌掲載論文
ドル覇権に付随する「法外な特権」もいまやそれほど「法外」ではなさそうだ。ドル需要の高さ故に低利で資金を迅速に入手できるとしても、ドル価値が高く評価されると、アメリカへの輸入品は安くなり、輸出品は高くなる。こうして、国内の製造業は傷つき、失業も増えるために、もはやドル覇権を放棄すべきだと主張するアナリストもいる。経済制裁の乱用故に、他の決済手段を求める世界の動きも刺激され、一方では暗号通貨も台頭している。「ドルという特殊な地位がもたらした低金利がアメリカの浪費を助長し、2008年の金融危機を招いた」と主張し、ユーロ、人民元、SDRの役割を拡大させることを提唱する米エコノミストもいる。・・・
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中東の外交戦略と中国
中東諸国の真意は何か雑誌掲載論文
アラブ諸国が北京を受け入れたのは、アメリカの軍事的プレゼンスが低下したからではない。むしろ、インフラや技術など、ワシントンが支援する能力や意欲が低いと思われる分野で中国を取り込みたいと考えたからだ。当然、ワシントンは中国の影響力拡大に対抗する親米ブロックの形成を中東で目指すべきではない。むしろ、人的資本の向上、教育、グリーン・テクノロジー、デジタル・プラットフォームなど、比較優位をもつ分野への政策ツールと投資をワシントンは拡大していくべきだ。傍流に追いやられないようにするには、アメリカは大国(中国)の介入ではなく、現地の社会経済問題と統治問題が、今後10年間における最大の脅威となる危険が高いことを認識しなければならない。
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重要鉱物とサプライチェーン
クリーンエネルギーと大国間競争Subscribers Only 公開論文
再生可能エネルギーへのシフトには、リチウム、コバルト、ニッケル、銅などの重要鉱物を確保することが不可欠だ。しかし、重要鉱物の生産はほんの一握りの国に集中している。インドネシアが世界のニッケルの30パーセントを、コンゴ民主共和国が世界のコバルトの70パーセントを生産している。しかも、重要鉱物の加工と最終製品の製造は中国に集中している。世界のリチウムの59%、その他の重要鉱物の80%近くを精製し、電気自動車用電池の先端製造能力の4分の3以上を中国が独占している。これら重要鉱物の調達がうまくいかなくなればエネルギー転換は立ちゆかなくなる。多様かつ強靭で安全なサプライチェーンを構築し、国内外の重要鉱物へのアクセスを高めるには何が必要なのか。
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ドル高の悪夢から逃れるには
準備通貨を多様化すべき理由Subscribers Only 公開論文
ドル高が進むと、中・低所得国のドル建て債務の重荷が増し、持続可能性が脅かされる。原材料価格もドル建てであるため、対ドルで通貨安になると資源輸入国のコストや物価が上昇し、この流れがインフレを誘発する。こうして、ドル高になると多くの国の中央銀行は為替市場に介入し、外貨準備を用いて自国通貨を買い支えようとする。だが売却された米国債の多くは、米金融市場に流れ込み、結局はドル高になる。長期的には、各国の中央銀行が外貨準備を多様化し、ドルからユーロ圏や中国あるいはより小規模な国の通貨へと取引を多様化することが解決策になる。そうすれば、各国は連邦準備制度理事会(FRB)という一国の中央銀行の決定に左右されにくくなる。
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大国間競争とドルの命運
制裁と地政学とドル秩序の未来Subscribers Only 公開論文
中ロは、アメリカによる経済制裁の痛みから逃れようと、自国通貨での決済を増やして、ドルシステムへの対抗バランスを形成しようと試みている。一方、安全保障の視点からドル支配体制の強化を望む国もある。不安定な国際環境のなか、各国は「友好国との地政学的経済関係」を重視しており、これが、世界最大の安全保障ネットワークの中枢に位置するアメリカとその通貨であるドルに新たな優位をもたらしている。もちろん、ワシントンが経済制裁を乱用すれば、ドルに代わる通貨を模索する各国の動機が強化される。アメリカはリベラルな国際秩序の公共財を強化する形で経済外交を展開しなければならない。主要な同盟国や国際社会の多くを離反させれば、アメリカはドル支配体制を維持できなくなる。
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中国と中東
中東における米中の役割Subscribers Only 公開論文
2023年3月のイラン・サウジ国交正常化合意は、中東全域に前向きな衝撃を与えるだろう。中東での外交的仲介をめぐって、今回、中国が主導的役割を果たしたことは注目に値する。ワシントンの戦略的間違いが、イランとサウジの双方に信頼される数少ない大国の一つとして中国の台頭を促した。カーター・ドクトリンを封印したトランプがサウジをイランとの外交に向かわせ、バイデンの人権外交が、中東における仲介役としての中国の台頭に道を開いた。中国の安定性は、イラン、イスラエル、サウジと良好な関係を維持し、この三国間の争いに完全に中立を保っていることによって生まれている。・・・