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2021年4月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2021年4月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2021年4月号 目次

インド太平洋戦略と日本

  • インド太平洋戦略の幻想
    ―― 東アジアを重視すべき理由

    ヴァン・ジャクソン

    雑誌掲載論文

    「インド太平洋」という概念が、アジアの代替表現、中国への対抗バランス形成という視点で捉えられている。「自由で開かれたインド太平洋」の目標は高貴なものに思えるかもしれないが、それを模索すれば、アメリカはおそらく道に迷う。実際には、アジアにおけるアメリカのパワーと影響力にとっての中核地域は東アジアと太平洋だからだ。世界でもっとも豊かで、軍事化され、人口の多い東アジアでの戦争を防ぐこと以上に大切なアジェンダがあるだろうか。最新の地政学的流行語のためにこの地域を見放せば、壮大な失敗を招き入れることになる。

  • アジアでは日本に従え
    ―― 日米逆転はなぜ起きたか

    チャン・チェ

    雑誌掲載論文

    中国が敵対性を増し、パンデミックが猛威を振るうなかで、日本は静かに地域リーダーへの台頭を遂げ、アジアにおけるアメリカの信用を回復するための鍵を握る国家に浮上している。多くのアジア諸国はアメリカをリベラルな秩序の擁護者、信頼できるパートナーとはもはやみていない。むしろ、バイデン政権は日本との関係を強化し、地域の多国間イニシアチブも日本と密接に連携して進めるなど、よりきめ細かなアプローチをとるべきだ。この4年間、日本はアジア諸国との間で信頼関係と善意の貯水池を築いてきた。アメリカがそうした好ましい環境にアクセスできるとすれば、長年の同盟国である日本の意見に耳を傾け、そのリーダーシップに従った場合だろう。

  • 日中戦争をいかに記憶するか
    ―― なぜ共産党は国民党の役割を認めたか

    ジェシカ・チェン・ワイス

    雑誌掲載論文

    「国連の創設メンバー、国連憲章に署名した最初の国として中国は国際システムをしっかりと支えていく」と習近平は発言している。もちろん、そうした役割を担ったのは共産党ではなく、国民党だった。昨今の「強硬でとかく軋轢を引き起こす路線」が国際的リーダーシップを確立したい北京の目的からみれば逆効果であるために、戦後国際システムとのかかわりを強調することで、北京は緊張を緩和したいのかもしれない。台湾との関係を育んでいくことへの関心、未解決の戦争の過去を日本に思い出させるという思惑もあるのだろう。だがリスクもある。中国が戦後秩序の擁護者として自らを描けば描くほど、中国民衆は国際社会でより中心的な役割を果たす権利があるという感覚を強く持つようになるかもしれないからだ。・・・

  • 日はまた昇る
    ―― 日本のパワーは過小評価されている

    ミレヤ・ソリス

    Subscribers Only 公開論文

    「日本は、経済的繁栄を中国に、安全保障をアメリカに依存しすぎている」と悲観する見方が市民の間で大きくなっている。さらに、2020年9月の安倍首相の突然の辞任によって、国内の安定した指導体制や先を見据えた外交の時代が終わるかもしれないという懸念も浮上しつつある。地政学的ライバルが大きな流れを、そしてパンデミックが混乱を作り出すなか、ワシントンは、再び、日本のポテンシャルをまともに捉えず(この国を無視する)誘惑に駆られるかもしれない。しかし、日本の戦略的選択は、日本の将来だけでなく、米中間の激しい大国間競争の行方にも影響を与える。日本の時代は終わったとみなすこれまでの見方が、時期尚早だったことはすでに明らかだ。

  • 中国が支配するアジアを受け入れるのか
    ―― 中国の覇権と日本の安全保障政策

    ジェニファー・リンド

    Subscribers Only 公開論文

    現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。中国に対抗できるポテンシャルをもつ唯一の国・日本は、特に重要な選択に直面している。日本人は軍備増強には懐疑的で、むしろ、経済の停滞と高齢社会のコストを懸念しており、引き続き、銃よりもパンを優先する決断を下すかもしれない。だが実際にそうした選択をする前に、中国が支配するアジアにおける自分たちの生活がどのようなものになるかについて日本人はよく考えるべきだろう。北京は尖閣諸島の支配権を握り、日米関係を弱体化させ、中国の利益を促進するために、さらに軍事的・経済的強制力をとり、日本の政治に干渉してくるかもしれない。

  • アジア秩序をいかに支えるか
    ―― 勢力均衡と秩序の正統性

    カート・M・キャンベル、ラッシュ・ドーシ

    Subscribers Only 公開論文

    ウィーン体制によって1815年から第一次世界大戦までの1世紀に及んだ長い平和の礎が築かれた。大国間政治が激化し、地域秩序が緊張している現在のインド太平洋はウィーン体制の歴史的教訓から多くを学べるだろう。当時も今もいかに勢力均衡を形作り、秩序の正統性を保つかが問われている。北京の行動が、アメリカやアジア諸国の「インド太平洋秩序」のビジョンと衝突するのが避けられない以上、ワシントンはシステムを強化するために他国と協力し、北京が生産的に秩序にエンゲージするインセンティブを与え、一方で中国が秩序を脅かす行動をとった場合のペナルティを他の諸国とともに考案しておく必要がある。秩序のパワーバランスと正統性をともに維持するには、同盟国やパートナーとの力強い連帯、そして中国の黙認と一定の応諾を取り付けておく必要がある。

  • 北京の影響下で
    ―― 東南アジアにとっての中国という課題

    ハンター・マーストン

    Subscribers Only 公開論文

    東南アジア諸国の対中認識は二つの考えの間で揺れ動いている。経済成長を中国の台頭に依存しているために、中国との貿易を続けたいと考える一方で、中国の強大化する経済力、外交力、軍事力を警戒している。南シナ海を含む東南アジア地域で北京が強硬外交をとり、武力行使も辞さない路線をとっていることに神経を尖らせている。実際には、中国と東南アジアの親密な関係を示唆する神話の多くは虚構のようだ。「ミャンマーが中国の衛星国のような存在になった」とみなすのは安易すぎるし、カンボジア人の多くも、中国の影響力拡大を警戒している。むしろ、東南アジアに共通しているのは、中国に傾斜することに対するリスクヘッジ戦略をとっていることかもしれない。・・・

  • 対中冷戦戦略の誤謬
    ―― 対中協調の余地は残されている

    マイケル・D・スワイン

    Subscribers Only 公開論文

    トランプ政権は「自由で開かれたインド太平洋戦略」を、あらゆる地域プレイヤーが繁栄と安全を手に入れるための包括的ビジョン、そして中国に対抗するアメリカの同盟国とパートナーのためのネットワークとして描いているが、この戦略に中身はない。アメリカとその同盟国がアジア太平洋地域におけるもっともダイナミックな大国である中国を敵として扱って、安全と繁栄が包括的なものになることなどあり得ない。中国は、アメリカとそのパートナーとの長期的な関係について何かを決断しているわけでも、グローバルな覇権国としてのアメリカに取って代わることを決意しているわけでもない。リビジョニストパワー、現状維持パワーという二つの顔をもつ中国の複雑な自己アイデンティティの片方にだけ焦点を合わせて、二つの大国間の存亡をかけた抗争をイメージするのは間違っている。

  • イノベーション戦争
    ―― 衰退するアメリカの技術的優位

    クリストファー・ダービー、サラ・セウォール

    雑誌掲載論文

    北京は「戦争という最終手段をとらずに目標を達成するツールとしてテクノロジーのイノベーションに挑んでいる」。5Gの無線インフラを世界各地で販売し、合成生物学に取り組み、小型で高速なマイクロチップの開発を急いでいる。これらはすべて中国のパワーを強化するための試みだ。当然、ワシントンは視野を広げ、超音速飛行、量子コンピューティング、人工知能などの明らかな軍事用途をもつテクノロジーだけでなく、マイクロエレクトロニクスやバイオテクノロジーなど、これまでは本質的に民生用とみなされてきたテクノロジーも支援し、民間部門が投資しない分野に資金を提供する必要もある。

  • 資本主義と民主主義は共生的か
    ―― 市場価値と自由

    ビニヤミン・アペルボーム

    雑誌掲載論文

    自由な経済活動という「福音」の信者たちは「規制なき資本主義とリベラルな民主主義は共生関係にある」と主張した。半世紀後の現在、この主張を事実だと考える人を見つけるのは難しいだろう。市場経済によって経済の安全と独立を実現するという考えの問題点は(高級な)「リッツ・ホテルのように、金持ちにも貧者にも同じように門戸を開放すべきだ」という古いジョークにうまく集約されている。機会は保証されていても、誰もが代価を支払う懐の余裕があるとは限らない。しかし、アメリカ人は市場経済に代わる何を求めるべきなのか。ここに取り上げる著作によれば、市場経済は、幅広い豊かさの原動力にはならないし、政治的自由を補うものでもない。むしろ「市場へ依存すれば、自由のない状態に追い込まれる」。だが、果たしてそうなのか。・・・

アメリカは再生できるのか

  • トライバリズムを克服するには
    ―― 寸断されたアメリカのパワー

    ルーベン・E・ブリガティー

    雑誌掲載論文

    先の米大統領選は、アメリカ社会の深い亀裂を露わにし、警戒すべきレベルのトライバリズム(政治とアイデンティティをベースとする集団主義)政治が存在することを明らかにした。それは、まるで異なる集団間の抗争のようだった。有権者は政策への関心ではなく、アイデンティティに基づく党派主義の立場をとった。民族的・イデオロギー的アイデンティティが政党を蝕んでいる。アメリカの外交官や専門家たちが、現在のアメリカのような現象を外国に見出した場合、問題を解決するための外交的介入を訴えるかもしれない。重要なのは、違いを取り除くことではない。違いを管理する方法を学ぶことだ。

  • 介入と後退の歴史
    ―― グローバル世界でのアメリカの役割

    ロバート・ケーガン

    雑誌掲載論文

    外国の紛争に無関心を装いつつも、その後パニックに陥り、軍を動員して介入し、事態が安定すると撤退して後退する。アメリカは外国に介入した瞬間に片足を出口に向かわせていた。この交互に繰り返されるアプローチが同盟国、敵対国の双方を混乱・誤解させ、多くの場合、回避できたはずの紛争が引き起こされてきた。20世紀にはドイツや日本を含めて、アメリカの意図を誤認した外国の指導者や政府が戦争を起こし、最終的に無残な姿をさらけだした。21世紀における中国との競争において、アメリカ人は出口を探すのをやめて、運命と自国のパワーが強いる役割を受け入れるべきだろう。

  • 分裂と相互不信をいかに修復するか
    ―― 寸断されたアメリカの政治と社会

    イザベル・ソーヒル

    Subscribers Only 公開論文

    「すべてのアメリカ人の大統領になる」。現状からみて、これほど難しい課題もない。支持政党を分ける大きな要因はもはや政策ではなく、心の奥底にある価値観やアイデンティティだ。このために(自分の支持政党ではない)「もう一つの政党」は反対政党であるだけでなく、敵とみなされている。そして政治とは、共通の問題に対処していくための妥協点をみつけることではなく、自分の側が相手に勝利を収めるための闘いとみなされている。バイデンはブルーカラーの労働者、高齢の文化的伝統主義者、急進的な変化を恐れる女性たちに寄り添っていくつもりだ。警察の予算を打ち切ることはなく、中産階級の増税もしない。彼は社会を統一したいと考えている。取り残された人々に手を差し伸べ、すべてのアメリカ人が意見の違う人々をより尊重するように求めることから始めるべきだろう。それが、アメリカの魂を取り戻すことになる。

  • カルト集団とポスト真実の政治
    ―― アメリカの政治的衰退

    フランシス・フクヤマ

    Subscribers Only 公開論文

    ソーシャルメディアは民主的議論の前提となる共通の事実認識さえ消滅させてしまった。実際、共和党員の77%が2020年の米大統領選挙で大きな不正があったと考え、4分の1近くが、Qアノンが主張する異様な陰謀論を信じている。しかも、民主党、共和党の政策の違いをめぐる対立が、文化的アイデンティティをめぐる分断線として硬直化している。そして、共和党はもはやアイデアや政策に基づく政党ではなく、カルト集団のような存在と化してしまった。大きな不確実性は、今後、共和党内で何が起きるかにある。共和党の主流派が権限を再確立するのか、それともトランプが基盤を維持するのか。

  • 米外交再創造のとき
    ―― 路線修復では新環境に対応できない

    ジェシカ・T・マシューズ

    Subscribers Only 公開論文

    世界もアメリカもあまりにも大きく変わってしまった以上、トランプ前の時代に戻るのはもはや不可能だ。長年の同盟関係に疑問を投げかけ、権威主義的な支配者にエンゲージし、国際組織や条約から離脱するに及び、アメリカ外交の基盤は大きく切り裂かれてしまった。しかも、社会が二極化し、上下院ともほぼ政治的に二分されている。ほとんどの政策変更が政治論争化するのは避けられない。そして、グローバル世界のパワーは分散し、アメリカの国際的名声は失墜している。バイデンが直面するのはとかく慎重で、ときにはアメリカに懐疑的な姿勢を示す外国のパートナーたちだ。ワシントンが自らの目標を達成したければ、米社会の傷を癒すとともに、世界を説得する力を取り戻さなければならない。

  • 追い込まれた民主主義
    ―― 台頭する権威主義、後退する民主国家

    ヤシャ・モンク

    Subscribers Only 公開論文

    冷戦終結以降、世界が目の当たりにしてきたのは、民主主義の後退と言うよりも、むしろ、中ロなどの権威主義国家の復活だった。アメリカとその民主的同盟諸国は、この歴史的瞬間の重要性を理解し、民主体制から民主国家が後退していくのを食い止める一方で、中国やロシアのような権威主義体制に対する統一戦線を維持していかなければならない。今後数十年は、民主主義と独裁体制間の延々と続く長期的競争によって特徴付けられることになる。実際、内に権威主義諸国を抱えるようになったEUとNATOは機能不全に陥り、価値を失っていくかもしれない。民主国家が大胆な行動を起こさない限り、さらに憂鬱な未来に直面する。

Current Issues

  • 変異株とグローバルな集団免疫
    ―― 終わらないパンデミック

    マイケル・T・オスタホルム、マーク・オルシェイカー

    雑誌掲載論文

    ワクチンの接種がすすみ、パンデミックが収束へ向かうことが期待されるなか、コロナウイルス変異株の出現で、逆にパンデミックが長期化するリスクが生じている。危険な変異株の出現を抑え込む最善の方法は、できるだけ多くの人々を感染から守ることだが、多くの低所得国や中所得国の民衆はまだ1回のワクチン接種も受けていない。変異株は人から人への感染力が高いかもしれない。すでに追い込まれている病院や医療施設へさらに大きな圧力をかける恐れもある。もっとも厄介なのは、ワクチン接種またはCOVID19への感染から得た免疫が、変異株への感染を防げないかもしれないことだ。・・・

  • 中国のワクチン外交と途上国
    ―― 信頼とソフトパワーにつながるか

    ヤンゾン・ファン

    雑誌掲載論文

    すでに北京は69カ国に無償でワクチンを提供し、この他にも28カ国にワクチンを商業輸出している。この「ワクチン外交」は中国のソフトパワー強化につながるだろうか。チリ、カンボジア、ペルー、セルビア、アラブ首長国連邦(UAE)、インドネシア、トルコ、ジンバブエ、セイシェルなど多くの国の首脳は、中国製ワクチンの最初の予防接種を個人的あるいは公的に歓迎している。但し、ワクチン外交をめぐってはロシアやインドとの競争も激化している。いまやアメリカも、安全で効果的ワクチンの公平な流通に向けたグローバルな競争に参入しつつある。しかも中国ワクチンには有効性や透明性をめぐってはっきりしない部分もある。・・・

  • 時代後れで危険な湾岸政策
    ―― アメリカの湾岸政策のリセットを

    クリス・マーフィー

    雑誌掲載論文

    「ペルシャ湾岸地域を支配しようとする外部勢力によるいかなる試みも、アメリカの死活的に重要な利益に対する攻撃とみなす」。この演説がその後「カーター・ドクトリン」として知られるようになり、以来、アメリカの中東政策の基盤とされてきた。しかし、いまやサウジよりもメキシコからより多くの石油をアメリカが輸入していることからも明らかなように、状況は大きく変化している。バイデン大統領は、新しい現実を見据えて政策をリセットし、むしろ、多角的で安定した国民経済、民衆の声に耳を傾けるような政府をもつ平和な地域へ湾岸が向かっていくのを助けるべきだろう。

  • 気候変動と原子力発電

    リンジー・メイズランド

    雑誌掲載論文

    2011年、日本の福島第一原子力発電所の原子炉3基がメルトダウンし、1986年のチェルノブイリ原発事故以降、最悪の事態が引き起こされた。日本を含む一部の国はその後原子力エネルギーの使用を見直した。しかし、他の多くの諸国は、原子力への立場を変えなかった。今後、気候変動問題への対策から、各国は原子力発電の利用を考慮に入れざるを得なくなるとする見方もある。米エネルギー情報局(USEIA)は、途上国における原子力発電は今後30年間で3倍近くに増えると予測している。だがそれでも、エネルギーミックスでみると原子力エネルギーは比較的小さなシェアに留まると考えられる。

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