本誌一覧

2017年1月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2017年1月号

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フォーリン・アフェアーズ・リポート2017年1月号 目次

After Hegemony

  • 欧米の衰退と国際システムの未来
    ―― バッファーとしての「リベラルな国際経済秩序」

    ロビン・ニブレット

    雑誌掲載論文

    これまで世界の民主主義空間を拡大させてきたリベラルな国際秩序が、政治的な勢いを取り戻せる見込みはあまりない。格差と失業に悩む現在の欧米諸国は弱体化し、もはやリベラルな政治経済システムの強さを示すシンボルではなくなっているからだ。それでも孤立主義に傾斜したり、代替秩序の封じ込めを試みたりするのは間違っている。そのようなことをすれば、リベラルな国際秩序の擁護派と、それに挑戦する勢力が公然と対立し、偶発的に大掛かりな紛争に発展する恐れもある。希望は、「リベラルな国際政治秩序」は衰退しても、「リベラルな国際経済秩序」が生き残ると考えられることだ。中国やロシアのような統制国家も国の豊かさと社会的安定・治安を確保するには、リベラルな国際経済秩序に依存するしかない。これによって短期的には、民主国家と非自由主義国家が共存する機会が提供され、長期的には、リベラルな民主主義は再び国際秩序における優位を取り戻せるかもしれない。但し、変化に適応できればという条件がつく。

  • 秩序を脅かす最大の脅威は米国内にある
    ―― 国際公共財を誰が支えるのか

    ジョセフ・ナイ

    雑誌掲載論文

    「アメリカ、ヨーロッパその他におけるポピュリストの台頭は、最近におけるグローバル化の時代の終わりを意味し、1世紀前にグローバル化の時代が終わった後と同様に、今後、われわれは不穏な時代を迎えることになる」。こう考えるのがいまや一般的になっている。しかし、1世紀前とは大きく違って、いまや不穏な事態に陥るのを防ぐさまざまな国内的、国際的なバッファーがある。1930年代のような経済的、地政学的カオスへと陥っていくことはあり得ない。問題は、今後も他のいかなる国にも増して大きな軍事、経済、ソフトパワー上の資源を維持していくとしても、アメリカがその資源を、国際システムを支える公共財の維持のために用いなくなる恐れがあることだ。多くの人はそれを失うまで、リベラルな秩序が安全と繁栄を支えていることに気づかないかもしれない。しかし、それに気づいたときには、すでに手遅れだろう。

  • 「リベラルな覇権」後の世界
    ―― 多元主義的混合型秩序へ

    マイケル・マザー

    雑誌掲載論文

    リベラルな国際秩序およびそれを支えるさまざまな原則の存続がいまや疑問視されている。中国やロシアなどの不満を募らす国家は「現在の国際システムは公正さに欠ける」とみているし、世界中の人々が、現秩序が支えてきたグローバル化が伴ったコストに怒りを募らせている。大統領に就任するトランプがアメリカの世界における役割についてどのようなビジョンをもっているのか、正確にはわからないが、少なくとも、現在のようなリベラルな秩序は想定していないようだ。現在のリベラルな秩序を立て直そうとすれば、逆にその解体を加速することになる。むしろアメリカは、すでに具体化しつつある、より多様で多元主義的なシステム、つまり、新興パワーがより大きな役割を果たし、現在の秩序よりも他の諸国がこれまでより大きなリーダーシップをとる国際システムへの移行の先導役を担うことを学んでいく必要があるだろう。

  • 「歴史の終わり」と地政学の復活
    ―― リビジョニストパワーの復活

    ウォルター・ラッセル・ミード

    Subscribers Only 公開論文

    政治学者フランシス・フクヤマは、「冷戦の終わり」をイデオロギー領域での「歴史の終わり」と位置づけたが、多くの人は、ソビエトの崩壊はイデオロギー抗争の終わりだけでなく、「地政学時代の終わり」を意味すると考えてしまった。現実には、ウクライナをめぐるロシアとEUの対立、東アジアにおける中国と日本の対立、そして中東における宗派間抗争が国際的な紛争や内戦へとエスカレートするリスクなど、いまや歴史は終わるどころか、再び動き出している。中国、イラン、ロシアは冷戦後の秩序を力で覆そうとしており、このプロセスが平和的なものになることはあり得ない。その試みは、すでにパワーバランスを揺るがし、国際政治のダイナミクスを変化させつつある。いまや、リベラルな秩序内に地政学の基盤が築かれつつあるのを憂慮せざるを得ない状況にある。・・・・

  • Classic Selection
    21世紀は権威主義的資本主義大国の時代になるのか
    ―― 世界をリードするのはアメリカか、それとも中ロか

    アザル・ガット

    Subscribers Only 公開論文

    現在の中国とロシアは、日独が第二次世界大戦に敗れた1945年以降、姿を消していた権威主義的資本主義パワーの再来にほかならない。日独の場合、アメリカを相手にするには、人口、資源、潜在力があまりに小さすぎたが、中国とロシアは、日独よりもはるかに国家規模が大きいし、そもそも、権威主義体制下の資本主義のほうが民主体制下の資本主義よりも効率が高い。実際、日独という権威主義的資本主義国家が戦後も存続していれば、アメリカにとって、共産主義中央統制経済のソビエト以上に大きな脅威と課題をつくりだしていたかもしれない。中国とロシアに代表される権威主義的な資本主義国家が、近代性の進化をめぐってリベラルな民主主義の代替策を提示することになるかもしれないし、グローバル経済に自分のルールで関与するようになるかもしれない。リベラルな民主主義が、最終的に勝利を収めるという保証はどこにもなく、権威主義的資本主義がリベラルな民主主義に代わる魅力的な選択肢とみなされるようになる可能性もある。

  • 不満と反発が規定する世界

    マイケル・マザー

    Subscribers Only 公開論文

    いまや世界の主要な安全保障リスクは、怒りや反発に支配された国や社会、あるいは、社会に疎外され、取り残されて不満を募らせる集団によって作り出されている。今後、安全保障上の脅威は、傷つけられたと感じ屈辱を抱く人々が、それを克服し、自分の価値を取り戻そうと試みるプロセスのなかで出現するようになるだろう。イラク、シリア、パキスタン、そしてヨーロッパ東部における最近の展開には、このトレンドが共通して認められる。ウラジーミル・プーチン大統領のウクライナにおけるパワープレイも、これまでロシアを軽くあしらってきた欧米に対する積年の恨みを映し出している。中国も例外ではない。不満や反発が中国社会に充満していることは、メディアの報道や大衆文化、さらには教科書の記述やラディカルなネチズンによる過激な書き込みからも明らかだ。さらに日本やインド、そして西ヨーロッパでもナショナリズムが台頭している・・・

  • リベラルな民主主義の奇妙な勝利そして停滞

    シュロモ・アヴィネリ

    Subscribers Only 公開論文

    なぜ20世紀に民主主義が生き残り、ファシズムも共産主義も淘汰されてしまったのか。1930年代から21世紀初頭にいたるまで、ヨーロッパ全域が民主化すると考えるのは現実離れしていたし、リベラルな民主主義が勝利を収める必然性はどこにもなかった。なぜ、社会に提示できるものをもち、圧倒的な力をもっていたマルクス主義がリベラルな民主主義に敗れ去ったのか。そしていまや、多くの人が(民主主義を支える経済制度である)資本主義が経済利益を広く社会に行き渡らせる永続的な流れをもっているかどうか、疑問に感じ始めている。ヨーロッパとアメリカの昨今の現実をみると、民主的政府は危機に適切に対応できず、大衆の要望を満たす行動がとれなくなっている。現在、世界が直面する危機によって、市場原理主義、急激な民営化、新自由主義では、「近代的でグローバル化した経済秩序をどうすれば持続できるか」という問いの完全な答えにはなり得ないことがすでに明らかになりつつある。・・・

  • 中国の台頭と欧米秩序の将来

    G・ジョン・アイケンベリー

    Subscribers Only 公開論文

    台頭途上にある大国は、新たに手にしたパワーを基に、自国の国益に即したものへと国際的なルールと制度を書き換え、グローバルシステムにおける、より大きな権限を手にしようと模索し、一方、衰退途上にある国は、影響力の低下を懸念し、それが、自国の安全保障にとってどのような意味合いを持つかを心配し始める。この瞬間に、大きな危険が待ち受けている。だが、新興大国が秩序に挑戦するか、それとも、自らを秩序に織り込んでいこうとするか、その選択は、目の前にある国際秩序の性格で大きく左右される。重要なポイントは、相手がアメリカだけなら、中国が(覇権国としての)アメリカに取って代わる可能性も排除できないが、相手が欧米秩序であれば、中国がそれを凌駕し、取って代わる可能性は大きく低下するということだ。ワシントンがそうした環境づくりに向けてリーダーシップを発揮するつもりなら、現在の秩序を支えているルールと制度の強化に努め、この秩序をより参加しやすく、覆しにくいものにしなければならない。

  • 「アメリカ後」の世界秩序
    ―― 中国による新秩序模索も文明の衝突も起きない

    G・ジョン・アイケンベリー

    Subscribers Only 公開論文

    新興国が台頭し、欧米諸国が衰退していくにつれて、ルールを基盤とする開放的な国際秩序の特質は失われ、ブロック、勢力圏、重商主義ネットワーク、宗教的ライバル関係などの、より対決的で分散したシステムが台頭してくると心配する専門家もいる。だが、アメリカのグローバルシステムにおける地位が変化しているのは事実としても、中国を始めとする新興市場国には、リベラルな国際秩序の基本ルールや原則をめぐって先進国に闘いを挑むつもりはない。むしろ、その枠内でより大きな権限とリーダーシップを得たいと望んでいるだけだ。それどころか、非西洋国家の台頭と経済・安全保障領域での相互依存の高まりによって、現在の秩序を支える新たな基盤が誕生している。むしろ、行き過ぎた市場原理主義に陥っていたアメリカは、第二次世界大戦後の指導者たちの立場を思い起こし、「経済の開放性と社会の安定」というビジョンをいかに具体化していくかをゆっくりと考えるべきだ。世界は経済の開放性や市場経済を拒絶しているのではなく、安定と経済安全保障に関するより拡大的な概念を求めているのだから。

Agenda 2017

  • 揺るがされるアメリカの同盟ネットワーク
    ―― オバマの後退路線からトランプのオフショアバランシングへ

    コリ・シェイク

    雑誌掲載論文

    オバマは外交戦略の前提として、世界におけるアメリカの役割をより穏やかなものにすることを考えていた。(アメリカの後退路線によって)自己防衛努力を迫られる同盟国は国防体制を強化し、より自己規制の効いた国際秩序を作りだせると考えていた。一方、トランプはオバマ以上に全面的にオフショアバランシング、つまり、同盟相手へのバーデンシフティングを進めるのではないかと考えられている。トランプは、アメリカのNATOへのコミットメントを低下させ、より取引を重視した同盟関係へと仕切り直し、一方で、東ヨーロッパとシリアについてはロシアの好きにさせると示唆している。先行きを不安に感じているアメリカの同盟諸国に対して、新大統領は同盟諸国を安心させる措置をとっていくべきだが、そのプロセスでリベラルな国際秩序を脅かす必要はない。このバランスをトランプが発見できるかどうかは、今後を見守るしかない。

  • 民主主義はいかに解体されていくか
    ―― ポピュリズムから独裁政治への道

    アンドレア・ケンダール・テイラー、エリカ・フランツ

    雑誌掲載論文

    ポピュリストの指導者が主導する民主体制の解体ペースがゆっくりとしたものであるために、広範な反対運動を刺激するような劇的な展開はなく、反政府勢力を団結させるようなはっきりとした争点も浮かび上がってこない。仮に反政府勢力が組織されても、ポピュリストたちは、彼らを「第五列」、「エスタブリッシュメントのエージェント」、あるいは、「システムの不安定化を狙う工作員」と呼ぶことで、封じ込める。司法や治安サービスなどの権力の中枢を握るポジションに忠誠を尽くす人材を配し、メディアを買い上げることでその影響力を中和し、メディアを縛る法律を成立させ、検閲システムを導入する。この戦略がとられると、実際には民主主義が解体されているかどうかを見極めにくくなる。この狡猾さが、21世紀の民主主義に対するもっとも深刻な脅威を作り出している。

  • TPP離脱ではなく、留保して再検証を
    ―― アジアの世紀にアメリカがエンゲージするには

    ダニエル・アイケンソン

    雑誌掲載論文

    アメリカは21世紀も国際秩序に非常に大きな影響力を持ち続けるだろう。ただし、それには「アメリカが内向きにならなければ」という条件がつく。TPPからの離脱は、そうした致命的な方向転換のシンボルとみなされてしまう。新大統領は、TPPに背を向けるのではなく、態度を保留して、将来、戦略地政学的な必要性が明らかになったときに批准を再考できるようにしておくべきだろう。世界経済の中心が欧米からアジアに移るなかで、TPPがなければ、不透明で差別的なルールがアジアの標準にされ、既存の秩序が覆され、アメリカの通商利益が傷つけられることになる。アメリカがこの自由貿易合意から離脱すれば、TPP交渉に参加しなかった国だけでなく、合意に参加した国も北京との関係強化に乗り出さざるを得なくなるだろう。

  • 新しい独裁者たち
    ―― なぜ個人独裁国家が増えているのか

    アンドレア・ケンドール=テイラー、エリカ・フランツ、ジョセフ・ライト

    Subscribers Only 公開論文

    極端に私物化された政治体制が世界各地に出現している。(プーチンのロシアや習近平の中国など)広く知られているケースを別にしても、バングラデシュからエクアドル、ハンガリーからポーランドまでの多くの諸国で権力者が自身に権力を集中させようと試みている。権力者個人に権力を集中させる政治システムは、冷戦終結以降、顕著に増加しており、この現象は大きな危険をはらんでいる。世界が不安定化するなかで、多くの人が、強権者の方が激しい変動と極度の混乱に対するより優れた選択肢をもっていると考えるようになれば、民主主義の基層的価値に対する反動が起きかねないからだ。実際、社会の変化と外からの脅威に対する人々の懸念が大きくなるとともに、秩序を維持するためなら、武力行使を躊躇しない強権的で強い意志をもつ指導者への支持が高まっていく恐れがある。

  • 戦略目的に合致しない同盟関係の解消を
    ―― トランプの主張は間違っていない

    ダグ・バンドウ

    Subscribers Only 公開論文

    トランプの主張するとおり、アメリカの北大西洋条約機構(NATO)政策は時代遅れだ。戦後(・冷戦期)のアメリカにとっては、ヨーロッパの同盟諸国を守る以外に道はなかったかもしれない。だが、当時の軍事関与を正当化したロジックはとうの昔に消失している。同盟関係は戦略目的のための手段でなければならず、現状に照らせば、それはアメリカの安全を強化することだ。同盟関係のコストを問題にするトランプに対して、彼に批判的な勢力は、「同盟諸国は合計すると100億ドルのホストネーション・サポート(受入国による支援)を負担し、米軍の駐留コストを助けている以上、アメリカの戦略コミットメントは高くない」と反論する。しかし、これは事実誤認だ。対外軍事コミットメントを控えれば、ワシントンは年間1500億ドルを節約できる可能性がある。人口が多く、繁栄する世界の工業国家を相手に成り代わって防衛するのは、実質的にアメリカの納税者の税金を、相手国の納税者の富として移転していることになる。

  • 大西洋同盟の未来
    ―― トランプが投げかけた波紋

    ヤンス・ストルテンベルグ

    Subscribers Only 公開論文

    「われわれは(NATOメンバー国を)守っている。彼ら(ヨーロッパ)はあらゆる軍事的保護を受けているが、アメリカ、そして納税者であるあなたたち(アメリカ市民)に、法外な資金を負担させている。これは問題がある。過去の分を含めて、(ヨーロッパのメンバー国は)資金を完済するか、同盟から出て行くべきだ。それがNATOの解体を意味するのなら、それはそれでかまわない」。予備選挙の共和党大統領候補、ドナルド・トランプはNATO批判を強めている。NATO事務総長、ヤンス・ストルテンベルグは、これに対する直接的なコメントは避けつつも、ヨーロッパ側が防衛予算を増やす必要があることを認めた上で、「より危険な世界に対処していく答は、これまで大きな成功を収めた強靱な同盟関係(NATO)をダウングレイドすることではなく、同盟関係をもっと強化することだ」と主張する。・・・(聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌のデュピティ・マネージングエディター、ジャスティン・ヴォグト)

  • 自由貿易は安全保障と平和を強化する
    ―― TPPを捉え直し、実現するには

    ヘザー・ハールバート

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカは歴史的に自由貿易と平和を結びつけ、貿易障壁と戦争を結びつけてきた。大恐慌(とその後の長期不況)そしてヨーロッパにおけるファシズムの成功は、1930年代の関税引き上げと保護主義が大きな要因だったと考えられてきたし、冷戦終結後も、貿易は相手国の社会を変貌させ(市場経済と民主主義を定着させるので)国際的平和の基盤を提供すると考えられてきた。しかし、いまや中国を中心とする貿易枠組みが、欧米の貿易枠組みに取って代わっていくとみなされているというのに、アメリカ人は、貿易のことを、国内の雇用保障、民主的な統治、そして世界の労働者の権利、公衆衛生や環境の保全を脅かす脅威と考えている。経済安全保障と国家安全保障が不可分の形で結びついているというコンセンサスを再構築する必要があるし、安全保障面からも貿易を促進する必要があるという議論を、現在の懸念に配慮したものへと刷新する必要がある。

  • アメリカはグローバルな軍事関与を控えよ
    ―― オフショアバランシングで米軍の撤退を

    ジョン・ミアシャイマー、スティーブン・ウォルト

    Subscribers Only 公開論文

    イラク、アフガニスタン戦争など、冷戦後のグローバルエンゲージメント戦略が米外交を破綻させたことが誰の目にも明らかである以上、いまやアメリカは「リベラルな覇権」戦略から、オフショアバランシング戦略へのシフトを試みるべきだろう。オフショアバランシング戦略では、アメリカの血と財産を投入しても守る価値のある地域はヨーロッパ、北東アジア、そしてペルシャ湾岸地域に限定され、その戦略目的はこれらの地域で地域覇権国が出現するのを阻止することにある。さらに、その試みの矢面にアメリカが立つのではなく、覇権国の出現を阻止することに大きなインセンティブをもつ地域諸国に防衛上の重責を担わせることを特徴とする。ヨーロッパにも、ペルシャ湾岸地域にも潜在的覇権国が登場するとは考えにくく、米軍を駐留させ続ける合理性はない。一方、北東アジアについては、地域諸国の試みをうまく調整し、背後から支える必要がある。・・・・

人工知能が変える経済と社会

  • < CFR Events >
    人工知能と雇用の未来
    ―― 人間と人工知能の共生を

    ジェームズ・マニュイカ、ダニエラ・ラス、エドウィン・ファン・ボメル

    雑誌掲載論文

    「2010年当時、自律走行車のことを議論する者はいなかったが、6年後のいまや誰もがこのテクノロジーを当然視している。この現状は、驚くべき計算処理能力の進化、優れたセンサーとコントローラー、さらには地図を作り、ローカライズする優れたアルゴリズムによって実現している。しかも、今後、技術的進化のペースはさらに加速すると考えられる」。(D・ラス)

    「仕事(タスク)のすべてがオートメーション化されなくても、6割の雇用においてその生産活動あるいはタスクの30%がオートメーション化されると考えられる。これは具体的に何を意味するだろうか。雇用がなくなることはないが、仕事の内容が大きく変化する。・・・この仕事の変化がより大きな影響をもつ。機械とともに働くには、労働力に求められるスキルと能力も変化していく」(J・マニュイカ)

    「(人間のようにやりとりできる人工知能プラットフォーム)アメリアが会話を担当できるようになっても、人間に残されるタスクは数多く残されている。例えば、金融部門なら、クライアントへのアドバイスにもっと時間を割くこともできるし、クライアントと今後の市場についてゆっくり話すこともできるようになる。しかも、アメリアやワトソンのような新しいプラットフォームを管理していく新世代の仕事も必要になる。具体的には、これらのシステムが適切に学習しているかどうか、規制内で活動してコンプライアンスを守っているかどうかを確認する人材が必要になる」(E・ファン・ボメル)

  • デジタル経済とアナログ経済の未来
    ―― 政府と企業は新しいモデルを導入せよ

    サミュエル・パルミサーノ

    雑誌掲載論文

    企業にとって基本的な課題は、(アナログ世界とデジタル世界という)二つの世界の双方で活動する際に、(アナログ世界の)政治や社会が作り出す障害を迂回するか、克服する一方で、(デジタル世界の)つながりと統合が提供する機会をうまく生かし、その適切なバランスをいかに見出すかにある。経済開発を促進し、経済成長軌道へと立ち返ることに配慮するビジネスの指導者と政府官僚も、アナログ世界とデジタル世界という拡大する二つの領域のバランスに目配りをしなければならない。二つの領域が交差する領域をいかに最適化するかで、グローバルなビジネスの構造が左右され、この構造が将来における成功を左右する。現状において重要なのは、啓蒙的な指導者たちが企業と政府の新しいモデルを考案し、これを常に近代化していくことだ。そうしない限り、われわれは不寛容と緊張に支配される世界に直面することになる。

  • 人工知能と「雇用なき経済」の時代
    ―― 人間が働くことの価値を守るには

    アンドリュー・マカフィー、エリック・ブリュニョルフソン

    Subscribers Only 公開論文

    さまざまな事例を検証し、相関パターンを突き止め、それを新しい事例に適用することで、コンピュータはさまざまな領域で人間と同じか、人間を超えたパフォーマンスを示すようになった。道路標識を認識し、人間の演説を理解し、クレジット詐欺を見破ることもできる。すでにカスタマーサービスから、医療診断までの「パターンをマッチさせるタスク」は次第に機械が行うようになりつつあり、人工知能の誕生で世界は雇用なき経済へと向かいつつある。今後時給20ドル未満の雇用の83%がオートメーション化されるとみる予測もある。労働市場は大きく変化していく。新しい技術時代の恩恵をうまく摘み取るだけでなく、取り残される人々を保護するための救済策が必要になる。間違った政策をとれば、世界の多くの人を経済的に路頭に迷わせ、機械との闘いに敗れた人を放置することになる。

  • ロボットが雇用を揺るがす
    ―― デジタル経済と新社会保障政策

    ニコラ・コリン、ブルーノ・パリアー

    Subscribers Only 公開論文

    ロボットの台頭に象徴されるデジタル経済のなかで、「すてきな仕事」をしている人は今後もうまくやっていく。だが、製造、小売り、輸送などの部門で「うんざりする仕事」をしている人、決まり切ったオフィスワークをしている人は、賃金の引き下げ、短期契約、不安定な雇用、そして失業という事態に直面し、経済格差が拡大する。ルーティン化された雇用はいずれ消滅し、むしろ、一時的なプロジェクトへの人間とロボットのフォーマル、インフォーマルな協力が規範になっていく。技術的進化が経済を作り替えていく以上、福祉国家システムも新しい現実に即したものへと見直していかなければならない。最大の課題は、多くの人が仕事を頻繁に変えなければならなくなり、次の仕事を見つけるまで失業してしまう事態、つまり、「とぎれとぎれの雇用」しか得られないという状況にどう対処していくかだ。

  • 知能ロボットと暗黒時代の到来
    ―― 高度に社会的なロボットの脅威

    アイラ・レザ・ノーバクシュ

    Subscribers Only 公開論文

    現状では、すべての社会的交流は人対人によるものだが、すでにわれわれは人工知能が人の交流の相手となる時代の入り口にさしかかっている。ほぼすべての雇用が脅かされ、新しいテクノロジーから恩恵を引き出せる人はますます少なくなり、失業が増大し、経済格差がさらに深刻になる。さらに厄介なのは、伝統的に人間関係を規定してきた倫理・道徳観に相当するものが、人間とロボットの間に存在しないことだ。ロボットが、人間のプライバシーや物理的保護を心がけ、道義的な罪を犯すことを避けようとする衝動をもつことはない。知能機械はいずれ人の心をもてあそび、十分な情報をもち、どうすればわれわれの行動に影響を与えられるかを学ぶようになる。つまり、「高度に社会的なロボット」によって人間が操られる危険がある。

  • デジタル・インフラで 「スマート化」する世界

    サミュエル・J・パルミサーノ

    Subscribers Only 公開論文

    世界はフラット化するとともに、相互に結ばれ、小さくなってきているが、現実にはそれ以上のことが起きている。それは、過去のいかなる時期と比べても、世界がますます「スマート化」されてきていることだ。情報分析を基にシステム、プロセス、インフラをより効率的、生産的に、そしてよりリスポンシブに動かせるようになった。これが、私の言うスマート化された世界だ。それは、デジタル・インフラと物理的インフラが収斂し、一つになりつつあることを意味する。コンピュータの形をしていなくても、コンピュータの機能があらゆるものに埋め込まれている。スマートなインフラを持つことがいまや国や都市の競争力さえも左右している。(S・パルミサーノ)

  • グローバルに統合された企業

    サミュエル・J・パルミサーノ

    Subscribers Only 公開論文

    どこまでグローバル化できるかについての企業の認識が変化した結果、企業の関心は、どのような製品をつくるかよりも、いかにそれを生産するか、どのようなサービスを提供するかよりも、どのようにサービスを提供するかに移っていった。いまやアウトソーシングが一般的になり、企業は自らを、調達、生産、研究、販売、流通などの特定部門が並列するネットワークとみなしている。ここにおける真の技術革新とは、新しい製品を開発し、生産するための創造力だけに左右されるわけではない。いかにサービスを提供し、ビジネスプロセスを統合するか、いかに組織やシステムを管理し、知識を移転するかでその多くが左右されることになる。

トランプ外交とアジア、欧州、中東

  • 次期米大統領のアジア政策
    ―― 同盟システムの軽視と単独行動主義

    ミラ・ラップ・ホッパー

    雑誌掲載論文

    ドナルド・トランプはTPPに反対し、(アメリカ人の雇用を奪う)中国からの輸入に45%の課税を適用すると公約している。そのようなことをすれば貿易戦争が起き、米経済は深刻なリセッションに陥る。数百万のアメリカの雇用が失われ、日韓を含む同盟諸国の経済もダメージを受ける。安全保障領域でも、日本と韓国に米軍の駐留コストを全額支払うように何度も求め、そうしない限り、米軍部隊の規模を削減していくと語っている。すでにアメリカのコミットメントへの信頼は揺らいでいる。トランプはまるで不確実性を作りだすことがドクトリンであるかのような発言を繰り返し、外交ツールとして経済懲罰策を振りかざす路線を強調している。新大統領は後退路線を、側近たちは単独行動主義を主張しているが、重要な部分を共有している。ともに、戦後国際秩序におけるアメリカのリーダーシップを支えてきた「同盟システム、国際的ルールや規範を基盤とする外交を求めていない」ことだ。

  • ヨーロッパをトランプ外交から守るには
    ―― ドイツはリベラルな秩序を擁護できるか

    トルステン・ベナー

    雑誌掲載論文

    トランプの勝利が決まった直後、ベルリンのタブロイド紙B.Z.は、今夜は「西洋が死んだ夜」になったと表現した。北大西洋条約機構(NATO)を嫌悪し、貿易保護主義を擁護するトランプの姿勢を、安全保障と自由貿易によって豊かさを享受してきたドイツ人は特に警戒している。ドイツは最悪のシナリオに備えるべきだろう。トランプが、アメリカの同盟国と多国間機構、そして国際協定に深刻なダメージを与える事態に備える必要がある。変化に対応する最善の方法は、ドイツが国防能力を強化し、明白な原則に基づいてワシントンに接することだ。・・・アメリカの同盟国と世界におけるアメリカの役割を守る決意をもつ米議会共和党との関係を強化する必要もある。ヨーロッパの混乱ゆえに、できることは限られているが、ドイツはダメージコントロールを試み、NATOを含む大西洋同盟や国際機構をトランプ政権から守ることを再優先にすべきだろう。

  • 中東がトランプに抱く期待と不安
    ―― 米次期政権の中東政策を考える

    アハロン・クリーマン、ヨエル・グザンスキー

    雑誌掲載論文

    アラブの指導者たちは、ドナルド・トランプがいくら反イスラム的な発言を繰り返しても、それでもヒラリー・クリントンが大統領になってオバマ政権のイラン・シリア政策が永続化されるよりもましだと考えていた。彼らが、トランプの大統領選挙での勝利を祝福したのはこのためだ。しかし、トランプ政権が先を見据えた行動をとったとしても、中東諸国の信頼を取り戻すには、より緊密な協議や協調、公的な安全保障合意、武器供給、オフショア戦力配備、さらにはイランに対する圧力強化などが必要になる。トランプはイラン合意を「交渉でまとめられた最悪の合意」と何度も批判してきたが、実際にはイランに強硬策をとれるかどうかはわからない。アラブ世界は解体しつつあり、ロシアとイランがより積極路線をとり、しかもこの地域では四つの紛争が戦われている。新米大統領は機能不全に陥った中東に関する気も萎えるほどに大きな一連の決断に直面することになる。

  • トランプ・ドクトリンの悪夢
    ―― 独裁国家は勢いづき、国際秩序は大混乱に陥る

    ジェフリー・ステーシー

    雑誌掲載論文

    トランプがすでに表明している外交路線の見直しを受け入れない限り、ロシア、シリア、イランの独裁政権が強化され、(関税引上げで中国を激怒させ)貿易戦争が起きる(それによって中国とアメリカの同盟諸国の関係も不安定化する)。(アメリカの資金と戦力の貢献を削減することで)北大西洋条約機構(NATO)にダメージを与え、NATO条約第5条の集団防衛へのアメリカの関与は揺らぎ、(シリアがさらに混乱することで)難民流入の新たな波でヨーロッパはさらに大きな圧力にさらされる。要するに、トランプ・ドクトリンは、アメリカの安全保障上の核心的利益を大きく傷つける。嘆かわしいことに、国際関係にトランプのアメリカ第1主義が適用され、それが新たなアメリカの外交政策の象徴とされれば、すでに歴史的な分水嶺に立たされているアメリカと世界はさらに困難な状況に直面することになる。

アメリカの社会的分裂

  • アメリカ社会を分裂させた終末論
    ―― ドナルド・トランプに政治的に向き合うには

    アリソン・マックイーン

    Subscribers Only 公開論文

    トランプがキャンペーンで用いてきた終末論にとらわれ続ければ、政治への参加を断念してもはや打つ手はないと諦念を抱くか、世界を善と悪で区別し、自分とは意見の違うものを中傷し、自らが信じる最終的な正義を暴力に訴えてでも実現しようとするようになる。こうしたビジョンがかつてヨーロッパで宗教戦争を引き起こし、現在はイスラム国(ISIS)を戦闘へ駆り立てている。これと似たレベルの二極化が今回の米大統領選挙キャンペーンによってアメリカ社会でも生じている。極右のスティーブン・バノンが首席戦略官・上級顧問に指名されたことで、アメリカ人は人種や宗教的な憎しみを公言するライセンスを得たと感じているかもしれない。われわれは心理枠組みを変えなければならない。トランプの勝利によって終末の世界に向かうと考えてはならない。トランプに反対する勢力は、現状を終末論ではなく、悲劇としてとらえ、マックス・ウェーバーが言うように「あらゆる希望が潰えたときにも、勇気を失わないしっかりとした心をもたなければならない」。・・・

  • 行き場を失った道徳的怒りと米社会の分裂
    ―― 熾烈なネガティブキャンペーンの果てに

    サラ・エステス、ジェシー・グラハム

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    ヒラリー・クリントンとドナルド・トランプの対決はベトナム戦争以来かつてないほどの大きな分裂をアメリカ社会にもたらしている。「なぜ政治がかくも毒を帯びてしまったのか」。コメディアンのスティーブン・コルバートは大統領選の夜にこの問いに次のように答えている。「今年は特にみんながふらふらになっていた。毒気にあたりすぎた。少しばかり毒気にさらされても相手の嫌なところがみえる程度で、悪くはない。それでその感覚にはまって、相手を攻撃することで少しばかりハイになってしまった」。選挙戦でトランプが批判したイスラム教徒やメキシコ人たちに対して差別用語を使うことは、いまやトランプ・クリントン双方の支持者に受け入れられつつある。だがもう中傷合戦は止め、曖昧でつかみどころのない不平不満ではなく、具体的で現実に存在する問題に焦点をあわせるべきだ。バラバラになった市民をこれ以上分断させるのではなく、有益な政策を通して市民をまとめ、融和をはかる方向へ怒りの矛先を向かわせなければならない。

  • ドナルド・トランプの黙示録
    ―― アメリカ政治思想における終末思想

    アリソン・マックイーン

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    「もっとタフにスマートになり、早く行動を起こさなければ、この国は崩壊する」。トランプはこうした黙示録的メッセージを繰り返し、「自分なら、アメリカがハルマゲドンに向かっていくのを回避できるし、アメリカを再び偉大な国にできる」と主張してきた。意外にも、こうした終末論を口にするアメリカの政治家はトランプが初めてではない。リンカーンからジョージ・W・ブッシュまで、終末論的レトリックはアメリカの政治で何度も用いられてきた。実際、憂鬱な予測を示すことで、国難に市民を立ち向かわせようとした政治家は数多くいる。アメリカにおける黙示録的レトリックの伝統は、民衆を分断するのではなく、団結させることを意図してきた。トランプに特有なのは、黙示録的な予測に危険な誇大妄想をまとわせ、分断と排除を求めていることだ。

  • 地域・文化対立が米外交を引き裂く

    マイケル・リンド

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    反介入主義と反軍部を旨とするリベラルな北部と、介入主義的で軍に好意的な保守派の南部という対立構図は、米国が誕生して以来のものだ。「南部は、それが何をめぐって、どの国を相手とする戦争であるかなどお構いなく、アメリカの戦争のすべてを支持してきた」。これに対して、北部は一貫して非介入、反軍事路線を崩さなかった。これは、アメリカの内的な地域文化対立である。問題なのは、そうした北部と南部の地域的な下位文化が融合しないどころか、むしろ、民主党、共和党という対立構図と重なり合いつつあることだ。経済ブームがこうした南北間の価値観や利益をめぐる対立を覆い隠す役割を果たしてきたが、ひとたびリセッションが起きたり、新たな安全保障上の脅威が登場すれば、「軍事路線と自由貿易を支持する南部と南西部、そして、反介入主義的で保護主義的な北東部の間」のやっかいな政治対立が先鋭化するに違いなく、その衝撃は同盟関係さえも揺るがしかねない。政党やメディアに、こうした二つの地域文化がバランスよく反映されるシステムを導入しない限り、南北戦争まがいの対立がなくなることは決してありえない。

  • 仏大統領選挙の行方
    ―― 混乱するフランス政治とロシア

    デヴィッド・カディアー

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    これまで長い間、外交政策部門については手堅いコンセンサスが存在したフランスでも、いまやロシア政策をめぐって合意が揺るがされている。特に仏露関係がフランスの大統領選挙の争点の一つに浮上している。極右勢力のポピュリスト政党、国民戦線はロシアとのイデオロギー・組織・財政的なつながりをもち、かなりの支援を受けていることで知られている。マリーヌ・ルペンはおそらく2017年春の選挙で2次投票へ進むと考えられている。問題はルペンと大統領を争うと予想される共和党の指導者たちも「ロシアに対してこれまでとは違う路線をとるべきだ」と主張していることだ。共和党はウクライナ危機後に欧州連合(EU)がロシアに課した経済制裁の解除を求め、2016年4月には非拘束とはいえ、対ロシア経済制裁の緩和に向けた議会決議の採択を主導している。共和党のフランソワ・フィヨンは自らの外交提案の中核の一つに「ロシアとの和解」を据えている。・・・

  • マリーヌ・ルペンとの対話
    ―― フランスの文化、独立と自由を取り戻す

    マリーヌ・ルペン

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    「フランスは、欧州連合(EU)の一部であるときより、独立した国家だったときの方がパワフルだったと私は考えている。そのパワーを再発見することを望んでいる。EUは段階的に欧州ソビエト連邦のような枠組みへと姿を変えつつある。EUがすべてを決め、見解を押しつけ、民主的プロセスを閉ざしている。・・・メルケルは次第に自分がEUの指導者だという感覚をもつようになり、その見方をわれわれに押しつけるようになった。・・・私は反メルケルの立場をとっている。テロについては、移民の流れを食い止める必要があるし、特に国籍取得の出生地主義を止める必要がある。出生地主義以外に何の基準もないために、この国で生まれた者には無条件で国籍を与えている。われわれはテロ組織と関係している二重国籍の人物から国籍を取り上げるべきだろう。・・・・」 (聞き手 スチュアート・レイド Deputy Managing Editor)

  • ジョン・ケリー国務長官が回顧する
    オバマ外交と米外交の課題

    ジョン・ケリー

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    問題は貿易ではないことを、人々に理解させる必要がある。彼らが必要なものを手に入れ、まともな給料をもらい、ふさわしい社会保障を得られるようにしなければいけない。だが、生まれたての(TPPという)赤ん坊を、捨ててはいけない。(アメリカ製品の)買い手の95%は外国にいるのに、貿易を放棄してはいけない。政治システムに人々が失望していることが人々の不信感を高めている。それは私にも理解できる。しかしTPPを批准して、企業がトップを目指して競争するルール、世界中の人々の権利を強化するルール、環境を守り、労働基準を確立し、市場を開放するルールを作らなければ、アメリカは豊かになれない。アメリカが世界から手を引けば、その空白を埋めようと考えている国はたくさんある」。(聞き手 ジョナサン・テッパーマン フォーリン・アフェアーズ誌副編集長)

  • バラク・オバマと米中東政策の分水嶺
    ―― なぜアラブの春を支持し、中東不介入策を貫いたか

    マーク・リンチ

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    ブッシュ政権期には、アラブの独裁者たちはテロ戦略・イラン戦略をめぐってアメリカと足並みさえ合わせれば、ワシントンの民主化要求をかわせると読んでいた。自分たちの利益に合致する地域秩序をあえて覆したいと望む中東の指導者はほとんどいなかった。だが、アラブの春に直面したオバマは独裁政権の指導者ではなく、街頭デモに繰り出した民衆を明確に支持し、ムスリム同胞団の政治参加を認めた。さらに、米軍の過大な地域関与を控え、基本的に不介入路線をとった。オバマはシリア紛争への踏み込んだ関与を避け、イラクから部隊を撤退させ、イランとの核合意をまとめ、アラブの春を支持した。おそらく、次期大統領はオバマの路線から距離を置こうとするだろう。しかし、結局は、容易ならざる中東の現実とオバマの選択の正しさを思い知ることになるだろう。

  • 人道的介入で破綻国家と化したリビア
    ―― なぜアメリカは判断を間違えたのか

    アラン・J・クーパーマン

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    NATOが軍事介入するまでには、リビア内戦はすでに終わりに近づいていた。しかし、軍事介入で流れは大きく変化した。カダフィ政権が倒れた後も紛争が続き、少なくとも1万人近くが犠牲になった。今から考えれば、オバマ政権のリビア介入は惨めな失敗だった。民主化が進展しなかっただけでなく、リビアは破綻国家と化してしまった。暴力による犠牲者数、人権侵害の件数は数倍に増えた。テロとの戦いを容易にするのではなく、いまやリビアは、アルカイダやイスラム国(ISIS)関連組織の聖域と化している。「もっと全面的に介入すべきだった。社会を再建するためにもっと踏み込んだ関与をすべきだった」とオバマ大統領は語っている。だが、実際には、軍事介入の決定そのものが間違っていた、リビアには軍事介入すべきでなかった。

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