フォーリン・アフェアーズ・リポート2016年5月号 目次
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文明は衝突せず、融合している
―― 将来を悲観する必要はない雑誌掲載論文
昨今の欧米世界ではイスラム世界の混乱、中国の台頭、欧米の経済・政治システムの硬直化といった一連の課題に派生する悲観主義が蔓延している。とにかく欧米人の多くが自信を失ってしまっている。しかし、悲観主義に陥る理由はない。悪い出来事にばかり気を奪われるのではなく、世界で起きている良いことにもっと目を向けるべきだ。この数十年で非常に多くの人が貧困層から脱し、軍事紛争の数も低下している。とりわけ、世界の人々の期待が似通ったものになってきている。これは、グローバルな構造の見直しをめぐる革命ではなく、進化へと世界が向かっていることを意味する。現在のペシミズムの最大の危険は、悲嘆に暮れるがゆえに悲観せざる得ない未来を呼び込んでしまい、既存のグローバルシステムを再活性化しようと試みるのではなく、恐れに囚われ、欧米がこれまでのグローバルなエンゲージメントから手を引いてしまうことだ。
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文明の衝突
Subscribers Only 公開論文
ポスト冷戦時代の「X論文」とも評されるこの「文明の衝突」は、ハンチントンがそもそもハーバード大学のオケーショナル・ペーパーとして書き下ろしたものを、「フォーリン・アフェアーズ」に掲載するためにまとめ直し、その後の大反響を受けて『文明の衝突』という著作として加筆出版されたという経緯を持つ。発表と同時に世界各地でマスコミに取り上げられたこの壮大なスケールの論文は、政治家、歴史・政治学者にはじまり、人類学者、社会学者に至るまで広範な分野の専門家を巻き込んでの大論争となった。ハンチントンはポスト冷戦時代を、イデオロギー対決の時代から、宗教、歴史、民族、言語など文明対立が世界政治を規定する時代になると予測し、集団をとりまとめる求心力は文化や文明となり、紛争の火種もまた自らの文明に対する認識の高まりや文明の相違から生じるだろうという見解を示した。
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紛争か協調か
――『文明の衝突』、『歴史の終わり』、『大国政治の悲劇』で 21世紀を読み解くSubscribers Only 公開論文
暗闇では銃を発射できないように、世界がどのように機能するかについてのビジョンなしに、政策を決めることはできない。だからこそ、現実主義者は、この世にいない経済学者か、政治理論家の奴隷となるしかない。政策決定者が、世界を間違った方向ではなく、正しい方向へと動かす可能性を高めるような、情報と知識に裏付けられた思想的な基盤とビジョンをわれわれは常に必要としている。冷戦末期以降、『文明の衝突』、『歴史の終わり』、『大国政治の悲劇」』という三つの壮大なビジョンが表明された。ベルリンの壁が崩壊した段階ではフクヤマは真実の鐘をならし、9・11以降の世界政治についてはハンチントンの予測は現実を言い当てていた。中国パワーが今後開花していけば、ミアシャイマーも現実を言い当てることになるのかもしれない。だが、ハンチントン、フクヤマ、ミアシャイマーは未来の何を言い当てて、どこを読み誤ったのか。それを理解することが、世界が必要とする第4のビジョンを描く鍵となる。
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オバマは広島を訪問すべきなのか
―― 感情と理念と政治雑誌掲載論文
日本人の多くは、米大統領が被爆地を訪問することで、アメリカが原爆使用という過去と正面から向き合う機会が作り出されることを願っている。すでにホワイトハウスは、日本の市民グループ、軍縮運動家、子供たちなどから、オバマ大統領の広島訪問を希望する手紙を何千通も受けとっている。大統領の広島訪問を待望する人の多くは、「重要なのは謝罪ではない」と考えている。だが、米大統領が広島を訪問すれば、結局は東アジア地域の厄介な歴史問題がさらに複雑になる恐れがある。アメリカ大統領が「被害者としての日本」という考えの中枢である被爆地を訪問すれば、韓国など、日本の近隣諸国の多くはそれを快く思わないからだ。しかもアメリカでは大統領選挙が控えている。大統領が、献花された石碑の前に立ち、黙祷を捧げるにはあまりにも騒々しい環境にあるのは間違いない。・・・・
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地球を覆うエアロゾルを削減せよ
―― エアロゾルの拡散と水資源の減少雑誌掲載論文
発電所で利用される石炭、自動車のディーゼル燃料、料理用の薪の燃焼など、温室効果ガスを排出する人間の活動は、一方でエアロゾルと呼ばれる微粒子も排出する。エアロゾルは、広い範囲に靄(もや)がかかる現象をもたらし、太陽光を遮ったり散乱させたりする。その結果、地表に届く太陽光エネルギーが減少し、いつ、どこに、どれくらいの雨が降るかを左右する水分の蒸発が減少して水循環を混乱させる。2050年までに世界人口の40%が苛酷な水不足に直面するとの予測もすでに出ている。各国政府が理解し始めているように、水不足は経済的、人道的な課題であるだけではなく、地政学的な問題も絡んでくる。エアロゾル汚染への対策は温室効果ガス削減のキャンペーンに比べて市民の大きな関心を集めないが、その対策を、気候変動を抑える地球規模の行動における重要な柱とすべき理由は十分にある。
ロシアの命運
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蘇るロシアの歴史的行動パターン
―― プライドと大きな野望、そして脆弱なパワーという現実雑誌掲載論文
自らの弱さを理解しつつも、特別の任務を課された国家であるという特異な意識が、ロシアの指導者と民衆に誇りを持たせ、一方でその特異性と重要性を理解しない欧米にモスクワは反発している。欧米との緊密なつながりを求める一方で、「自国が軽く見られている」と反発し、協調路線から遠ざかろうとする。ロシアはこの二つの局面の間を揺れ動いている。さらにロシアの安全保障概念は、外から攻撃される不安から、対外的に拡大することを前提としている。この意味でモスクワは「ロシアが旧ソビエト地域で勢力圏を確立するのを欧米が認めること」を望んでいる。だが現実には、ロシアは、経済、文化など)他の領域でのパワーをもっていなければ、ハードパワー(軍事力)だけでは大国の地位を手に入れられないことを具現する存在だ。現在のロシアは「新封じ込め」には値しない。新封じ込め政策をとれば、ロシアをライバルの超大国として認めることになり、欧米は相手の術中にはまることになる。・・・
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ロシア経済のポテンシャルを開花させるには
―― 構造改革と世界経済への復帰を実現せよ雑誌掲載論文
政治腐敗と改革の遅れ、原油・天然ガス価格の暴落、そして欧米による経済制裁という要因が重なり合うことで、ロシア経済は追い込まれ、景気回復は期待できない状況にある。ロシア経済が直面する三つの大きな問題のうち、国際的なエネルギー価格の暴落は、モスクワが管理できるものではない。しかし、ウクライナ紛争に終止符を打ち、構造改革を進めるという、残りの二つはプーチンの権限で対処できる。ウクライナへの軍事介入を止めて、経済制裁を緩和し、構造改革路線を取れば、こうしたダメージの多くは覆せる。これまでモスクワはそうした選択をしなかった。プーチン大統領も、経済改革を実行するという約束を守っていない。ロシア経済の現状は「ナット・グッド」かもしれない。だが、長期的な見通しは暗くない。たしかに、構造改革を実行し、世界経済に再び加わり、近代的な政治・経済機構を構築するのはロシアにとって容易ではない。だが、指導者たちに改革の意思さえあれば、ロシアは富裕国に追いつけるポテンシャルをもっている。
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ソビエト対外行動の源泉(X論文)
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ロシア・ユーラシアニズムと「反西欧」の構図
Subscribers Only 公開論文
ユーラシアニズムとは、「西欧とは異なるロシアのユニークなアイデンティティを確立させようとする試みのことで、ユーラシア中枢に位置するロシアを起点に南や東へと目を向け、この巨大大陸の東方正教会系の民族と、イスラム人口を地政学的観点から一つにまとめあげる」ことを構想している。具体的には、「国内の経済政策面では左派よりで、対外政策面でアラブ諸国を助け、東方世界に傾斜し、旧ソビエト地域の統合を強化する政策である」。すでにロシア共産党のジュガーノフ委員長や、プリマコフ首相は、ユーラシアニズムという理念を政治外交の世界で具体化させ、少なくとも、国内政治そして一部外交面でも勝利を収めつつある。伝統主義と集団主義をつうじて、ユーラシアにおける民族集団を一手に取りまとめ、反リベラル・反欧米のスタンスで大同団結させようとするこのロシアの試みは、「西欧(WEST)」、そして世界にとってなにを意味するのだろうか。
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ロシア権威主義経済モデルの虚構
――独裁体制と経済成長に因果関係はあるのかSubscribers Only 公開論文
1990年代のロシアでは民主化が進められたものの経済が低迷し、逆にこの10年は独裁体制が強化されたのに経済は大きく改善している。 しかし、現在のロシア政府のパフォーマンスはきわめて低く、治安、公衆衛生、腐敗、財産権の保障という面でみれば、現在のロシアの暮らし向きは、10年前よりも相対的に悪くなっている。ロシアの国際的な経済競争力、進出先あるいは取引先としての経済環境も悪化し、情報公開は進まず、政治的腐敗も深刻になっている。原油、天然ガスなど、原材料価格の高騰がロシア経済の大きな追い風となっているのは事実だが、それだけの話だ。ロシアの独裁体制と経済成長の間に何らかの因果関係があるとすれば、独裁制が成長に悪影響を及ぼしているということだ。
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プーチン・ドクトリン
Subscribers Only 公開論文
「ロシアは核の超大国、国際的活動のすべての側面における大国としての地位を維持し、政治、軍事、経済をめぐる地域的リーダーとしての役割を守り、地域的覇権国として君臨しなければならない」。プーチンは、ロシアで広く共有されているこのコンセンサスに「ソビエト解体によって失われた経済、政治、戦略地政学上の政府資産の回復」をアジェンダに加えた。これがプーチン・ドクトリンの概要だ。こうしてロシアが権威主義に回帰していくと、モスクワは、対外的な脅威を強調するようになった。こうして、米ロ関係のリセットを経た現状では、ロシアとの交渉の余地は失われつつある。この状況では、再び関係のリセットを試みのではなく、対話チャンネルを維持しつつも、対ロエンゲージメントを低下させる「戦略的休止」が、もっとも賢明なワシントンの対ロシア戦略かもしれない。
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プーチンの思想的メンター
―― A・ドゥーギンとロシアの新ユーラシア主義Subscribers Only 公開論文
2000年代初頭以降、ロシアではアレクサンドル・ドゥーギンのユーラシア主義思想が注目されるようになり、2011年にプーチン大統領が「ユーラシア連合構想」を表明したことで、ドゥーギンの思想と発言はますます多くの関心を集めるようになった。プーチンの思想的保守化は、ドゥーギンが「政府の政策を歴史的、地政学的、そして文化的に説明する理論」を提供する完璧なチャンスを作りだした。ドゥーギンはリベラルな秩序や商業文化の破壊を唱え、むしろ、国家統制型経済や宗教を基盤とする世界観を前提とする伝統的な価値を標榜している。ユーラシア国家(ロシア)は、すべての旧ソビエト諸国、社会主義圏を統合するだけでなく、EU加盟国のすべてを保護国にする必要があると彼は考えている。プーチンの保守路線を社会的に擁護し、政策を理論的に支えるドゥーギンの新ユーラシア主義思想は、いまやロシアの主要なイデオロギーとして位置づけられつつある。・・・・
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プーチンを支えるイワン・イリインの思想
―― 反西洋の立場とロシア的価値の再生Subscribers Only 公開論文
イワン・イリインは歴史上の偉大な人物ではない。彼は古典的な意味での研究者や哲学者ではなく、扇動主義と陰謀理論を振りかざし、ファシズム志向をもつ国家主義者にすぎなかった。「ロシアのような巨大な国では民主主義ではなく、(権威主義的な)『国家独裁』だけが唯一可能な権力の在り方だ。地理的・民族的・文化的多様性を抱えるロシアは、強力な中央集権体制でなければ一つにまとめられない」。かつて、このような見方を示したイリインの著作が近年クレムリン内部で広く読まれている。2006年以降、プーチン自ら、国民向け演説でイリインの考えについて言及するようになった。その目的は明らかだ。権威主義的統治を正当化し、外からの脅威を煽り、ロシア正教の伝統的価値を重視することで、ロシア社会をまとめ、ロシアの精神の再生を試みることにある。・・・
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苦悩するヨーロッパ
雑誌掲載論文
「EUからの完全な脱退を望む人」と「片足を抜くべきだ」と考える勢力の間でキャンペーンが展開されている。そこに、残留することの利点を重視する勢力は存在しない。・・・但し、国民の判断を仰いだ後、政府が何をするかが法的に定められていない。僅差で(脱退を支持する)結果が出た場合でも、イギリス政府は(EUに脱退を申請するのではなく)、むしろ、(残留を前提に)ブリュッセルでイギリスとEU間の問題の是正を再度試みるかもしれない。(A・メノン)
「ヨーロッパは、自分が作り出した問題を解決することについては長けている。共通通貨ユーロの危機がそうだったし、欧州憲法の起草もそうだった。一方、ヨーロッパのシステムは28カ国のメンバーを前提に作られているために、ロシアであれ、難民であれ、想定外の国や人が入り込むとうまく機能しなくなる。これは外部要因が入り込むと、28カ国間の責任分担、コストと利益の分配のためのメカニズムが混乱するためだ」(P・バラージュ)
「イスラム教徒たちは、トランプの立場がヨーロッパ全域での反イスラム感情を煽り立てることになりはしないかと警戒していた。実際、トランプの立場は、反移民の立場をとる右派、反EU政党の立場を勢いづけている。とはいえ、ヨーロッパでもアメリカでも格差問題が根底にあり、これがグローバル化に取り残されたと感じている右派と左派を勢いづかせている」(ハイジ・クレボ=レディカー)
米大統領選挙に揺れる世界
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サウジと米大統領選挙
―― クリントン、トランプ、リヤド雑誌掲載論文
「ジョージ・W・ブッシュ政権が残した(中東における)負の遺産を清算すること」を自らの中東における任務に掲げたオバマも、結局は負の遺産を次期米大統領に委ねることになりそうだ。シリア紛争への関与を躊躇い、イランとの核合意を模索したことで、サウジとアメリカの関係は極度に冷え込み、サウジでは、オバマは近年における「最悪の米大統領」と呼ばれることも多い。次期大統領候補たちはどうだろうか。サウジの主流派メディアは、イスラム教徒の(アメリカへの)移民を禁止することで「問題」を緩和できると発言したトランプのことを「米市民のごく一部が抱く懸念や不満を煽りたてる問題人物」と描写している。クリントンに期待するとしても、その理由は、彼女がトランプではないというだけのことだ。ますます多くのサウジ市民が、安全保障部門でのアメリカの依存を見直すべきだと考えるようになっている。・・・
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大西洋同盟の未来
―― トランプが投げかけた波紋雑誌掲載論文
「われわれは(NATOメンバー国を)守っている。彼ら(ヨーロッパ)はあらゆる軍事的保護を受けているが、アメリカ、そして納税者であるあなたたち(アメリカ市民)に、法外な資金を負担させている。これは問題がある。過去の分を含めて、(ヨーロッパのメンバー国は)資金を完済するか、同盟から出て行くべきだ。それがNATOの解体を意味するのなら、それはそれでかまわない」。予備選挙の共和党大統領候補、ドナルド・トランプはNATO批判を強めている。NATO事務総長、ヤンス・ストルテンベルグは、これに対する直接的なコメントは避けつつも、ヨーロッパ側が防衛予算を増やす必要があることを認めた上で、「より危険な世界に対処していく答は、これまで大きな成功を収めた強靱な同盟関係(NATO)をダウングレイドすることではなく、同盟関係をもっと強化することだ」と主張する。・・・(聞き手は、フォーリン・アフェアーズ誌のデュピティ・マネージングエディター、ジャスティン・ヴォグト)
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ヒラリー・クリントンのフェミニスト外交
―― ドクトリンと現実の間雑誌掲載論文
(大統領夫人、そして国務長官としての)ヒラリー・クリントンは、女性の運命が社会のそれと切っても切れない関係にあること、女性の虐待がしばしば独裁体制や戦争の前兆となること、そしてアメリカの国家安全保障が各国の女性の健全な生活が保障されることで強化されると主張し、これを外交アジェンダの一部に位置づけることに成功した。だが、一部の社会では性差別と家父長制が深く根を張っており、外国の指導者たちが迅速に変革に応じるのは難しいことも彼女は理解している。女性の権利問題を、小さなイニシアチブから、米政府全体が真剣に受け止める政策課題へと「格上げ」した最大の功労者であるクリントンは今、大統領の座を狙い、その大義をさらに推進できる大きなパワーを手にしようとしている。しかし、この試みが実を結ぶには時間がかかるし、女性問題だけが彼女が重視するアジェンダではないことは理解する必要があるだろう。
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封じ込めではなく、イスラム国の打倒と粉砕を
Subscribers Only 公開論文
結局のところ、米軍機やドローンによる攻撃を含む、われわれが利用できる全てのツールを用いて、テロの危険がある全ての地域で対策をとらなければならない。外国人戦士のイスラム国への流入と流出、テロ資金の流れを遮断し、サイバースペースでの闘いを試みることが、イスラム国との戦いには欠かせない。今後の脅威に対抗していく上でも、これらの試みが対策の基盤を提供することになるだろう。・・・われわれの目的をイスラム国の抑止や封じ込めではなく、彼らを打倒し、破壊することに据えなければならない。・・・「スンニ派の第2の覚醒」の基盤作りを試みる必要もある。・・・アサドがこれ以上民間人や反体制派を空爆で殺戮するのを阻止するために、飛行禁止空域も設定すべきだ。有志連合メンバー国が地上にいる反体制派を空から支援して安全地帯を形作れば、国内避難民もヨーロッパを目指すのでなく、国内に留まるようになる。・・・
中国企業の実力を検証する
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中国国有企業改革の実態
―― 切り捨てられる企業と温存される企業雑誌掲載論文
過剰生産能力を減らすために、北京は鉄鋼生産量を年間1億―1億5000万トン削減すると表明し、2月には鉄鋼部門において約50万人の雇用を削減する計画を発表している。石炭産業における生産量と雇用の削減はさらに熾烈なものになるだろう。そして北京が過剰生産能力を削減する主要なツールとして、中国の国有企業(SOE)改革を利用していくのは明らかだろう。損失を計上している部門については、民営化を通じて政府による監督を緩和するか、工場閉鎖と労働者の解雇が行われるだろう。中国のSOE改革とは、一般にイメージされるのとは違って、赤字国有企業を売却、清算するだけで、北京は利益をあげている国有企業についてはこれまでの関係を維持していくつもりだ。「政治的に正しい」立場をとる国有企業のエグゼクティブと最高経営責任者は法外な富を得て、「政治的に間違った」立場をとる者たちは政治腐敗の罪に問われ、失脚することになるだろう。
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中国のコーポレートパワー
―― 中国企業が市場を制する日はやってくるのか雑誌掲載論文
最近の経済的失速と株式市場の混乱にも関わらず、「中国はいずれアメリカを抜いて世界最大の経済パワーになる」と考える人は多い。だが、このシナリオを検証するには、現実に成長と富を生み出している企業と産業の活動動向に目を向ける必要がある。世界でもっともパワフルな経済国家になるには、中国企業は資本財やハイテク部門でさらに競争力をつけ、半導体、医療用画像診断装置、ジェット航空機などの洗練された製品を製造し、市場シェアを拡大していく必要がある。繊維や家電製品など、そう複雑ではない第1世代部門同様に、中国企業はこうした第2世代部門でもうまくやれるだろうか。それを疑うべき理由は数多くある。途上国の企業とせめぎ合う製造業部門とは違って、資本財部門やハイテク部門では、中国企業は、日本、韓国、アメリカ、ヨーロッパの大規模で懐の深い多国籍企業を相手にしていかなければならない。・・・
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迫りくる中国の激震
Subscribers Only 公開論文
国有企業は単なる「職場」ではなく、労働者やその家族に各種サービスを提供するコミュニティーである。しかし、今や国有企業はひどく非効率となり、これが生き長らえているのは、ひとえに政府の補助金政策のおかげである。経済改革を成就するには、「鉄飯碗」として知られるこのコミュニティーを崩す必要があるが、それは同時に改革プログラムを政治的に支えている社会的安定基盤も揺るがしてしまう。だが現実には、政府は国有企業の多くを閉鎖せざるを得ず、その場合には千五百万人もの労働者が失業し、その多くが抗議行動に繰り出すことになるだろう。社会的、政治的激震を回避するには、企業、労働者、中央政府、地方政府が負担義務を分かち合う、国による社会保障システムの構築、さらには労働者のための職業再訓練プログラム、公共事業の準備が不可欠であり、その準備のために中国政府に残された時間は少ない。
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「中国経済の奇跡」という虚構
Subscribers Only 公開論文
中国をアジアにおける新たな技術・経済「大国」とみなすよりも、普通の新興経済国家とみなすほうが適切である。中国の産業の多くは国有企業と「支配的な影響力を確立しつつある外資系企業」によって構成されており、中国の民間企業はいまも国有企業、外資系企業と競争していく力を確立できていない。
近代化を成し遂げる最終段階になって、産業の分断状況と権威主義的支配という重荷がのしかかってきているというのが中国の現実であり、政治改革を断行しないことには、さらなる発展を阻む閉塞的な中国のビジネス文化を変えていくことはできない。 -
「北京コンセンサス」の終わり
Subscribers Only 公開論文
一般に途上国の一人当たりGDPが3000~8000ドルに達すると、経済成長は頭打ちになり、所得格差が拡大して社会紛争が起きがちとなる。中国はすでにこの危険水域に入っており、すでに厄介な社会兆候が現れている。要するに、国の経済は拡大しているが、多くの人々は貧しくなったと感じ、不満を募らせている。特権を持つパワフルな利益団体やまるで企業のように振る舞う地方政府が、経済成長の恩恵を再分配して、社会に行きわたらせるのを阻んでいるからだ。経済成長と引き替えに共産党の絶対支配への同意を勝ち取る中国共産党(CCP)の戦略はもはや限界にきている。CCPが経済成長を促し、社会的な安定を維持していくことを今後も望むのであれば民主化を進める以外に道はない。
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このままでは中国経済は債務に押し潰される
―― 地方政府と国有企業の巨大債務Subscribers Only 公開論文
これまで中国政府は、主要銀行の不良債権が経済に悪影響を与えないようにベイルアウト(救済融資)や簿外債務化を試み、一方、地方の銀行については、地方政府が調停する「合意」で債務危機を抑え込んできた。だが、もっともリスクが高いのは地方政府そして国有企業が抱え込んでいる膨大な債務だ。不動産市場が停滞するにつれて、地方政府がデフォルトを避けるために土地をツールとして債務不履行を先送りすることもできなくなる。経済成長が鈍化している以上、国有企業がこれまでのように債務まみれでオペレーションを続けるわけにもいかない。しかも、債務の返済に苦しむ借り手は今後ますます増えていく。中国が債務問題を克服できなければ、今後の道のりは2008年当時以上に険しいものになり、中国経済に壊滅的な打撃を与える危機が起きるのは避けられなくなる。
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デジタル時代の外交
―― 大使館は依然として必要か雑誌掲載論文
かつては政府にとって外国情報収集の要だった大使館も、リアルタイムのメディア報道やリスク管理会社による綿密な外国分析レポートに後れを取るようになった。しかも、本国の政府はいまや外国政府と直接やりとりできるし、インドのナレンドラ・モディ首相のように、ツイッター、フェイスブック、インスタグラムを駆使するトップリーダーも現れている。だが、大使館はメディアとは違って、国益の促進という視点から、それまでの経験と知識を生かして特定の出来事を文脈に位置づけ、分析できる。大使館がなくなれば、現地の情勢や鍵を握る人物が誰であるかを知る外交官も、自国の市民が外国で窮地に陥ったときに手を差し伸べる領事館の職員もいなくなる。だがそれでも今後、大使館の運命は「より機敏に状況に対応できるようになれるか、流動化するグローバル情勢により適応に対応できるようになれるか」に左右される。だが、数世紀にわたって存在する伝統的な組織にとって、そうした変貌を遂げるのは決して容易ではないだろう。