本誌一覧

2015年4月10日発売

フォーリン・アフェアーズ・リポート
2015年4月号

購読はこちら

フォーリン・アフェアーズ・リポート2015年4月号 目次

特集 新しい現実

  • 新しい現実と主権国家の行方
    ―― ウエストファリアとキッシンジャーの世界

    ウォルフガング・イッシンガー

    雑誌掲載論文

    中東ではシリア内戦によって数十万人が犠牲になり、いまやジハード主義勢力が中東全域を脅かしている。アジアでも、経済的台頭を遂げた中国が強硬路線をとるようになり、近隣諸国はこの動きを警戒している。西アフリカではエボラ出血熱が数カ国を機能不全に追い込んでいる。ルールを重んじ、もっとも制度化が進んでいるヨーロッパのリベラルな規範も、プーチン大統領が軍事的侵略をロシアの国策として復活させたことで、大きな圧力に晒されている。一方、これまでにグローバル秩序の擁護者の役割を果たしてきた欧米、特にアメリカがその役割を果たすことを躊躇っている。しかも、台頭途上にある新興大国は、これまでのところ国際的安定を擁護していく意思も能力ももっていない。キッシンジャーなら、この現状をどう考えるだろうか。

  • 21世紀における 思想とソフトパワー
    ―― 中国、ロシア、中東革命

    ジョセフ・S・ナイ

    雑誌掲載論文

    他国の人々を魅了するソフトパワーという点では、現状でアメリカと競い合える国はない。なぜ27万の中国人学生がアメリカの大学で学んでいるのだろうか。なぜ習近平は娘をハーバードで学ばせたのか。・・・1930年代にヒトラーはアメリカとはまったく違う思想で他を魅了しようとした。スターリンも冷戦を共産主義思想で捉えることで他を魅了しようと考えた。イスラム国も部分的に他を魅了する思想を語ることで中東における深刻な脅威を作りだしている。・・・ プーチンも習近平も、自国のソフトパワーについて多くのことを語っている。だが2人とも、それをどう利用すればよいかが分かっていない。 ・・・アジア地域では大きなワシントンの政策変更はないだろう。今後2年でヨーロッパへの政策が変化するとも思わない。だが、中東はかつてのヨーロッパにおける30年戦争を思わせる大きな混乱のなかにある。過剰でも過小でもないどの程度の介入をアメリカが行うかが重要になる。イスラム国がいなくなっても、別の似た組織が登場するだろう。結局のところ、中東はボトムアップ型の奥深い革命を経験している。決着がつくまでには20-30年の時間が必要になるだろう。・・・
    (聞き手、イアン・ブレマー ユーラシアグループ会長)

  • 解体したヨーロッパ市民社会
    ―― 多文化主義と同化政策はなぜ失敗したか

    ケナン・マリク

    雑誌掲載論文

    多文化主義と同化主義は、社会の分裂に対する二つの異なる政策処方箋だが、結局、どちらもヨーロッパの社会状況を悪化させてきた。英独は多文化主義政策を、フランスは同化政策を導入した、だが、イギリスではコミュニティ同士の衝突がおき、ドイツのトルコ人コミュニティは社会の主流派からさらに切り離され、フランスでは当局と北アフリカ系コミュニティの関係が険悪になった。しかし、社会が分裂し、マイノリティが疎外され、市民の怒りが高まっている点では各国は同じ状況にある。理想的な政策は「多文化主義の多様性を受容する側面と、同化主義の誰でも市民として扱う側面を結合させることだろう」。だが、ヨーロッパ諸国はその正反対のことをやってきた。多文化主義と称してコミュニティをそれぞれの箱に閉じ込めるか、同化主義と称してマイノリティを主流派から疎外してきた。この政策が分断を作り出してしまった。

  • アメリカパワーの将来  
    ―― 今後を左右するのは中国ではなく、スマートパワーだ

    ジョセフ・ナイ

    Subscribers Only 公開論文

    軍事力を例外とすれば、今後、アメリカの文化も経済も21世紀初頭のようなパワーを失い、世界的な優位を保つことはないだろう。そして、今後の国家間政治においてもっとも重要な要因は、アジアが世界舞台への復活を続けていることだ。だが、中国がアメリカをアジアから締め出せるはずはない。アメリカが古代ローマのように内側から朽ち果てていったり、中国を含む国家に取って代わられたりすることはあり得ない。アメリカにとって重要なのは、移民への開放性を維持し、国内の中・高等教育を改革し、債務問題への対策をとり、制度と価値の多くを共有するヨーロッパ、日本との連帯を強化していくことだ。21世紀のスマートパワーのストーリーは、パワーを最大化することでも、覇権を維持することでもない。それは、パワーが拡散し、その他が台頭する環境のなかで、いかに自国のパワーリソースを優れた戦略に結びつけるか、その方法を見いだすことだ。

  • ロシアの「死にゆく社会」
    ―― 想定外の人口減少はロシアをどう変えるか

    ニコラス・エバースタット

    Subscribers Only 公開論文

    この20年間、ロシアでは、戦時でもないのに人口が減少するという極めて異例の現象が続いている。総人口は減り、死者の数が増え、人的資源が危険なまでに損なわれている。都市化が進んだ教育水準の高い社会で、しかも平時において、なぜこれほど死亡率が高いのか、その理由は謎に包まれている。このままでは、人口の減少がロシアの経済と軍事力を大きく損なうのは避けられない。問題は、ロシア政府が人口減少トレンズを認識しつつも、危機の深刻さを過小評価し、対策の効果を過大評価していることだ。人口減によって、モスクワは世界経済のパイに占める比率が小さくなることを覚悟しておくべきだし、すでにロシアの軍事力、特に兵力面で大きな制約が作り出されている。自信を失ったモスクワはいずれ無謀な対外行動をとるようになるかもしれない。兵力の低下と軍事技術の衰退に直面したロシア軍の高官たちが、核兵器使用の敷居を低くする恐れは十分ある。・・・

  • 問われるヨーロッパの自画像
    ―― ユダヤ人とイスラム教徒

    ヤシャ・モンク

    Subscribers Only 公開論文

    「私は移民に開放的だ」と自負しているヨーロッパ人でさえ、「イスラム系移民はそのアイデンティティを捨てて、ヨーロッパの習慣を身につけるべきだ」と考えている。右派のポピュリストはこうした市民感情を利用して、「(移民に寛容な)リベラルで多様な社会という概念」とそれを支えるリベラル派をこれまで攻撃してきた。だがいまや、極右勢力は「言論の自由を否定し、シャリア(イスラム法)の導入を求め、ユダヤ人、女性、同性愛者に不寛容な国からの移民たちが、ヨーロッパの秩序そのものを脅かしている」と主張し始め、リベラルな秩序の擁護者として自らを位置づけ、これまで攻撃してきたユダヤ人を連帯に組み込むようになった。問題は、ユダヤ人とイスラム教徒を交互に攻撃して秩序を維持しようとするやり方が単なる政治戦術にすぎず、このやり方では未来を切り開けないことだ。むしろ、ヨーロッパ人が自画像を変化させ、自分たちの社会が移民社会であることを認識するかどうかが、ヨーロッパの未来を大きく左右することになる。

特集 中東革命とサウジの危機

  • 原油安の地政学的意味合い
    ――ロシア、サウジ、イラクの未来

    マイケル・グフォーラー他

    雑誌掲載論文

    ロシアのビジネスエリートたちの愛国心は強い。経済制裁によって追い込まれれば、彼らも指導者を変えるべきだと考えるようになるとみなすのは間違っている。1―2年すれば何か変化があるかもしれないが、近い将来に大きな変化があるとは思わない。(A・ステント)

    サウジアラビア市民はサウド家の支配を受け入れる代わりに、かなりの恩恵が供与されることを当然視している。電力と水資源の供給、医療と大学レベルの教育、これらのすべてが無償で提供されている。原油安によってこれら無償の社会サービスが有償化されれば、王国の政治ダイナミクスは根本的に変化する。(M・グフォーラー)

    (原油安ゆえに)バグダッドはエルビルに約束した財政移転を行えずにいる。合意が破綻すれば、クルド自治区は独立し、自分たちで原油を生産して販売しようと試みるだろう。・・・合意が破綻すれば、クルドの分離独立、イラク解体に向けたメカニズムが動き始める」。(D・ゴールドウィン)

  • 内戦への道を歩むイエメン
    ――シーア派系フーシ派の目的は何か

    エイプリル・ロングレー・アレイ

    雑誌掲載論文

    2015年1月、イエメンでイスラム教シーア派系武装勢力「フーシ派」が権力を掌握し、議会を解散して暫定政府の樹立を宣言した。しかし、政治的経験のないフーシ派には、政府を運営し、経済を管理していく力はない。これまでの問題を批判するだけで、統治上の責任はほとんど果たせずにいる。一方でイエメンのスンニ派系テロ集団・アラビア半島のアルカイダ(AQAP)は、紛争を宗派抗争へ持ち込もうと策謀している。実際、フーシ派を侵略者とみなしているイエメン中央部のバイダー県を含む地域では、いまやAQAPに多くの若者が参加しつつある。地方の部族がAQAPと手を組む可能性もある。サウジは、外交的にフーシ派を孤立させ、彼らと軍事的に対立している集団を支援し、フーシ派に明確に敵対する路線をとっている。一方で、危機を緩和させるためにシーア派のイランが前向きな行動をみせるとも考えにくい。いまや宗派を軸とするイエメン内戦のリスクが高まっている。・・・

  • 人道的介入で破綻国家と化したリビア
    ―― なぜアメリカは判断を間違えたのか

    アラン・J・クーパーマン

    雑誌掲載論文

    NATOが軍事介入するまでには、リビア内戦はすでに終わりに近づいていた。しかし、軍事介入で流れは大きく変化した。カダフィ政権が倒れた後も紛争が続き、少なくとも1万人近くが犠牲になった。今から考えれば、オバマ政権のリビア介入は惨めな失敗だった。民主化が進展しなかっただけでなく、リビアは破綻国家と化してしまった。暴力による犠牲者数、人権侵害の件数は数倍に増えた。テロとの戦いを容易にするのではなく、いまやリビアは、アルカイダやイスラム国(ISIS)関連組織の聖域と化している。「もっと全面的に介入すべきだった。社会を再建するためにもっと踏み込んだ関与をすべきだった」とオバマ大統領は語っている。だが、実際には、軍事介入の決定そのものが間違っていた、リビアには軍事介入すべきでなかった。

  • イスラム国の次なるターゲット?
    ―― 破綻国家リビアにおける抗争

    ジェフリー・ハワード

    雑誌掲載論文

    深刻な政治危機と国家制度の崩壊によって権力の空白が生じているリビアは、テロ集団が活動しやすい環境にある。イスラム国の指導者アブマクル・バグダディは、東部のバルカ(ベンガジ州)、西部のトリポリ、南部のフェザーンがすでにイスラム国の支配下にあると表明し、最近もイスラム国の関連組織が21人のエジプト人コプト教徒を斬首・殺害する事件が起きている。とはいえ、リビアにおけるイスラム国の影響力は過大評価されている。人口の95%がスンニ派であるリビアにおける宗派対立のリスクは、イラクやシリアのそれほど深刻ではない。リビアが近く破綻国家と化すというシナリオも取りざたされているのは事実だが、イスラム国がリビアをカリフ国家の一部とするのは容易ではないだろう。・・・

特集 北東アジアの戦略地政学

  • 北朝鮮に接近するプーチンの思惑
    ―― 米ロ対立の変数としての北朝鮮

    バン・ジャクソン

    雑誌掲載論文

    ロシアと北朝鮮の同盟関係の再生が進みつつある。だが、両国の関係が改善しているのは、モスクワが朝鮮半島に経済利益を見出しているからではない。ロシアとアメリカの関係が悪化しているからだ。米ロ関係が敵対的で対決的なムードにあるときは、ロシアは北朝鮮との関係を強化し、米ロ関係が良好なときは、モスクワは平壌との一定の距離を置こうとする。ワシントンの政策決定者の一部は、ウクライナへ武器を供与することで、ロシアの拡大主義にペナルティを課したいと考えている。しかし、ロシアの地政学チェスボードがウクライナ紛争やヨーロッパに制約されないことを認識すべきだろう。ロシアは、ワシントンの関心をヨーロッパ周辺地域からそらすために、北朝鮮が危機を新たに作り出すポテンシャルに注目しているのかもしれない。・・・

  • 中国をいかに抑止するか
    ―― 拒否的抑止と第1列島線防衛

    アンドリュー・F・クレピネビッチ

    雑誌掲載論文

    領有権をめぐる北京の拡大主義的な主張は、日本、フィリピン、台湾を内包するいわゆる第1列島線に位置するあらゆる諸国を脅かしている。そしてアメリカは、これらの諸国を防衛する責務を負っている。中国の攻撃を阻む信頼できる抑止力を形成するには、ペンタゴンはより踏み込んだ対抗策をとる必要がある。中国の軍備増強の意図は、同盟諸国やパートナー諸国を支援する米軍の軍事能力を機能不全に陥れることにある。もちろん、アメリカの同盟国を攻撃すれば空爆や海上封鎖などの懲罰策を受けるという認識が、中国の軍事的冒険主義に一定の歯止めをかけている。だが、ワシントンそして同盟諸国とパートナー国は、拒否的抑止(deterrence through denial)、つまり、北京に力では目的を達成できないと納得させることを目的に据える必要がある。・・・・

  • 日韓関係の修復はできる
    ―― 問題は歴史ではなく、安全保障領域にある

    ジェニファー・リンド

    雑誌掲載論文

    多くの人は、日韓関係がうまくいかないのは、歴史問題に派生する敵意ゆえに信頼できる関係を構築できずにいるからだと考えている。だがこの説明は十分ではない。現象と原因を取り違えている。日韓の歴史論争は、関係がうまくいっていないことに派生する現象であって、関係を悪化させている原因ではない。すでに現在の日本と韓国は、ともに歩み寄れるような利益を共有している。日本と韓国は貿易パートナーだし、教育、化学、技術領域で交流し、相手の大衆文化も受け入れている。問題は、日韓がともにその同盟関係を重視せず、しかも、日本と韓国を協調へ向かわせるかに思える中国の経済的、軍事的台頭に東京とソウルが逆の反応をみせていることだ。だが、ソウルと東京が、和解が自国の利益になると判断すれば、そこへ至る道筋は存在する。そこで、歴史問題が障害になることはない。

  • ロシアのアジアシフト戦略という幻想

    フィオナ・ヒル

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカに続いてロシアもアジアへと軸足を移そうと試みている。伝統的なヨーロッパ市場ではなく、アジア太平洋市場との関係を強化することで、ロシアの経済成長を刺激したいとプーチンは、考えている。モスクワのアジアシフト戦略は、アジアに影響力を行使したいという願いだけでなく、極東ロシアの人口がまばらであることへの恐れにも突き動かされている。この意味で、その鍵を握るのが中国との関係だ。だが、モスクワにとって中国との貿易関係は、次第に(中国による)新植民地主義的な様相を帯びてきている。ロシアからの主な輸出は原材料で、中国からは製品や消費財を輸入しているからだ。北京は、兵器を別とすれば、ロシアから工業製品を輸入することに関心はなく、武器輸入でさえも、近年は低調で、2006年以降、大がかりな武器貿易契約は交わされていない。アジアシフト戦略をとれば、いずれロシアは「自国の帰属しない東」と「うまく適合できない西」の間で漂流していることを見いだし、失望することになるだけだろう。

  • 緊縮財政時代の米国防戦略
    ―― 日本の安全保障とA2・AD戦略

    アンドリュー・F・クレピネビッチ

    Subscribers Only 公開論文

    アメリカの国防予算が大幅に削減されるのは避けられず、アメリカの安全と繁栄に不可欠な「西太平洋と湾岸地域」、そして(海洋、宇宙、そしてサイバースペースという)「グローバルな公共財」へのアクセスを維持することに焦点を合わせた戦略をとる必要がある。西太平洋の安定とアクセスを保障するアメリカの戦略の要となるのは、やはり日本だ。日本は接近阻止・領域拒否(A2・AD)戦略への投資を大幅に増やして、中国や北朝鮮による攻撃の危険を低下させるべきだ。同盟国によるこうした試みが実現すれば、(中国など)ライバル国が持つA2・ADシステムの射程外から使用できる長距離攻撃システム、敵のA2・ADのレンジ内でも効果的に活動できる攻撃型原子力潜水艦など、米軍の強みを生かせるようになる。ここに提言するアクセス保障戦略とは「米軍は(予算の制約下で)現実的に何ができるか」を前提にした戦略だ。

  • 衝突する日韓の自画像
    ―― 未来志向の日韓共同宣言を

    スコット・スナイダー

    Subscribers Only 公開論文

    この60年で韓国は近代化と民主化を見事に実現したが、20世紀初頭の40年間にわたって堪え忍ばざるを得なかった日本による植民地支配の記憶が、韓国の国家アイデンティティの中枢にいまも位置づけられている。この歴史的経験ゆえに、韓国のアイデンティティは反日という枠組みで長く規定されてきた。日本も被害者意識をもっている。第二次世界大戦における敗戦と原爆投下、そして(東京裁判に象徴される)戦時の行動に関する戦後の解釈をめぐって差別されてきたと考えている。こうした自画像が日本人のアイデンティティを複雑にし、侵略者として自らを認識できずにいる。・・・二つの自画像が重なり合うことで政治が動き、その相互作用によって自らが好む歴史解釈が強化され、領土問題への対応は硬直化していく。・・・この状況で欠落しているのは両国の政治家のリーダーシップに他ならない。

  • 中国経済はなぜ失速したか
    ―― 新常態を説明する二つの要因

    サルバトーレ・バボネス

    雑誌掲載論文

    中国経済の成長率鈍化を説明する要因は二つある。一つは出生率の低下、もう一つは都市への移住ペースの鈍化だ。たしかに、1970年代の出生率の低下は経済成長の追い風を作り出した。一人っ子政策で、扶養すべき子供が1人しかいない親たちはより多くの時間を労働に充てることができた。だが40年後の現在、いまや年老いた親たちは引退の年を迎えつつあり、しかも子供が親を支えていくのは不可能な状態にある。都市への移住ペースの鈍化も中国の経済成長率を抑え込んでいる。1980年当時は、総人口の5分の1を下回っていた中国の都市人口も、いまや全体の過半数を超え、しかも主要都市の空室率が上昇していることからみても、都市化はいまや上限に達している。要するに、中国の経済ブーム・高度成長の時代は終わったのだ。今後成長率はますます鈍化し、2020年代には中国の成長率は横ばいを辿るようになるだろう。

  • 「中国・パキスタン経済回廊」は砂上の楼閣か

    サイード・ファズルハイダー

    雑誌掲載論文

    中国政府は、パキスタンのグワダル港経由で中東と中国を結ぶ、「中国・パキスタン経済回廊」を2030年までに完成させる計画をもっている。2014年には、456億ドルを投入して高速道路、鉄道、天然ガス・石油パイプラインを建設すると表明した。この経済回廊が完成すれば、重要な石油シーレーンがあるインド洋への影響力を強化し、海賊が出没することで知られるシーレーンの危険なチョークポイント、マラッカ海峡をバイパスできる。だが、グワダル港があるバロチスタン州の治安環境がどのようなものかを考える必要があるだろう。ここは過激派集団が活動する不安定な地域だ。州都クエッタには、指名手配されているタリバーンの指導者たちが潜伏しているし、この州の小さな都市の多くは、数十年続いている反政府・分離独立派の活動拠点だ。しかも、バロチスタンは、同様に不安定なイランのシスタン・バロチスタン州と国境を挟んで隣接している。・・・

  • 為替操作と貿易合意
    ―― 米議会と環太平洋パートナーシップ

    C・フレッド・バーグステン

    雑誌掲載論文

    為替は、貿易協定で交渉される関税その他の貿易障壁以上に、貿易の流れと貿易収支に大きな影響を与える。実際、輸入への高関税や直接的な輸出補助金同様に、特定国が通貨価値を人為的に抑えれば、グローバルな貿易と経済の流れは人為的に歪められてしまう。すでに米議会の超党派グループは、TPP交渉で為替操作問題を取り上げることを求め、人為的に自国通貨の価値を下落させ、輸出競争力を高めるという不公正な手法に対処していく必要があると主張し、米自動車産業もこの問題に効果的に対応しなければTPPに反対すると表明している。だが、「パワフルで執行可能な為替市場の規律」をTPPで明示しようとアメリカが試みれば、合意を成立させるのは難しくなる。だが、打開策はある。・・・

論文データベース

カスタマーサービス

平日10:00〜17:00

  • FAX03-5815-7153
  • general@foreignaffairsj.co.jp

Page Top