2024.1.2 Tue
<1月号プレビュー>
本当の対中抑止力とは、中東を一変させたガザ戦争、ウクライナ戦争の戦略シフトを
「あと一歩踏み込んだら撃つぞ」という警告が抑止のための威嚇になるのは、「踏み込まなければ、撃つことはない」という暗黙の了解が一方に存在するからだ。潜在的な敵を思いとどまらせるには、「保証」を示して、相手を安心させる必要もある。ワシントンと台北は抑止力の強化に努めながらも、武力行使を控えれば、懲罰の対象にはされないと北京を安心させなければならない。台湾防衛のための明確な同盟コミットメントを示せば、北京の安心感は損なわれ、抑止力も低下する。ワシントンが地域的な軍事力強化にいくら力を注いでも、戦争を防ぐことはできなくなるかもしれない。(グレーザー、ワイス、クリステンセン)
ついに実現しつつあるかにみえた、イスラエルとアラブ世界の関係正常化を中心とするアメリカの中東構想も、イスラエル・ハマス戦争によって根底から覆されてしまった。もはやパレスチナ問題は無視できないし、パレスチナ国家への信頼できる道筋がみえるまでは、アラブ・イスラエル関係の今後を含めて、アメリカがこの地域の他の問題に取り組むのは不可能だろう。ワシントンは、イラン、イスラエル、アラブ世界全体と実務的な関係を維持しているサウジとのパートナーシップを、新たな中東ビジョンの基盤に据える必要がある。(ファンタッピー、ナスル)
ウクライナにとって、生き残るために「必要な戦争」として始まったものが、いまや、クリミアとウクライナ東部の多くを奪還するための「選択した戦争」に変化している。ウクライナの現在のアプローチはコストが高く、先の見通しも立たない。これは、勝利できない戦争であるだけでなく、時間がたつとともに、ウクライナは欧米の支持を失う危険もある。ウクライナが、ロシアと「停戦交渉」を試み、軍事的な重点を「攻勢から防衛」に切り替えるための戦略シフトをめぐって、ワシントンはキーウそしてヨーロッパのパートナーとの協議を開始する必要があるだろう。(ハース、クプチャン)
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本当の対中抑止力とは
―― 米台が中国を安心させるべき理由2024年1月号 ボニー・S・グレーザー 米ジャーマン・マーシャル財団 マネージングディレクター、ジェシカ・チェン・ワイス コーネル大学 教授(中国・アジア太平洋研究)、トーマス・J・クリステンセン コロンビア大学教授(国際関係論)
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中東を一変させたガザ戦争
―― 混乱をいかに安定と秩序に導くか2024年1月号 マリア・ファンタッピー イタリア国際問題研究所 アソシエートフェロー、バリ・ナスル ジョンズ・ホプキンス大学 高等国際関係大学院 教授(国際関係論)
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ウクライナ戦争の戦略シフトを
―― 反転攻勢から防衛へ2024年1月号 リチャード・ハース 米外交問題評議会名誉会長、チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニアフェロー