Drop of Light / Shutterstock.com
2022.8.21 Sun
安倍外交の遺産
―― その先見性と洞察
超国家主義が日本を近隣諸国に対する侵略と戦争へと向かわせた1930年代と違って、現在の日本は、アジアを豊かさと安定へと導く「リベラルなシステム」を強化し、擁護していくために、古い制約を解体しつつある。再出現した権威主義国家がグローバルな平和を脅かすような世界では、日本の新しいリアリズムが太平洋地域の今後10年を形作るのに貢献し、アジアを特定の一国が支配するような事態にならないことを保証する助けになるはずだ。(オースリン)
現在のトレンドが続けば、そう遠くない将来に、中国はアメリカに代わって、東アジアの経済・軍事・政治を支配する覇権国になるだろう。そして、地域覇権国は近隣諸国の内政にかなり干渉することを歴史は教えている。中国に対抗できるポテンシャルをもつ唯一の国・日本は、特に重要な選択に直面している。(リンド)
現状は安倍元首相が掲げたビジョンからはかけ離れているし、実際に彼のビジョンにたどり着けるかどうかも、わからない。現実には、市民も多くの政治家も、中国がますます支配力を強めるアジアで(具体的な対策をとるのではなく)漫然とよい方向に進むことを願っているにすぎない。安倍は、安全保障議論を進めて国を導くことのできる知的枠組みと政治的洞察力を備えた数少ない指導者だった。(リンド)