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2022.7.5 Tue

ウクライナ戦争と新エネルギー地図
―― 地政学・気候変動リスクと政府介入の拡大

ウクライナ戦争が引き起こしているエネルギー危機は、各国の関心を「地政学的エネルギーリスク」に向かわせ、「今後の気候変動対策」と「現状でのエネルギーの必要性」間のバランスをわれわれに否応なく意識させている。仮に世界が戦略的エネルギーブロックの形成へ向かえば、この数十年におけるエネルギー市場のつながりは解体し始め、市場断片化へと向かっていく。注目すべきは、経済的ナショナリズムと脱グローバル化だけでなく、今後のエネルギー秩序が、最近では例のないレベルでのエネルギー部門への政府介入によって定義されるようになると考えられることだ。(ボルドフ、オサリバン)

クリーンエネルギーへの転換がスムーズなものになると考えるのは幻想に過ぎない。グローバル経済と地政学秩序を支えるエネルギーシステム全体を再構築するプロセスが世界的に大きな混乱を伴うものになるのは避けられないからだ。予想外の展開も起きる。例えば、産油国は、転換プロセスの初期段階ではかなりのブームを経験するはずで、クリーンエネルギーの新しい地政学が石油やガスの古い地政学と絡み合いをみせるようになる。クリーンエネルギーは国力の新たな源泉となるが、それ自体が新たなリスクと不確実性をもたらす。途上国と先進国だけでなく、ロシアと欧米の対立も先鋭化する。(ボルドフ、オサリバン)

EU加盟国間でロシア天然ガスに対するニーズに開きがあることが、モスクワがヨーロッパにつけ込む余地を高める恐れがある。ベルギー、フランス、オランダの天然ガス輸入に占めるロシアの割合は10%未満で、スペインとポルトガルは全く輸入していない。これに対してドイツは天然ガス輸入の約半分を、イタリアは約40%をロシアに依存している。今後検討される制裁の範囲がさらに拡大し、長期化するにつれて、ヨーロッパが受けるダメージも大きくなり、モスクワの分割統治戦略が成功する見込みは高まっていくかもしれない。(ポワチエ他)

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